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ふたりはなかよし

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第47話

◆バクアゲ47「届け屋はひとりじゃない」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:冨岡淳広
 「ブンブンジャーとハシリヤンが、和睦を結ぶ為の提案がある」
 「提案?」
 「スピンドーとブンピンクの、婚姻だ」
 「え?」「は?」
 「つまりは政略結婚、という事だねぇ」
 前回ラストで提示されたこの提案も理解の難度が高かったですが、何が酷いって、この状況で仲間達に背を向けたまま、ひとっことも喋らない範道大也さんが最低最悪なのですが、口数少ないのが格好いいと思ってるとか個々人の自由意志を尊重とか通り越して、ただ空っぽの男と化しており、ヒーローに対してこんな絶望的な視線を送る事になったのは、『仮面ライダービルド』第23話における、「防衛目的でしばく」という建前の為に国境線ギリギリでウォーミングアップを始める戦兎さん、以来かもしれません。
 まあ今回ラストで、実は……が繰り出されるのですが、この時点でここまで溜め込んできたマイナス印象に取り返しのつかないトドメを加える事となり、もはや真意があろうがなかろうが、この局面で自分の言葉を一つも口にしない(口にするように描かれない)ヒーロー、など私の中で心底どうでもよくなってしまい、つくづく残念でした。
 純粋な子供たちはわかってくれる! と阿久瀬は三下トリオを助け、始末屋コンビはBキラーロボを破壊して回るテロを敢行し、未来はスピンドーに結婚祝いを要求するなどタダでは屈しない気概を見せつける。
 だが、スピンドーはそんな未来を面白がりながらも嘲笑い、取り出す指輪。
 「や……それは心を操る指輪」
 「こいつをはめたら、ブンピンクは、あたしの人形。踊らせるさ」
 最終回直前にして、実にチープなマジックアイテムを持ち出し、また一段と器を落とすボスキャラ!
 ……いや、宇宙規模のマフィアの大ボスなんだから、ここは内部から乗っ取りをもくろむ花嫁と鍔迫り合いを繰り広げながらのスリリングな新婚生活への船出がロマンだと思うわけなのですが……!
 まあ根本的に地球での政略結婚など些事も些事なのでしょうが、せめてそのぐらいの器の大きさは見せて、話はあれだがスピンドーは悪くないボスキャラ……ぐらいは思わせてほしかったところです。
 一方、阿久瀬は助けた三下トリオと境遇を語らい、組織を捨てた野良犬同士の間に和やかな空気が生まれて、ハシリヤンを抜けたらハシリヤン時代の悪行はリセットされたみたいな事になっていて、目眩がします。
 さすがにデコトラが子供をかばって改心ポイントを稼ぐのですが、そもそも襲撃してきた戦闘員の狙いは裏切り者の三下トリオなので、酷いマッチポンプ
 最終回目前にして警察を辞める阿久瀬、BBGに連れ出される準備万端となりましたが、今作、序盤の設計で一つ失敗したところがあるとしたら、阿久瀬の警察官設定だったなと。
 表の顔は警察官だが故あって裏家業の届け屋に協力している……とかならまだ良かったと思うのですが、上部組織の命令で監視役として出向扱い、としてしまった事により、公務の紐付きでブンブラックにして現役警察官だが本人の意志が不明確なままBBGの頭数に数えられている、という宙ぶらりんの存在になってしまい、結果としてBBGに対するメンバー感の認識の曖昧さを悪化させる一因になってしまったように思えます。
 また、届け屋・情報屋・運転屋・調達屋……と来てワクワクさせたところからの「警察屋」が本当にガックリで、ただ本職に「屋」付けて、でっちあげるのではなく、ブンブンジャーではブンブンジャーとしての「○○屋」の役割を持たせて欲しかったし、それが出来なかった(やろうとしなかった)事も、届け屋関連の形骸化を生んだ印象。
 「調さん、後は頼む」
 開始およそ19分20秒(CM込み)で、大也がようやく「わかった」以外の言葉を口にすると、始末屋コンビがカチコミを続ける中でブンピンクとスピンドーの結婚式がマッハに執り行われ、指輪交換の直前、それを止めたのは大也の手。
 「おまえは?!」
 「――届け屋さ!」
 ……この台詞が格好良くなるのは、何かを“届け”に来た時こそであり、ただ出てくる時に言っても何も格好良くはならないわけなのですが(一応、青と桃のブンブンチェンジャーは届けに来ましたが、台詞と全く繋がってはいない)、こんなシチュエーションでも基本の劇的さを見事に外し、とにかく中盤以降、シリーズとして驚くほどクオリティが落ちたのは痛恨。
 「ナイスタイミング!」
 全部わかっていたとばかりに花嫁未来がスピンドーの体勢を崩すと、合体技のウェディングキックが炸裂し、宙を舞ったのはスピンドーの腕にくっついていた猿。
 「シャーシロー!」
 いつの間にやら姿を見せた射士郎へと大也は迷わずブンブンチェンジャーをパスし、二人はとっても仲良し。
 射士郎が召喚したブンブンマリンが、スピンドーの腕から離れた猿をぱくっと飲み込んで噛み砕く酷すぎる扱いで、特に何もしていないのに、猿爆死。
 「スピンドー! あの猿はおまえの弱点、ギャーソリンタンク」
 ……え、あ、そうなんですか……始めて知りました。
 大也・射士郎・未来が横一列に並ぶと、全部が全部、スピンドーの油断を誘う為の罠であり、敢えてバラバラになっていたのだとおっしゃるのですが、
 (わかりきっていたとはいえ)射士郎は実は裏切ってませんでした、の伏線皆無。
 猿はスピンドーのギャーソリンタンク、の伏線皆無。
 射士郎の裏切りからかれこれ5話、これだけ時間をかけた末に、オール伏線皆無の茶番劇に着地し、目が点を超えて素粒子になりそうです。
 ……普通に作るなら、受け手に向けて、ISAに付いたにしては不自然な射士郎の言行、を一つ二つはわかりやすく入れておくと思うわけなのですがそんな事もなく、そういうの全部、大也の心の中で処理されているのが、最っ高に『ブンブンジャー』ぽいといえば、この上なく『ブンブンジャー』ぽくはありますが。
 そんなわけで、毎度お馴染み、「大也さんは(途中から)みんなわかって敢えてやってたので間違っていない」に収束し、噛んでも噛んでも虚無の味しかない『ブンブン』ロードに、ヤルカー軍団を足止めしてきた玄蕃と、山ほど戦闘員を片付けてきた阿久瀬が合流。
 「どうだ……これが――ブンブンジャーだ!!」
 ニヤニヤの止まらない大也が宣言し、5人が笑みを浮かべて並んでいる間、派手な囮としてテロってる始末屋コンビが可哀想すぎます(笑)
 「ふふふふ……最高の結婚式さね」
 エネルギーを失い、膝を付きながらもスピンドーは虚勢を張るが、本部長が増援に送り込もうとしたBKロボは、獅子奮迅の活躍を見せたVDロボによりビックリ壊滅。
 「ふふふふふ……ブンの字よ……おまえの仲間は……最高の、悪党さね」
 スピンドーに一杯食わせる為、“地球の敵”になっても大芝居を打ったブンブンジャーをスピンドーは“悪党”と評し、今作がピカレスク的な味付けをしたかった点が改めて窺えますが、開始当初は多少は裏家業めいた雰囲気もあった届け屋は早々に大金持ちのボランティア事業になってしまいましたし、情報屋や始末屋の要素もブンブンジャー全体の雰囲気とは噛み合わず仕舞いだったので、これもまた、今作における「理想」(やりたい事)と「現実」(やれている事)のギャップとなって、むしろ台詞が浮いてしまう事に。
 一応、最後に阿久瀬が警察を辞める事により“公の正義”よりも“己の筋”に従う姿を見せるのが一番ピカレスクロマン的といえますが、それもあってか、最後の最後で阿久瀬は随分と良い扱いを受ける形に。
 チャンピオンブンブンジャーが揃い踏みして、「ここからが、ファイナルラップだ!」で、つづく。
 裏に何があろうとも、今回のアバンタイトルで私の中の『ブンブンジャー』は完全に終わってしまったのですが、1年の最後に見せるものとして選ばれたのが、“絶体絶命の苦境に前を向いて皆を引っ張るヒーローとその仲間たち”ではなく“大也と射士郎の濃厚な相棒プレイ”だったのが、悲しいほどに合わない着地点となりました(シリーズの歴史としても後者を否定するわけではないですが、それは前者を激しく損ねてまで優先するものとは思えず)。
 次回、射士郎からのメッセージが実はここに隠れていたんだ! とか入るのですかね……。