東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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君の暴走は輝いているか

 『ブンブンジャー』は、そろそろ一定の見切りをつけて、視聴継続するにしても感想は徐々に簡略化していこうかなと考えています(私のやる事なので、思ったように出来るかはさておき……とりあえず、今回は結局、それなりの量に)。

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第29-30話

◆バクアゲ29「スパイとファミリー」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:冨岡淳広
 第1話以来の登場となる青里ファミリーの屋敷に向けてドローンを飛ばし、本日は情報屋のお仕事中の射士郎だが、そこへ姿を見せる始末屋の二人。
 「あれぇ? 汚れ仕事か? なら俺にやらせろよ」
 青里ファミリー、勢いよくこの世から始末される存亡の危機。
 「始末屋は暇なのか?」
 「――ヒマ。……売れっ子はビュンディーだけだ」
 「子供たちがサインを求めてくる。悪い気はしないぞ」
 多少は現地通貨を融通してやらないと何をするかわからない、とでも思ったのか、射士郎は2人を臨時バイトとして雇う事にし……重ね重ね、情報屋のお仕事をする射士郎とそこに絡んでくる先斗&VD、みたいな構図は2クール目の内にやってほしかったなと。
 その頃ブンブンガレージでは、射士郎は本日はスパイ活動中なので邪魔しないんだと変に強調して、あくまで本業は別にあり個人の自主性を尊重するのがブンブンジャーのスタイル、と台詞で補強しようとしてくるのですが、あまりにも遅きに失している上に、もはやズブズブの身内扱いにしても思い切り公権力サイドの細武さん(あと一応、阿久瀬)が同席している場で、たぶん非合法活動(良くて濃いめのグレー)に従事していると明かすのは如何なものか。
 それこそ、“ブンブン活動とは別口”なわけで、Aを補おうとするとBについて忘れ、新たな穴Cが開く典型的な負の連鎖が辛い。
 「なんと! ここにも忍び込んできた事があるんだぜ」
 「「「「ええっ?!」」」」
 「それが、俺達と射士郎の出会いなんだ」
 断片的に仄めかす映像は既にありましたが、2クール以上に渡り引っ張った挙げ句に、本人不在のところでぽろっと明かされるいつもの『ブンブン』ロードで、他の見せ方は、無いの……?
 射士郎が、始末屋コンビを囮に使っての、青里邸への不法侵入を行う一方、ガレージでは大也と射士郎の出会いが語られ、射士郎がブンブンカーにおけるプログラミング担当なのは、そもそも高度なハッキングと直接潜入を単独でこなすマルチな電脳スパイだったからと今更ながらに繋げられ、かつてブンブンガレージの全セキュリティを突破してみせた射士郎は――
 「侵入に成功して、この地下を突き止めた。だけど……」
 ちゃちなワイヤートラップに引っかかっていた。
 膝を付いた射士郎にハンドル銃を突きつけた大也は、「君の腕に惚れた!」と契約を打診して右手を伸ばし、あまりの剛胆ぶりに射士郎が飲まれた、みたいに描かれるのですが、有り体にいってこれは、
 「もう一度選べ。このブンブンチェンジャーを受け取るか、このまま脳天を撃ち抜かれるか!」(専門用語で「脅迫」)
 なのでは?
 そして、これまで明らかになっていた断片映像に、プラスされるものがほとんど無くて凄いの領域。
 最新鋭のセキュリティを突破したと思ったら、原始的な罠も仕掛けてあるのが爆上げだろ? みたいな意図だったのかもですが、正直、特に面白さを感じられず……まあこれは私が、壁からレーザーとか金庫ごと自爆とかに慣れすぎている為かもですが。
 ……どうも今作、“シリーズ過去作のスタイル”への意識は強めに見える一方で、“シリーズ過去作のぶっ飛び方”についての認識が甘いのではないか、という節があり、作品それぞれのライン設定はあるにしても、味の薄さや物足りなさを感じる一因になっているかと思います。
 後その点においてもう一つ、過去数年スケールで見た場合の今作直近のハードル(仮想敵)は、『魔進戦隊キラメイジャー』だと思うのですが、この厄介なハードルを相手に“一人一人がマイスターな兼業戦隊”スタイルとして違う色を出す為には、戦いとは別に各分野のスペシャリストが本業を活かして一つのミッションに挑む「届け屋」設定を実質放り捨てたのは、つくづく痛恨だったと思うところ。
 そんなわけで、初期の決め台詞の一つだった「君に惚れた」が射士郎に炸裂する運命のシーンもこれといってパッとしない出来となり、未来が「なんかもう、どっからツッコんだらいいの?!」と絶叫する中、ブンブンの存在を調査しようとした射士郎の依頼主は、細武とは全く別口のISAであった事が今になって明らかにされ、大也の秘密主義と身内への誠意の感じられなさはもはや、某ベルトさんレベル。
 当初は確定していなかった背景が後でハッキリする事そのものは4クール作品として仕方ありませんが、それを明かした結果、君はそれを今まで黙ってたの?? と主人公の株が下がる展開は本当にどうかと思うわけで、大也は3クール目の終わりぐらいに、凄くさらっとハシリヤンとBBGの関係について話しはじめそうで怖い。
 その頃、強引な売り込みで青里家の敷地に入り込んでいた先斗だが、ゴンググルマーが現れてファミリーを次々と殴り倒すとギャーソリンを回収し、紫との強制ボクシング対決。
 常槍からの依頼により青里邸に侵入した射士郎が見つけ出したのは、額縁に納められたハシリヤンの鍵であり、青里ファミリーがいつの間にやら改造隊長と契約を結んでいた事が明らかになると、その間に敗北する紫。
 謎のブンブン空間を通って駆けつけようとした赤桃黒の前にはマッドレックス4DXが立ちはだかり、射士郎はゴンググルマーとの一騎打ちに臨む事に。
 「情報屋って、頭脳労働だろ? 殴り合い行けんのか?!」
 「子供の頃からあらゆる戦い方を仕込まれている」
 「おまえも碌な生き方してねぇな」
 「俺の親も、今の俺と同じ仕事だった。後は察しろ」
 変身するブルーだが、直後にボクシングローブ強制装着により武器が使えなくなり、
 「? は?!」
 「そいつは取れねぇぞ。ボクシング一択だ」
 「……仕方ない」
 ……え。
 青が普通に戦えるのは紫も何度も見ていますし、「殴り合い」「あらゆる戦い方」と、明らかにボクシング前提のやり取りだったのに、グローブを強制されてから驚く意味不明の流れが挟まり、前回もそうでしたが、単純に“1エピソードとしての質の低さ”が目立ってきたのは、気にかかるところ。
 改めてボクシング対決がスタートすると、激闘の末に青の必殺ブンブンパンチがゴンググルマーにかわされ、逆襲のクロスカウンターが突き刺さるかと思われたその時、インターバルを終え反対車線から飛び込んできた紫のビュンビュンパンチがクルマ獣に直撃し、別に一対一とは言っていなかったは面白かったですが(笑)
 青と紫が色々と混ぜたブンブンロボに対して、巨大ゴンググルマーはルール無用の縮小攻撃などを仕掛けてくるが、そもそも先にルール無用でリングサイドから殴りかかったのヒーローの方だしな……と思いつつ、ウィングによる脱出からの反撃で大勝利。
 「正義と悪との識別・完了!」
 と、なんかそんな気がした『炎の転校生』パロディが入り(この辺りはアドリブかもですが)、上り下りの爆上げ完了。
 ミッション失敗を感知して撤収しようとしたマッドレックスは、赤に背後から切りつけられた事で頭部にダメージを受けると、記憶を一時的に取り戻し、追い打ちも仕掛けずに構えていた赤は、何故か「マッドレックス、おまえに何があった?」と問いかけようとし……いや、そういう関係じゃないよね???
 そこへオレンジが飛び込んでくると、赤の首に斧を突きつけて動きを制し、頭痛が痛いマッドレックスからディスレースの居場所を聞き出そうとするのですが…………いやそこ、目的は大きく変わらないのだから、マッドレックスを拷問するなら赤と敵対する必要も無いのでは……?
 と、“復讐の為ならかつての仲間にも刃を向けるオレンジ”を描こうとする余り、だいぶ頓珍漢な事に。
 玄蕃が玄蕃の筋としてブンブンジャーに居られない、のはまあわかるのですが、復讐の為のプロセスに「ブンブンジャーと対立する要素が今のところ特に無い」のに、復讐心を強調したいからと協力じゃないなら敵対だ! としてしまうのは、あまりにも理屈が雑。
 マッドレックスがワンワン閃光弾を放って撤収すると、橙も無言のまま去っていき、追いすがろうとする桃黒を止める赤。
 「あいつは戦っている……自分と」
 あくまで復讐心も自分で乗り越えるもの、とするのは、らしいといえばらしいですが……割と根本的な所で、“ハシリヤンに星(会社)を乗っ取られて無実の罪で父は投獄・自分は亡命”の、今作世界におけるリアリティがいまいち消化しにくいので玄蕃の情念を受け止めにくく、キャノンボーグ最後の作戦を除くと、ハシリヤンが2クールに渡って小銭稼ぎみたいな事に終始していたのもボディブローとして響きます。
 射士郎から鍵を受け取った常槍は、内藤と電話で密談して「ハシリヤン利権」を口にし、どうやら侵略者に尻尾を振って甘い汁を吸おうとしている人たちが一部に居る……という話にしていきたいようですが、
 そもそも今作、
 ・先遣部隊の行動規模が小さい
 ・ハシリヤン本家の規模や目的が皆目不明
 と、“侵略者としてのハシリヤン”にさしたるスポットを当てていなかったので、3クール目に入って「侵略コンサルタント」「侵略された星の若旦那」「侵略者と手を結ぼうとする腹黒い大人たち」という要素を出してはきたものの、その前提となる“ハシリヤンによる侵略とは何か”の情報が不足している為、どうにも物語を加速させる効果的な燃料になっていない印象。
 まあ、上納金(ギャーソリン)さえ収めておけば……みたいな想像は可能なものの、そのギャーソリンの扱いも凄く雑なわけで。
 玄蕃が父親の話だけではなく、星の住人(社員?)がどうなっているかに触れるだけでも結構違ったと思うのですが(この辺り、「王族」の描き方として甘いので、「復讐」の情念も、物語を動かす力が足りなく感じる一因)…………実はここ数話、目をそらしていたのですが、
 〔劇中に出てくる情報の不足と取捨選択への疑問・制作サイドの脳内だけで掘り下げられている背景世界・その二つが合わさって無から飛び出してくる理屈〕
 の三本柱は、個人的に相性の良くない大森P作品の悪いところだけ取り出したみたいな事になってきているな…………と。
 「敵はハシリヤンだけではないかもしれん」
 「……それでも俺達は、悲鳴が聞こえたら走る。……それだけだ」
 そもそもハシリヤンを敵にしているわけではないスタンスが、BBGと一緒に忘れられそうになりつつ、つづく。

◆バクアゲ30「暴走は俺の物」◆ (監督:竹本昇 脚本:山口宏)
 「あいつは……自分のハンドルを握っていないように感じた」
 大也がマッドレックス4DXを気に懸ける一方、かつての上司であり、底辺のチンピラから拾ってくれた恩人であるマッドレックスの記憶を取り戻す為に奔走する三下トリオは、マッドレックス聖地巡りを行うも空振り。
 ならば闘争心に火を付けようとするも失敗に終わるが、ブンブンジャーのお面に対する反応を目にすると、因縁のブンレッドとぶつけるショック療法を強行し……マッドレックスと三下トリオの関係が歴史修正レベルなのはともかく、個人的に三下トリオの賞味期限が切れてしまっていて、終始ノりにくいエピソードでした。
 「やめろ! 目を覚ませ!」
 「何を甘い事を言っている大也!」
 赤とマッドレックス4DXは激しく一騎打ちでぶつかると、驚愕の開始約20分(CM込み)で、ようやくのっそり出てきた玄蕃が壁に隠れてコメントを書き込み、甘いとか辛いではなく、本格的に意味不明なのですが、ブンレッドさんはマッドレックスの目を覚まさせてどうするつもりなの……?
 自分でハンドルを握っていない無罪なの……?
 それとも、自分の意志を取り戻してから殺したいの……?
 これまでハシリヤンとの間に交渉の余地など見出した事の無かった赤がマッドレックスに対して、立場は違うが同じ走り屋魂の持ち主、みたいな態度で接して激しく困惑するのですが、なんだかんだと119して放水オーバードライブするも、カウンターで吹き飛ばされてしまう。
 「どうした大也!? 本気を出せないというのならこの私が……」
 外野からフォローを調達する玄蕃は玄蕃で、場当たり的に戦いに介入してどうにかなるとは全く思えず、チームから離脱したメンバーに、独自の行動プランがほぼ存在しないという、無のような話し運びに今回も顎が外れそうになります。
 外部では、赤とマッドレックスの一騎打ちを邪魔させまいと、三下トリオの操るBキラーロボがBBロボの前に立ちはだかっており、玄蕃の前には、男と男の勝負に横槍は野暮、と先斗が乱入。
 対する玄蕃は「押し通る」と変身して紫と橙が激突するのですが、前回に続いて、敵対ありきで無駄に険悪にする展開で、すっかり、ライダーバトルの為のライダーバトルみたいな事に。
 これを避ける為には、「玄蕃の“復讐”の重みを視聴者が頷けるように描く(最低限、星の住人への言及が必要だったのではないか)」「玄蕃の復讐の為に必要な行動が、ブンブンジャーとバッティングするように仕込む」の少なくとも2点が必須だと思うのですが、どちらも不足している為、橙と紫が無駄に揉めている間に、マッドレックスに完敗した赤が死にそうになっているのが、ギャグみたいな事に。
 「俺達は変わらねぇ。ノーブレーキの暴走魂で、突っ走るだけよ!」
 気迫のBKロボポリスにに苦戦するBロボは、ナイトを発動すると無数の弾丸をかいくぐり、前回-今回と、119キャンペーン終了後、Bロボのバリエーションを変則合体含めて色々と見せる工夫は良かったところ。
 「負けねぇ……俺達は絶対に負けねぇ! ……そうでしょう……」
 「「「マッドレックス様ーーー!!!」」」
 ナイトにバッサリ切られたBKロボは大爆発し、負けたと思うまで人間は負けない、とギリギリまで根性見せてトンズラしなかった三下トリオはその爆発に飲み込まれ……あ、今度こそ、死んだ?
 一方、間接的に、死因:内輪揉めになりそうだったブンレッドだが、トドメのデスロード寸前、Bロボナイトに見下ろされたマッドレックスが前世の死因によるトラウマを刺激されると、ブンレッドと全く関係ないところで記憶を取り戻し、攻撃を中断。
 「……ブーンレッド?」
 その隙に赤が叩き込んだ一撃を受けて撤収したマッドレックスは、記憶が戻っていないフリをして無言でディスレースの横に佇み、それを寂しげに見つめる三下トリオはまあ生きているよね……で、つづく。
 三下トリオになんとか再点火しようとすると共に、ハシリヤン側にも波乱の要素が盛り込まれましたが、玄蕃の「チームを抜けたら単純かつ豪快に出番が減った」「特に独自の復讐プランは立てていない」扱いと、その玄蕃とのライダーバトルの都合により、「脈絡なくマッドレックスに自由意志を取り戻させようとする大也」という、まさにカオスな状況が勃発すると、最終的に「大也の意志や行動およびブンレッドとの因縁とは全く関係なくマッドレックスは記憶を取り戻す」衝撃のオチが付き、とにかく一つ一つの行動や意志の背景について、練り・組み立て・描写、の全てが不足している不毛の荒野。
 さすがにもう少し“仕掛け”が無いと面白くなりようがないと思うのですが……――次回、またもレストラン。