『ドライブ&鎧武』さっくり感想
◆『仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル』◆ (監督:柴崎貴行 脚本:鋼屋ジン/三条陸)
2014年12月13日に公開された、放映中作品(『ドライブ』)と完結した前作(『鎧武』)のコラボ劇場版で、公開初日は『ドライブ』第10話の放映前日となり、人間だった時のベルトさんと、仮面ライダーマッハが『ドライブ』パートで先行登場する作り。
なお、『鎧武』『ドライブ』共に最後まで視聴しておりますが、今回の映画を見るにあたって特に内容の復習はしていない為、設定や筋に関しては相当うろ覚えとなります。また、両作品の最終盤までの内容に触れますので、ご留意下さい。
●PART1「仮面ライダー鎧武 進撃のラストステージ」
「今度こそ、人類を救ってみせる――」
宇宙のどこかにある緑の<楽園>――穏やかな時間が流れるこの星をしかし、かつて惑星と住人全てを機械化統合することによりヘルヘイムを克服した存在・メガヘクスが襲撃する!
<楽園>の主たるスペース紘汰は、昆虫サイボーグといった見た目のメガヘクス星人に立ち向かい、仇役のデザインが割と格好いいのは、この映画の良かったところ。
瞳が赤く輝き、人外の存在と化しているスペース紘汰がフルーツ大将軍すると、宙を舞い、高速移動し、ビームを放つ超人バトルが展開し、画がすぐ『ドラゴンボール』になってしまうのはアレですが、スペース紘汰の超人性を示しつつ、《ライダー》ではあまり見ないタイプの映像になっているのは、掴みの特色となりました。
メガヘクスの元に全てが統合される事こそ唯一絶対の「進化」であると主張するメガヘクス星人は、メタルヘックスにより星を侵食し、ゴールデン舞をさらい、惑星ガイムの侵略完了を告げると、紘汰の記憶から存在を知った地球の座標へとワームホールを開き、復興途中の沢芽市に侵略兵器が着陸するとドカーーーン!! メガヘクス星人を阻もうとしたスペース紘汰が敗北すると、ドカーーーン!!
と、『鎧武』本編のスケール感を踏まえ、都市の一部が吹き飛ぶほどの大規模な爆発が連続するスペクタクル。
更なる進化の為、戦極ドライバーに興味を示したメガへクス星人は、ドライバーをコピーすると共に、実写版『CASSHERN』みたいなマスクをつけているメガプロフェッサーを作り出し、プロフェッサーの変身するドラゴンフルーツ仮面(Vシネマ『バロン』の敵の流用……?)が、露骨に動き辛そうでちょっと気になります。
「俺は今ある、この世界を守る! 世界を蝕む悪意には、二度と屈しない! ――変身!!」
本編最終盤の、「変身だよ貴虎」が拾われて貴虎はドラゴンプロフェッサーへと挑み、ミッチは舞を救う為に侵略兵器の内部へ突入し、呉島兄弟が実質的な主役。
「俺を信じろ!!」
「……兄さん」
『鎧武』本編はだいぶうろ覚えですが、かつてすれ違った友の亡霊を撃破した貴虎と、かつて救えなかった舞を救い出したミッチ、互いに過去の清算を果たした呉島兄弟が、メガヘクス星人との死闘の中でお互いと向き合い、“誰よりも信じてほしかった者”に向けた貴虎の叫びを受けて、“誰かを信じる事”をミッチがもう一度選んでみせるのは、本編で入りきらなかった二人の救済と踏み出す一歩として、とても良かったです。
メガヘクス星人を羽交い締めにして龍玄の弾丸を諸共に受けた斬月は、知っているか? 昭和ヒーロー属性持ちはこれぐらいでは死なない! と、爆発の中から転がり出ると、メガヘクス星人がスペース紘汰から奪い取っていた黄金の果実をその手にしており、果実の中にバックアップを取っていたスペース紘汰が復活。
「貴虎! ミッチ! 行くぜ!」
「ハイ!」
「任せろ!」
「「「――変身!!!」」」
スペース紘汰さんが復活したら後は一人で好き放題かと思ったら3人並んで変身してくれたのも嬉しく、兄さん好きとしては、嬉しいエクストラステージ。
怒濤の連係攻撃からトリプルライダーキックでメガヘクス星人を倒す鎧武らだが……地球を救ったと思ったのも束の間、全てが一つに統合されたメガヘクスにとって、倒されたのは一端末に過ぎず、同一の外見を持ったメガヘクス星人が次々と出現。
「そうか。復活してたんじゃない。最初から沢山居たのか」
うん、まあ、概ね最初からずっと、そう主張していたような気が……の、人の話をよく聞いていない感は、凄く、『鎧武』でした(笑)
メガヘクスの侵略はまだこれからだ! で『鎧武』パートが終了し……葛葉紘汰の物語はTV本編で終わっているので、規格外の存在であるスペース紘汰は新たなる侵略の踏み台に用いて、“人間”呉島兄弟の「変身」を軸として描くのは、エクストラストーリーとして面白い構成でありました。
目立つ難をあげると、“個”の存在を否定している筈のメガヘクスが、ゴールデン舞をさらったり(動力源……?)、新造人間プロフェッサーを送り出したりが話の都合丸出しにすぎた点と、ザック・城乃内・ピエールが登場したはいいも、ドライバーが無い=戦えないので存在意味が無いとばかりにバッサリと出番終了する部分で、特に後者に関しては、避難誘導で奮闘するシーンの一つぐらいあっても良かったかなとは(尺の関係でカットされたりはありそうですが)。
次いで物語は、夜の街を走るトライドロンの姿を映し――
●PART2「仮面ライダードライブ ルパンからの挑戦状」
「霧子は俺に、愛想笑いなんかしてくれねぇよ!」
「全てがどんよりと遅くなる重加速現象……それが起こる時、怪物が暴れ出す。俺たち特状課の出番、てわけなんだが……最近はみょーーな相手と戦う羽目になっていた。伝説の怪盗、アルティメットルパンだ」
本当に妙だった。
某所に現れたアルティメットルパン(白いマスクに白いタキシードの見た目スタンダードな怪盗紳士)は、どんよりの中で警官隊の銃撃を華麗に回避していき、どちらかというと、明らかに射殺するつもりで撃ちまくっている警察の対応が気になります(笑)
アルティメットルパンの逃走をシフトカーが妨げると、怪盗はロイミュードの正体を現し、進ノ介はドライブに変身して一当たり。
「これは俺の挑戦なんだよ」
敢えて人間体の顔をさらしたUルパンは、「さらばだ明智くん」ムーヴを決めてヘリコプターで飛び去っていき、怪盗に出し抜かれ続ける特状課には、解散の危機が迫っていた。
ここで衝撃シーンのイメージとして、背後に爆発を背負った特状課の面々が一斉に顔芸を披露するのが、あ、そういえば『ドライブ』こういうノリだったな……感。
嫌な予感をしているが詳細は明かさない、いつものベルトさん仕草から、Uルパンからの予告状を受けて金塊輸送車の護衛についたトライドロンは、派手なカーチェイスを展開。
『ドライブ』の売りを押し出し、結構な数の車両を犠牲にしたシーンとなるのですが…………最終的に、背中に重くてかさばるぴこぴこ2号を背負いながら走行中のトラックの荷台に張り付き、運転席まで辿り着いて犯人に拳銃を突きつける追田さんが凄すぎて、何もかも吹き飛びました(笑)
追田を退け、まんまと逃げおおせたUルパンのアジトは古城めいた洋館で、そこは……生前のベルトさんの別荘。
「まずい、進ノ介。どうやら最悪の事態だ」
いやほら進ノ介、「博士」たるもの、隠れ家の一つや二つは持っているのが昭和では当たり前だったのさ! と主張するベルト容疑者は、かつて自身のバックアップの為に用意していたが起動に失敗して封印していたメタルボディが盗まれている事を確認し、アルティメットルパンの正体はロイミュードではなく、スタインベルトZZZであったと判明。
ベルトさん、すなわちクリム・スタインベルトがロイミュードに殺害された過去(本編で触れられる)と、さすがに最初からベルトになるつもりではなかった事情(本編では触れられない)が明らかになり、人型の制御に失敗したので、ベルトの姿になってでも対ロイミュードの為に人格の継続を選んだのは、ベルトさんのキまり具合が上昇しましたが、劇場版でもしっかりやらかしてくれていました。
Uルパンの前身である老マジシャンがどうやってZZZへの精神移植に成功したのかは皆目よくわかりませんが(ロイミュードを“経由”はしている……?)、姿を見せたUルパンが進ノ介に歪んだ英雄願望を一方的に押しつけているところに魔進チェイサーが処刑に登場すると、Uルパンは海賊版の装備品を用いて――変身。
「仮面ライダールパン、ここに誕生」
劇場版の悪役が、(少なくともボディは)“仮面ライダーになったかもしれない者”というのは『ドライブ』らしい仕掛けとなり、ある意味でこれ、悪のベルトさんなわけですが、魔進チェイサーはルパンライダーの踏み台にされてちょっと可哀想なレベルで惨敗し、ベルトさんを嘲弄するルパンに進ノ介は怒りの変身。
「ふざけんな。ベルトさんはな! 俺の錆びたエンジンに、火を点けてくれた恩人なんだよ!!」
「進ノ介……」
「侮辱は許さねぇ!」
本編に著しく不足していた要素が補われ、進ノ介が度重なるベルトさんの秘密主義にやたら甘い理由の一端が垣間見えましたが、これが更に悪化すると、『ビルド』における戦兎とマスターの関係になるのか、とちょっぴり納得(笑)
だがドライブはルパンライダーに完敗すると、ベルトさんが進ノ介をカバーリングして、機能を停止。
「仮面ライダーの名前……確かに、いただいた!」
ルパンライダーは姿を消し、ガレージで落ち込む進ノ介はシフトカー軍団にこれまでの日々を記録した映像を見せられて奮起を促され、
(あれ、なんで、親友との語らいまで盗撮されてんの……?)
という疑念は浮かぶ事なく、脳細胞が、トップギアだぜ。
Uルパンが特状課のメンバー――霧子――に変装していた事を見破った進ノ介は、ルパンライダーのビル爆破を阻止しようとするも気球から蹴り落とされるが、スリープ状態だったベルトさんが、落下の風圧により再点火。
「仮面ライダーの名前、返してもらうぜ!」
同じく墜落の危機にあった霧子はトライドロンが助け、ベルトさんが進ノ介をドライブに選んだ大きな理由とは「何度壊れてもまた走り出す胸のエンジン」すなわち“心の強さ”とされて、この劇場版だけ見ると、進ノ介とベルトさんは互いの在り方に敬意を抱く良き相棒同士のように勘違いしそうになりますが、後の展開を考えるとそこのベルトは、現在進行形でその相棒に対してだいぶ重大な隠し事をしています(笑)
さすがに惨敗のまま退場処分にされなかった飛行チェイサーが飛んできて呉越同舟バトルとなり……魔進チェイサーはルパンライダーの生み出した雑魚ミュード(劇中、何体か出すのですが、どういう扱いか不明)を倒して、最低限の見せ場を確保。
ドライブはフォームチェンジを駆使しながら強敵ルパンライダーに立ち向かい、
「ベルトさん! 賭けてくれ! 俺に!」
「出会った時からそのつもりだ! 進ノ介!」
は格好良かったですが、ルパンライダーの特殊攻撃をどうやって打ち破ったのかはよくわからず(笑) トライドロンに乗った霧子さんが合流すると、霧子大回転を加えたひとっ走り必殺キックを浴びたUルパンは満足し、「仮面ライダー」の名をドライブに返上して昇天。
魔進チェイサーは無言で走り去り、真っ暗なガレージで顔見せ登場した後、思わせぶりに戦いの成り行きを見つめていたマッハ……はこの後本編でいきなり、
「追跡。撲滅。いずれもー……マッッハー!」
「「はい?」」
「仮面ライダーーーー・マッハー!」
をやらかすのかと思うと、どういう目で見ればいいのかわかりません!
進ノ介は改めて胸を張って「仮面ライダー」となり、個人的に本編で不足を感じていた「進ノ介とベルトさんの関係」についての掘り下げは、この劇場版の主題であった事がわかり、放映(視聴)当時に今作を見ていたら、本編における進ノ介とベルトさんの関係について、もう少し印象が変わっていたかもしれませんが、それはそれとして、そういう超大事な要素は、TV本編でやらなくては駄目なのでは、と思う『ドライブ』パートでありました(笑)
ルパン騒動が解決して一件落着かと思いきや、メガヘクス端末が現れると、地面に転がっていたZZZボディを解析して融合し、メガヘクス端末Gへと進化。
「全ての個体を吸収し、宇宙に一つの平穏をもたらす!」
母艦へと飛び去るメガヘクス端末Gを進ノ介が追いかけていき――今、重なり合う、二つの世界。
●PART3「MOVIE大戦フルスロットル」
「鎧武! ひとっ走り付き合えよ!」
「ああ。ここからは、俺達のステージだ!」
メガヘクス端末Gがコピーロイミュードとコピーインベスの集団を放ち、アーマードライダー達が戦っているところにドライブも参戦。
タイヤを引っかけている赤い奴と自称宇宙の神の接触はコミカルに描かれて空気をちょっと緩めると、何を思ったのかメガヘクスGはメガ戒斗を召喚し、バナナを被ったバロンは、勿論、超速攻でメガヘクスを攻撃(笑)
『鎧武』としては出てこないのも収まりが悪い気がするが、かといって安易に出すと本編の余韻が台無しになりかねない難しさのある戒斗ですが、満を持してラストバトルに参戦となり、出てきた瞬間にやると思った事を、そのままやってくれたので、個人的には満足です(笑)
――「……俺の敵とは、強い者を背中から撃つような奴だ!」
「この惑星の“個”は、何故ここまで無軌道なのか。やはり“個”の存在など不要。メガヘクスこそが、唯一の完全なシステムである」
「みんなバラバラで違うからこそ、一人では気付かない新しい可能性が生まれるんだ! 完全じゃなくていい。俺は互いを認めて、手を取り合う未来を選ぶ!」
メガヘクスの主張に対して鎧武メンバーがそれぞれ反論を述べると、“個”とは未来への可能性だと銘打ち、
「いいね! おまえら、いいチームだ!」
場違い感の甚だしい4対1の超アウェーで、全く状況も会話の意味も飲み込めていないが、とりあえず横一列に混ざって鎧武の肩を叩くドライブが、この映画のハイライト(笑)
「いっくぜーー! みんなぁ!!」
ただ、大将軍の号令がかかったところで、5人の背後にトライドロンが停車するのは、良い演出でした。
ここから景気良く集団戦に突入し、凄い勢いで雑魚敵を轢いていくトライドロン(笑)
更に、ハート・ブレン・チェイスも参戦して『ドライブ』側も頭数を揃えると、鎧武とドライブがメガヘクス端末Gと激突。ゴールデン舞の力によって互いの力を装備する趣向となり、鎧武:ドライブアームズはまだともかく、ドライブ:タイプミカンは、気の狂った感じが凄い(笑)
二つの作品世界を融合する時点でどうしたってカオスになるという考えだったのか、この最終パートは、妙に細かいギャグを連発するなど、全体的に緩めの空気で割り切ったお祭りボーナストラックとして描かれ(車に乗れない! とかはメタツッコミを公式がやる的で好きでは無いですが)、鎧武とドライブは、スペースミカンで一時的に強化されたスペーストライドロンに乗り込んで、惑星メガヘクス(まあデススター)へとカチコミ。
正直、車内で何を言い合っているのか聞き取れないレベルで大騒ぎしながら、最後はトライドロン射出からのダブルライダーキックでメガヘクスのコアを貫き、「理解不能」を連呼しながら、惑星メガヘクスは崩壊・消滅するのであった。
侵略を無事に阻み、黙って宇宙へ帰ろうとしたスペース紘汰とゴールデン舞だが、さすがに最後に出番のあったザックらに呼び止められると、ちょっとカラオケぐらいしていこうぜ、みたいな雰囲気となって、束の間の同窓会、といった形で終幕となり――…………DJが出てこなくて本当に良かった。
ドライブ基地では、終始やけに扱いの良いアルティメットルパンの亡霊(???)が出てきて、「妙なライバル誕生だ!」みたいに『ドライブ』編に散りばめられていた怪盗物の約束事を貫くのですが、この後の本編では一切拾われていないので、凄く謎のシーンでした(笑)
別の劇場版とかで大活躍したりしたのでしょうか……。
Uルパンがアデューした後、進ノ介は失言から霧子に追い回され…………まあ、本編最後まで見た後だと進ノ介にとって、激戦の疲れを癒やすご褒美だったで、オチ。
『鎧武』『ドライブ』の両作品とも思い入れが少なく、細かい内容も覚えていないので、コラボ映画としての総評は行いませんが、
「俺を信じろ!!」
「……兄さん」
のくだりは見られて良かった映画で、Gimmickさん、お薦めありがとうございました!