東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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2月半ばの読書メモ

コージーボーイズとにぎやかな妖術

●『コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎』(笛吹太郎)
 同人誌の主幹、小説家、評論家、編集者……ミステリ、中でもコージーミステリ好きの4人が集まり、お茶を飲みながらミステリ談義をかわす《コージーボーイズの集い》には時に、参加者やゲストから、思わぬ謎が持ち込まれる。消えた居酒屋、原因不明のアレルギー、壊されたロボット……謎解きも好きな4人は様々な推理を出し合うが、最後に謎を解くのは決まってカフェの店長・茶畑さんなのであった。
 〔会合・持ち込まれる謎・推理合戦・謎を解くのは決まって……〕と、作者も明言しているように、アイザック・アシモフの《黒後家蜘蛛の会》シリーズの型に倣ったシリーズ短編集で、洒落た謎解きと読み味のいい語り口で、面白かったです!
 お気に入りは、飲み過ぎて記憶を失った男がアリバイを探す「コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎」と、実の姉から喪中でないのに送られてきた喪中はがきの謎を解く「コージーボーイズ、あるいは謎の喪中はがき」。
 各編の終わりには、内容や作中で紹介した作品についての付記が記されているのですが、この語り口がまた感じが良くて、ちょっとしたミステリ紹介のコラムとしても面白かったです。

●『ヨギ ガンジーの妖術』(泡坂妻夫
 ヨガの行者にして、霊能者、奇術師、或いはペテン師?
 古今東西のトリックに精通し、飄々とした物腰ながら抜け目のない正体不明の怪人物ガンジーが、行く先々で出会う奇妙な事件を鮮やかに解き明かす連作短編集。
 霊媒、遠隔殺人、予言……など事件はいずれもなにかしらオカルトに関わりがあるがシリーズの特徴で、それを解き明かすのは、神秘主義者に思われがちだが実際は種も仕掛けも公言し、オカルトを装うトリックを見抜く事に手腕を発揮するヨギガンジー
 事件・奇妙な謎・解決、とミステリの構造は用いていますが、謎解きミステリの面白さというよりは、主人公ヨギガンジーの奇妙な道中物、としての面白さが強く、世を達観しているようで俗っぽい面があり、オカルトを積極的に悪用しないが清廉潔白なわけでもないヨギガンジーのキャラクターが魅力的。
 お気に入りは、亜愛一郎シリーズに通じるとぼけた味わいのある「王たちの恵み」、予言トリックの鮮やかな「ヨギ ガンジーの予言」、美貌の女形を巡る謎に付くオチが気持ちいい「釈尊と悪魔」。

●『にぎやかな眠り』(シャーロット・マクラウド
 早速、『コージーボーイズ……』で紹介されていた本を一つ。
 バラクラヴァ農業大学の応用土壌学で教授を務めるピーター・シャンディは、町で毎年恒例となっているクリスマス・イルミネーションが招く喧噪にほとほと嫌気が差すと、ある悪戯を仕掛けて町を脱出。クリスマスを船上の人として過ごそうとするのだが、船のトラブルにより旅行が中断を余儀なくされ嫌々ながらも帰宅すると、なんと自宅の床には隣人の死体が!
 いっけん、踏み台から足を滑らせての事故に思われたが、現場の床に転がっていたビー玉から殺人の疑いを持ったシャンディは、大学教職員の多く暮らす田舎町の閉鎖された人間関係の中で事件の真相を調べ始めるのだが……。
 大学を中心にしたアメリカの田舎町で、理知的で善良な主人公が巻き込まれた事件の真相を探る長編ミステリで、ユーモア溢れる人物造型と読み味の良さで、面白かったです。
 とにかく、次々と人物が出てきては、みんなよく喋るのですが、会話のテンポが良く、やり取りに散りばめられたユーモアも飽きさせない上で、停滞感の少ないまま物語が進行していき、起伏の付け方も巧み。
 切れ味鋭い謎解き、というタイプではありませんが、語り口の面白さで最後まで楽しい一作でした。