第37-38話を視聴する為に入ったサービスで劇場版『デンジマン』の配信があったので、折角なので視聴。
劇場版『電子戦隊デンジマン』感想
◆劇場版『電子戦隊デンジマン』◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三)
東映まんがつりの一本として、1980年7月12日(本編第24話と同日)に公開され、同時上映は、『ゲゲゲの鬼太郎』『白雪姫』『魔法少女ララベル』。
OPはTV本編そのまま……? と思ったら、爆発の中を黄金の帆船が飛び立つ、ザ・劇場版な追加シーンが入ってホッとしました(笑)
EDが無い関係で、そのまま主にデンジタイガーの活躍シーンをバックに2番に進んでスタッフクレジットが入り、最後はいつもの、並ぶデンジマンと背後にダイデンジンのカットで締め。
海面に出現した巨大なチョウチンアンコウの化け物が青年と少年を一人ずつ飲み込んでいくスペクタクルから始まり、いきなりデンジタイガーを繰り出すデンジマンだが、怪物には逃走を許してしまう。
更に一人の女性をさらったベーダーの目的は、3000年前、地球に移住していたデンジ星人の子孫を探し出し、受け継がれている筈の「虹の石」を手に入れる事!
ベーダーの侵略により母星を失った上、デンジランド内部に侵入した海釣りバクテリアによりアイシーを残して全滅したと思われていたデンジ星人だったが、黄金の帆船で別の惑星に逃げていたデンジ姫の一行が地球へと辿り着いて移住を果たし、その子孫が既に完全な地球人として暮らしていた事が明らかになって、後々、TV本編でも説明される事に。
劇場版用の完全新作という事もあって、巨大怪獣! 空中要塞出撃! と掴みは派手に始まったのですが、偽電話、拾ったヨットの舵を握らせる……辺りから一気にスケールダウンしていく中盤以降のベーダークオリティ。
観光客を装って水着姿ではしゃぎ回る囮作戦に失敗した電子戦隊(君ら、ベーダーに顔割れしているしな……)は、女性から虹の石を受け取っていた少女を助けて戦い、劇場版なので、戦闘員もたくさん出てきて回っております。
ただ、戦闘シーンそのものはTV本編の定番アクションを水で薄めて引き延ばしたといった具合で、これといった仕掛けや盛り上がりも無く、当時、東映まんがまつりの一本として、この映画に“何が求められていたのか”というのがあるのかとは思いますが(例えば、スクリーンの大画面で大暴れするダイデンジン、などは一定の見せ場たりえたのでしょうし)、後年、PC画面で見る分には正直、スピード感も起伏も妙味もなく、映画としては、全く面白いところのない出来。
息もつかせぬジェットコースター的な造りでもなければ、デンジ姫にまつわるドラマが丁寧に掘り下げられるわけでもなく、全体的なスピード感の無さは特に残念な点でありました。
デンジマンが少女をデンジランドに匿うと、アイシーの登場と共に、5人がデンジマンになったくだりが描かれ……改めて見ても、
テニスのコーチの爆殺を傍観
父親が怪物に殺害されて悲嘆にくれていると荷物の隙間で光る瞳
と、第1話のアイシーが魔犬。
全体的に如何にも、こんなに尺(45分)があってもな……な作りなのですが、これまでの戦いを振り返るという名目で本編の映像が差し込まれるのも、良い具合に編集されているわけでもなくフィルムラー回のコスプレバトルが延々と流され、よく見ると時代劇コスプレの桃井さん、懐剣を袋に入れたままベーダー戦闘員を殴っていた(笑)
約5分に渡った回想シーンは唐突に途切れ、虹の石についてアイシーに問い質すも「記憶にありません」と答弁を拒否された電子戦隊は、デンジランドのコンピューターにデータを入力。
「虹の石を、デンジ星から持ち出した人物は、デンジ姫だ」
と、デンジ姫の地球来訪の経緯がデンジ頭脳によって語られ、その後のTV本編では説明されていない事項として、生き残ったデンジ星人の一部を地球に残したデンジ姫は、ベーダーに狙われそうな星を守る為に、近衛部隊を引き連れて地球を離れており……大変、武闘派でした。
…………まあ厳密には全て、入力されたデータに基づいたデンジ頭脳の推測なのですが、とにもかくにもベーダーは、地球で引き揚げたデンジシップを根拠に地球にデンジ星人が飛来していた事を知ると、デンジストーンを上回る膨大なパワーを秘めた虹の石を手に入れようと躍起になっているのであった!
ヘドリアン女王の妖魔術により、テレパシーを受けた少女を経由して催眠にかかった桃井が虹の石と共に連れ去られ、海上ボートバトルを挟んで、青梅が忍者アクションで桃井を救出。
5人揃ったデンジマンだが虹の石をセットされたアングラーの力に絶体絶命の危機に陥ると、雷雲と共にデンジタイガー@アイシーが飛来して掟破りの地上攻撃で怪人と戦闘員を蹴散らし、慌てたヘドラー将軍は、デンジシップのセキュリティに倒れて撤収。
デンジマンのパワーをしのぐ筈だったレインボーアンゴラーは稲妻落としを受けて巨大化すると、デンジタイガーとの力比べに敗れ、ダイデンジンによって真っ二つ。
ラスト、虹の石を通して少女と交信していたデンジ姫とゴールデン帆船が地球の空に飛来すると、少女に新しい虹の石を下賜してからデンジシップを回収して去っていき……多分、デンジ姫が不老不死を得て宇宙を彷徨い続ける全80巻ぐらいの物語があるのですが、それはまた、別のお話。
ナレーション「デンジマンたちも、今から3000年昔、この地球に移り住んだといわれる、デンジ星人の、子孫なのであろうか……きっと、そうに違いない」
と、大宇宙ロマンがデンジマンの背景に接続されて、おわり。
上述したように、当時の東映まんがまつりの文脈がわからないので、今作に求められていたものや、目指していた方向性もわかりませんが、
●劇場版冒頭の掴みにしても、大仰な巨大チョウチンアンコウを繰り出してさらった人間が、2人。
●3人目は、全く関係ない偽電話で捕獲する。
●娘が事故に巻き込まれたと連絡を受けた母親が慌ててタクシーに乗り込むと、次のシーンでは他の2人と一緒に捕まっている。
●デンジ星人由来と思われる能力で娘の危機を予感していたが、実際には娘に何も起こっていない。(妖魔術による干渉……?)
●何故か、会った事もない少女の名前と声を把握しているデンジマン。
●少女を標的に虹の石を持ち出させる筈が、いきなり桃井に交代。
●青梅の潜入アクションは描かれるのに、桃井救出の場面が無いままいきなり2人で海に飛び込んで脱出。
……など、謎展開・謎編集が目白押しで、全体的に説明が端折られ気味なのですが、尺が足りなくて切り詰めた(前後の文脈から流れのわかる場面をカットした)ようには思えず、むしろ尺が余り加減に見えるのに、特に効果的とも思えない場面の“抜け”が発生しているのは、凄く謎。
本編の撮影スケジュールと今作の尺のアンバランスといった事情は推測され、デンジ姫絡みの情報を既に知っていたという点もあるにしても、単純に出来が悪いのは残念でした。