『仮面ライダー(新)』感想・第4話
◆第4話「2つの改造人間 怒りのライダーブレイク」◆ (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝)
「その殺しのプロで、ネオショッカーに邪魔な人間どもを、ドシドシ消せぇ」
ゼネラルモンスターに遠隔操作で操られる、ネオショッカーの暗殺怪人・サソランジン。その正体は、ネオショッカーに無理矢理改造され、操り人形のように扱われる女性・上村美也であった。
美也の妹・可也と出会った洋は、サソリジンの次の標的を推測すると待ち伏せ作戦で罠を張り、影武者を担当した志度会長が高笑い。
「とうとう罠に落ちたな、怪人め! おまえなんかに、博士を殺させるもんか!」
ネオショッカーからの逃亡生活で相当ストレスが溜まっていたのか、変装を解いた会長は満面の笑みで勝ち誇り、パイロット版よりも明らかに、東映特撮で“よく見がちな人”に近づいていく、志度会長の駄メンターポイントが1あがった!
……まあこの辺りは、パイロット版の山田監督と、3-4話の田口監督で、志度会長の捉え方にちょっとズレがあった感じでしょうか(笑)
「指を狙え。次、キックしろ……そうだキックだ」
サソリジンを操るゼネラルモンスターは、一人称視点のモニターを見ながら細かく指示を送り、二人羽織で格闘ゲームしているような新型改造人間計画はこの時点で駄目そうですが、通信機であるペンダントを破壊されたサソリジンは、頭を抱えてのたうち回った末に、戦闘不能に陥って気絶。
「仮面ライダー、勝ったと思うなよ。おまえも間もなく、このようにコントロールしてやる。覚えておくがよい。次はおまえの番だ」
「ゼネラルモンスター……よくもぬけぬけと! 人間を改造する事さえ許せないのに、それを操るとは、許せん!」
ゼネラルモンスターの真の標的はスカイライダーと判明する一方、人間の姿に戻った美也を妹の元へ送り届けようとする洋だが、美也は徐々に記憶を回復していく。
「私は……妹のところへは、帰れません」
改造手術の記憶がまざまざと甦って絶望する美也を勇気づけようとする洋が、己の身の上を告白する場面はドラマチックになり、美也の目の前で洋はスカイライダーへと変身。
「これが改造された姿です。私は、仮面ライダーです」
……えー、見せ場の真っ最中に脇に逸れますが、前回からなにか既視感を覚えていた洋の台詞回し、この辺りでピンと来たのですが、ドラマの台詞に慣れていなくて発声が今ひとつ繋がりによってか、イントネーションが時折凄く、初期の氷川くん(『アギト』)と重なります(笑)
閑話休題。
「さあ! 妹さんがあなたを待ってます! 早く行きましょう」
……待て洋、彼女の悩みは何も解決してないぞ。
「でもあたしは一度死んだんです。そしてあたしが改造人間だって事、妹には……言えません!」
「美也さん、例え体は改造されても、心はネオショッカーに売り渡したわけではない。私は、この命の続く限り、ネオショッカーの悪事を叩き潰すまで、戦い続けます」
勢いで押し切ろうとするも失敗に終わったスカイライダーは言葉を重ね、美也の手術シーンが強調されるのは、ドラマとしての悲劇性を強調すると共に、『仮面ライダー』第1話における本郷猛の改造シーンをリフレインする意図もあったのではと思うのですが、その本郷猛の姿が「ショッカーに支配され、自由と尊厳を奪われた人類」の隠喩になっていたように、美也の境遇をもってしてネオショッカーの“悪”が描かれ、それに抗い戦い続ける者として、今作における“「仮面ライダー」とは何か?”を定義づけるのが、しっかりとした作り。
個人的に、世界に蔓延る悪の寓意として、“他者の自由と尊厳を奪う存在”というのは凄く腑に落ちるので、それに“立ち向かうもの”がヒーロー像の根幹に置かれているのは、《仮面ライダー》の好きなところの一つ。
現行『ガヴ』も、別世界の怪物という要素を挟んではいますが、“人を人でないものとして扱う悪”という点は、『仮面ライダー』本歌取りの意識を強く感じる部分。
スカイライダーの励ましを受けた美也は妹との再会を果たすが、ゼネラルモンスターの仕掛けた非情な罠により、その心身は再びサソリジンへと戻ろうとしていた。
洋がゼネラルモンスターの声に誘導されてセイリングジャンプしている間に倶楽部では異変が起こり、
〔苦しみ出す美也 → 左腕が怪人のものに変わり隣室に飛び込む → 顔をあげると鏡の中に怪人の姿 → 完全に怪人となって窓から飛び出していく〕
のは、第1話のスカイライダー誕生シーンも踏まえて非常にショッキングな見せ方。
あざといといえばあざとい手法ですが、若い女性が醜いサソリ人間に変貌する落差は、今作立ち上がりにおける“異形の怪物性”の徹底を、効果的に引き立てます。
「私はもう二度と可也には、会えない……」
サソリジンはゼネラルモンスターのコントロールに抗いながら暗いトンネルをよろめき走り、当時ままあった、人間体は女性だったのに怪人になると男声、がここでは改造人間の悲劇性を強調する方向に作用したところから、
「私は二度と改造人間を作らせないよう、ゼネラルモンスターを倒す……」
に具体化するのは凄く時代を感じますが、当然ここでは、いわゆる“いい怪人”とは違った形で、「例え体は改造されても、心はネオショッカーに売り渡したわけではない」不屈の魂――「2つの改造人間」の示す、もう一つの仮面ライダー――が象徴されているのが、力の入った組み立て。
「ゼネラルモンスター、出てこーい!」
単身ネオショッカーのアジトにカチコミをかけるサソリジンだが、必殺の毒針を戦闘員シールドで防がれると、全身にボウガンの矢を受けて瀕死になったところに、スカイライダーが到着。
最後は人間の姿に戻った美也が息絶えると、怒りのスカイライダーが戦闘員を蹴散らしていく、第4話にしてシリーズ異色の構成で、幻影だったゼネラルモンスターは姿を消し、これにて終了……かと思ったら物凄く盛り上がりに欠けるBGMで、おまけのような戦闘員との戦いが始まり、え、これ、必要だったの……? と困惑していると、スカイライダーはバイク(スカイターボ)を召喚。
「ライダーーブレイク!」
すっかり忘れていたサブタイトル後半が回収されると、姿を消したといってもすぐ背後にあるアジトから戦闘員に声援を送っていたゼネラルモンスターは、慌てて逃げ出そうとして、軽く轢かれた(笑)
狼狽するゼネラルモンスターにライダー怒りの鉄拳が炸裂し、壁にぶつかった拍子に機器類が火花をあげると定番の基地爆発コンボが発生し、安全圏から「よし、いいぞ、ボディだ! チンだ! ええぃアッパーだ!」とやっていた筈が、あれよあれよという間にアジトを失い、超高速で『01』ハカイダーばりの醜態を曝しているけど、大丈夫なのかゼネラルモンスター……。
ナレーション「仮面ライダーに追い詰められた、ネオショッカーの大幹部・ゼネラルモンスターは、基地爆発と共に散った」
て、え、ええ?!
映像上は、基地が炎に包まれる中、背後の通路に逃げ込んでそのまま脱出……みたいな具合で、悪の組織の大幹部としてはこれで死ぬ方が難しそうだったのですが、ナレーションにより急転抹殺され、え、ええ……?!
役者さんになにかトラブルでもあったのではと勘ぐりたくなるような不自然度合いですが、ここにゼネラルモンスターは、自分のアジトで道に迷って基地爆破に巻き込まれ第4話で殉職、という悪の組織の幹部史上でもなかなか例の思いつかない最期を遂げるのであった……!
シリーズとしては『V3』におけるキバ男爵・ツバサ大僧正といった月刊大幹部や、『X』アポロガイスト(初代)が6話で一時退場の例もありますが、初代大幹部が怪人にさえならずに炎上爆死は(再登場の可能性は残しつつ)希有な事例となって、事態に気持ちの整理が追いつかないまま、つづく。
……ま、まあ、怪人を倒さないエピソードだったので、大幹部の一人ぐらい始末しないと格好がつかない、とかだったのかもしれませんが、それにしても何がどうしてこんな事に(笑)
改造人間の悲劇とその不可逆性を取り上げた上で、2つの改造人間の姿から今作における「仮面ライダー」を定義づけるエピソード内容は面白かったのですが……。