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トンボのメガネはグルグルメガネ

仮面ライダーカブト』感想・第28話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が趣味で勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆28「心、一つに」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
 樹花に迫る擬態風間のアルティメットメイクアップだが天道の帰宅で事なきを得、切羽詰まってゴンに電話をかけた風間は、ゴンが記憶を取り戻した事を知るが、逃走劇の真っ最中。
 この時期の作品でちらほら見る記憶の高所に追い詰められるとゴンに別れを告げ――…………風間大介、死亡?!
 「ZECTにより、死亡が確認されているわ」
 「今生きている風間大介はワームだ」
 死体を目にし、情報共有する天道・加賀美・岬・神代だが……4人が去った後の死体安置所では、確かに死んでいた筈の風間大介が目を覚ますと立ち上がり、そこに三輪と影山が姿を見せる。
 「見事なもんだね」
 「死を演じることなど、我々にとっては簡単な事。――シナリオは、思い通りに進んでいる」
 序盤に示唆されていた、ワーム=死者のなぞらえ、である事が改めて別の形で描かれると、風間ワームの瞳が白目から全て黒に変わるのが気持ち悪く、本物風間は、なんかしぶとく逃走を続けていた。
 逃げる風間を発見するゴンだが、そこに風間をワームと認識する天道・加賀美・神代と、その欺瞞のシナリオを現場で誘導する影山が姿を見せ……今、一つになる、資格者たちの心!!
 許さないぜワーム!!
 …………え、いや……メンバー間好感度ゼロに等しい風間の為に……?
 定番だがむしろ違和感しか無い、4人並んだ資格者の姿そのものを、加賀美と神代はともかく天道はうっすら(?)真相に気付いていそうな茶番前提で描くことにより半ばギャグとして成立させる捨て身の大技で、今作としてもファウルラインぎりぎりといった印象ですが、ああ、この延長線上に、悪ふざけの行きすぎた『ドンブラザーズ』第36話があったのか……と、ちょっと嫌な納得を。
 「君たちは……」
 「そこまでだ! これ以上おまえの好きにはさせない!」
 ノリノリの影山が、風間へとヒロイックに指を突きつけると、4つのゼクターが一斉に飛んでくる画を使うとか、ホント酷い(笑)
 カメラを横にパンしながら、歩いてくる4人の連続変身を見せるとか、ホント酷い……うん、個人的にはこの辺りからちょっと、笑って受け止めにくい気持ちに。
 ……まあ、(乗ってきた乗ってきた)と横の加賀美を見てニヤニヤしながら変身する影山は面白かったですが。
 「俺は本物だ! ワームじゃ無い!」
 悪い奴はみんなそう言うんだ! とザビーとガタックが率先して殴りかかると、トンボさんが飛んできて風間を守り、風間も変身。
 「見ろ! 本物だろうが!」
 「ワームは全てをコピーする! 変身できたとしてもおかしくない!」
 ワーム関係の設定の曖昧さを逆手に取ってくると、番組史上初4ライダー共闘でドレイクを袋だたきにし、やはり人間、普段から地道に周囲の人たちの好感度を上げておく必要があると痛感させられます。
 先日鼻で笑って見捨てようとしたザビーにパンチの連打を浴びたドレイクは、長い足を引っかけた事のあるガタックの砲撃により吹き飛ばされると海へと横回転で転落し、今回も良い水落ちを見せていただきました。
 「後はZECTに任せてくれ。奴の死を確認すると共に、ドレイクグリップを回収する」
 天道はひたすら無言で水面を見つめ、水中にグリップを落とした風間は川を流れ……みっしーと間宮は暗躍の真っ最中。
 「全て上手く行った。後はドレイクグリップを回収すれば、おまえがドレイクの資格者になる」
 え、そ、それでいいの……?!
 擬態風間はライダーの資格適性さえコピーしうるようですが、はたして、ドレイクゼクターさんの目はそんなに節穴なのか……マスクドライダー計画が35年前には存在していた事を考えると、『555』における“オルフェノクのコード”のように、特定の人間の遺伝子なりにゼクター資格者としてのサインが刻まれており、ワームはそのコピーが可能、みたいな話になってくるのかもですが。
 「約束通り、その力はZECTの為に使ってもらう。いいな?」
 「ただし、ドレイクが倒す相手は私が決める。その約束を忘れるな」
 建前上はワームを倒す為のシステムだった筈のマスクドライダーをワームが使用するという倒錯から、どうやら間宮にはライダーに排除されて構わない(してほしい?)ワームが存在する事が明らかになり、これまで組織的な動きは見えなかったワームにも、派閥争いがあるのかも? と思わせる動きをプラス。
 土左衛門しかけていた風間はゴンによって助けられており、立ち食い蕎麦屋で働く神代は寄付金という名目の強盗行為を続けようとしており、先日の一件の影響か、岬さんには妙に親しげな神代だが、「無神経な人は嫌い」とばっさり切り伏せられ、それをじいやが見ていた。
 「確かに俺は、自分の事で、精一杯となっていたようだ。姉さんにも、よく言われた。おまえは無神経だって」
 天道が妹ポジションに弱いのに対して、神代が姉ポジションに弱いのも意図的な両者の対比でしょうし、岬さんの存在感が上がりそうなのは嬉しいのですが、そもそも神代と本物岬の絡みが記憶に無いので(岬さん的には「泥棒に入った相手」ですが……)、どうにも強引。
 神代が擬態岬に姉を重ねる流れも強引だった事を考えると、本当は神代登場回あたりに岬さんとやり取りがあったのにカットされたが、それはそれとして突き進んでいたりするのかもですが。
 病み上がりのじいやは加賀美に助けられると、神代が岬に姉の面影を見ている事を補強し、神代もまた身内をワームに殺されている事を知る加賀美……初期の動機を覚えてくれていて、良かった(たまーに、そういうの忘れる作品あるので……)。
 「どうやら俺達は、罠にはめられたらしい」
 一方、ゴンの動きを追った天道は本物風間の生存を知り……あれ? 天道も気付いてなかった? そこはかとなく怪しんでいるのかと思っていたら、ここでは天道も、みっしー&間宮に手玉に取られた扱いとなり、暗躍コンビの株を上げると、厭味を飛ばす風間を前にゴンの目を信じると宣言。
 「おまえが本物なら……偽物に化けろ」
 加賀美に連絡を取った天道は、影山が入手したドレイクグリップを掠め取ろうと罠を仕掛けるが、本物風間と偽物風間がご対面。
 「こいつは偽物……いや、本物だ!」
 「なにを言う。おまえこそ偽物……いや、本物だ!」
 両者が詰り合う際の台詞は常道を逆手にとって面白く、ワームの姿を見せた擬態風間がグリップを手にすると、ちょっと悩んだドレイクゼクターさんはグリップに止まる事を選び……節穴でした!!(笑)
 「安心しろ。これからずっと俺がおまえとして、生きてやる」
 擬態ドレイクが風間に銃口を向けたところで待機していた天道と加賀美が介入すると、尻もち影山は背景で華麗なる逃走をキめ、これには東映特撮三下界の王者・ハカイダー先輩(『01』仕様)も、崖の向こうから笑顔でサムズアップを送ってきます。
 挿入歌をバックにカブトとガタックが派手に暴れ回り、両者のキャストオフに合わせて、猫背を強調してモンスター感のある擬態ドレイクもキャストオフを見せるが、カブトにさっくり殴り飛ばされると、取り落としたグリップからトンボが離脱。
 ゴンがグリップを拾うと、風間と風間がグリップを求めて手を伸ばすが、ゴンは躊躇なく本物の風間へとグリップを渡す。
 「私の目は誤魔化せない! 見ればわかるわ!」
 「さすがゴン。なんてったって、俺達は永遠に一つの……一つの……ええっと、その……」
 「相棒」
 「そうそう! それそれ」
 これが積み重ねてきた好感度の差……ゴンが真偽判定を楽々成功させ、子供の目が真実を見抜くテーゼで強引に押し通したところはありますが、“いつものやり取り”から笑顔でグリップを掲げるのは気持ちよく決まり、風間はドレイクに変身。
 「おまえは俺にはなれない! 俺として生きられるのは……俺だけだ!」
 速攻キャストオフからワームにライダーシューティングを叩き込むと、クロックアップによる打撃で追い打ちを入れる変化球で、カブト&ガタックが相手をしていた幼虫軍団と共に、風間ワームは大爆発。
 追い打ち中の啖呵は第22話における加賀美の「俺は……俺にしかなれない。でも、これが俺なんだ」を意識したものと思われますが、今作ここからの大きな主題になっていくのかもしれません。
 神代剣が「本当の俺ではない」事を考えると残酷ではあり、それがどう天道総司に反響していくのか? といった展開があっても面白そう。またワームはワームで、人間をコピーする事でしか生きられない存在だとすれば一抹のもの悲しさも生じそうですが……さて。
 暗躍まみっしーの偽ドレイク大作戦は失敗に終わり、後日――
 「……バカだな。いつだってタダでしてやるよ、おまえのメイクぐらい」
 ゴンが風間に会う為にメイクの依頼料を貯めていた事を知った風間は微笑み、ゴンの記憶関連はかなり荒っぽい扱いになりましたが、ゴンに優しさを見せる時の風間の、アクを抜いて爽やかさを前面に出した振る舞いは今作全体の中でもかなり好きで、多少のドタバタは許せる着地点となりました。
 風間、男相手の態度の悪さやアルティメットメイクアップの滅茶苦茶さを、子役の相棒との絡みで脱臭するのはあざとい手法とはいえますが、天道にしろ風間にしろ神代にしろ、臭みの強いキャラそれぞれに“笑顔を見せる相手”が設定されているのは、今作の上手いところ。
 ……そういう点では加賀美は、臭み薄めの分、明確にそういう相手が居ないのですが、一番近いところにいるひよりに、そういう笑顔を向けたりする日は来るのかどうか。あと、影山に必要なのはやはり、“笑顔を見せる相手”としての豆腐じゃなかった矢車さんなのではないか。
 メイクアップの様子をやたらと興味深そうかつ微笑ましく見つめる天道だが、そんな天道を軸に凄く強引に場面が急転換すると、いつも以上に無表情な感じの天道が変身するので、天道まで擬態されてカブトゼクターさんも節穴被害に?!
 かと思ったらどうやらそんな事はなく、ガタックと共にワームを蹴散らしていくカブトだが、突如として背後から放たれた衝撃波がワームを消滅させるとカブト&ガタックも軽々と吹き飛ばし、そこに姿を見せたのは、角の先が二つに割れたカブトバージョン2……?! で、つづく。
 次回――黒包丁を使いこなせるのは、この俺だけだ!
 …………衝撃の引きを、ピンポンダッシュにされたような気持ち。