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お椀の中のお姫様

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第20話

◆バクアゲ20「イエスタデイ 椀ス モア」◆ (監督:竹本昇 脚本:森地夏美)
 先斗とビュンディーが地球で始末屋の看板を掲げて現地通貨を稼ぐ為に働き出した頃、食堂でうなだれる男が一人……誰あろうそれは、かつて届け屋に結婚式場からの花嫁強奪を依頼するも、無事に届けられた肝心の積み荷に目の前で捨てられ、手に手を取っての海外逃亡の夢破れた男――未来の元(自称?)恋人・降野ノリオ。
 「奪われたら奪い返せばいいだけです! 私めが、手伝って差し上げましょう」
 ブンブンジャーに憎しみを募らせるノリオを焚き付けたキャノンボーグはお椀グルマーを誕生させると、地球人がクルマ獣を操縦する為のハンドルをノリオに与え、お椀グルマー・発進。
 「今こそ、にっくきブンブンジャーを倒し、ギャーソリンを集めるのです!」
 街に姿を見せると、名指しで未来を指名してくるお椀グルマーに困惑しつつも、大也たちはブンブンチェンジ。
 「未来……ブンブンジャー……!」
 それを見つめるノリオは、憎しみの炎に導かれるままにお椀グルマーを操り、お椀の中にさっくり捕獲され、お吸い物の出汁にされていくブンピンク。
 「いいぞ、今度はブンブンジャーを全滅させろ!」
 「ハイ、喜んでぇー!」
 ブンブンジャーは意外と固くて強いお椀グルマーに苦戦し、どこからか電波を受信している事に気付いた赤は、いちはやくノリオの元に辿り着いていた先斗と一悶着。
 とにかく「カオス」で誤魔化していくのですが、先斗の行動原理が抽象的なのは非常に物足りないところで、既存メンバーとの差異としても、追加戦士にはもっとハッキリとした行動原理を与えた方が良かったようには思います。そうでなければ「既存メンバーと一致」させるかのですが、現状、先斗の「カオスな状況を求める」は、キャラクターとしての強烈な個性とか、行動を既定する譲れないルールというよりも、物語の進行に都合よく使える曖昧な便利ワード、にしかなっていないのは残念です。
 「未来は流されやすいからおまえらに騙されたんだ! じゃなきゃ僕から離れていく筈がない!!」
 未来とノリオは学生時代からの知り合いと明らかになり、ニューヨーク赴任を契機に未来にプロポーズしていたノリオ……思っていた以上に、傷は深かった。
 一言の相談も無しに未来がついてきてくれると思い込んでニューヨーク赴任を決めているなど、かなり身勝手な面は見られるのですが、お洒落してディナーには同席しているし、さすがに未来もこれで「流されるままに付き合っている感だけ出していた」とは受け止めづらく、男女の問題については正直もうちょっと、コメディで済むところに留めておいた方が良かったような。
 ノリオの方の問題点を大きく捉えるとDVに踏み込んでますし、ノリオの方の問題点を小さくすると未来も未来でちょっとどうなのかな面が出るしで……恐らく脚本上は、前者への意識があるのかとは思われますが、少しやり過ぎた印象。
 「他人のハンドルを握ろうとすれば、自分のハンドルがおろそかになるぞ!」
 「……出たよ~。お得意の説教タイムだ」
 お椀の中で「出せー」と暴れる桃を、鳥籠の中から羽ばたこうとする存在になぞらえ、鳥籠の主はあくまで未来のハンドルと自分のハンドルを重ね合わせようとするが、募る憎悪の赴くままにノリオから放出されるギャーソリンに耐えきれずにハシリヤンハンドルが壊れ、お椀グルマーは暴走。
 「ピンクちゃんのハンドルを握ろうとして、ハシリヤンにハンドルを握られてた気分はどうだ? ……俺が始末をつけてやる」
 ハンドルバリアーまで発動して何でもありの先斗は、ビュンビュンチェンジするとお椀グルマーに飛び蹴りを食らわせ、情報屋というより蘊蓄屋みたいな豆知識を用いて青が桃の解放に成功して、ズバリ正解っス!
 怒りのピンクはお椀グルマーの背中にダブルタイヤドロップキックをぶち込んだのを皮切りに怒濤の連続攻撃を仕掛け、元カノの秘めていた暴力性に戦慄するノリオと、やたら自慢げに勝ち誇る大也。
 「あれが未来……あんな未来、見たことない」
 「……爆上げだろ? あれがうちの運転屋。何があっても、一度 殴りだしたら止まらない 掴んだハンドルは手放さない」
 その言葉に、ノリオは学生時代、文化祭の飾り付けを最後まで諦めずにやり抜いた未来の姿を思い出し……どうせならそこをノリオが未来を好きになった明確な瞬間として、いつの間にか自分の鳥籠に束縛しようとしてしまっていたけど、最初に好きになった未来は、「自分の強い意志で走っていく未来だった」ぐらいはしても良かったような。
 それはそれとして、成る程、大也の「爆上げ」と先斗の「カオス」を意図的に重ねているのか、とここで納得したのですが、主人公の「爆上げ」は抽象的な便利ワード扱いでもまだ良かったけれど(物語の進行で中身を埋めていけばいいわけで)、追加戦士もそれと同じ用法を持ち込むのは、あまり巧く行かなそうで不安。
 青黒橙が背景と一体化する中、紫を押しのけて爆走する桃は、トドメを奪い合った末に結果的コンボ必殺技でフィニッシュ。
 ブンブンカー発進から主題歌が始まるとフルサイズ主題歌での巨大戦となり、巨大お椀グルマーのお椀封じに囚われかけたBロボビルダーとVDロボは力技でお椀を粉砕し、怪人の特殊能力も、過去の恋人とのこじれた関係も、筋肉はだいたい、全てを解決します。
 「僕の為に、毎日味噌汁を作れーー!」
 「絶対、お断り!」
 お椀グルマーの飛び道具もビルダーハンマーで木っ葉微塵に粉砕し、怪人の台詞はアドリブの場合も多いようですが……“お椀の象徴する束縛”の行き着く先としては、今回で最も毒っぽい場面に。
 Bロボビルダーは好きなので、久々登場で大暴れしてくれたのは、良かったです(VDロボと絡める事で、Bロボのバリエーションをスムーズに活躍させられるのは好手)。
 「お人好しで、流されやすくて、一度決めたら止まらない。……そんなところが好きだった」
 大也によって成田空港まで届けられたノリオは、スッキリした表情でニューヨークに帰っていき、急に入ったバイトに笑顔で励むミラの頭上を、ノリオを乗せた飛行機が通り過ぎていくのだった、で幕。
 第1話の後始末として未来を掘り下げたアイデアは悪くなかったですが……上述したように、過去の恋人関係がやけに重くなりすぎたのは、引っかかった部分。
 また、追加戦士登場後のエピソードとしては、未来とノリオの話に終始して、先斗がおまけの戦闘要員でしかなかったのは物足りず、その先斗の生き様が、未来やノリオと対比されて鮮やかになるわけでもなく、先斗にしろ大也にしろ、ブンピンクの大暴れに「カオスだ」「爆上げだ」とコメントするばかりでしかないのを“個性”みたいに扱って及第点にする楽な作りは、もっと改善してほしいところです。
 次回――ブンブンレスキューポリスで、MAY DAY MAY DAY?!