『牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第22話
◆第22話「番犬」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:江良至/雨宮慶太)
エイリスの再封印を妨害し、雷牙らの前に遂に姿を見せた裏切り者の正体は、元老院付きの魔戒騎士にして影の軍団の頭領――毒島エイジ。
…………哀川翔が演じているからというわけではないと思うのですが、何やら急に、伝奇アクションというより、ヤクザ映画かヤンキー漫画のようなネーミング(笑)
「クロウも裏切ったかもしれません」
「どういう意味です?!」
以前にクロウが口にしていた「大師」こそが毒島エイジであり、
「クロウは彼の命令で、貴方を探っていたのかもしれません」
と神官が懸念を示すのは、前半やたらと意図が不明瞭にされていたクロウの、あり得たかもしれない展開でありましょうか。
「俺はそう思いません。クロウは俺の仲間です」
力強く断定した雷牙は、エイリスとの決着が近い事を感じると、今回のミッションが終了したらマユリを自由にしてほしいと上司に直談判。
「あの子を水槽に……暗闇に返さないと。…………約束して下さい」
意を決して踏み込んだ雷牙に対し、一存では決められないと拒絶する魔戒上司だが、気持ちは伝わったので善処しましょうと微笑み……あれ?! 番犬所の人なのに、話が、通じるぞ?!
雷牙が去った後に、冷めた表情になって鼻で笑うようなカットが入る事もなく…………ま、真心が…………通じた…………?!
……まあ、お父さんも割と問題児でしたし、ここで組織最強の手札にいらぬ不満を抱えさせるよりも、前向きに検討する姿勢ぐらいは見せておいた方がプラスになるという判断が働いたのかもしれず、善処するとは言ったが議題にあげるとは一言も云ってはいません。
その頃、毒島の捕捉には成功するも、ぬけぬけと「ちょっと休憩したいです」と言われて思わず待機してしまっていたクロウは、師の真意を問い質していた。
「大師! 何故です?! もしエイリスの花が咲いたら……!」
「……俺の思いを叶えるためにエイリスが必要だからだ」
「…………大師、あなたを拘束します! ――我々は番犬。何があろうと、指令に従うのが使命。僕はそう……貴方に教わりました」
あくまでエイリス復活を望む師匠の姿に、魔戒忍者の掟にござる、と剣を向けるクロウだが、毒島はからからと笑って余裕で背中を向けると符術でクロウの剣を封じて姿を消し、街には最後の石板ホラー(ホステス風味)にエイリスの種が宿ると、その気配を感じ取るマユリ。
「……ゴンザ」
「はい」
「帰ったらスープが飲みたい」
「……かしこまりました」
マユリが独りでホラーの元に向かおうとする中、先んじてエイリスの気配を見つけ出した大師がホステスホラーと激突し、強いぞ大師……魔戒騎士なのに力押しだけじゃないぞ大師!
雷牙はクロウと合流し、毒島の目的は2年前に病死した恋人の蘇生ではないかと疑われるが、たとえ肉体は甦っても現世を去った魂の固着は出来ない……筈。
「ホラーの邪気なら閉じ込めておける器はあるが、魂を封印するすべはない」
「……魂を封印する器」
「もしかして?!」
そこで、人の身でありながらホラーを封じる力を持った特異な存在――マユリが浮上して点と点が繋がるのは成る程で、身柄を狙われるという事は、やはり私が真のヒロインだったようだな雷牙!!
……まあまだ、超時空ヒロインたるお義母様が逆襲してくる可能性はゼロではないので、油断してはいけません。
マユリを捕らえた毒島が最後の石板ホラーを消滅させると、隠れ蓑を失ったエイリスの種子は言葉を発し、毒島の望みに応えて遺髪から死者の蘇生を開始。
外法に手を染めし一人の男の望みが現実に近づき、エイリスが花開く時、死者もまた甦る……のですが、エイリス覚醒とは魔界と人界が一つに繋がる破滅を意味する――といった点について第2話以降に全く言及されていないので、「世界を犠牲にしてでもたった一人の女を取り戻そうとする男の妄執」も「迫り来る人界存亡の危機」のいずれも迫真さに欠けるのは、半年間の物語の最終章としては、残念になった部分。
意図して季節感を排除している《牙狼》世界においては、「約100日」=「しばらく先」以上の意味は無かったのでしょうが、それにしても「あと3ヶ月ぐらいで世界が滅びるかも」と最初に設定した割には、魔戒騎士サイドに切迫感の欠片も存在しないまま話が進行した(雷牙にしても、マユリの心配をしているだけ)のは、それを重視しない作風だったにしても、クライマックスに向けた要素の連動としては物足りない部分となりました。
大師はアジトに乗り込んできた雷牙とクロウと激突し、大師のぶら下げている鈴がなにやら強調されると、大師の死んだ恋人とは、かつて少年雷牙が出会った心優しき魔戒法師・アカリだと明らかになって、雷牙の過去と大師の思いが浅からぬ因縁として接続。
「その人は死んだんだ! 死んだ者が甦ることはない!」
「余計な情は捨てる! 自分の使命を貫く! それが魔戒騎士の生き方じゃなかったんですか?!
「そうだ……俺はそうやってずっと生きてきた。ホラーを狩り、人々を守り、そんな俺が……。……たった一人の命を守ることがなぜ許されない?」
黒幕の行動原理は「世界か個人か」「滅私の中に芽生えた我執」といったオーソドックスな命題になりつつ、大師の宿した妄執が、マユリの自由を求める雷牙と根底のところで共鳴する仕掛けとなり、ぶつかり合う刃と刃。
「その為に、ホラー達を解き放った!」
「……俺にはアカリが全て。アカリが居ない世界に行き続ける意味はない!」
“魔戒騎士の生き方”そのものにアンチテーゼを突きつける毒島が、2対1をものともしない凄まじい力を発揮し、お義母様の逆襲を警戒していたら、見えない位置から回想ヒロインの猛襲を受けたマユリは、果たしてこのまま逃げ切る事ができるのか?!