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狼とアンケート

牙狼<GARO> -魔戒ノ花-』感想・第11話

◆第11話「漫画」◆ (監督:下田章仁 脚本:河波佑介/田口恵)
 「あんたの才能は――もう枯れちゃったんですよ」
 毎回、(主に)ホラーとなるゲストへのスポットが強めの今作ですが、今回は、ホラーになる前のゲスト(元売れっ子マンガ家)を精神的に追い詰める、アシスタント役の侮蔑と嘲笑の演技がとても素晴らしかったです!(笑)
 今作ここまでの中でも、非常に光る“殺され役”でありました。
 (才能が、欲しいか?)
 「……ほ、ほしい……ど、どうしたら……」
 (欲しいなら、奪え!)
 アシスタントの物言いに激昂して殺意を宿した瞬間、(力が欲しいか?)みたいな声を受け入れたマンガ家はホラーに憑依され、空間にペンで線を走らせると、アシスタントの男がそのまま絵になってしまうのは、面白い演出。
 三次元と二次元を如何に組み合わせるのか、は様々な作例がありますが(近年では『機界戦隊ゼンカイジャー』第28話が秀逸でした)、画風が独特で印象的に。
 マンガ家ホラーは、紙状になったアシスタントの魂をくしゃくしゃっと丸めると食らい、冒頭、マンガ家が原稿用紙をくしゃくしゃっと丸める姿と重ねているのが、嫌なイメージの増幅となって上手い。
 新連載が決定していたアシスタントの才能を食らった事で新たな漫画を生み出したマンガ家は一躍人気マンガ家の座に返り咲き……ある日、立ち読みする子供達に興味を示したマユリに週刊漫画雑誌について説明する雷牙だが、ほのぼのシーンも束の間、マユリは漫画に描かれているのが、数千年前に使われていた旧魔戒文字であると指摘。
 一方、マンガ家ホラーは、自身が一番になる為に次々と他のマンガ家の才能を食らい続けており、マンガ家役も実に怪演なのですが、厭味を飛ばしまくる雑誌不動の人気マンガ家がまた凄く増長の頂点に居る人間の嫌さ満載(それこそマンガに出てきそうな描き方は意図的と思われますが)で、今回は被害者サイドの好演がやたらと光ります(笑)
 「ご安心を。今日から私が1位です」
 新たな才能を食らって漫画を書き続けるマンガ家ホラーだが、気弱なアシスタントが見つけてきた子供時代の自作漫画を手に取ると、漫画を描き始めた時の純粋な喜びを思い出す……ような表情を浮かべた時間はほんのわずかで、
 「……原点? 漫画はね、そんな甘い物じゃないんだよ」」
 思い出の作品をゴミのように踏みにじり、しっかりとその魂は陰我に黒く塗り潰されている、或いは多少は器の残滓が存在していたとしても、もはや醜く歪んでいる事が示されたのは、安易に感傷に流れず良かったところ。
 マンガ家にネームを見せた弱気なアシスタントが標的になりかけたところで、雷牙が正面からご訪問。
 「生憎、私はヒーローマンガが大嫌いでしてね」
 「それは、最後に倒されるのが自分だからか?」
 マユリを巻き込み加減の変則バトルで、マンガ家は屋上へと逃走。仕事場の入ったビルごと結界を張って隠蔽していたホラーは、絵や擬音を実体化して雷牙を攻撃し、ズドォォォン! に叩き落とされる雷牙は、ちょっと面白かったです(笑)
 「私の才能をもっと見せてあげましょう」
 気持ち悪い六本腕となったマンガ家は、次々とイラスト軍団を作り出すが……それを見て微笑した雷牙の、
 「……絵に一貫性が無いな」
 のぶった切り方は痛烈で高ポイントを叩き出しました。
 「所詮、他人の技術か」
 「売れればなんでもありなんですよぉ」
 雷牙とイラスト軍団の戦いが始まり、漫画爆弾を投げつけて敵を殲滅する雷牙も大概なんでもあり。
 「もう打ち切りか?」
 そして今回は、毒が強い。
 「……どうしてあなたを招き入れたのか、教えてあげましょう」
 だが、余裕を残すホラーは正体(この後の立ち回りの都合もあってか、割と普通に格好いい系)を現すと、事前に用意していた黄金騎士の最期を描いた漫画原稿を触媒として、強制的にバッドエンドの流れを生み出す呪術を用い、漫画に描かれた筋書き通りに追い詰められていくガロ。
 「最後のコマまで、後わずかだぞ!」
 必殺の一撃が迫るその時、剣からインクが垂れている事に気付いたガロは、それを利用してベタで漫画を修正。
 「結末は、俺が決める!!」
 咄嗟の機転で術式を打ち破り、打ち切り最終回を回避した黄金騎士ガロが、意外な強敵だった漫画ホラーを撃破すると、後に残ったのは陰我に溺れたマンガ家の魂――
 「この漫画、私は嫌いじゃない」
 仕事場の片隅で、踏みにじられた自作漫画を手に取ったマユリが告げると、マンガ家は笑顔のような泣き顔のような表情を浮かべて消滅し……ホラーの撃破後に、素体がわずかに姿を留める変則パターンでしたが、《牙狼》シリーズにおいてメタ的に重要なテーマである「創作」と、雷牙のルーツに繋がる「絵」、という2点に関わるエピソードだった事で、受け止めやすいイレギュラーでありました。
 「……なるほどね」
 「どうした?」
 「大切なのは、作品に込められた想い。……母さんが言ってた」
 マユリの持ってきた漫画に目を通した雷牙は、手向けの花のごとく、屋上にその漫画を置いて去って行き、誰も居なくなった屋上で風が漫画のページをめくっていくと、カメラは主人公が笑顔を浮かべるラストのコマに寄っていくのですが、個人的にはその左側に、“白紙のページが続いている”のが、初代の最終盤を思わせて、痺れるイメージでした。
 ……ホラーと化したマンガ家にはその先は描けなくなってしまったわけですが、本来、人は誰でも、その白紙の未来を自らの手で切り拓いていける――というのもシリーズの大きなテーマであるように思うので。
 EDは、マユリの手にする漫画雑誌に興味を示し、そのまま読みふけりながら部屋を出て行ってしまうゴンザという、いつものほのぼのエピローグ……かと思ったら、急に胸を押さえて苦しみ出したマユリが、小箱から取り出した強心剤もとい板のようなものを口にして落ち着きを取り戻す、掟破りの不穏な引きが入って、つづく。