東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   X/Twitter→〔X/Twitter/gms02〕

敏鬼が来る

仮面ライダー響鬼』感想・第30話

◆三十之巻「鍛える予感」◆ (監督:諸田敏 脚本:井上敏樹
 これまで恒例だった明日夢くんモノローグが無くなってアバンタイトルから本編がスタートし、ある日、自転車で強制草レースを持ちかけてくる変な少年にからまれる明日夢……は飛び出してきた犬をよけて草むらに突っ込むが、走り続けた謎の少年は「勝った!」と雄叫びをあげると走り去って行き、OPが始まると、
 脚本:井上敏樹
 の4文字がもたらす強烈なインパクト(笑)
 前作『ブレイド』でもメインライター降板はありましたが、メインプロデューサー(高寺成紀→白倉伸一郎)&メインライター交代という、制作サイドにおける大激震を受けての新展開。
 謎の洋館では不気味な実験が繰り返されており、童子と姫に酷似した風貌の和服の男女は「身なりのいい男」「身なりのいい女」とクレジット。
 たちばなでは勢地郎と日菜佳が夏風邪に倒れ、ヒビキも店の手伝いに駆り出される中、明日夢のクラスに転校してきたのは、勝手に草レースを挑んできて一方的な勝利宣言で走り去って行ったあの少年――その名を、桐矢京介。
 「すいません、あまりにも字が汚かったものですから」
 担任の先生は随分と独特な字を書くなと思ったら、それをわざわざ消してから黒板に自分で名前を書き直して平気な顔をする強烈な先制パンチでデビューを飾った京介は、英語の授業では教師に面と向かって発音勝負を持ちかけるとフランス語で朗々と教科書を読み上げ、昼食は出前でにぎり寿司を頼み、吹奏楽部、将棋部、マンガ研究会、でいずれも高い能力を見せつけ、物凄い井上濃度による容赦なき絨毯爆撃。
 「会ったばかりでこんなことを言うのもなんだけど、君ってつまらない人間だよな。よくそう言われない?」
 挙げ句、あちこち部活を案内した明日夢に笑顔でぬけぬけと言ってのけると、愕然とする明日夢を置いて去っていき、明日夢くんの平和な学園生活を焼け野原に変えていく爆発の火柱が大きすぎて、もう笑うしかありません。
 「……安達くん? もう帰れるの?」
 ……でも明日夢くんには、何故か好意を向けてくる幼馴染みの美少女が居るから、だいたい勝ってる!
 街では、狐の鳴き声と共に現れる炎の車輪が人を焼き殺し、童子と姫をすっ飛ばして市街地に出現した魔化魍が人を襲う、従来作の怪人パターンに大きく寄せた被害が出る中、突き指で体育を休んだ京介から、昨日のお礼にと豪華な自宅に誘われた明日夢は、今度はビリヤードでこてんぱん。
 「……俺って……そんなに、つまらない人間なのかな?」
 能力を誇示し、他者を負かす事で自尊心を満たしている節のある嫌な奴ではあるが、変に距離感が近くて親切なところもある京介のペースに振り回された末、思わず当人に正面から質問する明日夢くんは、正直、今までの明日夢くんで一番面白かったです(笑)
 2クール分の明日夢の歩みを踏まえた上で、荒療治を承知で加速をつけてジャンプ台に押し込んだら、その着地点(新たなスタート地点)が結構ツボに。
 ところが、鼻持ちならないPerfectキザ野郎かと思われた京介は、母親からTV電話で連絡が来ると途端に狼狽し、子煩悩なママに振り回される姿を見せ……崩れるの、想像以上に早かった。
 イブキ&あきらが狐面の魔化魍火車? 朧車? 或いは狐火?)に遭遇する中、明日夢と京介は多少打ち解けた様子で夜の街を歩いており、結局あの後、暗くなるまで一緒に遊んでたの? とか、京介はなんだかんだ「俺も用事があるから」と言いつつ明日夢くんをわかりやすいところまで送っていきそうだな! とか妄想が捗りますが、二人は狐火車と遭遇し、慌てて回避。
 「桐矢くんもしかして、運動音痴?」
 「……ち、違う! バカ言うな!」
 京介は、明日夢ですら乗り越えられる壁に引っかかって地面に転がり………………ううむ、我ながらまさか、新展開およそ19分で、こんなにあっさり井上マジックに踊らされるとは(笑)
 ここまでの『響鬼』が好きで、受け入れがたい人には大変受け入れにくい新キャラと新展開だとは思うのですが、なんかもう、苦手分野が露呈して地面に転がりながら虚勢を張る桐矢くん面白すぎるし、そこに無造作にツッコむ明日夢くんが、超面白い(笑)
 勿論これは、2クール分の積み重ねがあっての部分がありますが、テコ入れ新展開の起爆剤として「明日夢くんとの横の関係性」のピースを埋めてくるのは非常に納得度が高いですし、一応、前話を踏まえたという体裁を取りつつ、それによって何よりも明日夢くんのリアクション改革が手早く行われているのが、お見事。
 顔の周囲が火の輪になった狐の魔化魍威吹鬼が立ち向かうも苦戦すると、応援に駆けつける響鬼
 「今日の俺は強いぜ」
 慣れない接客業で溜め込んだストレスを炎に変えてバチに込めた響鬼は、火の輪攻撃を弾き飛ばしながら猛然と突っ込んでいき……
 「……あれは……父さん?」
 その背に、幼い頃に死に別れたという父の面影を見る京介の爆弾発言で、つづく。
 新体制・新展開の一発目、いきなり「童子・姫をスキップして里で人を襲う怪人スタイルの魔化魍」「その魔化魍に出くわす明日夢」と、今作がこれまで基本的に避けてきた状況設定が突っ込まれ、もう明らかに「ここまでの『響鬼』を(部分的に)ぶっ壊しに来ている」のですが、同時に、「ここまでわかりやすくぶっ壊しにいかざるを得ない状況」であったのかな、とは思わされるところ。
 体制変更そのものは、視聴者には関係のない制作サイドの事情でしかないので、作品としてはもう少し緩やかに変身できなかったものかと思うところはありますが、コーナーを直角に曲がって、そのまま壁を走り出した感。
 そして明日夢サイドには転校生・桐矢京介が劇薬として投入され、これまで何度か触れてきましたが、今作の構造上の難点であった、「明日夢主人公の物語として見るにはあまりに起伏が足りない」ので「猛士サイドで起伏を担保していた」が、「猛士サイドはたちばなを利用して単独で緩急も起伏もつけられるのに対して、明日夢サイドは単独で起伏がつけられない不均衡がいつまでも解消されない」問題について大ナタ。
 如何にもなアンチ明日夢として、
 ・髪を染めてすらりとした二枚目
 ・いっけん大人びているが、むしろ子供っぽい
 ・周囲の目を気にせずに我が道を行き、自尊心が強い
 京介が登場し、傲慢な俺様キャラが能力を誇示してファーストインパクトにするのは、脚本家の手癖が強すぎた感じもあるものの、そこから早々に、母親には頭が上がらなかったり実は運動が苦手といった愛嬌をつけ、あれ? そこまでアンチ明日夢くんというわけではないの……? と視聴者の印象をぐらつかせたところから、
 ・鬼に関する血の因果を持っている
 という決定的なアンチ明日夢要素が叩き込まれ、1話に二度のツイストで受け手を激しく揺さぶりながら、新キャラとの関係性によって“明日夢の物語”を構築し直し、更にそれを「転校生」という定番の学園イベントから持ち込む事により、今作前半とは明確なスタイルチェンジを宣言。
 だいぶ過激で好き嫌いは分かれるでしょうし、最終的に上手くはまるかわかりませんが、今作ここまでに“明確に足りなかった部分”を初手で潰しに来るのは、さすがの手並みにして、凄まじい豪腕ぶりという他ありません。
 なんというか恐らくこれ、ナタを振るっている方にも出血は伴っている気がしてならないのですが、やるならここまでやるしかない、という覚悟の見える新展開の開幕でありました。
 そしてそこから、これまで存在は示されていたが、詳しい言及は無かった「実の父親」に明日夢が向き合おうとするのは、成る程。
 ……ところで、明日夢くんの日常に大嵐を巻き起こしている真っ最中の京介ですが、その登場により一番現在の立場が危うくなりそうなのは、たぶん持田さん、というか、持田さんが明日夢を攻めきれなかった部分を、物凄いスピードで京介が埋めてしまいそうなわけなのですが、が、が頑張れ、もっちー! 
 当ブログは基本的に持田さん不憫派ですが、数話後に、いいぞ京介派に転向していたら、寛大な気持ちで受け入れていただければ幸いです。