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ビター・スイート・ビター

仮面ライダーガヴ』感想・第22話

◆第22話「真実は甘く苦い」◆ (監督:田崎竜太 脚本:香村純子)
 「つえーじゃねぇか……だる」
 コーラガヴの振り回す剣の勢いに、イチゴゼリーを発動したヴラムはステルスによる一方的な攻撃からトドメをとどめを刺そうとするが、それを反射的にヴァレンが妨害し、その間にコーラガヴは逃走。
 「どういうつもりだ?」
 「……おまえだって、なんで……ショウマと手を組んだんじゃねぇのかよ?!」
 どうやら絆斗の誤解に気付くラキアだが、好感度が低いので説明はせずに鼻で笑い、いつかフラグの立つその日まで、絆斗には今後も地道なエンカウントの継続が求められます。
 「……おまえこそ、グラニュートだから、あいつを倒そうとしてたんじゃなかったのか? ……だる」
 「…………俺にもわかんねぇよ……っ」
 ラキアは去っていき、整理しきれない感情の濁流に絆斗が翻弄される一方、肝心のショウマはデンテのオジキの元で目を覚まし…………気絶の原因はストレスを要因とした腹のガヴ詰まり、要するに、便秘、だった。
 ……重いストレスの蓄積は話の流れや描写から納得できるとして、倒れた原因は思ったより即物的でした(笑)
 まあ、本当は赤ガヴシステムの不備なのにオジキが適当に誤魔化している可能性もありますが!
 ゴチゾウから連絡を受けたデンテが、帽子にコートで変装して意識不明な自分を洞穴まで運んだと知ったショウマ(義理が、大きな義理が出来てしまった……!)が、変な噂になっていないかをネットで確認して黒ショウマの暴れる画像と動画に辿り着くのはスムーズで、はぴぱれでは幸果もまた、同じ画像を前に考え込んでいた。
 「ウマショーが化け物で……仮面ライダー?」
 前半じっくり仕込んできた爆弾が、グロッタ姐さんの一言で盛大に弾け飛ぶと、ガミラス艦隊のごとく誘爆が誘爆を呼んでいき、果たして幸果は、ショウマを突き放してしまうのか……と少々不安もあったのですが、はぴぱれに駆け戻ってきた、絆斗が、叩き出された(笑)
 「入れんなってったのはショウマの話だ。俺じゃねぇ!」
 「ウチ的にはむしろハンティの顔見たくないし!」
 「なんでだよ?!」
 「ムカついてるから」
 幸果さんは恐らく、ショウマや絆斗ほど感情/感覚の言語化による出力が上手ではない(頭が良くない、という意味では無しに)扱いだとは思うのですが(故に対人でやらかす)、視線を下に向けつつ、「顔見たくない」から順序を踏んで出てきた言葉がこれ、だったのは妙に面白かったです(笑)
 ストレートな拒絶に狼狽した隙に絆斗は目の前で扉を完全に閉められ、
 「だってハンティなんなの? ウマショーが必死に隠してた事、勝手に人にバラすのがまずありえない!」
 これが出てくるのが、凄く香村脚本で、今回の白眉。
 普段から、情報の持つ意味や、他者との関係性における踏み込みの間合いなどを大事に作っているからこその説得力ですし、絆斗は絆斗で勢いもあったとはいえ社長を心配しての行動と理由は付けた上で、それはそれとして人として良いのか? をきっちり突いて顔面をはたいてくるのが、実に香村さん。
 「ウチは! もしウマショーが化け物だったとしても、ウチは……ウチが見てきたウマショーを信じる! ……優しくて、お菓子大好きな大食いで、ちょっとズレてて、みんなの役に立とう、幸せにしたいって……ウチが見てきたウマショーはそういう奴だから!」
 自分で見たものを信じる、は定番ながらこれもまた“ネット上に情報の氾濫する時代”を踏まえた意味が乗せられているとは思われ、約2クール分の積み重ねをしっかりと活かした幸果の言葉に、絆斗は黙って事務所の前から立ち去ると、己の心情を改めて見つめ直す。
 (そうか……俺も……あいつを信じたい、って思ってたんだな)
 基本的に色々と出来が良い絆斗が前回に続いて自分一人で“気付く”のではなく、幸果の言葉によって、曇っていた己の真実と向き合い直すきっかけを与えられるのは、この後の展開への重要な補助線ともなって、幸果社長の使い方として痛快でありました。
 今回もアジトで寝っ転がっていたラキアは、ガヴの色違いから黒いのがショウマではない事を確信しており、デンテに拾われていたショウマ・幸果の明言・ラキアの根拠、の釣瓶打ちで視聴者視点での同一人物疑惑を解消していくと、黒ショウマはいずこかの室内でピザやフライドチキンを貪るように口にしており、睡眠と食事でダメージが回復する筈と「言われた」発言に続いて、えー、なんか背後に、いかにもな書類棚が見えますね……。
 黒ショウマの犯行現場を確認して回っていたショウマは、幸果からの着信を恐る恐る受け取るが、幸果は黒ショウマを「ウマショーのそっくりさん」と断言すると、話したい事があったら聞く、と約束。
 「だからさ……怖がらないで、戻っておいでよ」
 「うん。……ありがとう」
 そしてショウマは、黒ショウマによるトラック襲撃の現場で、絆斗と再会する。
 「黙っててごめん!」
 まずはショウマが95度で頭を下げて謝罪すると、絆斗も問答無用でドスをショウマの脇腹に突き立てようとする事なく、トラック襲撃犯と同一人物でない事を認めた上で、改めて、ショウマの話を自分の耳で聞く姿勢を表明。
 「……この前は、悪かった。いきなり、殴ったりして」
 ハンティーーーーー!!
 目的化したライダーバトルの為に無駄に感じの悪いやり取りで必要以上に話をこじらせる事なく、それぞれ頭を回した上で謝るべきは謝り、殺し合いの前に話し合いでしょ、と(暴力の化身が挟まって回り道はありましたが)向き合おうとする姿勢が嬉しいですが、絆斗の18年にとってはそれでも、ショウマと向き合おうとする事それ自体が“痛みを伴うもの”ではあり、その上で、痛みを乗り越えて――或いは押し隠して――向き合う事を選ぶのが、絆斗の見せ方として気持ちよかったところ。
 この、“他者と向き合う”とは時に“痛みを伴うもの”である、という点は割と香村さんが諸作で重視している要素かと思われ、だから時にそこから逃げ出してしまう場合もある……のがヒーローフィクションとしての綺麗事を否定はせずに、そこに厚みを与えようとする作劇に繋がっているように感じます。
 ……余談に逸れますが、『ルパパト』における高尾ノエルは、「本音は他者と向き合いたいが、諸事情により“向き合わない”事に痛みを得ている(から務めて道化として振る舞っていた)」存在だったのかもしれない、と思うと、個人的に掴みにくかった事に納得すると共に(他のキャラとは一人だけ真逆の構造なので)、6年越しに少しノエルについて腑に落ちた気がしてみたり。
 ショウマは絆斗に自身の来歴を一から説明し、ショウマを信じる、と決めた上で聞くと、あまりにも酷い話なので、
 「…………最悪じゃねぇか」
 そりゃもう絆斗さんから、物凄くストレートな感想が出ます。
 「初めて人間の世界を見て……美味しくて素敵なお菓子を食べたり……いろんな優しい人たちと会ったりして……母さんが幸せに暮らしてたこの世界だけは守りたいって思った」
 母親の死と人間界への逃走、ここでショウマが幸果に限定せず「いろんな優しい人たち」と触れるのも、幸果には幸果の、絆斗には絆斗の、ショウマにはショウマの、それぞれの積み重ねの存在を感じさせていいところ。
 「それで兄貴たちと戦ってんのか」
 「俺は兄さんたちみたい人間に化けてるわけじゃなくて、生まれた時からこの姿なんだけど……」
 ショウマはパーカーの裾をめくって自らのガヴ――人間ではないものの証――を絆斗に曝し、自身のグラニュートに対する発言もまたショウマを傷つけ、追い詰めていた事に気付く絆斗だが、ショウマは何よりも自分自身の弱さが招いた嘘だった、と重ねて謝罪。
 「俺が絆斗に……嫌われたくないって思ったんだ。ごめん!」
 「……ほっんと駄目だ俺……ありえねぇ!」
 一方の絆斗は、そもそも中身が何者であろうと、一度はグミの戦士を人間の味方だと信じたのに、それさえも忘れてショウマを傷つけた己を深く反省し……どうしても「謝罪合戦」の構図になってしまうのは丁寧さ故に切れ味が鈍くなった感がありますが、ショウマと周囲の人々の間で大きなわだかまりになっていた問題が乗り越えられ、言ってみればガヴ詰まりが解消したところで、次のステージが気持ちよく流れていくのは期待したいところです(地雷は他にも、あちらこちらに仕掛けられておりますが!)。
 「悪かった……本当に御免!」
 「……絆斗」
 「これからは……おまえが人間だからじゃなくて……ショウマ、おまえを信じる」
 絆斗は、グラニュート全体へと闇雲に燃やしていた怒りをショウマとの出会いで見つめ直し……菓子工場カチコミ編から矢継ぎ早の大きな一山、会話のやり取りが長いので、自然に画面に動きをつけようとする工夫ではあったのでしょうが、腹を割って話し合う二人の姿をビル内部で描き、画面の前後でシルエットの人々を動かしたのは、個人的にはだいぶノイズでありました。
 お腹のガヴをこっそり見せようとするところでだけは効いていましたが、それ以外のところではどうも画の方に気が散ってしまい、折り返し近くでの初参戦、前回にしろ今回にしろ長い台詞と一人芝居が多い、と難しい回ではあったのでしょうが、前回冒頭のショッキングな発言を画面上に表示する演出もその後どこにも繋がりませんでしたし、前回-今回の田崎監督は「変化をつけようとして空回り」になった印象。
 「…………ありがとう。……ありがとう」
 種族の壁とすれ違いを乗り越えた二人は、黒ショウマが暴れ回る菓子工場に駆けつけ、コーラ・かりんとう・黒飴、と……黒ショウマは、黒いお菓子専門?
 「ホントに、俺、そっくり……」
 「へぇ~……俺以外にも、来てたんだ」
 未だ正体不明な黒ショウマですが、「俺以外にも」は、だいぶ意味深発言。
 ……それにしても、主演がさらっと一人二役やらされていますが、髪型もあってか黒ショウマの方はなんとなく、紅渡(『キバ』)感が強め(笑)
 「おまえ、いったいなにもんだ」
 絆斗の問いかけに対して力強く答えようとする黒ショウマだが、
 「…………なんだっけ」
 「「え?」」
 からの、指を、鳴らした(笑)
 「そうそう! 俺はビターガヴ。この世で最っ強の生物を目指すもの。……らしいぜ」
 黒ショウマ改めビターガヴは、ショウマとは逆のハンドルの握り方で黒紫のガヴを用いて「変身」し……そういえばショウマの瞳が紫色=他の兄妹のようなエージェントを生み出すとしたら紫の筈、なので、仮にビターガヴが、指をよく鳴らす人がショウマの遺伝子を培養した存在だとした場合、一種の“エージェント”だと思えば、これだけ早く青年の姿を取っている事にも、理屈が通りそうでしょうか。
 ショウマと絆斗が同時変身していた頃、ビターガヴについての情報を求めるラキアはニエルブに繋がる線として酸賀の研究室を訪れ、奥の部屋でピザパーティーの残骸をゴミ袋に詰め込んで机の下に放り込む酸賀……状況証拠はどんどん真っ黒に。
 「そっか。君ニエルブくんのこと裏切っちゃったんだっけ?」
 「……知ってたか。……誰に聞いた?」
 「……だれだったかなー」
 ニエルブとは片道通行な関係を主張する酸賀はラキアの問いをはぐらかし、キノコグラニュートに塩谷を襲うよう持ちかけたのが赤いエージェントである事から、酸賀-ニエルブの線とは別に、酸賀ーランゴの線が存在している可能性があるのですが、多くのカードが場に出ては開かれていく一方で、酸賀を巡る霧が段々と濃くなっていく事に。
 「おまえいったい何者なんだ。人間でありながら、ストマック社の味方なのか?」
 「俺は誰の味方でもないよ。ただ自分の興味あるものを、ひたすら研究してるだけ」
 …………東映マッドサイエンティストの系譜としては、素でそう思っている可能性がありすぎて困ります!!(笑)
 もしかすると現在、ゴチゾウ経由でしか連絡が取れない気がするラキアが戦線から遠く離れている間、ガヴとヴァレンはコーラガヴと死闘を繰り広げており、受け身を取らずに体を投げ出すような戦い方が、コーラガヴの化け物じみた印象を強めます。
 「やべぇな……この前より強くなってやがる」
 「わかるか? 俺もそう思う!」
 コーラガヴは舌なめずりするような仕草を見せ、自分の力を誇示するような戦い方や、力任せと見せてフェイントを入れてくる急激な学習と成長などは、「子供」を思わせる描写。
 「絆斗、どうする?!」
 「決まってる。力を合わせるしかねぇだろ!」
 ケーキガヴ&ドーナツヴァレンとなると、ドーナツをUFOのように飛ばして周囲を飛び交う足場と当たり判定にしながら連続攻撃を仕掛け、大技の撃ち合いに負けたコーラガヴは爆炎と共に消し飛ぶ(?)が、衝撃の余波で下水に転落しかけたショウマの手を絆斗が掴み……その瞬間、ショウマは失われていた一つの記憶をハッキリと思い出す。
 それは絆斗の母との出会い、そして、転落……?
 「……思い出したんだ。……絆斗。……俺…………絆斗の母さんに会った事ある」
 「……え」
 今回も動悸の激しいまま、つづく。
 記憶の欠落は後に回せば回すほど都合良くなってしまうので、(少なくともその一部を)早めに回収してきたのは良かったですし、前半の幸果社長など要所要所は面白かった一方、「無邪気な悪意が状況を引っかき回す」みたいな筋そのものが個人的にあまり好みでは無いので、ビターガヴについては引き続き不安材料。
 想像を超える面白さが生まれてきてほしいですが、次回――サブタイトルが不穏だ!