『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第36-38話(※駆け足)
◆バクアゲ36「夢へと走る道」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:冨岡淳広)
舞台女優の夢を諦め、引っ越しと就職をする事になった未来の友人・野木秋は、バイト中に未来から預かったブンブンチェンジャーを出来心からつい返却せずに持ち帰ってしまうが……当然と言えば当然ですが、位置情報、簡単に掴めた(笑)
未来からの着信を故意に無視する秋、危うい判断をする際の心理描写として、車のテールランプや踏切の明滅を用いる演出はなんとなく、『特捜戦隊デカレンジャー』Episode.37「ハードボイルド・ライセンス」(監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久)を思い出したところ。
一方、始末屋コンビと調達屋はISAに呼び出されて常槍と対面し、ハシリヤンに関する情報提供を求められていた。
「内部情報は、ブンドリオに聞くべきではないかな?」
「今回欲しい情報は、ハシリヤンの目的です。ギャーソリンを集めて何をしようとしているのか。その実態です」
……え、今、ここで……?!
「へぇー…………安かねぇがな、このネタは」
……あ、知ってるんだ。
物語の軸になりうる要素について曖昧にぼかし続けた末、なんの面白みも発生しないタイミングとシチュエーションであっさり説明を入れる手法はもはやアートの領域に達している今作ですが、散々引っ張った末に、
・今頃になって関係者に直接聞くISA
・それに素直に応じ、聞かれたら答える始末屋
のダブルパンチがおまけについて、頭がクラクラしてきます。
スタッフにとっては、特に重要な要素ではなく適当に濁しておいて話の先行きが決まったら正体を確定するもの、ぐらいの扱いだったのかもしれませんが、実態としてはこれまで長らく「物語の謎」扱いだったものの中身に触れるならば、それ相応の重みを持たせるのが受け手に対する“筋”というものであり、それを「ヒーローが全く能動的に関わらない場面」で「メインキャラの一部は前から知っていた」で片付けてしまう今作、そこに面白さが生まれないのみならず、受け手に対する不誠実さを感じてならないのが、作品として残念でなりません。
「俺が聞いた話じゃ、ギャーソリンてのはボスのワルイド・スピンドーのエネルギー源なんだ」
「悲鳴を取り込めば取り込むほど、スピンドーは強くなる、永遠に生きられる、と言われている」
……一応、二人とも伝聞情報なので後でひっくり返す可能性はありますが、「今回欲しい情報」は明らかに「内部情報」なので、どう考えてもブンブンを呼び出すべきでしたよね……?
玄蕃経由(?)で射士郎も面会のやり取りを耳に入れる中、出世を諦めない三下トリオが冷蔵庫グルマーと掃除機グルマーの二面作戦でギャーソリンを収集し、冷蔵庫グルマーの前に現れたのは、チェンジャーを身につけた秋。
「ブンブンチェンジ!」
……変身、できなかった。
これが20年前なら秋は海老反りで吹っ飛んでアスファルトに叩きつけられており、35年前なら全身に電流が走って爆発が起こるところでしたが、ブンブンチェンジャーは、現代基準のコンプライアンスに合致したセキュリティで運用されています!
「……秋」
現場に辿り着いた未来と大也の前で、困惑する秋は冷蔵庫グルマーの攻撃を受けそうになるが、一瞬の紫電がそれを救出。
「おまえら、見てるだけなんて人が悪いな」
……よりによって先斗に! 「カオスな事になってんな」ではない、正論で諭された!!
「秋……なんであんな危ない事したの?」
ひとまず秋と一緒に退避した未来が、盗んだチェンジャーで走り出そうとしたのを責めるのではなく、まず相手の心配したのは、らしくて良かったところ。
「……私だって主役になりたかったの」
「主役?」
秋が未来に対するコンプレックスを明かすと、未来は未来で夢に真っ直ぐな秋に憧れていた事を語り、女の友情とすれ違いが解決すると、チェンジャーの安全装置について説明した未来は、ブンブンチェンジ。
主題歌と共にチャンピオンしたブンピンクは、ポリス分身の術を用いて2体のクルマ獣を相手に大暴れを見せ、チャンピオンが発動すると、邪魔なので画面から消えて無くなる紫、あまりにも可哀想。
2体同時に巨大化したのでVDロボの出番があるのかと思いきや、巨大クルマ獣は白物家電グルマーに暴走大合体するとチャンピオンバーストでさっくり消し飛び、本当に、戦闘途中でどこに消えたの紫。
追加戦士がスーパー化の類から外されて後半に居場所を見失うパターンは今作以外でも割とありますが、そこに見事はまってしまった紫は、果たして一矢報いる事は出来るのか(キャラの安定しなさは困ったものですが、紫電アクションは好き)。
今は回り道をしても諦めずに夢を追い続ける事を宣言した秋が新たな旅立ちの日を迎える一方、宇宙のどこかでは監獄星が巨大な車に変形し、ワルイド・スピンドーが地球を目指して旅立って、つづく。
如何にも最終章を前のキャラ回一巡のターンながら、今作にしては珍しく冨岡さんの筆となり、メンバー「個人の活動」が描かれ、トラブルが起きたところで「仲間たち」がちょっとずつ手を貸し、ヒーローの行動によってゲストに「変化」がもたらされる……シリーズのセオリーに則りつつ“『ブンブン』らしい味付け”への意識が窺えて、冨岡さんの目指していた理想の『ブンブンジャー』(単発回)はこれだったのかな、といった内容。
ゲストについては「変身」ならずも「変化」を描き、忘れそうになっていた「運転屋」を持ち出すといった目配りも悪くは無かったのですが、シリーズとしてはこのぐらいの出来(60点ぐらい)が下限の基準で見たかったところではあり。
また、後半に入って未来が連呼する「自分のハンドル」は、大也の常套句であって未来自身のものではない“借り物の言葉”なので、「個」を強調しようとする思惑とは裏腹に、実態は「自分のハンドル」教団の布教活動になっているのは、なんとも皮肉でありました。
◆バクアゲ37「二人のスパイ」◆ (監督:葉山康一郎 脚本:冨岡淳広)
大也と射士郎が互いに武器を取ってブンブンガレージ内部で激しくぶつかり合い、何故、こうなったかといえば……
常槍の動きについて大也に忠告した射士郎が、かつて共に仕事をした女スパイ・ステアにまんまとふん捕まって、念入りな緊縛から偽物を作られた為であった。
カメラグルマーの能力によって生み出されたフェイク射士郎がブンブンガレージに潜り込む一方、カメラグルマーは陽動の為に街で暴れ出し、カメラグルマーが写真を撮って現像すると、酷い写真の出来上がりに悲鳴があがってギャーソリンが集まる……のが、毎度ながら、凄く、雑。
前回の問題とも関わりますが、ハシリヤンの大目標が不明なまま進行し、小目標として集めているギャーソリンについても曖昧な存在と扱いが続き、そこに焦点が合わない状況が常態化すればギャーソリン集めの描写そのものが雑になっていくのは、ある種当然の帰結であり、《スーパー戦隊》の作劇として軸になりうる要素に煙幕を張り続けた結果として、物語途中から“怪人の面白さ”を放り投げてしまったのは、つくづく残念。
話作りを楽にしよう楽にしようとした末の、哀しい負の連鎖でありました。
「シャーシローの思いは目を見ればわかる」
フェイク射士郎を一発で見破っていた大也は陽動に乗ったと見せかけて罠を仕掛け、ガレージに居残った偽物の仕掛けたロジックボムには射士郎が準備していたカウンタープログラムが起動し、これが35年前だったら、壁から出てきたレーザーに偽物が灼かれるところでしたが、ブンブンジャーは、現代基準のコンプライアンスに合致したセキュリティで活動しています!
大也と偽射士郎が激突してアバンに繋がる一方、本物射士郎も拘束を脱してステアとぶつかり合い、力の入った二つの生身バトルを同時進行する趣向。
「どうかしてるわ。あれは危険人物よ」
「……だからこそ、共に走る価値がある」
お互いを強く信頼し合う大也と射士郎は、敵の攪乱に小揺るぎもせずに勝利を収め、射士郎格好いい話&目と目で通じ合う大也と射士郎の関係性の掘り下げなのですが、どう考えても、射士郎がそうやって甘やかし続けた結果が今の大也なので、このチームに必要なのは、「口にしないとわからない事もあるんだよ!」と大也の後頭部に飛び蹴りを入れてくれる人材な気はしてなりません(そしてますます、紫説得の際だけやたら能弁だったのが浮く事に)。
「やはり、俺の惚れたものに失敗はないな」
「爆上げだろ?」
「……ズルいんだよ、シャーシローは」
射士郎が復帰すると赤青コンビで偽ブンブンジャー&カメラグルマーは撃破され、物語のスタート以前から完成している“二人だけの世界”にそれはそれで格好良さはあり、それを描いておきたかったのもわかりはするものの、今作の場合、その外側での“変わっていく”部分の描写が足りていないので、射士郎が関わると急に口数が増える大也、がどうにも悪目立ちします……。
そして、今回もフェイク射士郎に橙はうっすら気付いていたのに、桃黒は気付いていなかった風味な情報格差社会。
ステアがISAに処理された事が仄めかされるのに加え、少年大也の悔恨から今への原動力となった児童虐待(と思われる事件)を見過ごした過去に触れたり、拳銃を撃ちまくる女スパイが出てくるなど、社会の暗部や“人間の悪”が押し出される一方、“怪人の悪”はギャグ扱いなバランスは個人的にだいぶ首をひねるところで、玄蕃に至ってはハシリヤン以外の“敵”の存在を明言しているのですが、少なくとも未来と阿久瀬にとっては想像の埒外の世界観では無いかと思われ……今回はちゃんと事態の現状と背景を説明するんですよね?!
◆バクアゲ38「三下の誓い」◆ (監督:葉山康一郎 脚本:樋口達人)
数年前――運び屋としてのアイデンティティに悩むヤルカーと、愛車をレッカーされたデコトラと、全財産をすられたイターシャは、落ちこぼれ同士でチームを組み、ワルの道の天辺を目指す事を誓ったのであった。
現在――スピンドー到着を控えてアジトの掃除に忙しい三下トリオの元に現れたのは、モヒカンにサングラスを付けたウェイウェイヤルカー。
「走る為に生まれてきた、惑星ヤルカーの疾走生命体。それが僕たち、ヤルカー族」
三下ヤルカーをエリート街道にスカウトしにきたエリートヤルカーは、エリートイグニッションでギター兄弟を生み出すと、そのかき鳴らす爆音で日本全国からギャーソリンを収集し、これまでのどの幹部よりも、有能だった。
ブンブンジャーはギター兄弟に戦いを挑むと、マリンの水で音を防ぐ機転を見せ、カスタマイズによってブンブンジャーが怪人の特殊能力に対応できるようになったのは、最近の良いところ。
デコトラとイターシャは、ヤルカーをエリート街道に送り出す為にサンシーター解散を宣言するが、空気を読まない紫が突っ込んでくるとブンブンキラーロボを起動し、対戦相手としてVDロボの出番を確保。
ウェイウェイヤルカーはBキラーロボに乗り込んで戦いをサポートするが、形勢不利とみるや泥船からそそくさと逃げだし、胡散臭いコンサルタント風味のウェイウェイヤルカーは、単発のアクセントしては悪くないキャラ付けでした(ディスレースと被り気味ですが……同じビジネススクールで学んだのかもしれません)。
一方、ギター兄弟を蹴散らすブンブンジャーの前に新たなハシリヤンが現れると、腕の一振りでギター兄弟を粉砕。
「リスクは……避けねば。耳障りな音で、機嫌を損ねられても困るのでな」
それこそ、ハシリヤン一家の大番頭にしてスピンドーの右腕といわれる大幹部グランツ・リスクであり、マッドレックスの色違いの兄みたいな顔に、マタドール×英国紳士、といった風味のデザインで、装備品がステッキを模した傘、はお洒落。
ブンブンの声を確認したリスクが底知れぬ威圧感を残してあっさり姿を消した頃、ヤルカーはエリート街道目指してハイウェイ空間を走りながら三下な日々を思いだし、デコトラとイターシャは、なんか死にかけていた。
まあどうせ、「お疲れ三下~」で脱出できるので切迫感は皆無なのですが、VDロボに滅多打ちにされながらも『ドラえもん』の有名エピソードのパロディ(としか思えない)で踏ん張ると抵抗を見せ、パロディとはいってもここまで来ると「古典の引用」みたいなものではありますが、一応のレギュラー悪役に3クール目の終わりにスポットを当てて、行き着くところがパロディの材料でしかない事には、一抹の虚しさが漂います。
重ねて三下トリオへの個人的な好感度がゼロを割っているので、デコトラとイターシャの奮戦に情感たっぷり尺を採られても心の針がピクリとも動かないのですが、ビュンビュンアローで即死寸前、一緒に走ると誓った仲間を見捨てられない、とヤルカーが舞い戻ってくると、Bキラーロボは大宇宙暴走魂がヒートアップ。
その気迫にたじろぐVDロボと紫だが、ウェイウェイヤルカーが飛び去ろうとしたハイウェイ空間から急にスピードルが顔を出すと、知り合いだったビュンディーの頼みで即席炎神合体し……玩具の、宣伝要素……?
ビュンビュンスピードロボはBキラーロボを粉砕し、増援来るまで気迫に呑まれ加減だった紫が、気合いで実力差は埋まらない、と格好つけると、Bキラーロボは大爆発。
内部で改めて誓いのスクラムを組んでいた三下トリオは、「「「お疲れ三下~」」」で脱出し、個人的にはこの、「メタ的な脱出手段について本人たちが半ば理解している」ので、その場でその場で命懸けみたいなポーズそのものが嘘、というのも三下トリオの扱いの好きになれないところ。
脱出失敗してスクラム組んだまま爆死した方が、よほど面白かったのでは?? と思ってしまうところであります。
「スピンドー様、ご所望の星は、ここに!」
スピンドーの先触れとして地球に降り立ったリスクは、肩の骨(……牛?)と何やら会話を交わし、ハシリヤン幹部が寄生生物付きな事には、意味が出るのやら出ないのやら(これは別に、出なくてもいいのですが)。
次回――ああそうか、スピンドー、何か既視感あるなと思っていたのですが……マイケル・ジャクソンか!!