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天に太陽は一つ

仮面ライダーカブト』感想・第8話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が趣味で勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆08「豆腐の仇を拳で討つ」◆ (監督:石田秀範 脚本:米村正二
 見所は、
 「天道! なんで豆腐を買い占めたりした?!」
 最近は情緒が落ち着いてきたかと思った矢先に、またも謎の沸点を見せる加賀美新
 ZECT本家の命令によりザビーはカブトへと殴りかかり、共に階段を降りながらの打撃の攻防、さらっとやっているけど結構凄いのでは。
 「なぜ、戦わない?」
 「戦う理由が無い」
 後方ではシャドー部隊も銃口を向ける中、カブトは防御に徹してザビーの攻撃をさばき続け、殴られたら全力で殴り返してもいいのは加賀美だけ、は友情の表現……なの……か?
 「本部は君を敵とみなした」
 「おまえはその指示に従うだけか」
 「組織に属さないものに、ライダーになる資格はない!」
 立ち上がりに強調されている、“組織の正義vs個人の信念”の構図が台詞でも裏打ちされると共に、「ライダーは“公”のヒーローであるべき」という観念が矢車の口より持ち出され、“公”と“私”のヒーロー像が衝突。
 とはいえ、ここで語られる“公”は矢車の主観的なものとはいえ、“私”として戦っている天道が真実、天命に選ばれし存在ならば、実は天道こそより大きな“公”を示している(のかもしれない)、のが表面上の構図からの一ひねりとなっており、《平成ライダー》6作目におけるヒーロー像がここからどう描かれていくのかは、興味深いポイントです。
 包囲を抜けようとしたカブトが武器を狙って攻撃した際に、シャドー部隊の一人・影山が負傷すると、カブトは戦いに背を向け、ザビーも部下の治療を優先して勝負はひとまずお預け。
 現場に途中から駆けつけた加賀美は、状況を把握しきれないまま天道に批難の矛先を向け……どうも今回、井上敏樹の十八番である“個々に見えている情報の違いが生む錯綜”を(《平成ライダー》的なるものとして)取り入れたかったようなのですが、肝心の主人公である天道が割と“どこからともなく情報を掴んでいる男”なので、通してあまり効果的に機能せず。
 「奴らに言っておけ。俺に手出しをすれば、それなりの代償を払う事になるってな」
 天道は加賀美をメッセンジャーにしてバイクで走り去り、影山から報告を受けた本家のインテリ眼鏡・三島は、
 「……その名前はなるべく使わないで貰いたい」
 と言い出し……え、「みっしー」とか呼べばいいの?!
 周囲のレギュラーメンバーが濃いめの味付けなので、そろそろ負けないように焼肉のタレをたらしておこうぐらいの気配ではあるのですが、「なるべく/貰いたい」なので、どうもちょっと勢いに欠けます(笑)
 新聞で不審死の記事に目を留めた天道、これまでも地道に情報を集めていたという表現なのでしょうが、今回は上述の要素が強調されている事もあって「ZECTの隠蔽工作が間に合わなかった変死事件」はちょっと苦しい言い訳じみてしまう事に。
 妹が顔を出した途端に笑顔に変わるのが天道の良い愛嬌になっていますが、その妹は何やら雑にカバンを放り投げ……るが、すぐに天道に向けて元気よく挨拶し、笑顔の消える天道の表情の変化も思わせぶりなのですが、今回時点ではこれ以上は特に言及されず。
 ひよりにパンケーキのお礼をしたいと言い出した樹花から、チューリップについてバッサリ駄目出しを受けた天道はひよりを招いて豆腐パーティを開く事になる一方、カシラに頼み込んだ加賀美は、しばらく矢車に弟子入りする事に。
 入院中の影山(隊長の居ないところでは微妙に感じ悪そう)を見舞った矢車は、なんだか超いい人そうなオーラを出し続けるが、こんなに部下思いで強くて爽やかで料理まで上手な美男子が居るわけがないんだよ! と私の中の草加雅人が、たっくん&啓太郎&海堂と肩を組みながら激しく訴えてきます。
 果たしてどんな性癖を隠し持っているのか不安になってくる矢車は、みっしーからワームがもう一体存在していた事を指摘され、前回ラストのやり取りにおいて、カブトの言葉を言い逃れだと決めつけ、もう一体のワームの存在に気がついていなかった矢車の、完全調和の仮面に生じ始めるヒビ。
 ……個人的にはここでようやく、「もう一体のワームについてカブトとザビーの認識に食い違いが発生していた」事が腑に落ちたのですが、後編の軸の一つにするには、少々わかりにくかったかなと。
 気を取り直して影山の為に豆腐を買いに向かう矢車だが、求める豆腐は天道がパーティ用に買い占めており、またも生じる豆腐の因縁(この辺りも米村さんが、井上テイストを取り込もうとしたのでは感あり)。
 矢車のアニキの真心を台無しにするとはとんでもない奴だ、と天道による豆腐買い占めに激しく抗議する加賀美は、「あのいけすかない野郎にくれてやる豆腐なら無いな」発言に更に反発を強めると矢車の人間性を讃え…………あ、まだ、(経緯を知らない)影山の負傷について怒っている設定なのか……?
 岬から連絡が入って加賀美は影山と共にワーム対策に向かい、天道はひよりに取りなされ、ワーム被害が発生した結婚式場をサーモカメラで探し回るも空振りに終わったまま結婚式が始まるが……天の道を往く不審者が、牧師のコスプレで入り込んでいた(笑)
 「お婆ちゃんはこうも言いました。汝、天の道を往き、総てを司る、べし」
 動転する矢車と加賀美の前で天道が指摘したワームの正体――それは聖歌隊の一人であり、ほころびの入った「ハーモニー」と引っかけるのは上手いオチの付け方。
 正体を見破られたワームがステンドグラスを突き破って逃げ出すと、開いた穴から射し込んでくる光に続いて飛び込んできたカブトゼクターをキャッチする天道の図が大変格好良く、穴の向こうに東京タワーが見えるのも含めて、シンボライズを徹底。
 カブトとウデムシワームは線路上で交錯し、電車が走行中の線路での合成シーンとは別に、車両基地で撮影する事で、クロックアップにより“止まって見える電車”を表現したのは、素晴らしいアイデア
 カブトは、首の動きだけで毒液をかわしながらワームに向けてズンズン突き進むと、回避と前進の合間にキックのパワーをチャージしていき、最後は飛びかかってきたワームを振り向きざまに上段回し蹴りで叩き落とすライダーキックも大変格好良く決まって、「変身」とキャストオフを上手く省略しつつ、天道-カブトの格好良さをしっかり引き出した、非常に良いバトルでした。
 特に電車のアイデアは感動。
 ウデムシワームが青白い炎をあげて消滅すると、クロックオーバーと共にカブトの横を電車が走り過ぎていく一方、スタンドプレーで英雄気取りの高等遊民に、ワームに関して続けざまに上を行かれた矢車は、完全調和へのプライドに泥を塗られた屈辱から、拳をわなわなと震わせ、ビストロへと単身カチコミ。
 揺れ続けるカメラが、瞳に暗い炎を宿す矢車の精神状態を示し……もう少しパーフェクト優等生として天道と火花を散らすのかと思っていたのですが、思ったよりも早く仮面のヒビが広がって参りました。
 「……どうしてもやるというのか」
 「ライダーは二人もいらない。カブトは俺が倒す」
 「星がどれだけ輝いても、太陽にはかなわんぞ」
 「太陽は俺だ」
 夕陽に照らされながら天道と矢車が対峙すると、まずは両者のゼクターが空中でぶつかり合い、うちの天道の方がイケメンですー! うちの矢車は去年ZECTで一番チョコを貰った男なんですー! 天道の手作りチョコは去年の町内会で争奪戦になりましたー! 豆腐料理で負けたくせに笑っちゃうんですけどー! 肝心の仕事ができないパーフェクトなんちゃらににそんな事言われちゃってもー! 悔しかったら住民税収めてくださーい! と互角の末に弾け飛び、キャッチした二人が変身。
 ワーム戦で省略された「変身」とキャストオフは、ライダーバトルの場で用いられる趣向となり、カブトとザビーは如何にも決闘の雰囲気を出す映像で、夕陽を背にシルエットで激しくぶつかり合う。
 ビストロで話を聞いた加賀美の前で、ザビーがカブトめがけてライダースティングを放とうとしたところで、つづく。
 ……てっきり、開幕におけるゼクター同士の衝突でザビーゼクターの針が折れていたとかになりそうだと思っていたら、次回――まさかのカブト敗北?! そして、まさかまさかの加賀美変身?!
 完全調和を謳うエリートが、野生の天道総司を前に人生を狂わされ始めた感がありますが、夕陽の決闘をクライマックスに据えつつ、ヒーローフィクションとしては、おまけにならない工夫と格好良さの冴えた対ワーム戦が光ったエピソードでありました。