※第37話-第38は事情により見られず、2話抜けとなります。
『電子戦隊デンジマン』感想・第39話
◆第39話「女王怒りの妖魔術」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三)
池でボートで遊ぶカップルが憎らしい……! 草野球で活躍するあいつが恨めしい……! 人間の醜いジェラシーファイヤーを受け取ったヘドリアン女王が呪いを発動する事によって怪事件が続発し、その調査に走るデンジマン。
公園の遊具の暴走を止めた赤桃は、その場を立ち去る挙動不審な少年が落とした不気味な人形(ナレーション談。劇中の小道具としては、真っ黒な十字架風味)を拾うと、自転車で走る少年を、変身したままサイドカーで追跡(笑)
大人げないにも程がありますが、国防の為には怪しいそぶりを見せたらマシンガンが火を噴く5秒前、ベーダー怪物・悪魔ラーが介入して赤と桃は暴走するサイドカーから投げ出され、ちょっとコミカルな証拠品の奪い合い(《スーパー戦隊》名物)に勝利すると、デンジランドで分解した人形の中からは、超小型発信機が発見される。
「妖魔術人形だこれは」
アイシーがコメントを入れ……桃井の新衣装が凄く、市井のお嬢様風というか、一般人ぽい。
「妖魔術の会だ」
「なんだい? その妖魔術の会って?」
「他人を不幸に落としこむ会だ」
毎度ながら、ソース不明のアイシー情報ですが、ネットサーフィンも出来ないこの時代、デンジマンの不在時には街中を駆け回って井戸端会議に聞き耳を立て密かに情報を収集しているのか、或いはもっと直接的に、デンジランドが日本中の通信を気軽に傍受しているのか。
それとも、デンジ星由来の儀式なのか。
古代織り=ベーダー織り以降、デンジ姫が地球にもたらしたデンジ星の文化に対して、視線が厳しくならざるをえません。
一方、ベーダー城の片隅では、たらふく飲み食いしたバンリキ魔王が高鼾をかいており、ヘドリアン女王からは
「飲んで食べて寝る。まるで豚じゃ」
と蔑まれるが、ヘドラー将軍が剣に手を添えて近づくとパッと目を開き、居候の経緯はわかりませんが、実力者ぶりを表現。
(さすがバンリキ魔王。眠っていても隙を見せぬ)
そこへケラーが入ってくると次の標的について報告し、狙われたのは赤城の友人、の婚約者、のまた友人。
「自分のボーイフレンドを友人に紹介した。ボーイフレンドは、その友人と婚約してしまった」
お昼のメロドラマな背景に触れたミラーが女を妖魔術の会へと勧誘すると、妬心は憎悪に化けて呪いとなり……その実態は、集音マイクで拾った願いをヘドリアン女王が聞き取ると、小型化した悪魔ラーを地上に送り込んで目的の事故を引き起こす!
……あまりにも地味な活動でした。
特に今回、“その先”の目標が描かれずに個人単位の醜い願望を実現して小規模なカルト組織を形成しているだけなので、女王様が直接出馬した割には、地味of地味。
「他人を不幸に落としこもう……他人の不幸を喜ぼう……」
誰しもが胸に抱える妬みや憎しみの種に水をやって利用する悪、というのはザ・上原正三ですが、ここから物語は、そういった悪意を後方に置き去りにして、友人が事件に巻き込まれた赤城(怪人の目撃証言を得る場面で、高レベルの似顔絵スキルを披露)を誘い込む事こそが計画通り、と急カーブ。
集会場に潜り込むも逆に拘束された赤城は妖魔術の虜とされてしまい、どこかぼんやりとした様子でデンジランドへ戻ると、女王の意のままに操られてダイデンジンのコックピットに爆薬を仕掛けようとするが、妖魔術人形を首から堂々とぶら下げて帰宅していたのでアイシーにあっさり洗脳を看破されており、それをモニター越しに4人が見ていた。
黄山がセキュリティをスイッチオン、すると電気ショックにより赤城が正気を取り戻す……だけだと120%茶番劇でしたが、そこから、ベーダー側の発信機を逆に利用してダミーの爆発音を拾わせ、ダイデンジンが爆破されたぞーーーの一芝居を打つのは面白いツイストで、いつもはリーダー格の赤城が、状況がよくわからず混乱したまま、4人からハンドサインで芝居に付き合えと指示を受けるのも、面白い構図に。
逃走した(という設定の)赤城は妖魔術の集会所に戻ると、もはや用済みだと磔にされるが、赤城の後を追ってきた4人が集会所に乗り込んで、見よ! 電子戦隊・デンジマン!!
女王は悪魔ラーに妖魔力を送り込み、悪魔ラーの血走ったぎょろ目から放たれる怨念のパワーにデンジマンは大苦戦。
その様子にヘドリアン女王が喝采をあげると、ようやく起き上がったバンリキ魔王が水晶玉を除き込んで将軍と一揉めしている間に、デンジマンの投げつけたデンジスティックが悪魔ラーの左目に突き刺さって妖魔力の供給が断たれ、連続前転キックから形勢逆転。
5人が腕を組んでグルグル回転する(だけの)デンジスクラムチェーンを受けた悪魔ラーは巨大化し、デンジスクラムチェーン、てっきり、一番外側のピンクを叩きつける荒技かと思ったら、その無意味さ加減でただただ敵を混乱状態に陥れる攪乱技でした(笑)
ヘドリアン女王は、巨大悪魔ラーを媒介として、渾身の妖魔力でダイデンジンのコントロールを奪うとバラバラに引き裂こうとするが、これ一本でなんでもリターン! 一家に一振りデンジ剣を手に取ったダイデンジンは、デンジ魔力落としによる返し技から満月斬りで悪魔ラーを一刀両断し、今なら、デンジ剣一振りに、な・ん・と! ダイデンジン1体がおまけに付いて、19800円、19800円の大ご奉仕価格!
すごーい! これで、いつベーダーに狙われても大丈夫ですね!
只今、電話が大変混み合っております。切らずにそのままお待ち下さい。
最後は、赤城友人と病院送りになっていた恋人の結婚式でハッピーエンド風になるのですが、
ナレーション「フミコも、心から、二人の幸せを祈る娘になっていた」
の説得力は壊滅的に低く、どちらかというと、参列した電子戦隊5人のおめかし姿がポイントでしょうか(笑)
上原正三お得意のネタで突き進むとあまりにも『バトルフィーバー』になってしまう事もあってか途中からメンバー洗脳パターンに方向転換するのですが、前半と後半が特に噛み合わないまま、カルトに繋がる要素が話の枕だけで片付けられてしまう(まあ、怨念は発散されて浄化されたようですが……)のが、どうもスッキリしないエピソードでありました。
次回――これまた前作を思い出すデスマッチ。