『仮面ライダー(新)』感想・第6話
◆第6話「キノコジン 悪魔の手は冷たい」◆ (監督:山田稔 脚本:平山公夫)
見所1は、変身モーションを途中で戦闘員に阻止される洋。
見所2は、変身モーションの途中で戦闘員の飛び蹴りを受ける洋。
見所3は、結局変身できずに、消火器で怪人と戦闘員を撃退する洋。
後世のツッコミやパロディが、実は本家本元で既に行われているパターンの一例でありましょうか……消火器はさすがに強すぎましたが(これはこれでパニックホラーなどのパロディ風味?)、変身モーション中の洋に炸裂する戦闘員の飛び蹴りが、やたらと思い切りよくて印象的(笑)
脚本二番手に入ったのは、長石多可男ともども助監督や脚本などでシリーズ初期から参加している平山公夫で、スカイライダーの空中パトロールからスタート。
(この現代に悪魔の存在など、とても信じられない。もしかするとネオショッカーが……)
スカイライダーの読み通り、ネオショッカーは悪魔峠の地下において、凄まじい生命力を持ったキノコを素材に改造人間を作り出しており、暗闇の中に巨大なサイボーグドクロの絵が浮かび上がると、次いでその前にゼネラルモンスターが姿を現すのが、インパクトのある映像。
……今初めて、ゼネラルモンスターがれっきとした大幹部に見えます!
「このキノコジンこそ、最強の改造人間と確信します」
ゼネラルモンスターは大首領に駄目そうな確信を語り、
「300年もの間、生き長らえた生命力と魔力を持ってすれば、ふふ、ふふふふふ……」
ネオショッカーもやはり、科学とオカルトを融合しようとする組織なのであった!
無数のキノコが寄り集まったような顔が大変気持ち悪いキノコジンは、洋の知己、看護師・三田雪江の姿を奪って成り代わると洋を背後から襲い、洋が見舞っていた車椅子の少女が階段から転落。
少女(の人形)は車椅子ごと前方3回転を決めると頭から地面に叩きつけられ、洋は洋で、毒胞子を浴びて頭からフェンスを乗り越えるとぐきぃっと首の骨の折れた音を盛大に響かせて斜面を転がり、映像に勢いがつきすぎて、双方とんでもない事になってしまいました。
改造人間の洋は、頭に包帯を巻き、左腕をギブスで吊るぐらいで済んだ一方、緊急手術を受けた少女は頭部を打ったショックの影響なのか目に包帯を巻いており、おもむろに登場した本物雪江は、自らのあずかり知らぬ一件の責任を問われて泣き崩れ……雪江役の泣きの演技がくどすぎるのと、背後で雪江を詰る病院長があまりにも感じ悪いのと、映像上は車椅子を階段に向けて押した張本人なのに特に雪江をフォローしようとしない洋が組み合わさって、大変困った場面に。
純真な少女の心が悪魔を見抜き、窮地に陥った献身的な看護師を救った……! と、持っていきたい方向はわかるのですが、そもそも「本物雪江と少女の関係性が具体的に描かれていない」ので、“少女から雪江への信頼”が厚みのない台詞の上だけにしか存在せず、冒頭の怪奇映像を優先するあまり、ドラマとして必要なピースを投げ捨ててしまった形に……需要と供給としては選択ミスとは言い切れませんし、どうも今回、脚本と演出のズレが目につく内容なのでありますが。
キノコ雪江は、少女を利用して怪しすぎる液体を洋に飲ませようとするが、怪しすぎて見破られるとキノコジンの正体を現し、本物雪江の失職と訴訟は回避。
だが洋はキノコ胞子の力で幻覚を見せられると海中へと誘い込まれ、この辺りも、若く未熟なヒーローの苦闘を描こうとする仕掛けの一貫だったのかと思われますが、筑波洋、毒耐性を持たない珍しい昭和ライダー。
ライダーガールズの出番は、海の向こうから手招きする幻影(酷い……(笑))で確保され、とうとう頭まで海水に沈む洋だが、水とキノコ胞子の相性が当然悪く、洋は水中変身で窮地を脱出。
「貴様は、水の中でも、変身出来るのか!」
志度博士がドサクサ紛れに緊急手術したので、誰も! スカイライダーのスペックを! よく知りません!
スカイライダーは逃げたキノコジンをライダーブレイクで追い詰めるとスカイキックで大勝利。
手術の成功した少女は、視力を取り戻すと自分の足で歩き回り……そもそも元来の入院理由について劇中で誰も触れていないのですが、一つ治ったら二つまとめて治った、みたいな事態に途中で入院理由が変わっているのではないか疑惑も浮上します。
中盤以降、視力を失った事も特にドラマ性に何も寄与せず、とにかくちぐはぐ。
少女は夢に仮面ライダーを見たと語り……前回の田代娘との共通点がここに見出されるのは偶然とは考えがたく、不自然な回復を見せる病状・都合良く現場に姿を見せていた志度・とても無事だったとは思えない車椅子大回転からの奇跡の生還――ここまで揃えばもう、答は一つしかない事は明白です。
「聞け、敬介。私は、いつかこんな日の来る事を見越していた。敬介、おまえの体は、もう人間ではない」
「え?」
「おまえの命を救うにはこの方法しか無かった、許してくれ。おまえは改造人間・カイゾーグとなったのだ」
「カイゾーグ……」
「おまえの体は、一万メートルの海底の水圧に耐える、強さを持っている。おまえの名は、仮面ライダーX」
事故後の少女が目に包帯を巻いてベッドで安静状態だったのは、肉体の改造に脳の処理が追いつくまでの期間であり、少女は無事に、人間としてのアップデートを果たしたのです。
そう、生き残るべき3分の1に…………本当の敵はどこに居るのか?! 戦え、スカイライダー! 負けるな、スカイライダー!!