『電子戦隊デンジマン』感想・第50話
◆第50話「将軍は二度死す」◆ (監督:広田茂穂 脚本:上原正三)
超久々に、狭い休憩室で各々が好き放題している電子戦隊の姿が描かれる懐かしのテイストで、第20話以来となる広田監督。
「あ……あれ? 無い?! 無い! アンパンが無い! おいアイシー、おまえ食ったろ」
「アホか」
宇宙の危機に錯乱寸前の青梅に厳しいツッコミを入れたアイシーは子供達に迫る危機を伝え、デンジスパークした赤城が無人乗用車爆弾を阻止すると、続けて戦闘員が大挙出現。
流用映像の関係で、公園の隣に海岸が出現したりもありつつ、子連れの母親を人質にされるもブルーがアクロバット移動で救出すると、ベーダー怪物抜きの乱暴な直接攻撃を繰り返すベーダーの行動に、電子戦隊は違和感を覚えるのであった。
「ベーダーの奴ら、焦ってるって感じだなぁ……」
そのベーダーでは、玉座を奪ったバンリキ魔王がふんぞり返り、ひさしを貸して母屋を取られる事となった女王一派は、屈辱の放置プレイを受けていた。
床に寝っ転がるバンリキモンスは、念力でヘドラーを叩きのめし、ミラーの入れた毒酒をひっくり返しと24時間体制のセキュリティとして万全のガードを行い……魔王より有能(笑)
我が物顔のバンリキ魔王はヘドラー将軍に特攻隊の編成を命じるが、発進可能な戦闘機は一機だけ……。
(……バンリキモンスの仕業だな。ワシに死ねという意味か)
この独白は格好良く、出撃を止めようとするヘドリアン女王との主従(この後のシーンを見るに「母と子」でもあり)の情が描かれると、
「……デンジマンと刺し違えて死ねたら、本望です」
と、ヘドラーは単身出撃。
「頑張れよ、ヘドラー、ふふふはははは」
それをモニター越しに見届けるバンリキ魔王が大変嫌な味を出す中、パトロール中のデンジレッドを攻撃するヘドラーだったが、虎の子のミサイルを大きく外した上、デンジミサイルの一撃であっさり撃墜され、前回に続いてのフォーカスながら、いまいち振るいません(笑)
前作『バトルフィーバー』のヘッダーやサロメに比べると、今日まで繋がる“悪の幹部キャラ”の系譜に明確に位置するヘドラー将軍ですが(人相悪く化粧して髭を蓄えているものの、その気になれば美形悪役路線も可能だったでしょうし)、それ故にこそ、今見ると因縁不足や掘り下げ不足が気になってしまうものの、鉱脈の在処を示した点では、シリーズに大きな足跡を残したと言えそうでしょうか(そこにロボットアニメの影響なども絡んでくるのでしょうが)。
戦闘機がど派手に弾け飛ぶと、レッドは墜落現場で爆風からヘドラーをかばい、いきなりの
「傷を負った者は、殺せない!」
は、幾らなんでもちょっと無理が……と思った直後に、
「だが貴様を捕虜にする」
で、極めて実際的な理由でした。
ベーダー一族の異変を把握する為に将軍を捕らえ、ベーダー一族にジュネーブ条約の適用は無い! と電気ショックで拷問にかけ、げふんげふん、平和的に話し合いの場を持とうとするレッドだが、戦闘員の援護射撃を受けたヘドラーは、超異次元へと撤収。
「腰抜けめが! おまえそれでも武人か!」
「……もう一度チャンスをくれ。今度こそ倒してみせる。……この、通りだ」
「うるさい! この、くたばりぞこないが!」
頭を下げるヘドラーをバンリキ魔王は踏みつけにし……直前のシーンで「捕虜」の言葉を用いて、“寓意性のベールを一枚剥いだ”後に、〔特攻に失敗して生き延びた兵士を「くたばりぞこない」と罵る〕のはどうも、「戦争」のニュアンスが直截に入りすぎた印象ですが、ここではバンリキ魔王が「体制の悪」にスライドすると共にヘドラー将軍が母を守ろうとする「忠国の士」として描かれ(それもまた全肯定されるわけではないものの)、悪役サイドの動乱を最終盤のスパイスとした結果、バンリキ魔王を“倒すべき悪”として構築する為にベーダー一族の“悪”に関しては、何やらぼやけてしまった感があります。
「けっ、乳離れしねぇ坊やだ。えぇ、ヘドラー」
将軍を徹底的に罵倒した魔王は、モンスを連れて自ら地上へ繰り出し、迎え撃つデンジマン。
「ようこそ、デンジマン。お忘れかな、宇宙の用心棒・バンリキ魔王! こいつは、わしの子分でバンリキモンス。まあよろしく。」
……なにぶん、およそ1クールぶりの再会なので、あまり冗談になりません。
「ところで、おまえさんがたも名乗っちゃくれまいか」
余裕を見せる魔王に促され、
「見よ! 電子戦隊!」
「「「「「デンジマン!!」」」」」
から戦いを挑むデンジマンだが、モンスの念力と魔王の怪力の前に手も足も出ず、大苦戦。
女王らはその光景をモニター越しに見つめながら歯がみしており……もう、今の内に地球を離れてしまえばいいのでは(笑)
「おまえら何をやっととるんだ! もっとしっかりせい!」
必殺デンジブーメランもモンスの念力で巻き戻されて、あわや電子戦隊がスパッとなるところでしたが首の皮一枚繋がり、荒れ狂う暴風として高笑いするバンリキ魔王、最初からこれぐらいの力を見せつけてくれていればもっとインパクトがありましたが……腹を満たしてモンスを出産してからこそが本領発揮、だったのでありましょうか。
それはそれとして、登場回でバンリキ魔王の行動原理になるように与えられた「デンジ星人への呪い」について一切触れられないので、現在、ラスボスは通りすがりの暴れん坊になる瀬戸際です。
レッドは、掟破りのデンジタイガー自動操縦から地上を爆撃しようとするが、モンスの念力はデンジタイガーの巨体さえ意のままに操り、もはやモンスの方が本体のような勢い……というか、尾ひれの付いたバンリキ魔王の伝説、半分以上はモンスの実績なのでは。
「女王様……ヘドラーめに、ベーダーの剣を授けて下さい」
このままバンリキ魔王がデンジマンを倒すのは我慢ならない、と武人として最後の矜持を見せようとするヘドラーは、ベーダー一族の秘宝を手に戦いに乱入すると、自らを怪物と変えていきなりの巨大化。
魔王は帰宅し、ダイデンジンとの一騎打ちになるとデンジボールを破る巨大ヘドラーだが、顔面に連続パンチを浴びてよろめいたところに満月斬りが放たれると、受け止めようとしたベーダーの剣ごと真っ二つにされて絶命し、これが3000年にわたり錬成を繰り返してきた、対ベーダー特効(+2500)の威力だ!!
「……ヘドラー将軍に、敬礼!」
仇敵の最期に敬意を払うデンジマンですが、正直、戦いを通して違いの力を認め合ったような関係とも思えず(ヘドラー側の執着はあっても、デンジマン側からの認識は薄そうで……)、バンリキ魔王と対比する為に、あくまで国(星)と国(星)の戦いとして、忠義の為に戦い抜いた烈士として葬る……のはどうも、ベーダーの位置づけを強引に歪めてしまった感。
死闘をくぐり抜けたデンジマンは美しい夕陽を見つめ、一人だけ、血の色みたいだと空気を読まずに呟く緑川。
ぐだぐだ侵略ライフの末に自壊の坂を転がり落ちるベーダー一族だが、玉座と忠臣を失ったヘドリアン女王は如何なる動きを見せるのか? そしてデンジマンは、宇宙の暴虐バンリキモンスとお供の魔王を打ち破る事が出来るのか?!
次回――最終回!