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幻影と狼

牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第20話

◆第20話「鉄人」◆ (監督:江良圭 脚本:木田紀夫/雨宮慶太
 「やってよし」
 煙草のポイ捨ては、消毒だーーー! と、小さな悪に過剰な正義を執行する謎の女子高生……と思ったら、
 「食ってよし」
 なんか、それどころではなかった。
 深夜の街に巨大な影がガオーーする中、クロウはゲートを開きかけていた古道具の浄化に勤しんでおり、
 「ハイ、これで今日の仕事はおしまい」
 闇に生き、闇に死すのが忍びの定め、すっかり、虚空に話しかけるのが癖になっていた……のかと思ったら、話し相手の魔道具が居ました! 良かった!
 たとえ姿形はペンダントでも、相づちを打ってくれたり、ツッコミを入れてくれたりする相手が居るのは、魔戒騎士のメンタルケアに極めて有効であると、厚生労働白書にも書かれています。
 「過ぎゆく時に刻まれし苦い記憶が、行き場を失い闇を生んだ」
 「どうしたの? 今日はやけに感傷的ね」
 「……眩しすぎるからさ。なにもかもが」
 前髪をいじってポーズを取りながら呟くクロウの背後を女子高生の一団が通り過ぎていき、なんか、変だよね。
 「こっちは昼間はゲートの封印に、夜はホラー退治」
 「まるで別の時間が流れてるわ」
 「黄金騎士のように、顧みられることもなく、人知れず闇を察し、人知れず闇に葬る。それが幻影騎士の仕事……」
 「大師がよく言っていたよね」
 「けど……闇に濡れた光が一番恐ろしい」
 最終盤を前にクロウにスポットを当てておこうという事なのでしょうが、クロウが、今作史上、一度に最も沢山喋った結果、個人的与太妄想とのシンクロ度が思った以上に高くなってしまい、魔戒忍者としての過酷な使命以上に、独自のルールを設定していそうで困ります!
 あと、媚空さんには話し相手がいるのか不安になってきます!!
 番犬所からホラー殲滅のミッションを受けたクロウは、セーラーホラーと激突し、閃く刃。
 「さあ、良い子はおうちに帰る時間だ」(※凄く、格好いい決め台詞だと思っています!)
 だがセーラーホラーが指笛を鳴らすと、そこに現れる鉄人。
 「おまえが帰れ、ってんだよ」
 少女は身軽に鉄人の肩に乗り、身の丈3メートルあまりの鋼鉄の巨人を前に危機に陥るクロウだがその時、僕のアイドルが来たーーー!
 「加勢するよ」
 「……これは僕の指令で僕の獲物です。けど……推しと一緒に戦えるなんて最高です!」
 ……すみません、やり直します。
 「……これは僕の指令で僕の獲物です。けど……手伝ってくれると嬉しいですね」
 「……フ、了解した」
 本音ダダ漏れになってきたクロウと共に、雷牙は鉄の巨人に斬りかかるがビクともせず、クロウを助けたその無防備な脇腹に鋼鉄の拳が迫るが、鉄人は悲鳴のような叫びを上げて、動きを停止。
 背後から旋風脚で雷牙とクロウを蹴散らしたセーラーホラーは鉄人と共に去っていき、ホラーの正体を探るクロウは、制服への見覚えを頼りに、三日前に失踪した娘を探す男性と出会う。
 友人と肝試しをした高校生が、森の奥でゲートと化していた鉄人のオブジェ(誰だこれ森に放置したの……)に取り込まれていた事がわかると、雷牙とクロウは再びセーラー&鉄人ホラーと激突するが、生身格闘担当だった少女の姿は擬態(子機みたいなものか)であり、取り込んだ人間をエネルギー源にしている鉄人こそがホラー本体であったと判明。
 「命ある限り、必ず助けるのが騎士の使命だ」
 少女は陰我に飲み込まれホラーと化したわけではなかったが、内部からの救出は不可能でせめて人間の心が残っている内に殺すしかない……と覚悟を固めるクロウだが、「策ならある。――力尽くだ」……じゃなかった、とにかく策はある、と告げた雷牙は再び鉄人に向き合うと敢えて剣を収め、回避と防御に集中。防戦一方のまま鉄人に飲み込まれるが、腹の中で鎧を召喚する事でホラーを体内から爆破する荒技によって少女を救出し……だいたい力尽くでした。
 自らの命を懸けた離れ業で掛け替えの無い人の命を救ってみせた推しに、敬意を新たにするクロウだが……
 「俺はおまえが居たから、安心して捨て身ができた。俺が駄目でも、おまえが残っている。一人だったらやれたかどうか、自信が無いよ」
 一か八かの内臓破壊技を放てたのはクロウが居てこそだ、とサポーターの存在を讃え、雷牙さん超ゴールデンアイドル。
 「俺の言葉を信じてくれて、ありがとう。……クロウが助けた、掛け替えのない命だ」
 …………大丈夫かなクロウ、感動のあまり、魂が浄化されすぎて灰にならないかな……と不安になりましたが、なんとか精神判定に成功して一命を取り留めたクロウは、雷牙に深々と一礼する闇の中に姿を消し――後日、ささやかで愛すべき平穏な日常を取り戻した父娘の姿を確認すると、その足はどこか軽く、闇に濡れた修羅の道へと舞い戻る。
 「さて仕事……」
 「また人知れず、ね」
 「そうさ。昼間はゲートの封印、夜はホラー退治。……人知れず闇を察し、人知れず闇に葬る。――それが幻影騎士の仕事」
 なお、死して屍拾うものなし!
 死して屍拾うものなし!
 クロウの「掘り下げ」というよりも、クロウの「説明」みたいな着地点で、2クール目も後半に入ったタイミングでやる内容かといえば疑問もありましたが、そもそも前半時点では、クロウにここまでスポット当てるつもりがあったのか微妙、といった感じではありましょうか。
 エピソードとしては、恐らく《牙狼》の地下水脈の一つであろう、“一点突破型B級ホラーアクション映画”を、TVの1エピソードに落としこんだといった感じで、鉄人の造型と動きには見応えがありました。
 ED映像、マユリの、一人圧迫面接ごっこみたいなのは何……? と思ったら、対面にザルバが居た、でオチ。