『仮面ライダーカブト』感想・第6話
(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が趣味で勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆06「花を咲かす男」◆ (監督:長石多可男 脚本:米村正二)
「やめろ! おまえらのかなう相手じゃない!」
止め方の面白い加賀美だが、お陰で天道のライダーバイク盗難疑惑はますます深まり、前回から加賀美くんは、わざとやっているの……?
「やはり彼がカブトという事ですか」
東は加賀美に拳銃を向け、こいつ友達なんだよね? と天道を暗に脅迫。
「そんな事しても無駄だ。あいつは……」
「その通り。友達じゃない。でもま、そんなに欲しけりゃくれてやるよ」
あくまでも「友達」は否定する天道だが、ベルトを素直にZECTに渡すと、加賀美に東京タワー行きを頼んで連れ去られていき……国家権力とつるんでいる秘密組織による民間人の拉致が描かれて、早くもZECTがだいぶ真っ黒。
同時に、ヒーローと後援組織の一体感が強かったお仕事ライダーである前作『響鬼』に対して、フリー活動しているヒーローの足を組織が引っ張り、敵の敵が必ずしも味方とは言い切れない構図を早くから明確に打ち出して、前作と強く差別化。
「君はいい仕事をしてくれた。ご協力、感謝するよ坊や」
それはそれとして、加賀美も一緒に拘束されるのでは……と思ったら、悪い笑みを浮かべる東からは完全な小者扱いを受けて捨て置かれると、田所のカシラに直談判を行い…………君、東京タワーは…………?
前回のビストロ店長の言葉が脳内に回想シーンとして甦ります。
「……あの子に頼んだあたしが馬鹿だった」
今回も加賀美が冒頭からやらかし2連発を決める一方、第6話にして女の子との約束を守れなかった男となってしまった天道総司は、念入りに拘束されながら岬先輩の尋問を受けていた。
……相変わらず、やたらがらんどうな会議室が気になりますが、背後で常にZECT戦闘員が銃口を向けている中でも平然としている姿により、天道の超人的な精神力を強調するのは上手い見せ方。
「カブトの正体は貴方なの?」
「愚問だな。太陽に向かって「あなたは太陽ですか」と聞くか?」
「なぜあなたがライダーベルトを持っているの?」
「それも愚問だな。太陽に向かって「なぜ輝く」と聞くか?」
天道、のらりくらりと言質を取られないようにかわしているようでもあり、素でこうなようでもあり、基本的に「頭の良い」キャラとして描かれているので、前者を意識しつつ天道風に出力するとこうなるといった感じですが、演じる水嶋ヒロさんもだいぶ天道の波長を掴んできた感があり、第6話時点でここまで“天の下で一番格好いい(と言い聞かせている?)男”を演じきっているのは、会心のキャストであったなと。
放映当時、作品は数話しか見ていなかったものの、天道については、とんでもないルックスの人が出てきたな……と思ったものですが、今見ても凄まじい二枚目ぶり。
……シリーズ史としてはこの翌年、別ベクトルで更なる化け物――佐藤健――を引き当てるのも恐ろしいですが。
加賀美は完全に日が落ちてから天道の言葉を思い出して東京タワーへと急ぎ、詳しい事情は伝えられていなかったにしても、視聴者目線からの男の下がり具合が随分ですが、タワーの前で倒れていたひよりは幸い、警備員に助けられていて一安心。
ここで描かれている雑踏の「無関心」は、瓦礫の下で救援を待っていた際の心情とシンクロしていそうですが、“そこに差し伸べられた光”が何かしらあって、物語としていずれ触れられそうなのも含めて、派手さは無いが今後に興味を引くひよりへのスポットとなり、長石監督の巧さの出る見せ方でした。
一夜が明けると、全く堪えた様子の無い天道は妹に電話をかけさせろと要求。ちょうど天道邸を訪れたひよりにも言葉をかけるが……見所は
「俺は側に居る。そして、世界に一つだけのチューリップをおまえだけにプレゼントする」
「もういい! 嘘つきは嫌いだ!」
口説き文句の途中に電話を叩き切られ、さすがにちょっと目が泳ぐ天道総司。
天道に怒りはぶつけたひよりだが、頼みに応じて樹花の為にホットケーキは作り、着々と全方位ほだし系最強キャラの座に近づいていく樹花。
天道は岬に頼んだ出前のカツ丼を頬張り、基本的に気が短い岬さんは天道のペースに乗せられ、天道を探す加賀美は田所のカシラから岬の居場所を聞き出すとチーム東のアジトへ単身カチコミを仕掛け、物凄い暴走特急ぶり(笑)
天道は好き放題やっているようでいて自身の能力でどこまで出来るかの目算も冷静に立てている節がありますが、加賀美は完全に出たとこ勝負で「気持ちで勝てるなら、スペシャルポリスなんていらないですよね」を言われる側であり、ある意味、天道よりヤバい奴の座を築きつつあります。
これで加賀美が主人公として行動を肯定されると物語に破綻を招きがちな要因になるので、天道が持っていく構図にする事で許される余地を作っている、ともいえそうですが。
岬さんが尋問係として役立たず(反論できない……!)の烙印を押される中、幼虫ワームがアジトを強襲。ZECTの内部情報を掠め取る気満々だった天道は、混乱の隙を突いて監視の戦闘員を蹴り倒すと、加賀美とバッタリ再会。
襲撃を指揮するタコっぽいワームの狙いはZECT本部に近づく事であり、言行があくどすぎて長生きしそうになかった東は、ざっくり死体となってタコワームに擬態されて序盤にZECTの暗部を見せつけるキャラクターとしての役割を全うすると、天道の援護を受けた岬がライダーベルトを奪い返して走行中の車から脱出する事で見せ場を確保。
「あなたは……」
「……借りは返す。カツ丼分の借りはな」
一応、ヘルメットで顔を隠した天道は岬からベルトを受け取り、天道のマイペースぶりを示す軽いギャグ要素とばかり思われたカツ丼が、ZECTを助ける建前となったのは、上手い転がし方でした。
「お婆ちゃんが言ってたの。側に居ない時は、もーっと側に居てくれるって」
天道邸では樹花が、物理的に側に居ない時はむしろ心が近くにある、とひよりに伝えて、前回の天道がひよりにかけた「ひよりの声は、ちゃんと届いてる筈だ」の言葉に接続。
同時に、第4話における「俺を消したら、俺の中の亮の記憶も消えてしまうんだよ」に対するカウンターとして“死者との関係性”が描かれており、これが一つ、作品の軸になっていくのかもしれません。
「やはり、君がカブトだったんですね」
「……太陽の輝きを知るがいい。――変身!」
幼虫ワームを蹴散らしたカブトは、キャストオフからクロックアップし、タコワームとタグボート上での戦闘に突入。軽く当たってライダーキックで撃破し、ZECTの動向が主題だった事もあって、ワームに関してはだいぶざっくりとした扱いとなりました。
クロックアップ中の画面処理をどうするのかは、バラエティ性も考えつつ色々と試行錯誤している感じですが、前回-今回における“止まった光”をイメージしているのか全体を白く光らせるのは、画面の視認性が悪いな……が正直。
それはそれとして、ボートに乗ったまま悠然と立つカブトの姿を、壮大なBGMで彩る今作の路線には独特の面白さがあり、岸からそれを見つめる岬は、カブト=天道総司を本部には報告しないと宣言。
割とさっくり方針転換しましたが、天道との接触が、一種の神秘体験になった気配はあります(笑) ……真面目な話としてはまあ、本家がだいぶ駄目なのでは? と思うところはあったのでしょうが。
ひたすらボートで流されていくカブトは夕陽を背に決めポーズを取り、ライダーは横顔が命。
一方、天道邸を辞去したひよりの表情と足取りは重く……
「側に居ない時は、もっと側に…………でも、ボクの側には、誰もいない」
既に両親は亡く、他者との付き合いを苦手とし、深い孤独の中にあるひよりだったが、自転車の前籠に入っていた紙片を目にして開くと、書かれていたのは……天。
……「天」なの天道?!
もっと他に書くべき言葉があるのでは?! と思ったのですが(達筆な筆文字ではなく、割とざっくりとマジックで書いた感じはちょっと面白い)、その言葉に導かれるようにひよりが顔を上げると、ライトアップされた東京タワーにひよりの絵が浮かび上がって「世界に一つだけのチューリップ」の約束は果たされ、意味は! 全くわかりませんが! BGMが妙にいい感じで騙されそうになります(笑)
今作のこの、状況に対してやたらめったらスケール感の大きいBGM路線は、割と癖になりそうではあり。
……後、考えてみると「天」とは、「常におまえの側に居るもの」ではあるのかもなと。
ひよりが劇中初な気がする笑顔を浮かべているのでまあ良いか、という空気になり、女優さんはなるべく綺麗に(可愛く)撮ろう派の長石監督の担当がはまった、ひより回となりました。
「カブトを見失いました。少々手強い人物のようです」
「やはり、象、だろうね……動物の中で最も愛情深いのは。だが……」
パイロット版のフクロウに続き、加賀美父は動物例え話おじさんとしてキャラ付けされ、遠回しに不穏なプレッシャーをかけられるインテリ眼鏡の次の手として姿を見せるのは、新たなライダー? で、つづく。
次回いよいよ、新ライダーが登場するようですが、立ち上がりここまで、
・言行はぶっ飛んでいるがインパクト勝負だけではなく好感度への配慮がしっかり見える天道総司
・熱血暴走お馬鹿で割と酷い目にも遭うが、自業自得が多いのも含めて、なんだかんだエピソードの中でプラマイの帳尻が合う加賀美新
の二人を軸にして、超絶格好いいヒーロー・不気味な怪物・胡散臭い秘密組織、を揃えた上で、天に輝くものとしての“太陽”と、天に向かって突き立つものとしての“東京タワー”を、シンボルとして使い倒す事で演出ラインの統一も図られ、とにかく、どういうヒーローを描きたいのか、が強烈かつわかりやすく打ち出されて、(2話ずつ視聴もありますが)作品世界に入っていきやすい内容でした。
特に、どんな作品も立ち上がりは揺れがちな演出ラインに、“象徴”をハッキリ決める事で一定の統一感を持たせたのは、インパクトの強いヒーロー像だけに効果的な手段となりました。
ライダーバトル要素(得意なわけではない)が加わってきてからどうなのか、となりそうですが、次回――新たなる二枚目、登場。