『牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第23話
◆第23話「追想」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:雨宮慶太/江良至)
見所は、生身で飛ぶ、クロウ。
続けて、大師をグリグリ踏む、クロウ。
2年前――死の床にあったアカリを救う為、その魂を移し替える器にしようと大師がマユリを盗み出していた事が回想で明らかになり……大師がそれだけ凄いという事なのでしょうが、この時点で、番犬所のセキュリティに問題が発生していた。
愛する女の魂(人格・記憶)を別の肉体に移し替えよう、とするのはいってみればアンドロイドテーマの変奏曲といえますが――大師視点における、マユリの「物」性の示唆でもあり――、この狂気の行為はアカリが術式の途中で事切れた為に失敗。
やむなくマユリを倉庫に返しに行った大師だが、封印の寸前、マユリが確かに「エイジ」と口にした事から、アカリの魂は確かにマユリの中に存在しているに違いない……とその復活の為にエイリスの復活を目指して活動を始めるのであった。
「アカリは生きている。あの女の中で、俺を待ってる」
「……大師!」
「来るなクロウ! 俺はおまえを斬りたくはない」
「あなたは僕の誇りでした! でも……あなたは道を外してしまった!」
前回に続き、ここでクロウがうだうだと逡巡しないのは、魔戒騎士の譲れない一線を示して(その点でクロウは、大師の薫陶を受け、雷牙と共に戦い、魔戒騎士として明確な独り立ちをしている)良かったところで、雷牙&クロウvs毒島の死闘が展開。
「冴島雷牙、悪く思うなよ。俺はおまえを斬る!」
「俺も容赦はしない。あんたを斬る!」
雷牙と毒島、両者が鎧を纏うと、黄金と赤銅、二人の魔戒騎士は命を懸けて切り結び、最強の魔戒騎士と互角以上の戦いを見せる毒島――邪骨騎士ギル。
「彼女は望んでいるのか?」
「何をだ?!」
「ホラーの力で甦る事を! あんたが騎士の誇りを捨てた事を!」
「……たわけぇぇ!」
妄執を動力に並々ならぬ力を発揮する毒島だったが、痛いところを突かれて、普通にちょっと、言葉に詰まった(笑)
結局これが毒島を突き動かす狂気を鈍らせたのか、呪符との複合技を打ち破った雷牙は毒島に剣を突きつけると、少年時代のアカリとの出会いと、毒島が身につけている鈴の来歴を語る。
……10歳でアカリをナンパするとはいい度胸だゴラァ! 俺はまだ動けんぞぉ!! と毒島のヤクザガッツに火がついてますます話がこじれ……る事態には幸いならず、生前のアカリが、毒島と同じ強さと優しさを瞳に見たという態でのろけた少年との出会いと言葉は、毒島に絶望よりも愛おしい思い出を蘇らせる。
「……刺せ。なぜ刺さない」
「……あの人が悲しむ。俺はあの人に言われたんだ。どんな強い騎士になっても、絶対に死んでは駄目だと。あんたもきっと、同じ約束をした筈だ!」
雷牙は、「あの人が悲しむ」という言葉を持ってして、死は人の必定だが、しかし完全なる終わりでない事を毒島に示そうとし、“命と想いを「繋ぐ」”は《牙狼》シリーズの中核を成すテーゼでありますが、同時に雷牙のパーソナルな在り方として“そこに居なくても繋がっている”というのが、一つの希望になっている事を感じさせます。
それでもなお、止まる事を良しとしない毒島だが、そこに駆け込んできたのは、エイリスから解放されたマユリ。
開花の地に移動する為の依り代を必要していたエイリスはマユリの体を奪おうとしたが、推しに託された使命としてマユリを助けようとするクロウが「僕は空を飛べるぞ。僕がおまえを運んでやる」と身代わりになって憑依された事情を語り、そこにふわりと飛んで現れるクロウ(笑)
……飛べるって、そういう事では無いような気がするのですが……?!
「今宵、我は花となろう――美しい花と」
愚かな過ちを認め弟子を救おうとする毒島はエイリスクロウに踏まれ、後輩を取り戻そうとする雷牙もステゴロでは勝負がつかず、中身はエイリスでありますが、ここに来てクロウが、推しと師匠を相手に一歩も引かない戦いぶりを見せるのは映像として面白く、遂に毒島をぶっすり。
おんどれ何さらすんじゃぁ?! と毒島は地面に倒れ、ノールックの掌底で雷牙を吹き飛ばしたクロウは、今度こそ吼狼を纏って夜空へと飛翔。
雷牙は毒島をマユリに任せて吼狼を追いかけ、天翔ける吼狼と、馬で疾駆するガロは、両者の特性が出て良いシチュエーションとなりましたが、負傷した毒島を預けられたマユリの方は、心の底ではさすがに、こいつ丸投げされても困るな……ぐらいは思っているかもしれません。
思う権利は、ある!
妄執を悔い、マユリの中にアカリの魂を宿らせてしまった事について謝罪する毒島だが、マユリはそれを否定。
「……あれはアカリさんが言わせた言葉ではない。あれは貴方が言わせた言葉だ」
眠りに落ちる寸前のマユリが「エイジ」と口にしたのは、空虚の器であるマユリの中に反響して戻ってきた、毒島自身の思いであった事が明らかになり、うなだれる毒島。
「俺は幻を信じて、エイリスの封印を解いてしまったのか!?」
「幻なんかじゃない。…………彼女はここに居る」
愛する者の実体を求めるあまり、己の中に確かにあるアカリの声から耳を背けていた事を指摘された毒島が、目を逸らし身をよじると、コートにつけていた鈴が鳴るのは美しく、毒島の耳にはこの時、2年ぶりに鈴の音が届いたのかもしれません。
「……これはおまえが持て。俺が持っている資格は無い」
「……綺麗」
毒島は鈴をマユリへと渡すが、そこに、あまり話の通じそうにない人影が。
「その傷は魔戒法師でなければ治せない」
「おまえは確か……闇の狩り師」
再登場した媚空さん、裏切り者は消毒あるのみ、と問答無用でバッサリ行くのかと思ったら意外と話のわかるところを見せると、雷牙の元へ向かうようにマユリを促し、なにやら金色のボールを召喚(ワープホール……? お助けアイテム……?)。
一方のガロは、時に刃を交えつつ吼狼を追いかけ、果たして黄金騎士は、後輩を取り戻し、エイリスの開花を阻止する事ができるのか?!
次回――
体を乗っ取られたという事はァ!
僕こそが究極ヒロインという事ですよマユリさぁん!!!
武道館に辿り着くその日まで、共に推しを輝かせ続けると誓ったあの日の誓いは幻だったのか?! おのれクロウ、謀ったなぁ!!!
…………良くも悪くも、毒島に対する雷牙の説得パート云々よりも、エイリスクロウの方が面白くなってしまったのですが、人質交換マジックによりヒロイン力をコンバートし、“推しに自分を追いかけさせる”捨て身の大技は、さすがに予想が付かなかったよクロウ……!!