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もはや原作:島本和彦

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第23話

◆バクアゲ23「炎の逆境野球」◆ (監督:加藤弘之 脚本:古怒田健志
 元高校球児で、少年野球のコーチもしている阿久瀬だが、その練習中、イターシャがグローブをイグニッションして誕生する男球……もとい、グローブグルマー。
 「いたいけな少年たちに、勝負の世界の厳しさを教えてやる……プロの洗礼ビーーム!!」
 クルマ獣の目から怪光線を受けた子供達は、厳しいプロの洗礼を受けたのと同じ精神状態に陥って激しく意気消沈してしまい……逆境だ!!
 逆境とは!?
 思うようにならない境遇や、不運な境遇のことをいう!!
 「子供たちになんてことを!」
 ノータイムで赤が飛び込んできてグローブグルマーに飛び蹴りを見舞うが、野球を悪用するなんて許せない、と阿久瀬が怒りを燃やし……
 「俺と……俺達と、野球で勝負しろ!!」
 「「「「え?」」」」
 かくして爆上ブンブンジャーズと絶叫ハシリヤンズのスターティングラインナップがアナウンス付きで紹介され(ハシリヤンズは省略)、これはもしかして、《スーパー戦隊》史上、最も気合いの入った野球回なのでは(笑)
 その中身の方は、サブタイトルにキーワードを入れるどころか、原作:島本和彦とクレジット打ってもいいのではレベルの全力ストレートな逆境ナインパロディ回となりましたが、実は私、マンガ『逆境ナイン』大好きでして(実写映画は未視聴)、以下、パロディ箇所の言及など『逆境ナイン』(以下、もう「原作」)ファン目線の感想となり、原作後半の内容にも触れるので、ご留意下さい。
 これだ!!
 これが逆境だッ!!
 「誰かのミスをみんなでカバーする! それが野球です!」
 阿久瀬の気合い充分に始まる試合だが、急造素人チームが軽快にボールをさばける筈もなく早速デコトラの出塁を許すと、代走に起用されたヤルカーが鮮やかな盗塁……から、一気にホームを陥れる韋駄天ぶりを見せ、更にハシリヤン野球特別ルールの採用により、アウトになるまでベース1周の度に1点が追加されていき、ハシリヤンズが一挙8点を先制。
 ヤルカーを代走に起用して活躍を描く、というアイデアが単純に面白かったですが、
 「カーが通ればルールは引っ込む、です」
 と、いきなり謎の格言を入れてくるのは原作パロディ。
 続けて、グローブグルマーのピッチャー返しの直撃を受けた阿久瀬が外野フェンスまで吹き飛んで気を失い(さすがに原作はマウンド上で気絶でしたが、展開はほぼそのまま)……目を覚ますと、スコアボードに並んでいた数字は、118対0。
 ……いや阿久瀬、この炎天下の中、誰もベンチに回収しなかったの??(笑)
 (原作だと、マウンド上で主人公が気絶した後、ベンチに引っ込めない為に守備時は外野に転がしていた事になっているのですが、今作では阿久瀬が外野まで吹き飛んでいった為に、ずっと放置されていたように見えてなりません(笑))
 「なんで、こんな事に……」
 目を覚ました阿久瀬はベンチに戻ると、不可解な判定の数々と、グローブグルマーの投げる多彩な魔球の前に手も足も出ないまま試合が続いていた事を知り、残るブンブンジャーズの攻撃は9回裏のみ。
 「すいません! 俺がこんな勝負を言い出さなければ……」
 ……まあ、特に約束しているわけでも特殊空間に飲み込まれているわけでもないので、この後、暴力で解決してもなにも問題はないわけですが(笑)
 「阿久瀬巡査、あなたが言い出した試合です。あなたがどうするか……決めなさい」
 巨大なサングラス(パロディ)を装着した細武は、二枚の板を阿久瀬に突きつけ(パロディ)、試合を続行して野球で勝つか、試合を放棄して暴力で勝つか、二者択一(パロディ)の選択を迫られる阿久瀬…………いやホント、視聴後にコミックスを確認したら、好き放題ですね!!
 「丈にとっての、野球の素晴らしさってなんだ?」
 「……それは……野球は9回の裏、ツーアウトまで勝負がわからないスポーツです」
 …………スリーアウト、じゃないかな……。
 よく言われる「野球は9回ツーアウトから」を少し言い換えてみたところ、「ツーアウトでもまだ勝負はついていない」筈が、「ツーアウトしたら実質試合終了」みたいな意味に変わってしまい、野球回としては結構な致命傷(笑)
 「最後まで諦めない不屈の闘志があれば、何かが起きる……。俺には見えます。この試合の勝利の先の、BBGのチェッカーフラッグが!」
 試合続行を決めた阿久瀬と大也がバロムクロスすると、爆上げな熱風がグラウンドを吹き荒れ、男の熱い魂――それは…交わした腕と燃えたぎる眼光によって伝達される! これは冗談ではない!! ……と、島本和彦が書いています。
 なお、「不屈・闘志」は『逆境ナイン』の主人公の名前であり、ここも完全にパロディなシーンなのですが、そこで「BBG」を台詞に入れておくあたりは、古怒田さんの上手いところ。
 ……上手いというか、普段の脚本陣があまりにもそういう目配りに欠けているというか。
 「たかが118点差。逆転しましょう、9回裏!」
 「「「オーライ!」」」
 「――爆上げだなぁ!」
 やる気パルスがメンバーの士気を高め……原作だと112対3で109点差なのですが、何故そこは違うのかと思ったら……119で勝つからか、とこれを書いている途中で気がつきました(笑)
 「まだ諦めないのか? スコアボードを見てみろ」
 「何点差あろうが関係ない! 行くぞ、みんな!」
 不屈の闘志を充填されたブンブンジャーズは、ベンチ前に並んで掟破りのブンブンチェンジを行うと、ユニフォーム姿で帽子を被ったままで、フル名乗り。
 「バットブンブンぶん回せ!」
 「今日は特別!」
 「爆上野球戦隊! ブンブンジャー!!」」」」」」
 今回、パロディはパロディとして、単発のバラエティ回としては、どうせやるならここまで弾けよう、という勢いは全体的に良かったです。2021年以降はどうしても、名乗りネタは『ゼンカイジャー』を彷彿とさせる問題は出てきますが。
 変身により基本能力を上げたブンブンジャーは、グローブグルマーの魔球にマジカルブンブン打法で対抗し(紫の右→左打席打ちは、『アストロ球団』)、ノーアウト満塁として迎えるバッターは4番ブンレッド。
 ここが勝負の分かれ目、とボールを掲げたグローブグルマーは、男の魂ならぬハシリヤン魂をボールに込めて全力で投げ込み、もともと怪人の顔デザインがそのままでしたが、ボールに魂が籠もっているので、投げたボールに再び触れるまで本体がへろへろしているところまで含めて原作パロディ。
 グローブグルマー入魂の投球にツーストライクまで追い込まれたブンレッドは打席の中で119し、ボールを投げる前ならともかく、ボールを投げた後に行うと物凄い騙し討ち感があって、野球勝負におけるレッドの行為としては、歴代屈指の卑劣を感じます!!(笑)
 それはそれ!! これはこれ!!
 と放水で魔球の勢いを弱めた赤の一振りが会心の一打となって天高く舞い上がり、その間に4人がフルスロットルでベースを回り始めるところに主題歌インストを流したのは、素晴らしかったです(笑)
 「アウトになるまでは、何回まわってもいいんだよな!」
 外野を転がったボールが返球されている間に、赤119がサヨナラのホームを踏み、パロディ満載の筋立てですが、ここで何が素晴らしいって、ハシリヤンルールを活用する事により野球も変身も出来ないメンバーに打席が回る前に勝負を付けた事と、最後にちゃんとクロスプレーでアクションの見せ場を用意して締めた事。
 変身はするもベンチから声援を送るだけだった桃と橙が多少割を食いましたが、橙は普段から何かと強キャラ扱いなので、バランスとしてはそれでもまだ悪いぐらいですし。
 勝負が決した後、ボールに込めていた魂が戻って立ち上がったグローブグルマーは乱闘に持ち込もうとするが、ズンズンオーバードライブのカウンターを土手っ腹に食らって、華々しく退場。
 「最っ高にカオスな展開だ」
 ……今回は、本当にカオスでしたね……。
 ヤルカーがグローブグルマーを巨大化して延長戦は暴力の時間となり、妙に安っぽい球場のセット(本当に火を点ける都合……?)を炎上させると、レオレスキューが発進し、消火、そしてブンブンジャーロボと超爆上合体。
 ブンブン消防車がパーツ分割されて、ブンブンジャーロボの強化外装となるブンブンジャーロボ119が誕生し、炎の魔球を梯子のバットでピッチャー返し。これまでと違うパターンの新合体が2人乗りでいいのか感はありましたが、トドメの水圧ソードのエフェクトは格好良かったです。
 逆境を乗り越えた少年野球に笑顔が戻り、ブンブンジャーにちょっとした野球ブームが到来して、つづく。
 ……冷静になると(パロディの元ネタを確認すると)、だいぶ悪ノリしすぎ感があり、元ネタを知らない人が見ても面白いのだろうかこれ……でしたが、赤が一人でスーパー化して、ますます「チーム」の意味が見失われつつあるブンブンジャーにおいてチームスポーツを題材としたり、どうせバラエティ回ならと思い切りの良さを見せたり、基本はトンデモ回ながら端々に目配りがあったりと、加藤監督の演出も楽しそうかつ、古怒田さんの脚本力を改めて感じるエピソードではありました。
 筋立てはホント、ほぼほぼ『逆境ナイン』クライマックスの換骨奪胎なのでパロディの度が過ぎてエピソード単体としての評価はし辛く(それをどう再構成するかも腕ですが)、古怒田さんの技量なら「届け」要素を入れて欲しかったとか、しれっと混ざっている先斗と他メンバーの絡みをどうにかねじ込めなかったものか、など求め出すと色々ありますが……パロディの許容度という意味では無しに、
 スーパー戦隊》は本来、これぐらいアクセルを踏み込んでも飲み込めるシリーズ
 を示してきた点で『ブンブン』では貴重なエピソードとなり、出来ればパロディで無しにそれを示してほしかったところはありますが、これをきっかけに少し、作品全体のアプローチが変わってきてくれるのを、期待したいです。
 次回――今度こそ大也のパーソナルを上手く掘り下げる事は出来るのか?!