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改造屋は加速しない

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第25話

◆バクアゲ25「六輪の花火」◆ (監督:葉山康一郎 脚本:樋口達人
 納涼大花火大会に向けて盛り上がる未来と阿久瀬…………阿久瀬巡査は、警備の仕事に駆り出されそうな気がしてならないのですが、大丈夫? CM明けたら、絶望からファントムが生まれそうになってませんか……?!
 一方、地球でのギャーソリン集めが全く計画通りに進まないキャノンボーグは切り札の起動を宣言するが、とうとう三下トリオから面と向かって批難を浴びると、スタイルの違いから反りの合わなかったマッドレックスとのやり取りを思い出し……退場回に急に幹部の過去とパーソナルが飛び出す、鉄板の悪手。
 「宇宙一賢く、正しいのは、この私めです!」
 地球に接近する巨大物体が検知されてISAから緊急連絡が入り、その正体は、衛星軌道上からギャーソリンを強制回収する大量悲鳴兵器――ジャッキーホイホイ。
 使うと惑星の生体資源を食いつぶして死の星とするキャノンボーグの奥の手……との事ですが、とにかく今作ここまで、
 ・ハシリヤンによるギャーソリン集めの目的が不明
 ・ギャーソリンをどの程度のペースで集めればいいのかも不明
 ・地球で行われたギャーソリン集めが、ブンブンジャーの存在抜きにしても効率がまるで良く見えない
 ・多少なりとも集めたギャーソリンを巨大化の材料に使う状態を延々と放置
 ・その癖、上納金不足が問題化して、急に追い詰められ始める
 などなど、ギャーソリン関係の扱いが果てしなく雑なので、「ハシリヤンのギャーソリン集め」において「死の星を生んでまでギャーソリンを集める事」が“組織としても問題のある奥の手”に位置づけられるメカニズムがさっぱり伝わってこないのが、困ったところ。
 設定そのものは後付けでどうにかできる範疇ではあるのですが、ギャーソリンに関して筋の通った積み重ねがされていないので物語の構成要素として山場に焦点を合わせるだけの強度を持つに至っておらず、幹部退場回の足場に使おうとするも、グラグラしていて、高いところに手を届かせる為の踏み台になりえず。
 ジャッキーホイホイが地球周回軌道に到達するまで、残り約1時間――タイムリミットが迫る中、ブンブン一同は手分けしてキャノンボーグを探し回ると共に、打てる手を打ち、買い取った衛星をぶつけて、ジャッキーホイホイの進路を妨げようとするのは、なかなか面白いスケール感でした。
 衛星デッドボール作戦が失敗に終わり、細武の元に機密回線から謎の連絡が入る一方、軌道上に到達したホイホイよりギャーソリン回収光線が発射寸前、キャノンボーグのアジトに踏み込んだ先斗が弓矢の一撃でコントローラーの破壊に成功。
 直後、なぜか他の面々も一斉に姿を現し、何事かと思ったら「ISAからの情報提供」があったとの事で、それに思わせぶりに反応するキャノンボーグ、組織に売られた……?
 「気分ブンブン、ぶん回せ! 爆上げ戦隊!!」
 「「「「「「ブンブンジャー!!!」」」」」」
 キャノンボーグは三下トリオを瞬間改造すると、強制的にブンブンジャーへと突撃させ……まあサンシーターに関しては、改造されなくても、少し真面目に戦った方がいいと思います。
 思わぬパワーを発揮する三下トリオに戦闘員も加わった乱戦になると、キャノンボーグはホイホイ再起動までの時間を稼ぐ為にすたこら逃げ出し、その後を追う事になったのは、最も高速で動ける始末屋ブンバイオレット。
 「地球を、頼む!」
 「……はっ。オーライ、この始末、引き受けた!」
 …………え。
 う……うん……あー……第18話で、ハシリヤンと明確に敵対する事を決めた際に、「俺は地球なんかどーーでもいい! たった1人のダチと、その家族を守りてぇだけだ!」と、あくまで「公」ではなく「私」として勝手に戦う宣言をして差別化を図られていたのですが、その紫が「地球を頼む」の言葉に力強く頷くに際して、これといって心情の積み重ねが見えてこず、愕然。
 ……いやまあ想定としては恐らく、そこからここまでの間に6話、届け屋一同とつるんで、カレー食べたり、野球したり、学童保育を訪問したりして、“地球を好きになっていた”という事なのでしょうが、それにしても、
 〔VSハシリヤンにおける行動原理の最初の宣言から、ブンブン一同との付き合いを通じて心理に変化が発生し、ヒーローとしての行動原理がアップデートされる場面〕
 なので、ここを劇的に描かずしてどうするのか、と思う場面。
 紫の行動原理が「カオス」で誤魔化しがちであやふや、な点については何度か触れてきましたが、少年時代の傷にまで遡る焔先斗にとっての真芯に当たる部分まで、(前回を踏まえる形にしても)いつの間にか乗り越えられて、いつの間にか更新されていた扱いなのは、行間を読む事を求めてくるにも限度があります。
 今回、ここから先はもう、そんな落とし穴に端から落ちてタイヤバーストとコースアウトを繰り返していく事になるのですが、赤青黒から武器を託されたバイオレットが紫電と化してキャノンボーグの後を追うと、戦闘員を召喚したキャノンボーグは、始末屋にハシリヤン総長の暗殺依頼を持ちかける。
 「ハシリヤンのボスを倒し、この宇宙の全てを手に入れようではありませんか……」
 急に組織への叛意を見せるキャノンボーグ、その場凌ぎの誤魔化しだとしたらあまりにも策に面白みが無いし、多少なりとも本気だとしたらどこにも説得力が転がっていないしで、どう転んでも悪夢のような三文芝居。
 「私めの頭脳と、あなたの腕があれば、望んだものはなんだって――」
 「いらねぇよ!」
 キャノンボーグの誘いを紫はノータイムでぶった切り、
 「俺の望みは、あいつらと――……花火を見る事さぁ!」
 振り向く動作からの高速回転により周囲を囲む戦闘員を一瞬で薙ぎ払い、爆発の中で指を一本突き上げるアクションとポーズはとても格好良かったですが……いや君、そんなに、ブンブンジャーと仲良かったっけ……?
 ……いやまあここも、もともと地球に友達と呼べる存在が一人しか居なかった先斗だけに、友情防御力が限りなく0に近いのでしょうが、それにしても6話もあったのだから、大也以外のメンバーと打ち解けているシーンの一つや二つ描いておけばと思いますし(そういう時こそ、阿久瀬の出番なわけで)、とにかく行間が膨大すぎて、一章の半分ぐらい行間。
 「おのれぇ……ならば!」
 孤立無援となったキャノンボーグは、自らを改造する事で両腕に伝説の剣を生やすと、紫を上回るパワーを発揮し、怒濤のラッシュ。
 「ここでリタイアしなさい!」
 追い詰められた紫には首ちょんぱの危機が迫るが、咄嗟の二刀流でガードすると、挿入歌に乗せてここからは始末屋のターン!
 「知っちまったんだよ! あいつらと走る方が! ……早くなれる! 強くなれる! 爆上げになれるってなぁ!」
 アクションの映像には気合いが入っている一方、悲しくなるほど典型的な、台詞だけで中身が無いパターンですが、2クール目の締めを紫の転機でまとめるつもりだったら、どうして素直に、追加戦士登場後のセオリーである、追加戦士×既存メンバーのキャラ回で転がしていかなかったのか……託された仲間の武器を使ってガードから反撃、はいわゆる“燃える”展開なのですが、そこに必要な燃料となる、紫とブンブンメンバーの間に「反目からの和解、培われた信頼!」みたいなものは特に発生していないので、ただただ空虚。
 登場当初、赤とは直接戦闘がありましたが、他メンバーについては射士郎と玄蕃に軽く嫌がらせしたぐらいで、特に“敵対を乗り越えた”ような出来事も無いですし、6話の間の交友も、せいぜい、お椀回で未来を「おもしれー女」と認識したぐらいで、大也以外と直接言葉をかわした記憶もほとんと無いレベルなので(敢えて言えば、カレーで餌付けされた)、いっそ決めの台詞が、
 「知っちまったんだよ! あいつと走る方が!」
 の方が遥かに説得力爆上げだったぐらい。
 後、勢いで「カオス」さえ放り投げているのですが……いや君、これまで「爆上げ」に反応した事あったっけ……?
 とにかく先斗の転機を一つの山に持ってきた割には(諸々、マッドレックス退場回と重ねている節あり)、先斗が感じたであろう“心地よい場所”の存在に焦点を合わせるわけでもなく、行間の“なんとなく”に軒並み丸投げしてしまい、後はそれらしい展開と台詞だけで構成しているので、サーキットの路面がカタストロフ。
 「おせぇんだよ! 止まって見えるぜ。キャノンボーグ!」
 超高速の連続攻撃でキャノンボーグを追い詰めた紫による、ズンズンギガストリームでパニッシュ寸前、絶体絶命となったキャノンボーグの脳裏に浮かぶ走馬灯は、あの日のマッドレックスに告げられた言葉。
 「――キャノンボーグ。てめぇはな……一人で走ってるから、おせぇんだよ」
 「うううぁぁ…………どいつもこいつもぉぉ……!!」
 えええ。
 回想マッドレックスの台詞で、傲慢に一人で走り続けたキャノンボーグを、皆で走る事を覚えた紫が上回った、みたいな事にされるのですが……
 ・最初の雇用関係以外、キャノンが上でバイオレットが下、だったわけではない
 ・そもそもバイオレットにはビュンディーという相棒が居る
 ・マッドレックス様が皆で走っていた記憶もない(※一応ハシリヤン的に、先頭に立って走る隊長には下っ端からも仲間意識があるようですが)
 と、積み上げも説得力もホップステップも何もない、絵に描いたような大惨事。
 それもこれも紫とキャノンボーグを強引に対比しようとしている為ですが……基本的に、物語における「一つの山場」「一つの区切り」という意味でのクライマックスにおいては、場にある札で勝負するのが原則であって、いきなり山札から10枚引いて手札に加えて、場にばらまいても効果は限りなく薄いわけなのですが……長丁場のスタッフワークにおいて、巧妙な伏線や完璧な布石は実現が難しいなりに、“如何に場に使えそうな札を並べておくのか”という、肝心要の事をおざなりにしてきたツケが、案の定、大噴出となりました。
 土手っ腹を貫かれて弾け飛んだキャノンボーグは、ヤルカーを使ってデコトラとイターシャを巨大化する事で窮地を逃れようとするが、ヤルカーの反抗を受けてハイウェイ光線を浴び、巨大化。
 陰で動き回って他者を利用し続けてきた悪党の哀れな末路としては悪くなかったのですが、最近、三下トリオの使い方はちょっといやらさしが鼻につく感じになっているので、「気に入らない上司を蹴落とした」というよりも「救済ポイントをわざとらしく稼いだ」に見えてしまい、あくまで悪の手先は真面目にやってほしいところだなとつくづく思います。
 巨大キャノンボーグは改造バリアを張り巡らすと、BロボとのVロボの必殺攻撃を無効化し、攻撃が通じない?! となるのですが、キャノンの方もバリアを張っている間は防御に徹して動かないので、その間に何かが進行しないと、特にバリアの脅威が存在しないのですが。
 「俺達の攻撃が、通用しない……」
 「どうすればいいの?」
 とりあえず敵の様子や隙を窺うでもなく、必殺技の無駄打ちによりセルフで追い詰められていくブンブンジャーだが、触手攻撃を受けている間に、赤がひらめキング。
 「俺達の限界は、こんなもんじゃない!」
 「……だったら、全速力で行こうぜ! 大也!!」
 赤がブンブンカーを全車召喚すると体当たりを受けたキャノンがよろけ、やはり、攻撃中はバリアが張れない(笑)
 巨大幹部に対する苦戦さえ茶番劇となったブンブンジャーは、BBロボとVDロボが連結、全身のアタッチメントにブンブンカーを装着(こういうギミック自体は好き)しての、爆上げ全部盛りバズーカを放ち、その直撃によりバリアを突き破られたキャノンボーグは、大気圏を突き抜けると軌道上のジャッキーホイホイに衝突し、諸共に宇宙の塵となるのであった。
 かくして改造隊長はリタイアして地球の危機はひとまず去り、浴衣姿で花火を見上げるブンブン一同+細武。
 キャノンボーグのアジトをISA上層部が知っていた理由は細武にもわからないまま、大輪の花火がブンブンジャーを現すように夜空を染め上げて、つづく。
 爆上げ折り返し、二代目幹部退場と共に前半戦のフィナーレとなりましたが、圧倒的な人間関係の積み重ね不足・必要な情報を変にぼかすので物語の構成要素の強度が足りない・“行動原理”を大事にしない・場に出ている札の少なさ・広大すぎる行間、と『ブンブンジャー』ここまでの悪いところが見事に集約されて、なるべくしてなった大惨事でありました。
 予告の時点で、概ね怪しそうだな……と思っていたのでダメージは少ないのですが、悪いセオリーにここまでフルスロットルで突っ込んでいく作品もなかなか無い印象で、色々と残念。
 次回――どうやら新展開で、『ブンブンジャー』はコースに復帰できるのか。