『ウルトラマンブレーザー』感想・第15話
◆第15話「朝と夜の間に」◆ (監督:田口清隆 脚本:中野貴雄)
久々に連休が取れ、息子ジュンに今年こそ運動会を見に行くぞ、と笑顔を向けたら、先週の話だったゲント隊長、ゲント隊長ーーー!!
送られてきた写真の存在さえ忘れているのは厳しすぎます隊長ッーーー!!
「仕事忙しいんだから、しょうがないよ」
と息子からコメントされて、何かもかも辛すぎますたいちょぉぉーーー!!
慌てて、レジャーからの焼肉or寿司で失点を取り返そうとするが「無理しないでゆっくり寝てれば」と言われてしまい、ゲント隊長のMPはもうマイナスだ……!
大変久々の視聴となった『ブレーザー』が、いきなり臓腑を抉る攻撃を連発してきたのですが、そんなゲントの息子ジュンに焦点を当て、悪気は無いがちょっと奇抜でクラスで浮いている同級生、その古式ゆかしい秘密基地に招かれたジュンがスケッチブックに描いた怪獣が、未知の宇宙線の影響で実体化して騒動を巻き起こす、『ウルトラマン』第15話「恐怖の宇宙線」(監督:実相寺昭雄 脚本:佐々木守)に題を採ったエピソード。
・個人的信用度の高くない脚本家
・懐かし怪獣エピソード
・前回登場時(第10話)の使われ方の印象が凄く悪いゲント息子
のトリプルコンボにより、だいぶ警戒しながら見る事になったのですが、
「話してないよ……ネットで呟いただけ」
「よけい駄目だろ」
を小学生が当たり前のようにかわすのは、現代的でクスリとさせるスパイス。
原典ありきのエピソードという事でか、接写を繰り返して子供達のアップを多用するなど映像的に遊びをかなり多く入れた作りで(実相寺オマージュもあったのかもですが)、二次元から生まれた怪獣が二次元の絵を食べる描写や、ミサイルがぽゆんと跳ね返って無効化される場面なども面白かったです。
仕事の忙しい親に気を遣い、どこか自分を押し込めて“いい子”をしているようなところのあったジュンがガヴァドンを通して仲良くなった少年は引っ越しを控えており、ガヴァドンを排斥しようとする大人たちの存在など、ままならない世界へ向けて放たれる、
「こうなったら、ガヴァドンをもっと大きくしようぜ。大人に負けないように……でっかく! でっかくだ!」
「よし!」
の叫びあたりまでは、子供の目線を軸としたドタバタ騒ぎとしてそこまで感触は悪くなかったのですが、避難誘導に逆走している少年を見過ごし、現場近くに子供が3人居るのに気付かないまま巨大ガヴァドンに向けてミサイルが次々と投下されてしまうザルっぷりは呑み込みづらく……今回はファンタジー路線なので“そこ”は気にしないで下さい、という事ではあるのでしょうが、個人的には、“そこ”をやってこその『ブレーザー』だと思っているので、第10話同様、やりたい話の都合で『ブレーザー』の積み重ねてきたスタイルを安易に崩してしまうのは、いただけなかった部分。
ジュンたち3人が河川敷に木の棒で描いた結果、実体化により広範囲に結構な被害を出しているガヴァドンの存在について、
「巨大生物はただ寝ているだけでライフラインを阻害し、市民生活を脅かす」
と劇中の基本理念をゲントに示させつつ、
「それが上層部の見解だ」
と付け加えるのも、凄く日和った感じ。
一時避難だけでも相当数の人生に影響を及ぼしているわけで、現代における災害解像度で、一定範囲の被害をハッキリと見せた怪獣を“悪くない怪獣”として描くのはシリーズとしても相当無理があるに近くなっている印象ですが、どうしてもやるならそこから、“人間の業”に切り返して踏み込むしかないのではないかな、と。
現場のカメラが子供達の姿を捉えると、ダッシュした隊長はブレーザーとなってビルの倒壊を阻止。ガヴァドンに向けていきなりガラモンサンダーを放つが通用せず、ボディプレスも跳ね返されて、ふーぉうぁいぁい?!
防衛隊の爆撃の際は制止の叫びをひたすらあげ続けていた子供達の姿が、ブレーザーの戦闘シーンになると途端に一切入らなくなるのも、見せ場としてのアクションシーンを途切れさせない意図だろうとしてもバランスは悪く、つかみ所のない怪獣にひたすら翻弄されるブレーザーは、打撃無効のマシュマロボディの前に地面で派手に一回転。
もうこうなったら、本気出して狩る、とウルトラの槍を取り出したブレーザーは、槍をまち針のように変形させ……し、尻尾を縫い止めるの?! と、怪獣ハンターの鬼畜ムーヴの予感に震えましたが、針の先を地面に突き刺すと何故かガヴァドンの頭上にUFOキャッチャーのアームのようなものが生じて(どうなっているのかはカメラの外で不明)、怪獣をキャッチ……するが、落下。
ブレーザーが、ぷにょぷにょと動き回るガヴァドンを押さえ込もうとひたすら四苦八苦している内に時は流れ、夕陽と土管は原典のオマージュでありましょうか(詳しくは覚えていませんが、確か原典では土管に描かれていたような)。
ここでようやく、子供たちからブレーザーへの非難の叫びが入り、子供のアップを多用する事により、今回は子供の側の心情に寄り添った作りである事を示してはいるのですが、それにしても、子供の悲鳴を延々とBGM代わりに用いるのは、見ていて気持ちの悪くなる演出。
加えてここでは、実際的に“ブレーザーが子供達の心を傷つけ続けている”上に、寓意的には“子供の夢を大人が力でねじ伏せようとしている”わけで、脚本・演出、どちらが主体かなんともですが、正直、何故そんな話にしたのか首をひねる内容。
巨大ガヴァドンが相当な範囲の人々の生活に影響を与えているので、間接的に子供たちがその代償を受けた、ともいえますが、それを小学校低学年ぐらいの子供に負わせるのもさすがにどうかと思いますし(とはいっても、あっけらかんと済まされても困るので、つまり話運びに問題があると思うのですが)、悲壮感よりも不快感を煽る演出と合わせて、際どいところを突こうとした変化球がすっぽ抜けてベンチに飛び込んでいった印象です。
「ガヴァドンは星になったんだ」
自分たちの行動が無思慮だった、と子供達に謝罪されて動きを止めたガヴァドンはブレーザーによって空の彼方へ運び去られると、夜空にはまるでガヴァドンのような星が浮かび、星となった思い出はつまり、ウルトラ族における狩りのトロフィーのような……とか思い浮かんでしまってすみません。
「なあジュン……」
「え?」
「たまには……パパとも遊んでくれよ」
ガヴァドン、そして友人、二つの別れを経験し、ちょっぴり大人になった息子に視線を合わせたゲントが、叱るのではなく、言い回しに気を遣いながら、寄り添おうとする“大人”がここに居る事を伝え、息子が胸に抱えているものに歩み寄ろうとするのは良かったですが(恐らく、ブレーザーとの関係性がゲントに与えた「変化」の一つといったニュアンスであり、親子とはいえ「知らないから知ろうとする。知ろうとするから、相手の事を考える」を含んでいるのかなと)……
「じゃあ、キャンプに行こう! 一緒にカレー作るんだ」
OKを貰えると、自分の考える“良い父親っぽい行動”で押し切ろうとするのが、ちょっと駄目なのかもしれませんゲント隊長!!
悪い予感とは別の方向に底の抜けた内容でしたが、田口監督でこれが出てきたのはちょっと辛く、さすがに、絶叫する子供たちのアップ連続からBGM代わりの悲鳴にウルトラマンの戦いを重ねた描写は、どうかと思ったところです’(今作ここまでのゲント隊長への好感度の積み立てが無かったら、だいぶ厳しかったエピソード)。
次回――怪獣の瞳はつぶらだが、予告ナレーションはシリアス。