『爆上戦隊ブンブンジャー』感想・第14話
◆バクアゲ14「クールとワイルド」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:森地夏美)
「自分の気持ちを静める為ここに来た。そしてマリンの心を開く為に」
「マリンの?」
「ブンブルーとして、水族館マイスターとして。あいつに認められない事はあり得ない」
もはや流しのフリーターと化している未来は、水族館でバイト中に出会った射士郎から年間フリーパスを見せられ、思わぬ趣味に目覚めたきっかけを語られる。
「時間が無いからこそだ。……任務に忙殺されていたあの頃。俺は常に神経を尖らせていた。……心をなくしかけていた、そんな時――ここの生き物が、俺を癒やしてくれた。……この水族館が無ければ、今の俺は居ない」
工作員(?)時代の射士郎の姿が回想で描かれ……え、急に未来にそんな告白するの……?! と、ブンブンジャーの悪いところの煮出しみたいなガックリ感(本人不在のところで、誰かがベラベラ喋るよりは幾分マシですが)。
まあ、殺伐とした回想シーンはあくまで射士郎の脳内映像なので、聞いている未来的には、(いわゆる「社畜」……?)ぐらいで受け止めているかもですが、それにしても、「いい年した男が他人に弱い部分を見せる」重大事を、話の都合で軽々しく行ってしまうのは、大変残念でした。
前回の「いいチーム」発言もあったように、ブンブンジャーとして行動を重ねてきて、スタッフ的には既に“戦友”という扱いなのかもですが、それにしたってメンバー中で射士郎が弱い部分を見せたくない相手は、1に玄蕃、2に未来、だと思うので、今回はもう、この一点だけでも大失点。
そこに冷蔵庫グルマーが現れると人間を凍らせてギャーソリンを集め、悲鳴を聞いて飛び出す射士郎と未来だが、更にブンブンキラートレーラーが姿を見せ、叩き上げ合体によりブンブンキラーロボへと変形。
「新たな力を再装備!」
「大復活だー!」
「「いえーーーい!!」」
ドリルとアームを装備したBキラーロボを前に大也らも合流すると、「大切な場所ぐらい一人で守れなきゃ、マリンも俺を認めない」とマリン攻略にこだわる射士郎が冷蔵庫グルマーに単独で立ち向かい、残り4人はBロボに搭乗。
だが、Bロボポリスの銃撃はキラーロボの強化装甲に通用せず、ナイトになろうとするも背後から羽交い締めにされて膠着状態に。地上の青はタイヤブーメランで戦闘員は蹴散らすが、必殺の銃弾を氷のバリアで防がれ、単独で冷蔵庫の防御(攻撃に対して氷が放射状に広がるエフェクトが秀逸)を突破できずに攻め手を失った末、氷弾の直撃を受けて、変身解除。
「さ・て・と、次は水族館のお魚ちゃん達も、可愛くしちゃおうかしら。ギャーソリン、出るのかしらね~」
射士郎を捨て置いた冷蔵庫グルマーは水族館に向かって歩を進め……あ、自分でツッコんだ(笑)
は良かったのですが、ここで確実な発生源(人間)以外の目標に向かう理屈が全く不明で、悪役サイドの行動目的である「ギャーソリンの獲得」が優先されずに、話の都合で適当に歪められてしまうのが、大変残念。
これが普段はしっかりと優先していれば、今回は変な性格の怪人なので……で通る場合もありますが、特に集めていないのに何故か集めていた事になって巨大化とか、ギャーソリン周りの雑な話運びを既に何度か行ってしまっているので、ただ雑なだけであり、立ち上がりこそ「“《スーパー戦隊》の面白さ”はこれだ!」を全力で放り込んでくるスタイルに思えた今作ですが、悪役サイドの行動に芯が通っていない為に、それに対抗するヒーローサイドも魅力的にならない見事な悪循環に陥っています。
生身の射士郎は、館内に向かおうとする冷蔵庫の前に立ちはだかり、氷弾を受けながらも食らいつくが踏みにじられ、我慢できずに飛び出した桃は、橙に渡されたタイヤチェーンで……殴った。
「おーりゃぁぁ! 射士郎を、いじめるなー!」
「……おい。……それタイヤチェーン……使い方が違う」
「うるさぁい! 私は私で頑張るから、いいの!!」
チェーンでクルマ獣をガンガン殴りつける桃の姿には、未来の猪突猛進ぶりが良い形で出て……うーん、これなら、
〔理由を説明せずに水族館防衛にこだわる青 → ピンチに飛び出して戦う桃 → 追い詰められた状況で桃に事情を説明する青〕
と内面をさらけ出す箇所を後ろに回して組んだ方が(ミラなら、射士郎の水族館へのこだわりを聞いていなくても、いち早く助けに飛び出したでしょうし)、告白シーンを挟む際のテンポはちょっと難しくになるにしても、まだ場面と展開に説得力が出たのではと思うのですが、“わかりやすさ”を意識するあまりに、キャラクターの心理を蔑ろにして、人間関係の織り成す面白さを削いでしまっている印象。
「射士郎バカだよ! 一人で全部やるとか……刺し違えてもいいとか……なんの為に戦ってるの?! 大切な場所守るんでしょ?! あんたが死んじゃったら、なんも意味ないんだから!」
未来の叱咤を受けた射士郎は、思うところがあったのか意識を切り替えると、冷静な射撃で迫り来る氷弾を粉砕。
「……まさかおまえに気付かされるとはな」
「え?」
「目の前の事に焦って、自分を見失っていた。俺のやるべき事なんてシンプルでいい。……おまえを仲間だと認める。背中を預ける」
「今更ぁ?!」
射士郎の発言は照れ隠しが大でしょうが、それを嫌な感じにさせない未来はリアクション上手。
「一緒に水族館を守ってくれ」
射士郎は微笑を浮かべ、
《ブーン!》
「なんか、びみょーに納得いかないけど……まあいっか!」
未来は二カッと笑い、
《ブンブーン!》
「――クールに行こうか」
「オーライ!」
《ブンブンブーン!》
「「ブンブンチェンジ!!」」
並んだ二人が互いのチェンジャーをこすり合わせて変身すると主題歌バトルに入るのは大変格好良く決まり……なんでしょうこの、黒と橙のいらない子感。
……いや、阿久瀬と玄蕃を貶めるつもりはないし2人に罪は無いのですが、率直に5人になってからのブンブンジャー、人間関係を活かしての劇的さを出せたのは今回が初といっていいので、それが初期メンバーの組み合わせとなると、商業的事情をさておけば、しばらく3人で進められなかったものかという気持ちがどうしても湧き上がってしまいます。
冷蔵庫グルマーの多彩な冷気攻撃に対して、魚たちのひれ捌きを参考にしながらのアイスダンス回避を決めた青桃は、凍結した地面を利用して、激獣アシカだかアザラシだかオットセイ拳により懐に飛び込むと、トドメはブンブンホームラン。
クルマ獣を撃破し、待機中のブンブンマリンがドライバーを承認すると、頭部にマリンヘッド、両手にサファリクローを換装して、新たなモード、ブンブンジャーロボモンスターが誕生。
「大地に吼えろ! 海よ裂けぇ!!」
……なんか、こんな感じのデジモンが居たような。
強烈な爪を振り回し、顎の力でドリルを砕いて放り投げたBロボモンスターは、無数のイルカ型エネルギーを打ち出すドルフィン粒子砲でフィニッシュし、ごっつぁん!
「リベンジならず」
「まーた、“わたくしめ”に怒られちゃう」
「「「あははははは」」」
「「「……お疲れさんしたーーー!」」」
大爆発寸前のロボのコックピットで、やたら余裕のある三下トリオは、またあしたーーーで飛んでいき、死への恐れが全く感じられないのですが、実は凄く大物なのでは(笑)
……ネジが外れているだけかもですが。
最後はガレージで、射士郎がブンブンマリンに花束を“届け”てプレゼントするも拒絶され、フラれ男の虚しい絶叫で、つづく。
前半、射士郎が未来に水族館マイスターの理由を明かすシーンがあまりに突然の心境告白で大失点ながら、後半のタッグバトルは久々に気持ちよく盛り上がれたので、大変勿体なく感じたエピソード。
赤黒橙の出番が少なかったのは(特に大也はほぼ空気)、タイミング的に劇場版との撮影スケジュールの兼ね合いだった可能性が高そうですが、もはや開き直って、メイン以外のキャラはモブ扱いで作った方が、アベレージが上がりそうな困った予感……。