『仮面ライダーガヴ』感想・第10話
◆第10話「特盛り! キャンディ砲!」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:金子香織里)
「ランゴ兄さんに示さなきゃ……」
「「俺たちは出来損ないじゃないって」」
トリックオアデストロイ! お菓子がほしけりゃセキュリティで丸焼きにするぞ大作戦が失敗に終わった双子が、せめて高品質のスパイスを納品する事で無職の烙印を回避しようと足掻く一方、絆斗はきらりが落とした焼き菓子の包みを手に取り……絆斗に! 現場で! 落とし物を発見させないで下さい!!
……絶対、わざとやってる。
「……まさか……きらりちゃんも?!」
絆斗が慌てて駆け出していた頃、ストマック社ではニエルブが機械を弄りながらニヤニヤといい笑いを浮かべ、そこを訪れるグロッタの姐さん。
「双子のこと手伝ってるんだって? お優しいこと」
「珍しいね。グロッタ姉さんがここへ来るなんて」
「ニエルブ、あんた赤ガヴの事も、私が出くわした邪魔者の事も知ってたでしょ」
「……どうして?」
「初耳ならあんたが興味示さないわけないじゃない。なのに黙ってた。悪い子ねぇ。なに企んでるの?」
ニエルブの反応の熟知からグロッタは鋭く疑問を呈し、暗躍担当だけが頭が回るわけではなく、兄妹ならではの間合いも含めて、それぞれの登場人物がしっかり頭を動かしてくれるのは、見ていて安心感。
「……企むだなんてやだな。僕は面白い実験をしたいだけ。改造したバイトくんたちの性能を示すのに、赤ガヴたちは丁度いいのさ」
「……ふーん」
ニエルブは全く悪びれず、グロッタは目を細め、立ち上がりの一桁話数、双子と上の兄姉それぞれを対面させてキャラクターの基礎を見せたところから、今度はその姉と兄のやり取りで次の線を描いてくるのが実に手堅いですが、他の兄妹よりは出番少なめになるのが懸念されるランゴ兄さん、こういう細かい肉付けが後回しにされた末、貴様らの小賢しい動きは全てまるっとお見通しなパーフェクトなんでも知ってる人か、或いは、貴様らの小賢しい動きは全てまるっと何も気付いていなかったスーパー節穴な人にならないかは、ちょっと心配です(笑)
工事現場で活躍したショウマは貰ったドーナツで法悦の境地に至り、絆斗は消えた菓子屋の情報追跡を幸果に依頼し、ショウマが一緒だと変身しにくい絆斗と、絆斗が一人では危険だと考えるショウマは、押し問答の末にそれぞれの真意と正体を隠しつつ同道し、問題の空き地へ。
「確かに……なんか甘くておいしそうな匂いが残ってる」
「犬か!」
ショウマが基本ボケなので、絆斗のツッコミの切れ味は、今後も大いに期待されます。
工事現場で聞いた話から、夜中に建物ごと移動したのではとショウマが閃くと、最初は否定した絆斗も、相手が人間離れした怪物だと思い改めたところに、幸果からの目撃情報が届く形で3人が連携するが、辿り着いたのはまたも空き地。
「このお店なら、ここにオープンしてましたよ。けど、急に何も無くなってて」
近所の人は、そういう事もあるかもしれない、と異変を消化しており……これが……正常化バイアス……?
そこへ姿を見せた眷属ライダー隊の情報により、問題の菓子屋が幼稚園に現れた事を突き止めるショウマだが、今度は幼稚園まるごとが忽然と消え去っており、怪人のモチーフと掛けたトンデモ能力、お菓子はこだわりの手作りみたいなのにガスとか水道とかどうなっているのだろうか……と疑問が生じ始めたところで、菓子店舗に限らずなんでも持って行けるとなると、うん、なんかもう、仕方ないね……みたいな気持ちになってきたので、繰り返しの勝利。
2回までは偶然、3回あったら必然、なんて言い回しはありますが、トンデモ異能力も3回見せられると、もうそういうものなんだな……と納得感のハードルが下がるなと(笑)
本日3つ目の空き地と遭遇し、またも何かが地面を引きずるような跡を発見したショウマと絆斗は、まだ新しいそれを追う内に辺鄙な野原に突如として出現した幼稚園を発見し、雑然として無人の幼稚園が軽くホラー。
「シータ様、ジープ様のご指示の通り、ノルマの数は揃えました。ええ、では早急に、納品に伺います」
中では、解雇の崖っぷちに焦る双子の要請に応え、幼稚園でお菓子を配る大技で大量の人プレスを入手した菓子屋が報告を行っており、これまで登場した男性型闇バイトと比べると、妙に二枚目で声が格好いいのが、変な面白さがあります。
グラニュートと、大量の人プレスを詰め込んだトランクを確認したショウマと絆斗は、互いの都合により挟み撃ちの名目で二手に分かれようとするが、ショウマが《隠密》判定に失敗して音を立ててしまうミステイク。
「仕方ねぇ。奴は俺が引きつける。その隙に逃げろ」 (※別行動したい)
「いやちょ、ここは俺が」 (※別行動したい)
「いいから、(は・や・く)」 (※別行動したい)
「…………わかった。気をつけてね」 (※……あれ? 別行動できるぞ)
(……あっさり逃げたな)
お互い、自分の都合の良いように立ち回ろうとした末、都合の良い状況になった筈なのに何やら釈然としない絆斗の呟きに大爆笑したのですが、理に徹しきれない人間味がぽろっと顔を出す面白さに、突飛な言行や派手な顔芸抜きで話の組み立てによるユーモアを成立させていて、どこベースかはわかりませんが、こういうセンスは今後も期待していきたいところ。
ショウマが裏に回っている内に、絆斗は真っ正面から教室に乗り込むと菓子屋と対峙し、菓子屋はヤドカリグラニュートへと変身。
「子供ばっか集めやがって……大の大人は襲ねぇような腰抜けに、負ける気しねぇな!」
「ばぁかめ。俺が子供を狙うのは質がいいからだ。純粋な子供の幸せの方が、高級なスパイスになるんだよ。ふふふふへ……」
ヤドカリグラニュートがこれ見よがしに人間プレスを取り出すと、絆斗がきらりプレスを目にするのがそつが無く、確かに大人だと、(カロリーが……)(エンゲル係数が……)(健康診断が……)と雑念が多くなりますね!
「見ろこの笑顔。俺の菓子で幸せしてやったんだ。感謝してほしいなァァ!」
「なにが幸せだ…………外道野郎。――変身!!」
怒りのヴァレンが殴り合いを始めて外に飛び出すと、離れたところで変身したガヴも参戦。
「ヴァレン、俺も手を貸すよ」
「先輩ッ」
令和の仮面ライダーも、縦社会だぜ!!
ガヴはヤドカリグラニュートの顔面にキャンディの眷属を叩きつけると(『ゴーオンジャー』みたいなギミックで、ミニカーに乗った眷属を剣から発射)、それを回収して早速メカガヴ。
「こんなところで、やられてたまるかぁー!」
ヴァレンとメカガヴ(あのデザインで動き回ってて凄い)の連携を受けて追い詰められたヤドカリが大回転すると、背後の幼稚園が畳まれて巨大な外殻と化し、ヤドカリグラニュート自身も、それを背負って歩ける巨大な怪物の姿へと変貌。
ヴァレンの銃弾をものともしない巨大ヤドカリ外殻だが、ガヴのキャンディ特盛りキャノンの前にはあっさり砕け、殻の中からこぼれ落ちる大量の人プレス。
危うく大量殺人を犯すところだったガヴですが、ヴァレンがチョコ結界を広げると地面に落ちたプレスを回収していき、ガヴの火力だけで全てを蹂躙せず、ヴァレンとしっかり共闘の形に持っていったのは目配りのあって良かったところ…………まあ、キャンディキャノンが大雑把すぎて、割れたら死んでないかだいぶ不安になるのは、派手さ優先で少し雑になってしまいましたが。
全てのプレスを回収すると、最後は、バギーキャノンと、ショルダーキャノンによるキャンディ特盛り乱れ打ちにより、仮の宿ごとヤドカリグラニュートを粉砕し、CGの大型エネミーという事で景気良くリアル大爆発させましたが…………幼稚園、は…………?
プレスからの解放は代表してきらりだけが描写される形となり……一度に多数の人プレスを取り戻すと、〔手作業で一つずつ切っていくのかと思うと凄く大変&その場で目を覚ます設定なので大パニック不可避〕な点については、潔く無視され、最後の最後で、基本設定の壁に正面衝突してしまいましたが、作品としては今後も処理の厄介な要素が顔を出すことに。
あちこちに分散させた上でプレスを解放するぐらいは、ゴチゾウに命令して可能なのか、或いはこの数話の間に、人プレス解放奥義・ポテト百烈剣ぐらいは閃いたのか……。
ヒーロー側が特盛りなので、一人二人を助けて小さなシノギを潰すのではバランスが悪いという判断は働いたと思われますが、画を優先しすぎて勢い余ったコースオーバーとも、いずれぶつかる問題を早めに勢いで処理しておいたとも取れる感じで、なんにせよ、大量の行方不明者が大量に帰還する事件性は物凄く高く、国家安全局0課の始動が早急に求められます。
菓子グラニュート事件は解決したが、忘れていた事が一つ……ガヴ/ヴァレンが揃って、唐木田/ショウマがグラニュートと一緒に爆発していないか心配するのが心中表現演出で描写され、それはそれとして、
「あんたのそれ……分けて貰えないか」
と、変身用バッテリーもとい眷属の無心を切り出すヴァレン。
それを聞いたガヴは、ヴァレンが「前の俺みたいに、眷属を出せないグラニュートなんだ」と勘違いすると、きつい思いをしてきたに違いないと自分を重ねてチョコレートの若い衆をまとめて譲渡し、これが本当の鉄砲玉です。
事務所に戻ったショウマは幸果から絆斗の無事を聞くと、絆斗がショウマを心配していた事を伝えられ、
「辛木田さんて……思ったよりずっと、優しい人だね」
と友情を感じ始めるのは、希望の光か、はたまた、落とし穴への第一歩か。
その絆斗は、約束通りきらりにダンスのステップを見せてもらい、絆斗と少女の間合いがなかなか面白かったので、もう少し心の繋がりが掘り下げられても良かったかなと思いましたが、それは前編で片付いた事にされて、後編はガヴ(ショウマ)とヴァレン(絆斗)の共闘(同行)を中心とした作りとなりました。
メタ的には、「母」を喪い、「父」親代わりも喪って、赤い復讐の仮面と化した絆斗が、「妹」分を助ける事により、ヒーローとして一つステップアップを果たす流れが『V3』の本歌取りを感じさせるのは、今作の方向性からして狙った仕掛けでありましょうか。あまりやりすぎると内輪ウケの楽屋ネタになってしまいますが、今のところは本筋の面白さに、『V3』知らなくても問題ない作りに収まっているので、許容範囲。
一方、東映ヒーローあるところマッドサイエンティストあり、目指せ、昭和を越える令和の暗黒駄メンター(まあ現在の絆斗からの好感度は、0.1ぐらいですが……)と鼻歌交じりで研究所へ戻ってきた酸賀が、「置き配が届きましたよ~」と中に入っていたUSBメモリを読み込むと、画面に映し出されたのはヴァレンとガヴがヤドカリグラニュートと戦う映像。
「おおぉ、絆斗くんてば俺の知らないとこで実戦重ねてるねぇ。それにしても……さすがオリジナル、どんどん進化してる。やっぱり、素体がグラニュートだからかな」
言行よりも何よりも、この場面でかかっているBGMが不穏すぎるのですが、果たしてその正体と真意や如何にで、つづく。
なにかと展開のスピーディな今作ですが、次回――ランゴ兄さん、人間界訪問! そして、仮面チョコダー顔割れでSNS大炎上?! 他に起きそうなイベントの大穴は「ランゴ兄さんが幸果に一目惚れする」(単勝365倍)です!