『電子戦隊デンジマン』感想・第49話
◆第49話「ベーダー城大異変」◆ (監督:小林義明 脚本:上原正三)
「あははははははは! そんな教え方でよくコーチが務まるねあんた?」
とても久方ぶりにテニスを指導する桃井を嘲り笑う、サングラスにテニスウェアの謎の男。
道場破りのごとく繰り出される連続サーブを受ける桃井は、息もつかせぬ連打の中に放り込まれた殺人ボールをひらりとかわすとデンジスパーク!
テニスウェア×バイクで逃走する男を追うと、漆黒のフードに耳を包んだ不気味な老婆と出会い、老婆の示した廃屋に足を踏み入れたピンクは、揺り椅子に腰掛けるテニスマンに指を突きつける。
「ヘドラー将軍!」
……あ、バレてた(笑)
正直、顔に覚えがなくても許される縁の薄さでありますが、ヒゲ無し爽やかスマイルのヘドラーが振り返るとカラクリラーへと変貌し、ゼンマイスティックに追い詰められたピンクは、本物ヘドラー将軍の高笑いを受けながら、深い闇の中に落とされる……。
「おいしそうなアンパンですねぇ」
「ええ。アンパンが、好きでねぇ」
続けて、アンパンが絡むと頭の配線がおかしくなる青梅が、アンパンを食べていたタクシー運転手へにこやかに話しかけ、アンパンとは全ての宇宙を繋ぐ真なる円の象徴であり、9999のアンパンを積み重ねた山の頂より、見よ、虹色に輝く蛆虫の王が八頭立てのヒツジに引かれてやってくるのだ!
「僕も生まれつきアンパンに目がなくてねぇ」
もはや己の狂気にも気付かない青梅がアンパンガスを受けて昏倒したのに続き、緑川と黄山はチエコから怪盗X逮捕への協力を持ちかけられ、桃井のテニス対決の後、青梅には曲芸対決、緑川にはギター対決、黄山には料理対決を挑んでいたら完全に後の井上メソッドでしたが、さすがにそこまでにはなりませんでした(笑)
迎賓館の前には、物凄くごつい、洋装の美女(?)が姿を現すとヒラリと樹上に飛び上がり、その姿は一瞬でシルクハットに黒マントの怪人に。
「怪盗X!」
「さらば、友よ!」
何を言っているのかもうよくわかりませんが、よくわからないのが全ての前提であり、七変化がそのまま魔空空間として進行していきます(笑)
黒マントを追った緑川と黄山は廃屋に辿り着くと二手に分かれて探索するが、緑川の前には鎧武者が現れ、デンジスパーク!
真剣白刃取りを見せると多彩な蹴り技で鎧武者と互角の戦いを見せるグリーンだが、飛び蹴りをかわされて落とし穴へと落下。その悲鳴を聞いた黄山もデンジスパークすると地下へと侵入するが、謎のマジシャンに扮したヘドラー将軍の策に引っかかり、鋼鉄の檻に閉じ込められてしまう。
「残るはレッド……デンジレッド一人だ!」
テニスマン・老婆・タクシー運転手・美女・怪盗X・鎧武者・マジシャン……ここまで7つの変化を見せたヘドラー(一部、絡繰りラー?)が奇天烈時空を発生させる事でデンジマンを各個撃破していく趣向なのですが、デンジマン、これまでの描写から個々の戦闘能力はそこまで高くないので、一騎打ちに持ち込んだ上でトラップを用いる将軍が、いまいち弱く見えて困ります(笑)
まあ将軍、どうも自分の知謀は90台だと思い込んでいる節があるので、力押しは美しくないとかロマンとエレガントへのなにがしかのこだわりはありそうですが。
アカギランドにピエロが現れてこれまでの顛末を紙芝居で語り、それを物陰から伺う灰色ジャケットの赤城。
(詳しく知りすぎている……)
赤城は怪しすぎるピエロを追うと、静まりかえった無人の遊園地、という小林監督の大好きなシチュエーションとなり、次々とメリーゴーラウンドにまたがって変装ヘドラーが姿を見せる、だいぶ手間のかかってそうな映像。
「ははははははははは!」
「怪盗X!」
「赤城一平!」
そこに高所からの笑い声が響き渡り、何故、みんな当然のように知っているのか怪盗X。
今回の作戦の仕込みとして、事前に怪盗活動してたのヘドラー?!
地上に降りた怪盗Xは赤城の前に立ち、片目の運転手など明らかに多羅尾伴内オマージュなのですが、今回も「ある時は……」はなく、しかしてその実体を見せたヘドラーは、幻覚に囚われ、ジェットコースターにぼんやりと乗る青黄緑桃の姿を指し示す。
「長い戦いだった……屈辱の連続だった…………ワシは恨むぞ貴様を。電子戦隊のリーダーである貴様を!」
「おまえ達が侵略を続けるかぎり、俺達は戦いをやめん」
「ゆくぞレッドぉ!!」
「望むところだ! ――デンジスパーク!!」
デンジレッドはスティックを手にヘドラー将軍とぶつかり合い、遊園地を舞台に一騎打ちが繰り広げられるのですが、両者の間にそこまで強い因縁は生まれていないので盛り上がりは今ひとつになり、やはり中盤に一回ぐらいは、レッドvs将軍の直接対決が欲しかったところです。
「ワシは誓った! この剣で貴様の心臓を抉ってみせるとな!」
レッドを追い詰めるヘドラーだが、必殺の一撃を回避されると、ヘドリアン女王の命令を受けたカラクリラーが背後からレッドを羽交い締め。
武人として一騎打ちでの勝負にこだわるヘドラーが、味方のカラクリラーをショルダーアタックで弾き飛ばすと、その間にレッドはコースターを止めて4人を救出し、ヘドラー将軍を完全無視するだけに、コースターの仕掛けも、もう少しタイムリミットサスペンスなりは欲しかったところです(3周目の最後に爆発するとか)。
「二人の勝負はまだついていない! 行くぞ、ヘドラー!」
5人並んだ電子戦隊はフル名乗りを行い……二人の……勝負……?
話が違うのでは……? とヘドラーはカラクリラーと戦闘員をけしかけて撤収し、集団戦の後、デンジブーメランによりカラクリラーは巨大化。頭部をすぽっと飛ばして絡繰りバルカンを打ち込んでくる巨大カラクリラーだったが満月斬りでさっくり両断され、城へと帰還した失意のヘドラーを待っていたのは、孵化器の異常。
内部では怪物の卵が一つ、これまでにない異様な動きを示しており、女王の命令で卵を破棄しようとするヘドラーだが、ガス噴射にも耐えた卵の中から、不気味な生物が誕生する。
ベーダー一族を象徴するギミックであった「卵」が、ベーダー一族に予想外の災厄をもたらすのは面白いひねりとなり、急成長を遂げた生物――バンリキモンスが噴き出したガスを浴びたバンリキ魔王が燭台器より復活し、政変再び(2話連続2回目)。
バンリキモンスの噴き出したガスを浴びた戦闘員が豆粒のように小さくなると、バンリキ魔王がそれを鷲掴みにして食べてしまうのは、規格外の魔王らしくなり(ベーダーにとっても異質な、“鬼”的存在である事を改めてアピール)、再び玉座から引きずり下ろされるヘドリアン女王。
「ベーダー城を、征服したぞ! うわははははははは!!」
……バンリキ魔王はすっかり目的を見失っている感じですが、そもそも、特に目的は無い存在なのではありましょうが。
ナレーション「ベーダー城は、再び、バンリキ魔王の手に落ちた。どうなる、ベーダー一族!」
心配するところではないのですが、心配したくなる気持ちは少しわかります(笑)
ラストを控え、七変化ネタでヘドラー将軍にフォーカスを当ててくれたのは良かったですが、将軍にしろバンリキ魔王にしろ、デンジマンとの直接的な因縁は薄く、背景にあるデンジ星の因縁は1クール目に海釣りラーで消化してしまい……物語の起伏としては、1クールに1回ぐらいは、海釣りラーレベルのSRベーダー怪物を引いてほしかった感。
今見るとどうしても、トータルの構成における足りないピースが目立ってしまうところでありますが、いよいよ最終決戦の時は迫り、次回――やたらメタ寄りのナレーションで、将軍ビッグバンプログレス。