『太陽戦隊サンバルカン』感想・第３６話
◆第３６話「エスパー」◆ （監督：奥中惇夫 脚本：上原正三）
前作『デンジマン』では、青梅大五郎の妹分サチコ役として２話ほど出演した三原じゅん子（当時：三原順子）がゲスト出演し、飾り気皆無のサブタイトルは、ＴＶ欄にゲストの名前を入れる為に文字数が削られたとかでしょうか。
この当時『３年Ｂ組金八先生』出演や歌手活動で人気を得ていた三原順子さんだけに特別ゲストのような扱いだったのかとは思われ、見所は、オートバイよりも早く地上を滑走する超能力シスター・日見子！（あれ？）
……背景を高速で流して前に置いた人物が高速移動しているように見せる古典的な映像なのですが、そこまで、姉思いの敬虔なシスターとしてしっとり描かれていただけに、いきなりのぶっ飛んだシーンがかなりのインパクトでした（笑）
姉が焼死する悪夢にうなされ目を覚ましたシスター日見子は予知能力者である、と冒頭からナレーションさんが勢いよく断言してきて脳が消化に戸惑っていると、間髪入れず
ナレーション「ヘドリアン女王は、機械生命体サタンモンガーに、超能力の、秘伝を授けていた」
女王とサタンモンガーの超能力組み手が描かれ、高速のビジョンが止まりません。
その修行中、精神波に干渉を受けた女王はサタンモンガーに不覚を取り、
「女王様に対抗できるエスパーとなると……」
「――デンジ星人に違いない」
……また懐かしい要素が拾われると共に、ま、まあそれなら……と一定の納得感は生じるのですが、存外、制作サイドはヘドリアン女王を介した前作との接続にこだわっていたのでしょうか。
デンジ星人の地球到来の過去が挿入されると、持病の発作に見舞われたノリでデンジ星人への恨み辛みを思い出したヘドリアン女王は、ブラックマグマの指揮系統そっちのけでデンジ星人の子孫を片っ端から抹殺せよと命じ、今回もヘルサターン総統は、会議室の隅っこで梅昆布茶をすすっている係です。
子飼いだった筈のゼロガールズも、もはやずっと前からアマゾンキラーと共に宇宙を旅していたような雰囲気を醸し出しています。
そんなこんなでブラックマグマは超能力者狩りを開始し、衣装と髪型が青葉大五郎のパロディめいた超能力者が念写に成功すると、ナイフに胸を貫かれた自身の姿がフィルムに写し出されるのは、面白い見せ方。
「な、なんだこれは？！」
「おまえは死ぬのだオカルトジョー！」
ＴＶ収録中にアマゾンキラー一味が殴り込んでくるとサイコキネシスによって操られた短剣が念写能力者を貫こうとするが、間一髪それを阻んだのはサンバルカン。
どこまで意図があったかはさておき、運命は変えられる、事が示されると、念力によって飛び交う照明をはたき落とすキビキビしたアクションから戦闘員との立ち回りとなり、ブラックマグマは撤収。
人気占い師である姉・加美子に迫る危機を救うため、日見子はサンバルカンに匿名の投書を送るが、その予知は現実のものとなってしまい……
「……ひょっとすると、デンジ星人の末裔かもしれんな」
「デンジ星人？ あの電子戦隊のデンジランドを送り込んできた？」
「そうだ」
電子戦隊とデンジ星人について地球守備隊が把握している事が明らかにされ、４クール目を前に、より密接に前作と世界観を共有してくるのですが、そこに何か新しい面白さが生じるかといえば、現時点では特に感じられず……この先、ブラックマグマの精神的首魁である“黒い太陽”とベーダー一族が関連づけられたりするかもですが。
サンバルカンにさえ徹底して正体を隠す日見子の、かつてファッションモデルとして活躍していたが、あまりにも強い予知能力ゆえに魂の救いを求めて修道院入りした経緯が長々と語られると、一方その頃……の襲撃からクライマックスバトルに突入し、雑な成り行きのバルカンボールから雑な成り行きのオーロラプラズマ返しで両断されるかと思われたサタンモンガーだが、ヘドリアン女王仕込みのテレポーテーションを使い、まさかの逃走。
日見子の見た予知夢通り、彫像の下敷きになって重傷を追った加美子は入院するが、ヘドリアン女王を悩ませる精神波は止まらない事から、より強力な超能力者が別に居る事がブラックマグマに察知され……て、え、つ、続くの……？！
ナレーション「サンバルカンは、この、美しいエスパーを、守る事が、出来るであろうか」
実質アイドル企画回みたいなものかと思っていたら、ナレーションさんまで激しい肩入れを見せて、予想外の前後編で、つづく。
無駄なカーチェイスや、やたら長い日見子の回想シーンなど、前後編の都合による尺稼ぎとテンポ度外視のゲストフォーカスも目立ち、面白いとは言い難かったですが、次回サブタイトルで明らかになる「日見子」の字が、音は恐らく「卑弥呼」と重ねつつ、「太陽の巫女」にして「日を見る者（暦を司る者）」でもある事を示して血統背景を感じさせるのは見事なネーミングで、＋５点。
