※最近、『ガヴ』の視聴が週の後半になりがちなのは、「今週こそ『ガヴ』が面白くなかったらどうしよう……」という謎のハードルが発生している為なのですが、今週も面白かった! 良かった!
『仮面ライダーガヴ』感想・第11話
◆第11話「あまい言葉にご用心!」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:香村純子)
ショウマは貯めたバイト代で初めての寿司@無回転を堪能しており……君は絶対、ひゃっほぅ! 5000円分の駄菓子パーティだ!! とかやってくれると信じていたのに、普通に蓄財の概念があって私はガッカリです!
眷属こそ生まれないものの、お菓子以外も色々食べたいとノートに書いているショウマは、店内で会話を耳にした鳥谷栄美と葉奈の姉妹への営業に成功して、はぴぱれへと案内し、こと勤労精神に関しては、ランゴ兄さんとわかりあえるかもしれません。
「で、えーと……今日はお姉さんの栄美さんのカレシが、胡散臭い、て事で合ってます?」
しゃちょーーーーー!!
胡散臭いと言えば、この事務所も大概、胡散臭いですよしゃちょーーー!!(多分、色彩が奇抜すぎて、訪問者の正常な判断力が失われがち)
「別に、胡散臭くはないんですけど……」
「そーなんですよ! ていうか、まだ会った事も無いのにカレシとか言ってんですよこの人」
社長の先制パンチで始まった姉妹とのやり取りがテンポ良く進み、ネットで知り合いSNSで告白してきたという相手と会うに当たり、姉が騙されていないか心配する妹だが、出てきたカレシの写真は……辛木田絆斗だった。
|はじめましてニワです。
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プロフィールがもう、泣くほど胡散臭かった。
「この人、知り合いなの?!」
「ヤバ、運命的……」
恐らく、ちょっと夢見がちなところがある姉(妹いわく「騙されやすい」)の呟きに、妹が口をへの字にするのが姉妹の間合いとして絶妙で、ズバズバ辛口ながらも姉を心配している妹と、妹に色々言われるけど割と我とメンタルの強そうな姉、なんだかんだと仲の良い姉妹の関係性がユーモアを交えながら伝わり、演出・脚本・芝居の噛み合った、良い導入。
「……辛木田さんが、栄美さん騙してるってこと……?」
「いやいやちょっと待て落ち着こ」
ショウマと幸果はこそこそと小声で会話をかわし、フリーランスの悲しさか、辛木田絆斗さんの社会的信用度は微妙だった。
「登録ネーム、は……ニワって書いてあるし、顔が激似なだけかもしれない」
妹に促されたショウマと幸果は、愛を語らうメッセージのやりとりを確認し……浮世離れした気障でくさい言い回しを連発する絆斗容疑者……ある意味、これはこれでありそうで困ります。
「うわ、なんの話してんのこいつ? 地球温暖化?」
「でしょ」
先程から判定の厳しい幸果は妹さんと意気投合する一方、ショウマは情熱的だと栄美に賛意を示し、考えてみれば絆斗のプライベートはよく知らないし、あれで手帳に愛のポエムを書き溜めているのかもしれない、と幸果は本人のダイレクト呼び出しを実行(連絡先はわかっているわけですし、ここで変に遠回りしないのが、ストレスの無い作劇です)。
その頃ストマック社では、めでたく解雇された双子がランゴ兄さんから、政略結婚の駒になるよう命じられていた。
「我がストマック家の立場をより盤石なものにするために、パイプ役が必要だからな。――そのくらいは役に立てるだろう」
ランゴ兄さんの華麗なる悪役貴族ムーヴに対して、なによりも「引き離される」事に双子が愕然として言葉を失うのが上手いところを付いてきて、テーブルの下で互いの手を重ねる事により、「意志」を示してくるのも上手い。
なおこのシーンでランゴ兄さんに書類を渡しているのが赤いエージェントなので、以前に、絆斗-塩谷を見張り、キノコに塩谷を襲わせたのはランゴの眷属のようですが、うーん……どういう繋がりになるのやら。
はぴぱれには呼び出しを受けた絆斗が顔を出しており、事情を説明されて問題のやり取りを確認。
「これは俺じゃない」
と結論づけると、顔写真を勝手に使われて怒り心頭の絆斗は、相手を取材して記事にしてやると栄美に代わって待ち合わせ場所に行く事を宣言し、それはそれとして、その決めポーズの写真は、一体いつなんの仕事の為に撮ったのですか。
ロマンス詐欺(?)に逆襲だ、と息巻く一同の中、一人浮かない様子の栄美を気に懸けるショウマだが、問題の翌日――絆斗が雑居ビルの喫茶店に乗り込んでいくと、途中の廊下の椅子に不自然に腰掛けている小学生の姿を上からのカメラ映像への切り替えなどで示すのが、シリーズではあまり行わない不条理系の違和感の見せ方で、上堀内監督は相変わらず凝った演出。
栄美はニワに会いに行くのではないか、と気に懸けるショウマの言葉に幸果が葉奈に電話を掛けると、果たせるかな栄美が姿を消していて3人は待ち合わせの喫茶店の前で合流し……社長がインパクト抜群の服装で、ショウマの全身ビビッドカラーも霞む勢い。
ところがショウマらが喫茶店に入るとそこでは絆斗が待ちぼうけを食っており、栄美には電話も繋がらない。
途絶を告げる機械の音声に塩谷の一件を思い出した絆斗は立ち上がり、前回に続き、絆斗の行動原理の中に「復讐」だけではなく「悲劇を繰り返させない事」が入ってきているのが、抜かりの無いところ。
ショウマが、階段ですれ違った少年が何か見たかもと駆け出すと、絆斗も続けて飛び出していき、すれ違いにならないようにと葉奈には喫茶店に残るように言い含めてから自分も捜索に向かう幸果、判断力が優秀な上に話の展開もスムーズにする、ダブルでいい仕事です。
幸果は栄美を捜し回っている最中、雑踏の中をただ真っ直ぐに突き進んでいくだけで周囲の注目を集める黒服の男を引き込まれるように凝視し、本当に幸果とファーストコンタクトしたーーーのですが、お互い目も遭わせずにすれ違うに留まりました。
そこは、「おい女、ここへはどうやって行けばいい?」と道に迷っていても良かったんですよランゴ兄さん!
人間界出張アニキは、日常に紛れ込んだ非日常、そこに居るだけで耳目を集める異質な存在、を強調したかったのかとは思われますが、ランゴ兄さんが特異な存在感を放っているというよりも、エキストラ大量動員のシーンそのものが露骨に浮いてしまい……どうも東映ヒーロー物はファンクラブエキストラの使い方が巧くない印象がありますが、予告時点で変なシーンになっていたのがそのままでありました(円谷の方が、この辺りは上手い印象)。
「なんだろう……うっわ! 鳥肌やっばッ」
魔風にあてられた幸果は我に返り、この先なにかあってもなくても、ひとまず幸果とランゴが人間界でニアミスの実績を解除したという点では、いいシーンでした(笑)
一方、ショウマは路地裏で赤いエージェントが少年の前に立っているのを見て飛び蹴りを叩き込むが、雑居ビルの廊下に居たこの少年こそ、栄美をプレスしたグラニュートの仮の姿であり、ニワだけに、ワニだった。
「ほぅ……それがおまえの眷属か」
ショウマがイートグミしようとしたその時、残念ながら道に迷っていなかったランゴ兄さんが、高みからショウマを見下ろすように登場。
「さあ見せてもらおう。人間の子が手に入れた力とやらを」
「…………見たけりゃ見てろ。俺はあんた達から人間を守るだけだ!」
シータとジープ、“切り離され、捨てられる”者への共感は見せつつも、ストマック社の惣領に対して改めて宣戦布告を突きつけてショウマは変身し、久々にきっちり瞳が紫色に光ってくれたのは嬉しかったところ。
ランゴの前で言うのも変ではあるのですが、残念ながら「どうする?」の問いかけは無しで戦いが始まり、頭上から室外機を蹴り落とされたり、逆にフェンスによじのぼって回避から移動したりと、今回も、高低差を生かしたアクションの工夫が光ります。
エージェントが動きやすいデザインな事もあり、敢えて狭小空間を舞台にしての、めまぐるしく攻守の入れ替わる接近戦も見応えがあり、まずは「倒す」よりも「プレスを取り返す」を優先事項とする事で、ガヴの動きに理屈と制限をつけているのも秀逸。
「おいアルバイトぉ、そのヒトプレスを守り切ったら、報酬の闇菓子をはずんでやるぞぉ」
激しい争奪戦の中、赤ガヴの力を見極める為にランゴはワニグラニュートを煽り、兄妹の中では組織のボスとして、他者を“動かす”タイプといった感じで色分け。
……ところで今作のグラニュートには、語尾の母音を強調して喋る傾向がある印象なのですが、もしかして:組長リスペクト。
「約束ですよぉ、ランゴ様」
栄美プレスを手にワニがその場を離れようとすると、追いすがるガヴには背後から自販機が叩きつけられ、ヤクザ兄さんが出張してきた事により、ここは今、神室町なのかもしれません。
「さすがランゴ兄さんの眷属……」
重みで動きを封じられたガヴが、剣をつっかえ棒にして脱出するのも気が利いており、二体の赤いエージェントを前にガヴが足止めを食う中、栄美を捜し回っていた絆斗が、逃走中のワニグラニュートと手にした栄美プレスを目撃。
よく考えるまでもなく「守り切る」の勝利条件が曖昧なままランゴに乗せられてしまったワニグラニュートですが、そこに第二の刺客ヴァレンが襲いかかり、ダッシュ変身からとにかく乱射(銃身ブレブレなのが、ぽい)、そしてドロップキックを放つのは、2号ライダーの役回りとして格好良く決まり、戦闘開始。
「赤ガヴ?! じゃないな、貴様ぁ!」
「後輩の、ヴァレンだ。よろしくな!」
ライダー社会は縦社会!!
両者、接近するとまずは蹴り技の応酬となり、ワニの大顎を上から踏みつけるも力任せにひっくり返されたヴァレンはバック宙で一回転すると地面に叩きつけられ……なんか、さらっとやってますけど、カット割りやカメラ位置で誤魔化しておらず、下、アスファルトでは……?
銃弾もワニの大口に飲み込まれ、ワニアルバイト、体の前面に突き出した巨大な顎部が存在感を主張しつつ、全体のフォルムはまとまりがいいのが秀逸なデザインですが、この顎が、今回のニエルブ博士のビックリドッキリ改造ポイントでありましょうか。
エージェントに苦しむガヴは、チョコカー発射による目つぶし&スリップから、バギー召喚で稼いだ時間でメカガヴを発動すると、左右に逃げ場の無い路地を、おのれらイチゴジャムに変えたるでぇぇとキャンディガトリング弾で埋め尽くしてエージェント二体を爆殺し……夜な夜な枕元でブーシュ父さんがストマック流クロスコンバットの教えでも囁いていたのか、割と戦闘センスの高さを見せます。
(いいかショウマ、まずはヒーラーを倒すんだ)
(ううぅ……まずは……ヒーラーを……)
再びワニを追跡するガヴをランゴは肩をすくめて見送り、とりあえず大物ムーヴに終始しましたが、グラニュート界では富裕層や上流階級に取り入って成り上がろうとしている真っ最中なので割と微妙な立場であり、果たしてどこまで上り詰めていけるのか。
食ったり吐いたり自由自在、なワニの大口攻撃に苦戦するヴァレンは、噛みつき攻撃に真正面から飛び込む捨て身から、ワニの握っていた栄美プレスをもぎ取ると、タイミングよく飛んできた先輩にパスし、一つ一つのプレス(命)を徹底的に大事にするのが今作らしくて、やはり前回はちょっと、大雑把に扱いすぎたなと。
映像的な要請もあったのかとは思いますが、全体のセンスはやはりいいものを見せてくれましたし、金子さんは今後も起用してほしいところです。
プレスから解放した栄美に怯えられるガヴは、敢えて近づく事で戦闘から離れた方向へ逃がすと、無言でうなだれる切なさを振り払ってヴァレンの救援に。
追い詰められたヴァレンには、ワニ必殺の大口ファイヤーが迫っていたが、その背後に飛び出してきたガヴが剣を振りかぶり、これはあれだ、ファイヤー発射寸前に上から強引に口を塞いで自爆させる流れだな、と工夫のあるアクションの釣瓶打ちに先読みで感心していると……間・に・合・わ・な・か・っ・た。
ガヴの一撃はまさかの空振りで、火の玉の直撃したヴァレンの変身が解除され……
「え…………辛木田さん?」
……そういえば、そういう予告だったで、つづく……予告で見ていたのにそれを忘れさせる流れの構築が、今回は本当にお見事でした!
アバンタイトル、妙にキラキラとフィルターのかかった寿司屋で始まった時はどうなる事かと思いましたが、姉妹のやり取りや双子の意志の見せ方が面白く、ショウマと絆斗、それぞれの行動も巧く噛み合って、なにより、戦闘シーンの光る一編でした。
率直にここ何年も、シリーズにおける「フォームを見せる」事に偏重した戦闘シーンが刺さってこずにいたのですが(勿論、バランスの問題なのですが)、地形ギミック・所持スキル・優先目標、と“今ガヴが出来る事をどう見せるか”の工夫が豊富で、特に今回は新フォームが出ないというのはあったのでしょうが、接近戦の最中に高速レバーグルグルからソーダパンチ! をあくまでもワンアクションとして見せるのは、その気になれば出来るのだな……と、藤田アクション監督の方向性には、今後も期待したいです(そういえば前作『ガッチャード』で福沢さんがどんな殺陣をつけるのかには興味があったのですが……録画は残してあるので、いずれ見たい)。
ランゴ兄さんはじっくりコトコト弱火で煮込んでいっていただきたく、次回――勿体ぶらずに素顔の2人が並んで変身するようで、いや楽しみ。