東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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スイカの数だけ強くなる

仮面ライダー(新)』感想・第47-48話

◆第47話「スカイライダー最大の弱点! 0.5秒の死角をつけ」◆ (監督:広田茂穂 脚本:江連卓)
 発表します!
 「仮面ライダーの致命的な弱点を発見しました」
 1年に及ぶ丹念なデータ収集と緻密な解析の末、アブンガーが見出したスカイライダーの致命的弱点、それは、全エネルギーを瞬間的に燃焼させる事により爆発的な破壊力を産み出す必殺攻撃・スカイキックを放ち、着地したその瞬間。
 「次のエネルギーが充電するまで、0.5秒間、エネルギーが切れた状態になります」
 意外と頷ける弱点でした!!
 ……とはいえ、そもそもあまり強いイメージの無い必殺技であるスカイキック、高すぎる評価にはデータの入力ミス疑惑も浮かびますが、アブンガーが分析したスカイキックは、先輩たちによる地獄のかわいがり特訓を受けて、ライダースピリットを注入された後のスカイキックなのかとは思われます。
 「その0.5秒の空白が、致命的な弱点というわけか」
 「問題は、如何にしてスカイキックを空振りさせ、0.5秒の隙に乗ずるかです」
 弱点を突く為には、「まずスカイキックをかわさなくてはならない」という本末転倒に近いハードルが出現しましたが、そこは囮にでも打たせればいいのでは……と思ったら、衝撃! アブンガー先生は何も1年間、ネオショッカー食堂の片隅でタダ酒とタダ飯を食らいながら給料泥棒をしていたわけではなかった!
 「勝算すでに我にあり。まずは秘密特訓の成果をとくとご覧下さい。あれなるアリコマンドーは、特訓に次ぐ特訓で、仮面ライダーに匹敵するスカイキックの技を身につけたもの」
 ……あれ?
 なんかもう、スカイライダーの弱点を突くよりその戦闘員を量産した方が早いのではみたいな事になっていますが、まあ恐らく、「匹敵するスカイキックの技」を身につける為だけにステータスの調整を繰り返し、他は全て佐久間ケン以下の性能なのかと思われます。
 アブンガー先生は、キック戦闘員との修行を繰り返す事によって編み出したスカイキック返しの映像を魔神提督に披露し、この1年、食堂戦闘員や経理戦闘員から冷たい視線を向けられているのではと思われたアブンガーでしたが、実はその期間の大半は、スカイキック戦闘員の育成と、スカイキック破りの為の修行に費やされていた事が明らかになり(前回-前々回の登場は、知らない間にスカイキックがレベルアップしていないかの最終チェックだったと思われます)、なんとなく整合性が取れてしまうミラクルが発生(笑)
 「恐ろしき男よアブンガー。ゆけ! 行ってスカイライダーの最大の弱点、0.5秒の死角を突け」
 魔神提督の檄に、そのままのサブタイトルがかかり、存外真面目に山にこもって修行を繰り返していたらしいアブンガー(多分、片方の眉を落としている)は出撃。
 一方、ブランカ一同は山で川遊びを楽しんでおり、洋の衣装が物凄く、風見先輩から小包で届いた風味なのですが、これは、敗北フラグなの……?
 「スカイライダーの一日に必要とするエネルギーは10万カロリー。その10万カロリーを、ゼロにしてやるぞ」
 ブランカ一同を密かに見つめるアブンガー先生は、キック返しの成功率を高める為、スカイライダーを出来る限り消耗させる事を目論み……スカイキックを放って着地後、「次のエネルギーが充電するまで、0.5秒間」が無防備という事は、平常では切れた端から充電されていく仕様な気がして既に作戦ガタガタになっておりますが、罠の存在を明確にしながら、ざっくりとはいえ数字を刻んでいくのは、一種のタイムリミットサスペンスの機能を発揮して面白みに。
 「夏の河原に来るとさ、今でもきゅっと胸が痛むんだよ」
 洋は川辺でどこか硬い表情を浮かべており……ああそういえば、ハングライダー仲間たちの遺体を掘り起こしてブルーシートの上に並べていたのもこんな河原でしったけ……と思いましたがさすがにそれは告白されず(なお、第1話の該当シーンを見返してみたら、凄くこんな河原でした)、洋が思い出していたのは、少年時代、吊り橋から転落しかけたところを通りすがりの山男に助けられた過去。
 「おい坊主、よく泣かずに頑張ったな。今度からこんな事は、二度としてはいかんぞ」
 河原で遊んでいた筈が、川にかかった吊り橋から転落しかけているのは文字通りに飛躍があるのはさておき……なんでしょうこの、先輩客演シリーズで藤岡弘の出演がかなわかった代わりに出てきた感が迸る、気持ち本郷猛概念を背負った中屋敷鉄也さん(笑)
 「それじゃその人、洋さんの命の恩人じゃない」
 「そういう事だな。今じゃ名前も顔も忘れちゃったけど、俺はその時、大きくなったら俺も困ってる人を助けられる大人になろうって決心したんだよ」
 ガール1名との語らいから、洋の過去に触れられる二重の意味で珍しいシーンで、過去の漂白された無味無臭系優等生ヒーローだった洋に、現在へと繋がる背景が与えられるのは良い切り口でしたが、その恩人は、ネオショッカーに改造されて、三好流空手の前に敗れ去った気がしますね……。
 許せないぜネオショッカー!!
 ……真面目な話としてはこの、「今じゃ名前も顔も忘れちゃった」けれど「そこに生まれた気持ちは確かに残っている」ところにこそ普遍的なヒーロー性が存在するわけであり、それはちょうど先日『仮面ライダーカブト』第18話感想で私が興奮していたポイントなのですが、ここでは“名無しの男”すなわち“マレビトとしての本郷猛概念”と捉えて差し支えないと考えます。
 そこに本日もやかましくガンガンジーが現れるのは、空気の切り替えとして綺麗に機能し、河原で転んでスイカを台無しにしたガンガンジーの姿にひとしきり笑った洋は、川に転落する少年を目撃。
 洋は躊躇なく川へと飛び込んでいき、思い出の中のヒーローに倣う洋の行動が、アブ先生の策略として洋を追い詰めていく罠になっているのは、かなり嫌らしい組み立て。
 「ふはははは、奴は既に2万カロリーを消費した。次は3万カロリーを使わせるのだ」
 少年は父と共にネオショッカーの武器工場を目撃した事を語り、捕まった少年父を助けるべく工場へと急ぐ洋。アブ先生の作戦により自爆した工場の爆発に飲み込まれる洋だが瓦礫の下から高笑いと共に飛び出し、やはりあのベストは、風見先輩から送られてきたものな気がしてなりません。
 ライダー忍法・土中隠れにより3万カロリーを消費したスカイライダーは、少年の父を人質に残り5万カロリーを失わせようとするアブの消耗戦に引きずり込まれ、闇雲に突撃していく少年を助けようとして1万カロリーを更に消費。
 「心配するな。お父さんは無事だ」
 洋はひとまず少年を安全なところまで送り届け、スカイライダーへの人質なので、そういう意味では当面の無事は保証されているのですが、お父さんが柱にくくりつけられている状況のまま、「さよなら」と笑顔で手を振っていく少年が凄く変な感じに……と思ったら、少年が渡ろうとする吊り橋を激しく揺する戦闘員(笑)
 吊り橋から転落しかける少年を過去の洋と重ねようとする状況設定はどうにも無理が出ましたが――加えて、そこまで劇的な場面としても描かれず――洋は少年に懸命に手を伸ばし、谷先輩(他の仕事でもあったのか、髭が目立って気になる)の助けもあって少年を救出。
 改めてアブ先生のアジトを目指す洋は、激しいバイク転倒からスカイ変身すると、鎖鎌戦闘員を蹴散らして少年父の元へ辿り着くが、もはやそのエネルギーは残り僅か。
 「かかったな、仮面ライダー
 貴様の三好流空手と、我がネオショッカー空手の勝負!
 「今だ! アブンガー・スカイキィッック!!」
 苦し紛れのスカイパンチをかわされたライダーは、残った力を振り絞ってキックを放つも回避されると、データ通りに着地の瞬間を狙ったアブ先生の必殺キックを受けて地面に転がり、絶体絶命。ベルトの風車の回転も止まったその時――奇跡が起こった!
 追撃で放たれたアブンガーキックを受けて爆死した戦闘員の爆風がベルトに吸収されると、スカイライダーは急速充電で復活し、ピンチ脱出のノリは完全に『キカイダー』でジローがギルの悪魔の笛の音を防ぐ時(笑)
 1年に渡るデータ収集と特訓に次ぐ特訓は想定外のエネルギー吸収効率によって打ち砕かれ、起死回生のスカイダブルキックを浴び、物凄い高度差で墜落していくアブ先生のくったり人形がど派手な爆死を遂げたのは、難敵にふさわしい良い散り様でありました。
 第45話の初登場時点では、扱いの大きさに対して、モチーフとシンプルすぎるデザインが心配だったアブンガーですが、終わってみると「特訓により必殺キックを修得する昆虫タイプの改造人間」としてスカイライダーの対に収まったのは、巧い使い方でありました。
 ナレーション「0.5秒の死角を突かれ、絶体絶命の仮面ライダーを救ったものは、平和を祈り、正義を愛する心だった」
 ……だった?
 異例の前振りから登場し、周到な準備と罠でスカイライダーを追い詰めていく難敵だっただけに、後編に引っ張って、特訓には特訓だ! とスカイライダーがデータを越える新必殺技を修得するぐらいしても良さそうだったところから、急展開の奇跡で畳んでしまったのは少々残念でしたが、今作後半戦では、ここまでで一番楽しめた回でした。
 色々とがたつきは多いのですが、右でフェンスに突っ込んだと思ったら超高速で左に切り返し、左で崖から足を滑らせたと思ったら、いつの間にか橋の上で逆立ちをしているような瞬発力の途切れなさは、ここまで来ると評価したい(笑)
 客演シリーズの前後編それぞれを、このぐらいの密度とテンポで展開できていればな……というか、前後編こそ本来、このぐらいの密度でやってほしかった、とも思わされるエピソード。
 最後は親子の再会が描かれて、実はずっとネオショッカー戦闘員の変装の可能性を疑っていたのですが、そこからの仕込みではありませんでした。

◆第48話「4人のスカイライダー 本物はだれだ?」◆ (監督:広田茂穂 脚本:土筆勉)
 公園で遊ぶ子供たちの前に黄色いスカーフのスカイライダーが現れると、「うるさいんだよ君たちは!」と暴言を放って子供たちを突き飛ばし、子供たちが作った砂場のトンネルを踏みにじる悪逆非道!
 砂場を荒らして低く笑う姿よりも、倒れた少年を踏みつけにしている方が明らかに酷いので、このなんとも掴みにくい悪事の描写(笑)
 次なる偽ライダーは、スーパーで子供達の口にソフトクリームをねじこんで罵声を浴びせ……先程から声がちょっと大葉健二さんに聞こえて困ります(笑)
 次々と子供達に嫌がらせを行っては、仮面ライダーの評判を落としていく偽物の正体は、軟体怪人・ドロリンゴ。
 「これまではほんの序の口。これからはもっと悪い事をして、仮面ライダーの信用をガタガタメチャメチャにし、筑波洋を仲間に引き入れてご覧にいれます」
 ……え?! 作戦の最終目標そこなの?!
 「なに?! 筑波洋を仲間にだと?」
 魔神提督もビックリだ!!
 相変わらず組織の縦の繋がりに疑問を感じるネオショッカーですが、偽ライダー作戦は順調に進んでいき、ネオショッカーの扇動により産声をあげようとするアンチ仮面ライダー隊。
 怪しげな男がスカイライダーへの憎しみを煽ると、そこに飛び出してきてスカイライダーの正義を訴えた矢田は子供達から袋だたきにされ、先日、こんな感じで子供達の悪意を後ろから煽って他人に石を投げさせる人が、よりによってスナックサファリの内部に居ましたね……。
 洋らが助けに入ると、怪しげな男は戦闘員の正体を現して逃走するもドロリンゴによって始末され、洋の前に姿を見せる偽ライダー。
 「おまえか! 俺に化けて悪事の数々を働いていたのは!」
 偽ライダーは、肩身の狭い世間よりも、ネオショッカーで楽しく暴れようぜ、とスカイライダーを勧誘し、炎上させた本人がそれを言っても駄目じゃないかな……。
 「そっちがその気なら、最後の手段を使うまでだ」
 案の定スカウトに失敗した偽ライダーだが、偽ライダーに轢かれたところを輸血で助けた少年を人質に取られた洋は改めての脅迫に屈し、ネオショッカーに忠誠を誓った証として、ブランカ一同の斬殺を命じられる。
 当然それはドロリンゴを油断させる為の芝居であり、隙を突いて付き添いの戦闘員を叩き伏せる流れはこれといった面白みになりませんでしたが、場面変わると、洋が五つ並べた生首のようなものを台に乗せてドロリンゴの前に立っているのは、バイオレンス&インパクト。
 かけられていた布を外すと、下から出てきたのはスイカ、も前回-今回に用いられたコミカルな要素(割れるスイカ)を拾って割と面白かったのですが、何故か少年の身柄を確保する前にスイカのネタを割ると、人質の少年をめぐるやり取りが全く緊張感のないゆるーいテンポで描かれて、どうしてそうなりましたか……。
 戦闘員の覆面を被っていた谷&沼が少年を救出するとドロリンゴとの決戦となり、スイカ……じゃなかった、スカイ変身。
 割れたスイカみたいにしてやるぜぇ、と放たれた開幕スカイパンチは粘膜体質の為に逆にスカイのピンチを招くと、高い所に現れたガンガンジー……は特に何もしない内に、ドロリンゴは3体の偽ライダーに分裂。
 偽ライダーに背後から組み付くも騙されを繰り返して場を引っかき回したガンガンジーは、最終的には画面外に放り投げられると、谷・沼・少年と共にギャラリーとなり、今回のゲストは“仮面ライダーを信じ続ける少年”なので、偽ライダーを本物ライダーが倒す光景を目の前で見て真相を知る事に意義はあるのですが、根本的な世評の回復には繋がらない為、少年のご近所での立場が更に悪くならないかはちょっぴり心配です。
 本物vs偽ライダートリオの死闘は続き、何を思ったのかおもむろにスカイキックを試してみる偽ライダーだが、それは前回やったのだ! とあっさり破られると地面に転がり……
 「足が折れた……」
 のちょっとマジなトーンが変に面白かったです(笑)
 残り2体が肩を組んでスカイタックルを放つも通用せず、パワー不足を感じた偽ライダーズは、縦に並んで烈車合体。
 改めて1対1での激しい攻防となると、最後は放り投げた偽物に空中で放つライダー水平回転チョップが連続ヒットし、正体を露わにしたドロリンゴにスカイキックが直撃。
 今作にしては派手めの大爆発で弾け飛び、アクターさんが腰をかがめた姿勢を取る事で、巨大なアメーバ状の存在として示すのは面白い見せ方でした。……なにの改造人間だったのかは謎になっていますが、土筆脚本の怪人は大体、妖怪(笑)
 「仮面ライダーはいつだって正義の味方だ! みんなにそう伝えてくれ!」
 スカイライダーは少年らにイメージ回復の為のプロパガンダを求めて走り去っていき……特別面白かったわけではないのですが、客演シリーズの出来があまりにも酷かった反動により、怪談シリーズ以降、一話完結でキビキビ進行してくれるだけで“五割増し面白く見える現象”が発生しており、このままクライマックスまで突っ走ってくれるのを願いたい。
 次回――……次回――………………私の脳裏で今、『ロボット刑事』と『ウルトラマン80』の記憶がせめぎ合っているのですが、洋、火星へ?!