東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   X/Twitter→〔X/Twitter/gms02〕

愛と勇気の炎を燃やす

電子戦隊デンジマン』感想・最終話

◆第51話「ひびけ希望の鐘よ」◆ (監督:広田茂穂 脚本:上原正三
 ヘドラー将軍が散り、戦力の大半が機能しなくなったベーダー城で我が物顔のバンリキ魔王はヘドリアン女王に宴会芸を要求するも、ふんぞり返るのは電子戦隊を倒してからにしたらどうだ、と挑発されるとバンリキモンスと共に地上へ出撃。
 「デンジ剣で叩き切ってやるぜ、ギタギタにな」
 前回の反省を踏まえ、巨大モンスが念力を発動する前にダイデンジンを起動するデンジマンだったが、モンスの念力の前には結局手も足も出ずに、きりきり舞い。
 「頑張れ……それ、頑張れ、ダイデンジン!」
 バンリキ魔王憎しのあまり、とうとうモニターの前でダイデンジンに声援を送るヘドリアン女王であったが、ダイデンジン無為無策のまま完敗して撤退し、デンジマンがこれまでの戦いで培ってきたチームワークを活かして知恵と勇気で最強の敵に立ち向かうのかと思いきや、ボタン連打の力押し、しかないチームになってしまったのは最終回の大変残念だった部分。
 念力によって中枢指令回路を破壊されたダイデンジンが出撃不能に陥る中、地上に現れたバンリキモンスは交通パニックを引き起こし、事件に巻き込まれてチエコと相方の出番は確保。
 傍若無人に念力による被害を拡大するモンスを止めようとする電子戦隊だが、待つことも戦略だ、と赤城らの出撃を禁止したアイシーが目を赤く輝かせ……監・禁。
 「アイシー!」
 「チャンスを待つのだ」
 高層ビルが吹き飛び、車が炎をあげ、モンスによる被害は拡大の一途を辿るが、電子戦隊5人はデンジランドに閉じ込められ、無理・無茶・無策の三拍子で返り討ちに遭うデンジマンデンジマンですが、最終的な勝利の為には目の前の被害を黙って見過ごすアイシーもアイシーで、最終回にしてヒーローが“大事の前の小事”に上官命令で従わされて座り込む、大惨事。
 第1話のテニスコーチ爆殺事件に見るように、もともとアイシーはそういう犬ではあるのですが、ロボの修理は犬に丸投げ・これといった作戦もないまま無闇な突撃を繰り返そうとする・監禁されて身動きできない、とデンジマン5人の姿があまりにも情けなく、最終回にしてこれまでの集大成どころか、これまでで最も侘しい姿を見せられるとは思いもよりませんでした。
 アンパンだ! アンパンが足りてない!!
 一方ベーダー城では、モンス不在の内に魔王の暗殺を企む女王一派であったが、ヘドリアン女王の不意打ちはかわされ、魔王の反撃から女王をかばったケラーが死亡。
 更に、ミラーが既に魔王に鞍替えしていたという衝撃の展開で、ヘドリアン女王は、落とし穴に、落ちた。
 だがミラーの忠誠はヘドリアン女王に対してのみあり、バンリキ魔王を油断させたミラーが二重スパイの役割を果たしてモンスの弱点を探り出す事に成功するのは、ミラー&ケラーのスパイポジションを活用して、面白みのある流れでした。個人的に今作におけるダークホースとなったお気に入りキャラのケラーさんが、ざっくり退場してしまったのは残念でしたが、ミラーの動きはこの最終回で数少ない光ったポイント。
 地上ではようやく、アイシーの制止を振り切ったデンジマンが出撃するとモンスと激突し、劇中ラストのフル名乗りながら、ヒーロー性を落とせるだけ落とした後なので、どうにもパッとしません。
 戦闘員がデンジパンチで景気良く宙を舞う中、ミラーからモンスの弱点を聞き知ったヘドリアン女王は、ミラーの変じた水晶玉を用いてデンジランドへとタレコミを行い、今こそ反撃の時は来た、とアイシーはデンジタイガーで出撃。
 事情が把握できないままレッドがデンジファイターに乗り込むとダイデンジンへとあっさり変形し、モンスによって破壊された「指令装置のスペアが無い」からアイシーの虚言だったの?! と困惑しますが、操縦席からアイシーの姿が消えているのも気になるところ……。
 特に何も考えずに5人が乗り込んだダイデンジンは今回もバンリキモンスを前に防戦一方を強いられるがその時、
 (尻尾だ、尻尾を狙え!)
 とアイシーのアドバイスが響き渡ると、反撃の機を掴んだダイデンジンは、バンリキモンスを満月斬りで真っ二つ。
 怒りのバンリキ魔王は牢獄のヘドリアン女王に斬りかかるが、ミラーの水晶玉が放った電光により目を潰されると恐慌に陥り…………う、うーん…………この最終回、ミラーとアイシー以外のキャラの株が軒並み下げられていくのですが、どうしてその選択になったのか。
 魔王が振り回した槍の一撃を受けてミラーは絶命するが、視力を失ったバンリキ魔王はのこのこと地上に現れ、デンジマンとばったり遭遇。
 「デンジブーメランだ!」
 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 「「「「「やった!!」」」」」
 え……えええ。
 実質、ラスボスはバンリキモンスだった事になりましたが、それにしても、あまりにあまりなバンリキ魔王の最期となり、第三勢力を迎え入れた敵組織が自壊し、ヒーローが手も足も出ない第三勢力は敵組織の助力を受けた末にそれを気にも留めないヒーローがトドメだけ貰っていく、という、なんとも冴えない最終決戦となりました。
 とにかくこの最終回、デンジマン一同がろくすっぽ機能しないまま、トドメだけ刺すマシン化していたのが、非常に残念。
 「残るはヘドリアン女王ただ一人!」
 デンジジャンプで次元を越え、いきなりベーダー城に乗り込む電子戦隊だが、孤独な玉座に位置するヘドリアン女王は、
 「勝ったと思うなよデンジマン。私には、しばらくの休息が必要なだけじゃ」
 と一方的に引き分け宣言をすると城を自爆させ、大変スッキリしない結末に。
 デンジマンはデンジランドに戻ると、アイシーに勝利を報告しようとするのだが、その姿は見えず……本当に、ダイデンジンの部品になっていた。
 「アイシー……」
 最終的に、魔犬アイシーこそが最大限に狂気を貫き、命を賭してデンジマンに勝利をもたらすのですが、ベーダー一族は事実上壊滅したとはいえ、ヘドリアン女王が逃走した事によりデンジ星の復讐として本懐を遂げたとも言い切れず、なんともかんとも、四方八方が生煮えの最終回。
 日常に戻ったデンジマン一同は、アイシー賞を設立するとサッカー大会を開き、アカギランドの財力によってアイシーの名を地球に残そうとする――。
 ナレーション「赤城一平、青梅大五郎、黄山純、緑川達也、桃井あきら……この、5人の若者の胸の中に、今、希望の鐘が、高らかに鳴り響く。
 さようなら、デンジマン
 さようなら、ダイデンジン
 さようなら、デンジ犬アイシー!
 彼等の後を継いで、美しい地球を守るのは、そう! 君たちだ!!」
 デンジマンとバンリキ魔王の株が大暴落した代わりに、やたらめったら持ち上げられたアイシーがエターナルヒーローに昇華されて終わる驚きの最終回となりましたが、アイシーを演じていた犬が、制作途中に死亡していたそうで、その影響が出た部分がもしかするとあったのかもしれません。
 ……結果的に、ヘドラー将軍は前回の内に退場する事で、「デンジマンの敵」であるのを全うできたという事に。
 “犯罪組織と戦うスパイ要素を持った公務員チーム”から、“異次元からの侵略者に立ち向かう運命に選ばれた民間人”というモデルチェンジを始め、巨大ロボへのフォーカス度合いや敵組織の描き方など、現行《スーパー戦隊》シリーズに繋がる雛形度合いが強まった今作、それ故に今日の目線で見ると“足りない部分”が目立ってしまうところが後半に行くほど出ましたが……それにしても出来の悪い最終回になったのは残念至極。
 全体の振り返りや落ち穂拾いは構成分析と合わせて別項で書こうと思いますが、特筆ポイントをあげておくと、ケラーさんは個人的に今作のダークホース的キャラクターとなり、大変良い女性悪役でありました。
 それから、ED「デンジマンにまかせろ!」が、意外や戦闘シーンに物凄くはまるのは、作品を見てこそで、元々好きな歌でありましたが、ますます耳につく事に。
 挿入歌の強化など、前作の短所だった楽曲面が大きく改善されたのは今作の長所となりました。
 以上ひとまず『電子戦隊デンジマン』感想、ここまでお付き合いありがとうございました。
 アンパンは宇宙だ!!