東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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球道は地球人のたしなみ

電子戦隊デンジマン』感想・第17-18話

◆第17話「泣くな! 野球小僧」◆ (監督:竹本弘一 脚本:江連卓)
 「えーい、手ぬるい手ぬるい! 妾の居たベーダー星のプロ野球はこんなものではなかったわ」
 地球侵略が遅々として進まず、お肌のコンディションが気になる女王陛下の為に、ベーダー一族の天覧殺人野球大会で始まる由緒正しい野球回で、ベーダー星にはプロ野球リーグが存在していた!!
 ベーダー野球の真髄を見せるべく、ヘドラー将軍がデッドボーラーを召喚すると、殺人ボールで次々と戦闘員を血祭りにあげていき、女王様、大喜び。
 「ベーダー野球を、この日本に確立せよ!」
 かくして、地球の前にまずは野球を侵略だ! と、時速300キロの頭部死球がランニング中の高校球児を襲う事件が続発し、調査に乗り出す電子戦隊。
 「ベーダーは野球を無くしたいのさ……今や野球は国民的スポーツだからな」
 「冗談じゃないぜ全く!」
 デッドボーラーの被害はプロ球団の二軍にも及び、このままではホームラン王・玉木が危ない、と危惧する青梅(どうやら野球好き)だが、野球とは地球における伝統的な武術にして、ホームラン王たるもの達人ゆえに隙が無い為に、やたら慎重に玉木の気配を窺うデッドボーラーが見所(笑)
 玉木の危機をデンジブルーが救う一方、デッドボーラーには、玉木抹殺を願う少年が接触し、玉木の親友にしてライバルだった兄が、玉木の打球が原因で再起不能になった事を恨む少年と、兄と玉木の変わらぬ友情が物語の横糸となるのですが、横糸の入り方が細切れというか気まぐれで、縦糸になる玉木暗殺計画と上手く綺麗な絵を織り成してくれません。
 これなら縦糸のアイデア勝負に絞った方がスッキリして良かったのではと思うのですが、人情ドラマの要素を付け加えて筋が行方不明になりがちなのは、江連脚本の悪癖の感もあり。
 消える魔球に青梅が倒れたり、怪人が少年に玉木暗殺の知恵を求めたり、少年と玉木の関係が修復されたりの末、ベーダー野球部の殺人野球攻撃に対して、デンジマンはデンジバットでピッチャー返しを炸裂させ、変身後に並んでバットを構える画は、もしかすると《スーパー戦隊》史上初でしょうか……?
 デンジスコープにより消える魔球も見破ると、巨大デッドボーラーは満月斬りでホームランされ、ゲームセット。
 球けがれなく道けわし、ひとたびバットを握れば心は真剣と同じにして、剣禅一致無念無想、そのスイングに殺意を秘めた地球野球の前に、ベーダー野球は脆くも敗れ去るのであった!

◆第18話「南海に咲くロマン」◆ (監督:竹本弘一 脚本:曽田博久)
 ナレーション「遠い遠い昔、魚のように、海の中でも生きることの出来た人間が居たと云われている。誰もその姿を見た者はいないが、その人々の事は、海彦一族と呼ばれて、ある、海辺の村の、昔話の中に語り継がれている」
 ヘドラー将軍は、ベーダー怪物カイガラーを利用して、海彦一族にデンジマンを倒させようと画策し、ある夜、アスレチッククラブのプールに忍び込んで泳いでいたところを見つかった青年は、桃井の幼馴染み・海原洋太郎。
 桃井は昔なじみを明るくメンバーに紹介するが、完全に不審者なので、男性陣の視線はいつでも拷問を始められそうだった。
 知り合いに見栄を張ったのが理由で、カナヅチを克服しようとしていた、と語る洋太郎(ちょっと間が抜けているが、気の良い朴訥な男、といった描写)が、桃井に偽の恋人役を頼む一方、カイガラーの笛の音により、遠い日の祖先について知らず、地上で普通に生活していた海彦一族の末裔たちが、エラやヒレを持った水棲人間となる事件が続発。
 「海彦一族が甦った」
 アイシーは目を光らせると重々しく呟き……変身を遂げた3人の男性はいずれも、苗字に「海」がついていた!
 「おい待てよ……そういえばあいつも」
 手帳にメモを取るペン字が綺麗な赤城さんの記す先夜の不審者の名は――海原洋太郎。
 野郎衆からの好感度が奈落の底な洋太郎は一方的な嫌疑をかけられ、割とトラブル巻き込まれがち体質の桃井を純粋に心配している面はあるのでしょうが、男たちの態度が若干
 「ランちゃんがゲキレンジャー辞めたら、男ばっかりになっちゃう!!」 (久津ケン/『獣拳戦隊ゲキレンジャー』修行その37「ギャンギャン!お見合い問答無用」)
 入っていて面白い事に。
 その洋太郎は桃井と湖にボートを浮かべてデート中、競争社会が苦手、とこぼしていたところ、カイガラーの笛の音を聞いて海彦一族へと変貌してしまう。
 湖に潜んでいた他3人の海彦一族が桃井に襲いかかると、デンジマンが男だらけになるのを阻止するべく仲間達が駆けつけ、湖に飛び込んでの取っ組み合い。桃井の救出には成功するも、ベーダー一味は逃走し、さらわれた洋太郎は戦闘訓練を受ける事になるが……
 「いくらカナヅチとはいえ、海彦一族になっても横泳ぎしかできぬとは……呆れた奴め」
 戦力にはほど遠かった。
 「わしはデンジマンを倒すとヘドリアン女王様に誓ったのだぞ。カイガラー、この不始末をどう償う?」
 「ははっ。こうなったからにはこの者たちに、海岸のコンビナートを襲わせましょう」
 上司から不始末の責任を丸投げされたカイガラーは、大規模テロに作戦方針を変更するが、海彦一族の3人は河川敷に打ち上げられた死体となって発見され、思い切りの良すぎる使い方にビックリ。
 黄山は、海彦一族は現代の汚れた海には適応できなかったのだろうと分析し、いよいよ後の無くなったカイガラーは、せめてデンジピンクを罠にかけようと、故意に洋太郎の監視を緩めて桃井に助けを求めさせる。
 「助けてくれ……俺はこのままじゃ、死んでしまう……あきらちゃん、やっぱり俺は、南の海へ行きたいんだ……」
 人間であった頃から羨望していた南の海、陸上生活には耐えられない洋太郎は桃井に懇願し、男たちの制止を振り切って洋太郎の元へ向かった桃井は、ベーダー一族の待ち伏せを受けると、投石・連続ローリング回避・拾ったサブマシンガン乱射・ロープアクションの大暴れで、後の女性戦士の系譜に確かに繋がっていくものを感じます(特に拾った銃を乱射する辺り)。
 男たちは足跡トラップで二人の逃走を手伝っていたが、戦闘員と出くわすコミカルな一幕を挟み、ベーダータワーで青をやりすごしたカイガラー一味の追跡が続く中、ひたすら、海を目指す桃井と洋太郎。
 「海彦一族は、綺麗な海を愛し、何よりも平和を愛した人達なのよ。あたし達は、その一番大切なものの為に、戦っているの」
 力尽きかけた洋太郎を桃井は励まし、かつて滅びた海彦一族の、そして今の洋太郎の魂とは、デンジマンの守ろうとするものそのものなのだ、という持って行き方は、この後《スーパー戦隊》史に名を刻む曽田先生らしさを感じる話運び。
 とうとう海へと辿り着いた洋太郎は、桃井あきら@白ワンピース概念と砂浜でいちゃいちゃダッシュする妄想に浸り、前回-今回とミラー&ケラー控えめにして、今回は桃井が3着の衣装を披露し、逆襲の時は来た! ……のか?
 海を目前にして立ちはだかるカイガラー部隊だが、洋太郎を守る為にデンジピンクが一人で立ち向かうと、「あきらが海に消えたら男ばっかりになっちゃう!!」の熱いパトスを胸に男達が駆けつけ、
 「「「「「見よ! 電子戦隊・デンジマン!!」」」」」
 5人揃ったデンジマンは、デンジタワーからの一斉キック! そして、天高く跳び上がると手に持ったデンジスティックを一斉に怪人の頭部に叩きつける新必殺技・稲妻落としでカイガラーに大打撃を与え、巨大化したカイガラーは、満月斬りでスパッ!
 ……前後の作品と比べても、その場の勢いで技が増えていく率がかなり高い気がするデンジマン(笑)
 海彦一族を利用しようとしたベーダー一族の野望は費え、桃井は光輝く海の彼方へと消えていく洋太郎の姿を見送り涙をこぼす。
 「さよなら、日本。さよなら、あきらちゃん、俺は、今初めて、自由になったんだ。のんびり、気楽に、南の海で暮らすさ。遠く、南の海から、地球の平和を祈っているよー。さよなら、さよならーー」
 善良な魂を持ちながらも、子供の頃から社会に馴染めずに居た男は、その魂に導かれるまま海の向こうへ消えていき……後に90年代《メタルヒーロー》シリーズにおいて扇澤延男が繰り返し描いた、“体制の価値観から外れたアウトサイダーの孤独と悲哀”に通じるテーマ性が、興味深い一本でした。
 また、最終的には現代地上人とは違う生き物に変質するも、洋太郎の持つ善良な魂の在り方は、「国家」とか「社会」とかいった枠組みと関係無く存在し、デンジマンが戦っているのはそれを守る為なのだ、というのは、国家所属の公権力戦隊では明確には描けなかった要素とはいえ、この後のシリーズ作品へ繋がっていくところであるかもしれません。
 次回――多分ようやく黄山のターン(料理・研究スキルで割と存在感は出ていましたが)。