東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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太陽に惚れろ

太陽戦隊サンバルカン』感想・第39-40話

◆第39話「尻もちおてんば娘」◆ (監督:服部和史 脚本:筒井ともみ
 原因不明で稲が枯れ始めたという情報をキャッチした飛羽は、研究所の職員を装って調査に向かうが、農家の少年の投稿をきっかけに取材に訪れた女記者から一方的にライバル視を受け、正統派好青年ヒーロー・飛羽と、万事に前のめりぎみなおてんば記者、というのは見ていてやり取りの楽しい組み合わせ。
 「ライバルさん」
 「ハイ!」
 「どこの雑誌社の方か存知ませんけど、この特ダネだけは絶対に譲りませんから!」
 事の重大さよりも自身の目的を優先して状況を引っかき回す人物は、多少愉快に描かれていても見ていてストレスを生みがちですが、水田に毒ガスを撒き散らしていたムカデモンガーとサンバルカンの戦いを接写しようとした結果シャークが脚を負傷すると、早々に反省してくれて良かったです。
 田舎の少年との交流もくどくなりすぎない範囲で好感に繋がり、怪しすぎるブラックマグマ印のトラックを追跡した記者と少年は、ブラックマグマが最新型ムカデメカを準備している現場を目撃。
 「ブラックマグマなんかに大事な稲を全滅させられてたまるもんか!」
 水田に身を潜める二人に、両手の鎌で端から稲を刈り取っていくモンガー稲刈り殺法(地味)が迫るが、そこにサンバルカンが間に合うと二人を助け、輝け! 太陽戦隊!!
 「抹殺!」
 モチーフの頭部と怪人としての顔が組み合わさっている系のデザインが結構好きなのですが、釣り鐘を半分に割ったような頭部に二つの顔が見えるデザインがなかなか面白いムカデモンガー、ガスと爆弾に苦しめられるサンバルカンだが太陽スティックでの反撃からバルカンボールを放つと、巨大化したボールで怪人が玉乗りを披露する要素が加わってから爆発。
 小型ムカデへの変身でロボを翻弄したムカデモンガーは、鎖鎌を振るってトンファーとシールドを弾き飛ばすが、最後は太陽剣で鎖を切断され、プラズマ返しで切り捨てられるのであった。
 かくしてブラックマグマの世界飢饉大作戦(の下準備)が失敗に終わると、女記者は東京へと帰っていき、それを微笑ましく見つめる飛羽らの姿で、幕。
 翌年の『宇宙刑事ギャバン』でギャバンの相棒・ミミー役を務める事になる叶和貴子さんをゲストヒロインに迎え、随所のアップ多用など、ゲストへのスポット中心のエピソード。
 上述したように、飛羽とのやり取りは楽しく、Bパート冒頭で態度を改めてくれ、地元少年との交流もアクセントとして程よくなり、『サンバルカン』として特筆する面白さは無いものの、おてんばヒロイン物の定跡を押さえて、まとまりの悪くないエピソードでありました。

◆第40話「なかよし暗殺天使」◆ (監督:服部和史 脚本:曽田博久)
 バルカンジープの性能試験中、突如として飛羽を襲う機械生命体!
 こんな事もあろうかと、助手席には木刀を常備している飛羽高之!
 「何者だ?!」
 「ブラックマグマの暗殺者、コウモリモンガーだ!」
 名乗りに合わせてポーズを取り、3カット使うコウモリモンガーは薙刀を手に飛羽へと襲いかかり、バルイーグル!
 コウモリモンガーの鋭い牙はバルカンスティックさえへし折ると、そこに青と黄が駆けつけていきなりバルカンボールの準備に入る、巨大すぎる負けフラグが立てられ、フィニッシュ体勢に入ったイーグルに向けてなにやら音波を飛ばしたコウモリモンガーは、迫り来るバルカンボールを側転でヒラリと回避。
 「ひょひょー! かわしたぞ!」
 「よし、もう一度アタックだ!」
 ……全くめげなかった(笑)
 再度放たれるバルカンボールだかこれもかわされ、恐るべき力を見せるコウモリモンガー、その噛みつきは、これまで無敵を誇ったバルカンスーツさえ貫いてみせる。
 「信じられん……」
 あまりのショックに、つらつらとスーツの性能自慢を始める長官(笑)
 バルカンボール回避の秘密はコウモリの超音波だろう、と長官が見破ると、バルカンスーツに大ダメージを与えた怪人が急に引き下がった事への疑問が示されるのがスムーズで、よろよろとアジトに帰還したコウモリモンガーは、スーツを破りはしたものの相討ちで牙が砕けた事を報告していた。
 「その牙生え替わるのか?」
 「100年はかかります」
 かつてない強敵として登場したコウモリマンガーですが、期待を裏切らない、安定のブラックマグマクオリティ。
 「100年?!」
 女王が癇癪を起こすと、置物もといヘルサターン総統が珍しく取りなし、
 「まだ一つだけ方法がある。コウモリモンガーと同じコウモリ遺伝子ホルモンを注入すれば、突然変異を起こして、コウモリ魔人となれる人間が必ず一人や二人は居る筈だ」
 凄く曖昧な事を言い出す、ヘルサターンクオリティ。
 かくして、サンバルカン暗殺計画はコウモリ魔人誕生計画へとスライドし、最初に強敵モンガーの出現をインパクト充分に描いた上で、敵サイドがアクシデント解決を図る為に作戦の修正を余儀なくされて話の視点が“子供の世界”に入っていくのは、なかなか面白い話運び。
 コウモリモンガーは次々と街の人たちにミニコウモリをけしかけてコウモリ遺伝子ホルモンを注入していき、突然変異への適性を示してコウモリ魔人と化したのはなんと、いじめっ子の小学生・テツオ。
 コウモリモンガーは、魔人と化した少年の口から伸びた牙を奪い取ろうとし……あ、そういう事か(笑)
 ……いやてっきり、新たな魔人を対サンバルカンの刺客にまで育て上げるのかとばかり思っていたので、あと10年ぐらいかかりそうだな……から、素材採取の畑扱いで、成る程。
 少年を助けるサンバルカンだがコウモリ男には逃走を許す一方、人並み外れた身体能力を身につけたコウモリ少年は、手術を控えて入院中の少女と出会っていた。
 翼を生やしたその姿を天使と誤解された少年は、少女の誤解に話を合わせ、小学生レベルといはいえ悪党が純真な少女を前に仏心を見せるパターンの変奏曲ですが、夢で神様が約束してくれたお守りを持っていなかったので、なんか、理不尽になじられた(笑)
 だが、悪魔のごときコウモリ人間と化した自身の姿に心の弱っていた少年は、そんな自分の存在を認めてくれた少女の為に心を改め、山の教会からお守りを取ってくると約束。
 途中でゼロガールズの襲撃を受けるもサンバルカンに助けられると、少年の思いを汲んだサンバルカンと共に教会に向かうが、そこに待ち伏せていたコウモリモンガーの罠により、魔人の牙はコウモリモンガーの手に落ちてしまう。
 「ははははははは! 入れ歯をして出直してくる! 首を洗って待っていろ!」
 一時撤収の理由付けとしては、凄く納得がいき、細かく面白怪人で良かったですコウモリモンガー(笑)
 「これで良かったんだ……コウモリモンガーの牙には、負けはしないぞ」
 牙を失った少年が元の姿に戻ったのを見たイーグルが、如何に強大だろうとも、後は自分たちの力で悪を倒すだけだ! と宣言するのは格好良く決まり、入れ歯コウモリモンガー(早かった)を前に、輝け! 太陽戦隊!!
 高い所での名乗りから、アクションの見所はパンサーと戦闘員の木登り逆さ吊りバトルとなり、戦闘員を蹴散らすサンバルカンだが、身軽に動き回る強敵コウモリマンガーには苦戦。
 バルカンスティック投擲も通用せず、時空間書き換え能力を持つ太陽キックさえかわされるが、新技・イーグルフラッシュで日本刀から閃光が走る文字通りの飛び道具が直撃。
 木から落ちたコウモリモンガーに特に工夫なく放たれるバルカンボールはまたもかわされるが、割れたボールから超音波探知ミサイルが飛び出す嵐山ギミックが発動し、執拗な追跡を受けたコウモリモンガーは、折角の入れ歯を使う機会のないまま巨大モンガー(笑)
 巨大コウモリモンガーはロボにしつこく噛みつくが通用せず、あ、コウモリ爆弾の方が効くぞ!
 だが驕りを見せたところに太陽スクリューを叩き込まれるとオーロラプラズマ返しでばっさり倒され、本当に、なんだったのか、入れ歯……(笑)
 話運びは面白かっただけに、騒動の中心となった入れ歯が役に立たずじまいだったのは残念でしたが、少年の悪の心の産物ともいえる魔人の歯がサンバルカンを傷つけるのも問題がある、という判断が働いた部分はあったのかもしれません。
 少年は少女に無事にお守り(祭壇から勝手に取ってきた十字架な気はしますが……)を渡すと、翼が無くなった件については飛羽が
 「神様がね、どこへも飛んでいかないように、翼を取っちゃったのさ」
 と爽やかに取りなし、常人にはとても口に出来ない気障な言い回しですが、みんな俺に惚れろ!
 前回-今回と、急にバルカンボールにゴレンジャーストーム(強化バージョン)&ゴレンジャーハリケーンと似た機能が加えられましたが、割と今更感はあり。
 今回に関しては、私のバル戦闘服を傷つけるとは許さん! と鬼気迫る嵐山長官の私怨も窺えますが。
 強敵怪人を見舞うトラブルから、悪意の象徴が善に転化される話運びは面白く、また前回-今回と、最終クールを前に改めて、“飛羽の格好良さ”を中心とした組み立ては、後期『サンバルカン』はやはりこれ! の安定感に見所が光って良かったです。