『電子戦隊デンジマン』感想・第19話
◆第19話「私の星の王子さま」◆ (監督:広田茂穂 脚本:上原正三)
車のエンジンが急に故障した美女ムーヴで、ワールド太陽熱研究所の守衛を引っかけるケラーさーーーん!!
2話ぶりの地球人偽装で開幕からエンジン全開ですが、そこから、油断した守衛の頭をボンネットで思い切り挟み込むのが大変えげつなく、大人になってもこういう女に騙されてはいけない、と教育的に釘を刺してきます。
研究所に突入したベーダー戦闘員は、開発されていた太陽光モーターの資料を強奪し、所員たちを皆殺し……と思ったら重傷扱いでしたが、この後、生き残った一命の抹殺を図るのが主題となるので、若干、演出と脚本で意図がズレていたような感もあり。
「馬鹿な。私は大気が汚れた、毒々しい東京の空気が好きじゃ。そこをクリーンにされてたまるか」
前回の海洋汚染に続き、公害問題を背景にしたと思われる環境問題の要素が少々クローズアップされ、大気汚染バンザイ! とクリーンエネルギーの開発阻止を命じる女王様。
たまたま席を外していた事により、襲撃を逃れた研究員・松本を抹殺しようとするベーダー一族だが、松本が黄山の友人だった縁でその危機に気付いたデンジマンに妨害を受けると、ベーダー怪物17ガマラーを孵化させる。
「ガマラー、おまえの使命は、星の王子になる事じゃ」
「星の王子?」
「さよう。星の王子になって、可愛い娘を、誘惑するのじゃ」
正面からデンジマンに当たるのではなく、内部から崩そうとするベーダーの謀略により、ガマラーが児雷也パロディを経由して白タイツの王子様へと変化する一方……
ナレーション「オオイシ・ゲンイチが、北海道に転校する事になった」
突如として退場宣告を受ける、セミレギュラー少年。
「いいか。北海道行っても、空手の精神を忘れるな。気合いだ!」
「俺、日本一の、牧場主になってみせるよ」
壮大な夢と空手の精神を胸に、祖父の牧場を継ぐ事になった少年は東京に別れを告げ……後に、ヒグマ殺しのゲンと呼ばれる事を、この時はまだ誰も知らなかった……かはわかりませんが、いきなりな挿話を挟んで本筋に戻り、松本の自宅には当たり前のように、地下研究施設と、赤外線セキュリティが存在していた。
これは10年後だったら、壁からレーザーが飛んでくるやつですね!
いざという時はきっと自爆装置も発動する松本邸を前に、ガマ王子は松本の妹・ナルミと接触。
宇宙から来たと自称すると、テレパシーによる精神干渉に成功し、存外、王子の設定が作り込まれているのですが、これまで見せてきたセンスを考えると、多分ヘドラー将軍が、ノリノリでシナリオを書いてプロデュースしています。
少女と星の王子の交流が幻想的に描かれ、この映像と雰囲気なら、超能力のアピールを、
指からビーム
で行わなくても良かったのでは!
ガマ王子は少女に指輪を渡すと姿を消し、
(オパールでもない。ルビーでもない。無論、景品のガラス玉でもない……)
黄山は一目で石の種別を判定し始めるモテない理系男子ムーヴを見せ、命の危険からガードしているにしても、優しい笑顔で少女の行動を逐一コントロールしようとする電子戦隊の言行がほぼ軟禁。
「ナルミちゃんは夢中だ。そのベーダーの少年に……」
「なんとか化けの皮を剥がさねば」
少女を警戒した電子戦隊は、ガマ王子から渡された指輪を取り上げると、隠しカメラである事を確認。テレパシーで少女を操るガマラーを逆に罠にかけるとリビングで取り囲み、デンジレッドは、ベッドに腕組みしながら寝転んで敵を待ち伏せするのが、ちょっと癖になってきていた。
「少女の心を弄ぶ悪魔め! 許せん!」
そのままガマ王子を袋だたきにし、裏山に埋めて証拠隠滅を図ろうとするデンジマンだが、リビングに少女が飛び込んできて王子をかばってしまう。
「……仕方がない。君には見せたくなかった」
カーテンをさっと開くと、仕込まれていた鏡に映されたガマ王子は正体を現し、「カエルの王子」「ガマの油売り」「児雷也」と、ガマに関わるものが色々とハイブリッドされている感。
戦闘開始が室内という事でか、イメージカラーを背景にしての名乗りから、ガマラーがベーダー忍術によって幻覚でデンジマンを攻撃してくる一工夫。
庭に飛び出すもガマ幻覚に翻弄されるデンジマンは、よしもうデンジブーメランだ! と必殺武器を投げつける事で幻覚を強制解除させ、巨大化するガマラー。
なかなか見ない勢いで巨大ガマラーの口から炎が迸ると、新たな挿入歌に乗せて、ダイデンジン、アクション!
ミットに変化してデンジボールを受け止める巨大ガマラーは、満月斬りを受けても即座に再生するが、本体は少年の姿のまま幻術を操っており、挿入歌をもう一つ使っての集団戦が改めて展開すると、再びのブーメランで今度こそ大爆発し、ワンパターン化を避ける試行錯誤の見えるクライマックスバトルとなりました。
少女は星の王子様との思い出に、風船に繋げた花を捧げて別れを告げ、男どもが「12歳は子供だな」と口を揃える中、「難しい年頃よ、12歳は」と添える桃井さんが良かったです。
目標の身内を狙った美少年ハニートラップは、前作『バトルフィーバーJ』第27話「初恋泥棒にご用心」(監督:広田茂穂 脚本:上原正三)の筋立てそのままでしたが、美少年ロボット惨殺の荒療治で少女に深いトラウマを刻み込んだBF隊に比べると、まだ人の心と配慮の見える電子戦隊でありました。
ベーダーの妨害を乗り越えて太陽光モーターの設計図は無事に完成し、次回――新たなる少年、現る?!