『仮面ライダー(新)』感想・第14話
◆第14話「ハエジゴクジン 仮面ライダー危機一髪」◆ (監督:山田稔 脚本:伊上勝)
新年早々、置き手紙一つ残して志度会長が失踪し、
「ネオショッカー対策委員会の要請で、当分海外へ行きます」
との事ですが……それは、会長の脳内にしか存在しない組織なのでは……?
それとも、プラスアルファ爆弾が炸裂したあの時――世界は元の世界から右斜めに25度ほどズレてしまったのでしょうか。
どちらかといえばまず拉致の可能性を疑う状況のような気はしますが、「あとはよろしく」の文言で、駄メンターポイントを35000叩き出した志度会長が後事を託したと記した、喫茶店ブランカのマスター・谷源次郎なる人物を尋ねた洋は、留守番の店員からメモを渡され富士急ハイランドへと向かう事に。
その地下に建設された秘密のアジトでは、ネオショッカーが風船爆弾を用いて東京に猛毒細菌を撒き散らす大規模バイオテロ計画を進めていたが、それを知らないまま谷なる人物を捜し回る洋は、怪しいコートの男を発見。
「……筑波くんかね」
洋に後を追われると、人気のない場所で足を止め振り返ったその男こそ、志度会長から、筑波洋=仮面ライダーと聞かされていた男・谷源次郎。
「いやぁ谷さんというのは先輩の事だったんですか」
え、ええ?!
「昔の俺は死んだ」
え、ええ?!
どうやら洋の知る「先輩」とは別の名前を名乗っているようなのですが、謎めいた新たな協力者の本人性を担保しつつ話をスムーズにする為に洋と旧知の人物に設定したところ、「先輩が別の名前を名乗っている事を平然と受け止める洋」×「それについて一切説明せず当たり前のように話を進める谷」のカオスなマリアージュが生み出され、洋の、某国スパイ組織出身疑惑が深まります。
「筑波、ネオショッカーが、この辺りでを何か企んでいるらしい」
ネオショッカーに家族を奪われたと語る谷は黒いコート姿でハードボイルドな雰囲気を漂わせ、役回りと見せ方からの第一印象は、立花藤兵衛×滝和也×荒井誠(『イナズマンF』)といった感。
園内の様子を探る洋と谷はハエジゴクジンに襲われていた母子を助け、何故か前回と名前が被り気味ですが、いわゆるハエトリグサをモチーフにしており…………洋の事を知らなかった。
仮面ライダーのパワーを計算して作られた、と自信満々のハエジゴク、割と肝心の情報が入力漏れしている気がしてならないのですが、富士山をバックにした狙い澄ましたカット(真後ろでないのが美しい)で洋は変身し……新演出、洋の姿がブレるのが、ちょっと目に悪い。
ドーナッツならぬ連続タイヤ投げで戦闘員の動きを封じるスカイライダーに対して、ハエジゴク部隊はジェットコースターから鞭を振るい、走行中のジェットコースターでの座席移動から格闘戦という、ワクワクよりもドキドキする映像(先頭の座席で進行方向に背中を向けているハエジゴクジン!)となって、投げ落とされるシーンは合成でホッとしました(笑)
仮面ライダーのパワーを計算して作られた筈のハエジゴクジンは、連続パンチでノックダウン寸前に陥ると毒ガスを噴いて辛くも逃走し、富士急ハイランドでは三人娘+弟が谷と初顔合わせ。
君ら余計な事に首突っ込まないで遊園地で遊んでて、と笑顔で雑な扱いを見せる谷ですが、その後はなし崩しに受け入れてしまってハードボイルドが特に広がらず、ここから先は谷も、3人娘+少年と似たような没個性の扱いになってしまう事に。
スカイライダーはハエジゴクの罠にはまり、実験用の風船を拾ってしまった三人娘らは、スケートをして遊んでいたところにネオショッカーの襲撃を受け、三人娘、序盤における毎回1シーン一言ずつ、みたいな使い方もあんまりでしたが、その時期にキャラの色分けがされていないので、まとめてピンチ要員にされても、モブの人質が増えたぐらいの意味しか発生しないのが、物語として非常に辛い。
「仮面ライダー助けてー!」
「仮面ライダーは死んだ!」
囚われた5人は地下アジトへと連行されていき、新キャラの谷も特別な動きは何もしないので、存在によるプラスの面白さが全く発生してくれません。
岩の下敷きになっていたスカイライダーは、フルパワーで岩をはね除けると、人間ライダーブレイクでアジトに突入して5人を救出。
「仮面ライダーって、誰なんだろう?」
「……もしかしたら……」
と、わざとらしい会話を露骨に谷が遮ると、戦闘員を薙ぎ倒したスカイライダーはハエジゴクと激突し、巧みな鞭さばきに苦戦しながらも、いつもより滞空時間の長いスカイキックを浴びせて逆転勝利を得るのであった。
「残念……ライダーパワーの、計算違いかぁ!!」
ハエジゴクジンは爆発炎上し、最後の最後で自分の設定を思い出したのは、ポイント高かったです(笑)
ブランカでは三人娘らにケーキが振る舞われ、和やか大団円で新体制のスタートが告げられるのですが、個性皆無に近いピンチ要員が、3人、4人、5人……と増えていくばかりの構造は悪夢に近く、志度会長の失踪により登場した新キャラ・谷が「昔の俺は死んだ」以降は特になんの面白みもない一般男性Aと化してしまったのは、痛恨でありました。
洋に関する大きな罪を背負っていた志度は、まだ共に戦う事を受け入れやすい存在でしたが、それに比べると谷の自己申告はだいぶ弱いですし、なにより、三人娘の没個性による面白くなさ×居てもいいかなレベルを大きく割り込む芝居の辛さ、が完全に化膿して継続ダメージとなっている今作、果たしてこの協力者ポジション問題を解決に導く事はできるのか。
仕切り直しを意図していたのなら大失敗のエピソードとなりましたが、次回――今度は地震だ!!