『牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第24話
◆第24話「稀人」◆ (監督/脚本:雨宮慶太)
「あなたは、誰も傷つけない……だから……本当の想いを、言葉にしない」
クロウに追いつく雷牙だが、エイリスにより心の中に秘めていた闇の想念を引きずり出されたクロウは雷牙に襲いかかると、推しに対する想いを拳に乗せて激しい生身バトルを展開し、そこに、なんか、金色のボールに乗って飛んでくる、マユリ(笑)
前回ラストで媚空が取り出したのは移動用アイテムだったようですが、緊迫した状況で、少々、面白映像になってしまいました。
「マユリさんは、人間では無い。……女です。あなたも、そう思っている筈です」
「……ああ、確かにそうだ。しかし、マユリは女である前に、俺達の仲間だ! そうは思わないのか」
「思いますよ!! ……優しいあなたに感化されて、そう思うようになってしまいました」
???
互いにゼェハァゼェハァ息をつきながら(呼吸音もちょっとやりすぎ感)肉体言語に乗せて感情をぶつけ合うのですが、率直に何を言っているのかよくわからず…………これは、先輩もマユリさんのこと可愛いと思ってるんでしょ? 早く告っちゃって下さいよ! な青春の煌めきの、魔戒騎士的な捻れた出力とかなのでしょうか。
「……俺は……俺は望んで優しい騎士になったんじゃない!」
「なにぃ?!」
「……俺には……この生き方しかなかった! ……うぁぁぁぁぁ!!」
最終回目前、雷牙vsクロウのマッチアップには画としての面白さはあり、どうせならエイリスクロウよりも、クロウに寄せた方が雷牙の生の感情も引き出しやすくて一石二鳥、みたいな思惑だったのかもですが、作り手の脳内処理部分が大きくなりすぎたというか、ここまでの物語であまり掘り下げてこなかった部分を急に大放出してきた感が強く、どうも見ていてノりにくい対決に。
「救える命は何があっても救う! ……ただその約束を果たして生きてきた! それだけだ! …………それが優しいというのなら……そう言えばいい」
……TVシリーズは初代しか見ていないので、この辺りは10年に渡るシリーズの中で積み重ねられてきた「魔戒騎士とは何か?」を前提にしている部分もあったのかもですが。
「しかし、おまえが友である事にかわりはない」
後頭部をがっちり掴んで放たれる至近距離からの友達宣言に、刺激が強すぎてクロウは意識を喪失し、もうやだこの器……と、エイリスはクロウを解放。
しかしエイリスの種は既に開花の場に辿り着いており、その姿は、頭から種子の一部を伸ばした、全身白タイツの宇宙人みたいな女へと変わる。
……なんというかちょっとこう、ストレッチパワーを溜め始めそうだった。
「もうすぐ我は覚醒する。偉大なる覇者・メシアの涙となり、花となるのだ」
「違うな。ここはおまえが枯れる場所だ!」
挑みかかる雷牙だが、モノクロームの世界で開花していく女は更に巨大な樹木へと姿を変え……これは配信の画質や視聴環境の問題もありますが、夜戦が基本の今作にしても、ずっと画面が薄暗くモノトーンを基調とした映像が続いて視認性が悪いのは、クライマックスで残念だった部分。
樹木と化したエイリスは、魔界へと根を張り、あらゆる時空へと枝を伸ばす事で、無数のホラーを全時空にばらまこうとしており、籠を開くマユリだが、エイリスを封印する事ができない。
魔戒ペディアもといザルバが「あの球体を破壊しないと、エイリスの封印は無理」と言い出して、すっかりRPGのラスボス戦みたいな事になると、黄金騎士の鎧をまとった雷牙は樹上へと駆けていき、久々に肩ワイヤーを使って一気にハイジャンプは格好良かったところ。
「邪魔をするな。此の世で一番美しい花と、その開花を見たくないのか?」
ガロの前には、純白の体に金色の瞳を輝かせ、ヒンドゥー系の神様っぽい姿と化した妖魔エイリスが立ちはだかり、荊や分身を使ってガロを攻撃。
連戦の疲労もあってか動きを封じられたガロは、時空に生じた歪みを用いて両親を戻してやろうかと悪魔の囁きを受けると怒り爆発で反撃に出るが、再び闇の縛鎖に囚われるとディープキスで鎧の力を吸い取られていき……エイリスの開花が迫る中、マユリとクロウの前に出現したのは、灼炎を纏い巨大な魔獣と化した黄金の狼――
「雷牙…………雷牙!!」
次回――つまりこれが僕らのヒロイン最終決戦ですねマユリさん!!!
ぽっと出のあんな種女なんかに雷牙さんは渡さない!
心を一つに、マユリとクロウは、裏切りを越えて再び手を結ぶ事ができるのか?!
雷牙(さん)を一番輝かせる事ができるのは、私/僕たちだ!!
……最終回目前ですが、一話完結型で各エピソードの趣向を重視した今作の短所が出てしまい、“影の使命に生きてきたクロウの抱える憧憬と鬱積”にしろ“名門の跡取り息子としてこう生きてくるしなかった雷牙の屈託”にしろ“エイリスの驚異にして脅威”にしろ、劇中の積み重ねが不足。
外堀を埋めずにいきなり本丸に突入したような違和感が多々発生してしまい、行間や文脈を読むにしても限度があって、飛躍が大きすぎたように思えます。
特に雷牙に関しては、「少年」回で多少は触れたものの、どちらかといえば“見え見えの鉱脈を敢えて掘らずに進む”といった作りだったので、溜め込んでいたものをクロウを相手に大噴火……は、成り行きにしろやり取りにしろ無理が出た感。
敢えて言えば、これが父親の幻影を相手に大爆発だったらまだ説得力が出たかも……というところに強引にクロウを代入した、といった印象です。
趣向を凝らした各エピソードの面白さは光るものがあっただけに、両取りの難しさを感じる事となりましたが、次回――最終回!