『仮面ライダー(新)』感想・第35-36話
◆第35話「風見先輩! タコギャングはオレがやる!!」◆ (監督:平山公夫 脚本:土筆勉)
見所は、マントコングに打撃が通用しないので関節技に持ち込むと、空中4の字固めから躊躇無く足を潰しにいくV3先輩と、その頃、ぷっかり湖に浮かんでいる洋。
……冒頭の戦闘シーンが面白さのピークで、以下、ごくごくシンプルに出来が悪い、残念な内容。
「貴様ら人間の敵だ! 許さん!」
死んだフリで湖畔に引っ張り上げられた洋は反撃に転じると、どうも定番にしたい様子の啖呵からスカイライダーへと変身。
タコギャングが墨隠れの術で逃走する一方、ネオショッカーのアジトではこめかみに血をにじませながら南博士が娘に会わせろと大暴れしており、前回今回と娘に強い愛情を向ける南博士、生死の瀬戸際ではありますし、作っている側は感動的な父子愛の強調のつもりだったのかもしれませんが、見せ方がくどいのと研究の内容が内容だけに、どうも病的な執着に見えてしまうのが困ります。
「おまえの母さんは簡単に死んでしまった。だがおまえは違う。このワクチンで植物になれば、人間よりずっと長く生きる事ができるんだ」とか言い出しそう。
魔神提督が憤怒の顔芸で尺を稼ぐ中、Wライダーは湖近辺でアジトへの入り口を探し回り、ナオコが処刑場に放り捨てられたところに姿を現すガンガンジー。
「ガンガンジー様は、悪のあるところに、必ず現れる」
イチロー兄さんみたいなことを言い出すガンガンジーですが、もしかして口ずさむ軍艦マーチはトランペットやギターの代わりで、存在自体が東映ヒーローのパロディ的存在なのでしょーか……。
ここまで散々強敵として描かれたマントコングに謎のブリキ仮面が正面から立ち向かう虚無の笑劇時空は、スカイライダーとV3のバイク突撃により崩壊を起こし、ガンガンジーは時空間の強制力によりニアミスのまま退場。
スカイライダーは再び救助したナオコをV先輩に預け、変身すると先輩たちにも平気でタメ口を通す事がハッキリ確認されましたが、どうやらスカイライダーには、変身と共にライダーエンドルフィンが放出されてハイになるシステムが志度博士によって組み込まれていた模様です。
これでどこまでも高くトべるぜ!!
囚われの人々が狂気の人体植物化ウィルスの実験材料に使われようとする寸前、洋はナオコの言葉をヒントにアジトへ突入。
「魔神提督、貴様の野望もこれまでだ!」
戦力を考えると、魔神提督+怪人2体vsスカイライダー&人質集団、なら直接対決で勝てそうな気がするのですが提督とタコはコングを残して撤収を選び、魔神提督、思ったよりデスクワーク派なのかもしれません。
スカイライダーとマントコングが基地の自爆に巻き込まれると、ナオコを病院に届けて戻ってきたV先輩は、提督とタコを乗せて走っていくジープを目撃。何故か自分では追わずにスカイライダーの元へ向かうとコングとの戦闘を請け負い、代わってスカイライダーがジープの行く手に立ちふさがる選手交代に展開上の意味も無ければ成り行きも無理がありすぎて、とにかく、話の組み立てが酷すぎます。
鋼鉄の大胸筋をアピールするマントコングに大苦戦するV先輩は、投げ飛ばされた勢いを逆に利用して顔面にキックを浴びせると、V3ダブル反転キックにより逆転勝利。
一方、タコギャングの擬態を打ち破ったスカイは、赤外線スコープで忍法墨隠れを見破ると、《仮面ライダー》シリーズでは珍しい印象の暗黒空間(墨の中のようですが、背後に雷鳴が轟いたりする)での戦いとなり、腕をもいで弱ったタコギャングを連続キックからのスカイキックで仕留め、溺死寸前の借りを返すのであった。
「私は……大変な研究をしてしまったようだ」
反省した南博士は研究を忘れると宣言し、志郎が連絡していた谷らが合流。そこに洋も顔を出し、谷が感謝の言葉を告げるのですが、それ以外の人たちにとっては完全に、「この人、何かしてたの……?」なのでは(笑)
「お互い命が続く限り、頑張ろう。な」
「ええ!」
日本はおまえの担当な、と後輩にエールを送った風見志郎は主題歌インストと共にバイクで去っていき、最後にキザに指を振るポーズはさすがにもう、風見志郎とは別の精神が憑依している気がしてなりません。
まあこの世界、概念S先輩とか幻影X先輩とかが既に登場しているので、もはや大抵の先輩像は許される感じになっていますが。
…………伊上勝降板・新生スカイライダー・客演大増量、で新章開幕となった『仮面ライダー(新)』ですが、作品としての方向性は完全に見失い加減となっており、「明るい空気」と「既存シリーズの雰囲気」を調節無しに放り込んだ結果、
〔狂気の研究・やかましいコメディリリーフ・吊される少女・博士への暴力・ちょくちょくギャグを挟んでくる怪人・志郎を都合良く動かす為だけに死にかけているナオコ・不死身のガンガンジー・くどすぎる父娘のドラマ・先輩の見せ場の確保〕
が混在し、それぞれが激しく自己主張を繰り返す、光の見えない闇鍋状態。
第28話を一瞬のピークにして急降下、ぐっちゃぐっちゃ度合いとしては『キカイダー01』中盤レベルになって参りましたが、次回――え、ええ?!
◆第36話「急げ一文字隼人! 樹にされる人々を救え!!」◆ (監督:山田稔 脚本:江連卓)
派手な化粧の女を追って来日した一文字隼人だが、女に渡された謎の種を手にした男性が樹木に取り込まれてしまう惨事の隙に女を見失ってしまい……「人間を植物にする狂気の実験を阻止」した次の回で「人間を植物にする悪魔の種子」が登場し、既に大事故。
制作タイミングの問題により、似たような要素を扱ったエピソードが連続してしまう事はままありますが、前後編セットでそれが発生すると、ダメージ2倍になります(笑)
一方ブランカには、同様の植物に寄生された男が飛び込んできて洋に助けを求め、植物化していく人間の特殊メイクや特撮は凝っており怪奇映像としての迫力はあるのですが、現状手の施しようがないにしても、目の前で人間が植物化していく光景をBGMにしながら、谷に落ち着いて人間関係を説明している洋、ちょっとアップデートされすぎているのでは。
洋に助けを求め、ブランカの客席で植物と化してしまった男は、洋の元クラスメイトの弟であり、大学時代のクラスメイトが一昨年から教師をやっているという事は、洋は大卒無職の25歳ぐらい……?(まあ、大学生なので年齢は確定しにくいですし、現在は大学の研究室とかに居るのかもですが)
そのクラスメイトが小学校の教師をしている小さな山村・百鬼村に向かう道中、戦闘員に追い回されるガンガンジーを目にした洋は助けに入り、二つの時空が、今クロス。
「何者だ君は?」
「私、ガンガンジー言いまんねん」
「ガンガンジー? そんなものは聞いた事ないぞ!」
どう考えてもそれは、知らない方が普通の情報だよ洋!
戦闘員を一蹴できるほどではないが、ダメージを与えられる程度の戦闘力は見せるガンガンジーは、ネオショッカーを倒し、世界平和をもたらす戦士を自称し……“無謀な正義感に溢れている関西弁の実質着ぐるみ”という、新機軸といえば新機軸のキャラですが、このブリキの鎧には、立花藤兵衛の血と焼き切れた精神の一部が封じられていたりするのかもしれません。
無関係なところで乱入とニアミスを繰り返されるのも辛いので、とりあえず洋と最低限の接触が生まれて良かったと思いたいですが、戦闘員を片付けて先へ進んだ洋は、樹木の魔女キギンガーを追ってきた一文字先輩と再会し、情報交換するとそれぞれ百鬼村へと入り込む。
ネオショッカー自然公園作戦がだいぶお気に入りだったのか、村では魔神提督がキギンガーに悪魔の種子の栽培を進めさせる一方、拳法の達人である改造人間ドラゴンキングがネオショッカー忍者部隊の訓練に励んでおり……なんだかまた、ダメそうな感じにとっ散らかって参りました。
●サポートポジションが多すぎてブランカが渋滞
●そこに客演先輩が登場するので更に渋滞
●先輩の対戦相手として怪人が2体投入されてますます渋滞
●2体投入するほどの作戦規模でもないので詰まり続ける道路
●コメディリリーフのガンガンジーが横から突っ込んできて渋滞からの衝突事故
●ゲストがやたら愛情をアピールするくどいドラマも挟まって玉突き衝突
……と、先輩客演編が始まってよりこの方、渋滞が渋滞を呼び大渋滞からの多重衝突事故が繰り返され、客演の要請が物語を加速させるどころか深刻な道路封鎖を引き起こすに至ってしまう事に。
また、先輩に割かれる尺と、怪人ダブル投入の都合により前後編にしたいが、作戦内容にそれに見合うスケール感や工夫が足りないので、1話に収めるのは苦しいが2話使うほどの内容はなく、結果として露骨な尺稼ぎや、物語としてさして重みの無い要素をくどくど描くシーンの水増しが多発して話のテンポが物凄く悪くなる、完全に悪夢のドミノ倒し。
せめて、ガンガンジーとブランカがスッキリすればまだ話が流れそうなのですが……かくなる上は、ブランカを飛び出した洋がガンガンジーと共に日本各地でネオショッカーの陰謀を砕いて回る、股旅バディ物に転換するしかないのではないか。
百鬼村に入った一文字隼人は、ぼったくり食堂で支払いを拒否して無銭飲食で逮捕されており、まあネオショッカー警察なのですが、これでまた、栄光のライダー逮捕史に輝かしい1ページが刻まれました。
小学校を訪れた洋がキギンガーの奇襲を受け、麓の街に村の危機を伝えようとした子供達が捕まると、ライダー超感覚でなんか雰囲気が良くない、と感じ取った一文字が変身して牢を破り、力の2号の面目躍如ではありますが、捕まった意味もなければ用意された留置場の扱いも雑の極みで、先輩客演が話の腰を複雑骨折させていくのが厳しい。
捕まった子供たちが、勝ち残った者だけが生き残る死の騎馬戦を強制されようとすると、戒めを解いた洋が「貴様ら人間の敵だ! 許さん!」から変身して処刑を阻止。
「倒す敵は強い方が面白い!」
スカイライダーとドラゴンキングが交錯する一方、サイクロンを走らせた2号が何故かさらわれている先生を救出し、ヌンチャク戦闘員を次々と撃破。強敵ドラゴンキングを前に並ぶダブルライダーだが、そこにガンガンジーが乱入してきてやかましいブリキの音と共に緊迫感が弾け飛び、これは……辛い……。
今度は唐突に子供たちがさらわれていくとスカイライダーはバイクで後を追うが、
ナレーション「ネオショッカーの仕掛けたダイナマイトに、スカイライダーは宙に舞った。――生か死か?」
でつづき、普通に道路を走っている最中に「ネオショッカーの仕掛けたダイナマイト」まで読み上げられてしまう酷い編集も目眩がしてきますが、V3編に続き、誰も二人のライダーと二体の怪人をまともにコントロール出来ないまま、ライダーそれぞれの出番の為に脈絡のないイベントが発生する仕様が破綻をますます広げていくところにガンガンジーが突っ込んできて場外に全て吹き飛ぶ、凄まじい出来でありました。
突き詰めれば、本人客演前後編を連続する劇作の文法を所持していない、という事になるのでしょうが、これは困った。