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お金は命

『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第19話

◆バクアゲ19「アマノガワと天の道」◆ (監督:竹本昇 脚本:樋口達人
 「俺は……飛ぶ事を恐れて、勝利を逃したんだ」
 季節は七夕――今日も今日とてブンブンとの妄想にふけっていた細武は、金欠で街を彷徨っていた先斗とビュンディーを拾ってカレー屋ブンブンへと連れて行き、OP映像のマイナーチェンジでビュンと先斗がカレーに乱入、は面白かったです(EDは、丸枠で処理)。
 先斗にも大好評のブンブンカレーであったが、話が七夕から天の川の話題に触れると、かつてBBG天の川サーキットにおいて、ショートカットのジャンプ台を避けて安全策を採った結果、恐れず真っ直ぐに飛んだビュンディーに逆転負けを喫したレースをブンブンが引きずっている事が明らかに。
 強化ギミックの関係もありますが、追加戦士加入後初のエピソードで、まずはブンとビュンの掘り下げから入ったのは、両者の色分けも意識されて、良かったところ。
 街には三下トリオによって給料日を悲鳴に変えるATMグルマーが出現し、戦闘員とヤルカーの組み合わせによる「M」の人文字は今回の白眉(笑)
 「大也、おまえはさがれ。奴の札が張り付くと、個人資産が重量に変換される」
 全く意図しないところから、敵の特殊能力とメンバー個人の特徴が噛み合ってしまい、負のシナジーによる圧死の危機に戦線離脱を余儀なくされるレッド、も面白かったです。
 「みんな、錠の後ろに隠れろ」
 大也が超特急でガレージに避難すると、メンバーの懐事情を把握している青の指示により、クルマ獣の札束ハリケーンを黒を盾にしてやり過ごし、阿久瀬錠の金銭は、既に筋肉に変換されている……!
 脚本ベースか、久方ぶりに参戦した竹本監督が演出ベースで手を入れてきたのかはわかりませんが、「特にメイン回というわけでなくても、キャラクターの個性が随所で拾われて、キャラ同士の化学反応が生じていく」《スーパー戦隊》シリーズの持ち味を活かした見せ方となり、こういった部分で楽をしすぎずに少しずつ積み上げていく事で、今からでも“『ブンブン』らしさ”を立て直してほしいところ。
 何かと前に出たがる紫を加えての必殺攻撃で撃破したATMはハイウェイ光線で巨大化し、空中からの高速機動で圧倒するVDロボだったが、敵の罠にはまるとへそくりの重みにより墜落。助けに入ったブンブンロボも地上からでは近づけず、翼を貸そうとするVDロボの言葉に踏ん切りがつかないが……
 「あの時とは、違って……今のおまえには最高の仲間が居る。なのにまだ、飛ぶのが怖いのか?!」
 「……そうだ、ブンブン! 俺達に、行けない場所なんてない」
 「大也……」
 「初めての空をみんなと飛ぶ。最っ高の爆上げじゃないか」
 大也の言葉に背中を押されると、ビュンディーロボのウイングパーツを装着して天高く舞うウィングブンブンジャーロボが誕生し、台詞のやり取りは格好いいのですが、約1名、ガレージ待機で締まりきらないのが、どうも『ブンブン』クオリティ(笑)
 BBロボが新たな力で空中戦の優位を取ると、一度でも走ったコースはパーフェクトに走るがブンブンの強みであり私が認めたライバル! とVDロボがその勇姿を持ち上げ、一計を閃いた大也がBBロボのコックピットに乗り込むと(参戦してくれて良かった)、敢えてお札攻撃を食らう事により、全資産を質量に変えて放たれる今必殺の――
 「天空! ――全財産斬り」
 のポーズは今までのブンレッドで一番格好良かったような気がしないでもなく……落下の衝撃で巻き起こった粉塵により、地球の気候に変動が起こらなくてホッとしました。
 ・前代未聞の理由で戦線離脱するレッド
 ・ATMグルマーの「A(あんた)・T(ただの)・M(的だぜ)」などを随所に挟み込んでくるこだわりの台詞回し
 ・ギャーソリン集めからフィニッシュ攻撃まで「お金の重み」ネタを使い切る
 といった小ネタ部分は面白く出来上がっていた一方……「二つの道があって、勝利の為に恐怖を乗り越えリスクを取る」状況を過去と重ねてこそ、過去を乗り越えたブンブンの決断によるウイングBBロボ誕生が劇的になるのに、「飛ぶ」だけを繋げて肝心の主題からピントが外れてしまったり(「心の動き」の具体化が「飛ぶ」なのですが、クライマックスにおいて重要なのは「飛ぶ」に至る「心の動き」の方なので、キーになるのは「二つの道」)、また“一度走ったコースはパーフェクトに走ってみせるブンブンの長所”が今回のエピソードで描かれているわけでもなんでもないのでビュンディーの台詞だけになっていたりと、軸になる部分で詰めが足りないのが、勿体ないエピソードでした。
 ビュンビュンの登場に合わせてブンブンを掘り下げたアプローチは良かったですし、「そうだ、ブンブン! 俺達に、行けない場所なんてない」なんかは格好良い台詞だっただけに、もう2段階ぐらい、完成度を上げてきてほしかったなと。
 『魔進戦隊キラメイジャー』以来となる竹本昇監督となりましたが、ブンブンカーを背後に合成しながらが定番になっていたガレージのシーンでそれをせず、セットを広く撮って奥で小芝居させたりするのは、らしさを感じたところ(未来が短冊を持ち出すとそそくさと背を向ける射士郎とか、ガレージ以外でも、クルマ獣の吐き出した札をしれっと懐に収めている玄蕃とか)。
 次回――色々と後から疑念の湧いてきた、カレシ再び。