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ラーゲ9キャストオフ

仮面ライダーガヴ』感想・第17話

◆第17話「カラメル触手は幸福味」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:金子香織里/香村純子)
 ショウマと幸果は町内会の新春もちつき大会に参加し……そういえばここまで、和菓子で出産した覚えがありませんが、お汁粉はお菓子に入るのでしょうか?
 ダンゴフォームぐらいならあり得そうな気はする中、顔見知りの高校生・タケシが行方不明と知って幸果が探し回る一方、真っ赤な鳥のグラニュートが、エージェントに集めたプレスを渡していた。
 クレジットによるとコードネームは「チョール」との事で……今後、鳥型のグラニュートは出さない宣言?(笑)
 「あのバイトくん、結構数集めてるね。てことは、そろそろ赤ガヴ達に気付かれるかもねぇ。……いよいよ僕の発明の出番かな」
 ニエルブがほくそ笑む中、タケシ少年について絆斗に相談したショウマは、絆斗が現在追っている、裁判所や映画館での大量失踪事件について知り、グラニュートの感性からはともかく、あれだけまとめて行方不明者を出していたら、それは当然ニュースにもなる、のは世界観の手堅い押さえ方。
 「こんなもん、後どんだけ集めりゃいいんだよ……」
 一時的に閉じられた空間を利用しての大量プレス集めを繰り返すラーゲがぼやき、プレス集めとその報酬についての興味の薄さを重ねて示すと、そこに姿を見せるニエルブ。
 「君――もう一つ、秘密のアルバイトしない?」
 「……秘密?」
 「そう。僕と君だけの――秘密」
 プレスを手にしていた時からここまでずっと、帽子のツバで隠されていたラーゲの視線が映し出される事によって、心の動きを示すのが効果的な演出で、ニエルブの言葉に興味を惹かれたラーゲは、恐らくは自らも、一つの賭けに出る。
 「……それは……ランゴ様だけに忠実に仕えるのと、どっちが得なんです?」
 「……フッ。悪い目しちゃって。それが君の本性か。……いいね。気に入った。僕の前ではその君で居てよ」
 ラーゲは気弱で上に忠実なアルバイトの仮面を脱ぎ捨て、悪役サイドとはいっても食わせ物が一方的に周囲を騙しているだけなのも面白くならないわけで、ラーゲが奥は残しながらも本性らしきものの一端(これもまた、真実とは限らないわけですが)を見せると共に、それによってラーゲとニエルブの間に固有の関係性が生まれるのが、手堅くも鮮やか。
 「…………じゃ、だるいんで、遠慮無く」
 早速ソファにだらりと寝そべるラーゲの態度をなんら気にする事なく、ニエルブはラーゲに、ハンターを倒すハンターになってほしい、と持ちかける。
 「はぁ、だりぃ……随分と面倒な仕事じゃねぇか?」
 「その分、報酬は弾むよ。闇菓子でも……他の望みでも」
 ラーゲが再び視線を動かすと、悪い微笑を浮かべたニエルブは交渉成立を告げて箱の中からメタリックで色鮮やかなニエルブドライバーを取り出し……商業的都合といえばそれまでですが、ニエルブ、意外と派手好み(笑)
 帽子で表情を隠すのはごく定番の演出でありますが、その帽子がクラゲの傘の見立てとなっている事により、変身ヒーローものならではの味を出しているのが、面白い場面でありました。
 ショウマ・絆斗・幸果の元には行方不明者を巡る複数の情報が集まってきており、その共通項は、「親切で優しい」……?
 女の姿となった鳥類グラニュートは、故意に風に飛ばしたスカーフを拾ってくれた人間が、拾えて嬉しい、と感じた瞬間を狙ってプレスしており、たまたま標的とされる幸果だが、すんでのところでショウマが駆けつける。
 邪魔が入ったとみて、そそくさと例を言って女が立ち去ると、その背中へ向けたショウマの視線の鋭さが、大変格好いい。
 「どうした?」
 幸果には誤魔化しつつ、ショウマは眷属ライダー隊を放って女を追わせるが、そこに合流した絆斗は、ショウマの対応の手ぬるさは、ショウマ自身が何かグラニュートと関係しているからではないか、という拭い去る事が出来ない。
 「……駄目だ、つい疑っちまう。職業かもな。でも…………あん時のショウマ……どうにも引っかかんだよな」」
 年末年始を挟んで一週空いたという事でか、今回はちょくちょく回想を挟みながら進行し、前回のショウマの態度を思い出す絆斗ですが、いざとなったら四の五の言っていられないのは大前提の上で、人前でみだりに変身していいものかの摺り合わせをした覚えがないので、今作にしては珍しく、階段を一つ飛ばしてしまった印象。
 この場面に関してはショウマに対する疑念もあって、絆斗の方が少々前のめりになっている、という事ではあるのでしょうが(そもそも相手も、グラニュート確定前ですし)。
 「絆斗が疑うのも無理ないよな……実際俺がグラニュートって事も、ストマック家の一員て事も黙ってるわけだし」
 ショウマはショウマで、幸果や絆斗に対する隠し事が日に日に重くなっていき……関係性の深まりと共に生じる表裏一体のプラスマイナスについてしっかりと描いていってくれるのが、安心するところです(……作品ごとに事情はあるとはいえ、同期『ブンブン』は、そういった罪悪感や葛藤の所持についてミリも描かなかったどころか、問題が表面化した後に、よりにもよって主人公ポジションが「それになんの痛痒も感じていない」みたいな態度だったのが本当に辛い)。
 幸果をプレスし損ねたスカーフの女は、タイミング良く姿を見せたラーゲを標的とし……そういえば、人間に偽装している以上、起こりえる事故でありますが、それもあってアルバイト間の縄張りが厳密に定められているのでありましょうか。
 ラーゲは、だるいだるい言っている割には無駄に壁蹴りジャンプを決めてスカーフを手にすると、ベロを伸ばしてきた女を弾き飛ばして地面に転がし、どうやら、ニエルブから鳥類グラニュートについての話を聞いてきた模様。
 「ピリピリすんなよ…………一応、あんたの味方だからさ」
 ラーゲに何かを吹き込まれたらしきスカーフの女は、自らショウマと絆斗の前に姿を現すと鳥類グラニュートの正体を現し、ショウマと絆斗も変身して戦闘開始。
 ヴァレンがマサカリスローすると、それを足で拾い上げたガヴがヴァレンにパスして追撃を叩き込むのは格好いい連携となるが、鳥類は翼を活かして空へ舞い上がると極楽鳥ミサイルを放ち、対抗する為にガヴの足下にマサカリを設置してジェスチャー混じりの指示を出すヴァレン。
 「ガヴ! それを、あれしろ! こう、ほら」
 「……は? え、え……?」
 「だから!」
 「ああ!」
 伝わった!
 オレンジグミキックを利用して、テコの要領で空高くジャンプしたヴァレンが鳥をふん捕まえ、天井があって大して高く飛んでいたわけでもないので、そんな事しなくても良かったような気は凄くしますが、事前のやり取りが大変面白かったのでOK(笑)
 さあ! おまえもキャンプファイヤーの燃料にしてやる! と丸太を組み上げ焼き鳥3秒前、場に現れた黒い影が平然と間に入ってくると、ガヴとヴァレンは慌てて必殺技を大きく逸らし、鳥類はその間に丸太から脱出。
 「んー……おまえらが、グラニュートハンター、ってやつ?」
 前々回ぐらいからランゴ兄さんが当たり前のように言い出しているのですが、そんな自称をした覚えは、一つも無いよ兄さん!
 戦いに介入したラーゲが黒い帽子とコートを脱ぎ捨てると、染めた頭髪(いわゆるプリン頭……?)と、黒い上下に青いシャツを合わせ、白黒のダウンベストという衣装が、そこはかとなくクラゲ感を出しながら役者さんのスタイルの良さを引き立ててて、滅茶苦茶格好いい。
 ……そして、ライダーの姿は次回予告で見せていた事を考えると、今回の、本編隠し球はこちらだった事になっているのですが!(笑)
 「はぁ……じゃ、やるか」
 グラニュートの正体を曝したラーゲは、あくまでも気怠げにニエルブドライバーを装着し、プリンの使い魔(スライムのイメージが入っているのでしょうが、やや崩れて人相悪いのが良い感じ(笑))を装填。ひっくり返したプリンのカップがドーム状にラーゲの周囲を追おうと、カップ内部に満たされていく黄色い液体の中でラーゲはプリンの力をその身に宿し、寒色系から一転、ビックリするド派手な色彩となりましたが、プリンベストのでこぼこが歴代ライダーのボディアーマーを踏襲し、飛んできたスプーンが両耳に突き刺さって、アンテナ(ないし角)要素になるのは、成る程。
 「変身した!」
 「あいつも、仮面ライダー?!」
 今作世界では、SNS上の目撃情報から名付けられた「仮面ライダー」ですが、3人目については、眷属使って変身したら「仮面ライダー」という事でいいのでは、とヴァレンが認定しました。
 抗議のお便りは、辛木田絆斗のSNSまで!
 「まさか……俺達と一緒に戦ってくれる?!」
 「馬鹿! グラニュートだぞ。そんなわけねぇだろ」
 「……そう。……んなわけない」
 どこまでも気怠げな態度は崩さぬままに、プリンのライダーはガヴとヴァレンに襲いかかり、デビュー戦最初の一撃が電撃触手パンチだったのは、クラゲの特徴も出してくれて大変良かったです。
 「俺の相手はおまえらだ」
 戦意を示したプリンは、潰し合いはわかりやすくて最高だな! と振るわれたヴァレンのマサカリをあっさり防ぐと、爆発的な威力の連続キックを叩き込み、膝スライディングからのゴールパフォーマンス、ならぬヤンキームーヴで挑発。昔取った杵柄を発揮する間もなくヴァレンがアスファルトに顔面を叩きつけられると、背後からガヴの剣がプリンを捉えるが、その勢いを途中で逸らしたプリンは、ヴァレンの弾丸を回避しながらガヴの力を逆に利用して吹き飛ばし、一瞬の攻防でその圧倒的な強さを見せつける。
 「こいつ……桁違いにつえぇ」
 ある意味、人間とグラニュートの科学が融合した悪魔の最高傑作といえるのかもしれない仮面ライダープリン、果たしてガヴとヴァレンに打つ手はあるのか?! で、つづく。
 予告の映像が実質本編クライマックスで、あまり情報も詰め込まずに、プリン登場までの繋ぎ、といったエピソードでしたが、プリン登場で切らずに、戦闘シーンを一つ入れてくれたのは大変良かったです。
 一方この手の、とんでもない強敵が現れた! は、どんな作品でもバランスを破壊しない為の扱いが難しくなりがちですが、どう転がしてくるのか、スタッフの手腕に期待。
 後、個人的に今回、ジープからカメラが離れたのが良かったと思っていて、ラーゲにスポットライトが向いている内に、地下に潜って少し溜めてから、驚愕の再登場とかしてくれると面白くなりそうかなと。
 現在、場に出ている札でジープを拾ってくれそうなのは幸果かデンテぐらいですが(酸賀は普通に人間だった場合、速攻で殺されそう)……どちらも早晩、ショウマとの接触が不可避になってしまうので、新しい札と共に再登場する可能性もありそうながら、個人的に楽しいのは、ショウマに黙ってデンテが匿った末に再改造でしょうか。
 「そう慌てるではない、ジープ。今のおまえさんでは、あやつには勝てん。……じゃが、もし望むなら、儂がおまえさんに新たな力を与えてやらんでもない。そう、ニエルブの開発したそいつ、それを使って、儂がおまえさん達を本当の意味で一つにしてやろう。なに? 儂はショウマの味方ではないのか? ほっほっほ、儂は、可愛い孫たち、みんなに平等じゃ。それに今なら、あやつのガヴの実働データも揃っておるし、いやー、腕が鳴るのぉ」
 次回――酸賀ぁ! 酸賀ぁぁぁぁぁ!!
 ニエルブとラーゲの訪問を受けて大喜びの酸賀が、色々と吹き飛ばしていきました(笑)
 ……あ、そういえば、甘い・辛い・塩っぱい・酸っぱい、と、ショウマとストマック家を除く重要人物に、味覚に関する文字が入っている今作、ラーゲ9は、苦ラゲでラーゲ苦、という事なのでしょうか。カラメルだけにほろ苦い?