東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   X/Twitter→〔X/Twitter/gms02〕

クリスマスにはカニを焼け

仮面ライダーガヴ』感想・第16話

◆第16話「ノエルのおくりもの」◆ (監督:諸田敏 脚本:毛利亘宏)


(――いつか、俺は絆斗に言えるのかな。自分がグラニュートだ、って)


 焼きカニプレスを受けたヴァレンが敗北し、グラニュートにさらわれていた頃、ストマック社ではコードネーム:ラーゲ9の集めたヒトプレスの質と量に、ランゴとグロッタが御満悦。
 毒針体質を見込まれ、グロッタ姐さんにストマック精神を注入されたラーゲ9が期待に応える活躍を見せ、ランゴ兄さんが口を酸っぱくして目立たないようにと言い含めていたのは、双子を含めて動きの目立つ連中が赤ガヴらの目を引きつけている間に、本命のラーゲに隠密かつ効率的に質のいいスパイスを集めさせる計画であったと判明。
 「フン……こんなにも早く優秀なアルバイトが現れるとは。あいつが闇菓子にはまってくれて良かったよ」
 …………超・節穴っぽい台詞、来た(笑)
 今回は、ランゴ兄さんのこの一言だけで、1エピソードの元が取れました(いや、後半にかけて普通に面白かったですが!)。
 一方、カニに裏切られ、絆斗をさらわれ、失意のショウマはデンテの元を訪問中。
 「虜になってしまうと、やめられないのじゃよ、闇菓子は。我ながら、罪なものを作ったもんじゃ(※反省はない)」
 むしろ、ちょっと自慢げ
 「しかし、おまえさんは不思議な事を気にするんじゃな。ストマック家に生まれながら、誰に似たんじゃろうなぁ(※悪意はない)」
 「……絆斗に……俺がグラニュートだってこと言えてないんだ」
 「それは、言わん方が良いかもな」
 「でも、このまま黙ってるのも――」
 「知られたら、次にヴァレンが狙うのは、おまえさんじゃぞい」
 その次に狙われるのは当然デンテのオジキなので、保身の感情は、ある!
 ショウマの抱える罪悪感が手堅く描かれる一方(こういう、有ると無いとで大違いの要素をしっかり入れてくるのが今作は外しません)、やはりデンテは早い内に、人間界で最後の誕生日を迎えてもらった方が良いのでは……?
 カニの隠れ家に運び込まれた絆斗は目を覚ますとロープを緩める事にも成功するが、カニが戻ってくると意識の無いふりをして様子見。カニジープやエージェントとのやり取りから、「ランゴ」「扉」といった重要キーワードを次々と入手し……前回時点では、さすがに4話は引っ張りすぎでは……? と思っていたカニですが、ここまで盛ってくると、突き抜けた面白さが生じていて凄い(笑)
 表面上は真面目なバイトとして仕事に励みエージェントにプレスを渡すラーゲは、報酬の闇菓子にむしゃぶりつく事なく箱をぽいっと放り出してこれまでのバイトとの明確な違いが描写され、先のデンテの台詞からも、闇菓子を入手しようとしたところから偽装工作の可能性が濃厚でしょうか。
 「この調子で、もっと信用されるようになれば……」
 グラニュート界において「ストマック社以外」の意志が見え隠れしてくるスパイスとして、ラーゲの登場が味付けに奥行きを加えてくるのは成る程で、主要人物を増やさなければいけない都合を上手く使ってきた印象。
 幸果に励まされ、絆斗を探しに飛び出していったショウマは、眷属の助けを借りて可児のアジトへと怒りのカチコミ。
 「ふざけんな。絆斗はどこだ!」
 いつになく強い言葉を使うショウマは、ついつい真っ正面から乗り込んでしまった事で絆斗を人質に取られるが、無抵抗で殴られたところで逆に妙案を閃くと、気絶の演技。縛り上げられ、台車に乗って奥へと運ばれる事に成功すると、カニがその場を離れている間に眷属ライダー隊の手助けでロープをほどいて絆斗を救出しようとするが、絆斗はそれを拒絶する。
 「もう少しで奴らの世界に行けるんだ! ストマック社に乗り込むチャンスなんだよ!」
 「ストマック社に……なんでそんな無茶を?」
 「……奴らの正体、調べる為だよ。……あいつらの酷さがはっきりわかれば、おまえだって迷わず仇を討てるだろ!」
 ……うわ、ハンティ、超いい奴。
 ……「奴らの正体、調べる為だよ」のところで、ちょっと照れくさげに言葉を選ぶのもおいしく、自身の復讐ありきの言行かと思いきや(それがゼロでは無いでしょうが)、ショウマの事も考えての立ち回りだったというのは、鮮やかな構図の逆転でした。
 またここでは、現時点では大きなバイアスがかかっているものの、相手を「知ろうとする」事への意識が絆斗に窺えるのが興味深いポイントで、これは今回の、というよりも作品全体の視点に思え、これもまた『ゼンカイジャー』の掘り残しの一つであるのかもしれません。
 「……俺の……為に」
 相手の為を思った行動が互いに食い違っていたのはつまり、好きピ同士って事?! と気がついたショウマは、まずはカニの一件について改めて謝罪。絆斗も声を荒げた事を謝罪すると二人の間のわだかまりはとけるが、絆斗はこのままストマック社に乗り込む事を主張。
 「駄目だよ!」
 「なんでだよ?!」
 「……え?」
 まさかグラニュート界出身です、とは明かせず固まるショウマは、情報が無さすぎて危ない、で押し通し、見所は、台車の上で変なポーズで固まるショウマ。
 ……え、それはなに、いざとなったら首を締めて絆斗の意識を刈り取る気満々……?(笑)
 幸い三角締めで絆斗がオとされる事なく、ロープをほどいたところに戻ってきた可児が狼狽すると左右にステップを踏み、前回まではあまり印象が無かったのですが、今回カニラニュートがなにかにつけてカニ歩き(横歩き)を入れ、どっちがどっちかはわかりませんが、可児の方も隙あらばカニ歩き(横歩き)を入れてくるのは、ちょっと面白かったです。
 鼻歌交じりに台車を押してきたりもクスリとさせ、結果的に可児は、今回が一番面白くなったので(退場させるからこそ、もあったでしょうが)、これはもう素直に参りました(笑)
 ショウマが可児を食い止めている間に絆斗が装備を取り戻すと、許しがたい小悪党を前に、二人揃って変身から前傾姿勢で構えを取り……こうなると、二人一緒の決め台詞も何か欲しかったなとなるのは、惜しまれるところ。
 ヒーロー反撃のターンとなるも、伊達に20年のキャリアではないカニの甲羅にガヴとヴァレンは苦戦。
 ビニールカーテンを利用した目くらましを挟んで、ヴァレンがクリスマスな眷属を使用すると、チョココーティングなブッシュドノエルがヴァレンの胸部と両肩から突き出し、予告でも一瞬、え、ヴァレン砲台モード?! と思ったのですが、適度な長さに切り落とされるとマサカリヴァレンが誕生し、このフォームの立ち方、かなり好きかも。
 ガヴもケーキングすると、ヴァレンのマサカリ大旋風でヒビを入れたカニの装甲にホイップランスを突き刺す美しい連携が炸裂し、あとは蹂躙モード。
 聖夜に舞い散る粉塵爆発から、追い打ちのケーキキャノンが突き刺さると、ハカイダースピリットもとい三下魂に溢れるカニは迷わず逃走を試みるが、文字通りに鉄砲玉として具現化したホイップ兵士が退路が塞ぎ、自棄になって必殺焼きカニダンスを発動。
 突撃してくるカニをマサカリヴァレンが丸太で拘束すると、ダブルライダーの必殺攻撃が炎を噴き上げ…………あ、本当に、キャンプファイヤーにくべられた……。
 これが貴様の命の篝火! とカニ@勤続20年は断末魔の台詞をあげる間もなく焼き尽くされ、ショウマと絆斗、二人の友情の深まりを受けて、双方の新フォームを活躍させつつフィニッシュも綺麗に決まり、満足度の高い協力バトルでした。
 その夜、はぴぱれではショウマ・幸果・絆斗が集まってささやかなクリスマスパーティが催され、
 「賢者れた?」
 「賢者れた!」
 が割とお気に入り(笑)
 ピザやチキンを囲んで楽しいパーティとなり、絆斗はどうやら、脚派。
 (ショウマの奴……危険だって事は別にしても、あんな嫌がるか? ……もしかして……なんか知ってて……隠してんのか?)
 そんな絆斗の中の「信じたい」けど「拭いきれない」思いが少しずつ大きな炎に育ちつつあるのが実に今作らしい話運びで、冒頭に掲げたショウマの心情も大変印象深い呟きとなりました。
 グラニュート界では、デンテの残した資料と、酸賀に提供された資料を元にニエルブが割と派手な配色のニューアイテムを完成させると、その被験者に選んだのは、体力測定でも優秀な数値を示したラーゲ9。
 様々な点でただ者ではなさそうな雰囲気を出すラーゲとは何者なのか? その思惑のまるで掴めないまま、次回――プリン装甲の新たなる仮面ライダー誕生?!
 ……ガヴもヴァレンも、SNS上の目撃情報などから自然発生的に「仮面ライダー」と名付けられたわけですが、年明けからは、見た目がそれっぽいから「仮面ライダー」で通すのかは、ちょっと気になります(笑)
 年内ラスト、ショウマと絆斗の友情が厚くなる一方で導火線に付いた火が勢いを増し始めるなど波乱の種が色々と蒔かれましたが、腹に一物ありそうなラーゲがこの2話で存在感を大きく引き上げ、ニエルブはニエルブで独自の思惑を持ってラーゲに接触するようであり……節穴への道が急ピッチで舗装されていくランゴ兄さんの明日はどっちだ!