東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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反転キックのひみつ

仮面ライダーV3』感想・第11-12話

◆第11話「悪魔の爪がV3をねらう!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:鈴木生朗)
 産声のような叫びと共に改造人間ピッケルシャークが誕生する不気味な導入で、デストロン首領は完成直後のピッケルシャークに、生みの親ともいえる博士の抹殺を指令。
 首領に挙動不審を察知されていた博士はアジトから脱走すると少年ライダー隊に接触し、ライダー隊周りの整合性をどう付けるのかは、エピソード担当者の意識次第になっている雰囲気を感じますが、今回は「少年ライダー隊に話を通すと風見志郎なる人物に接触できるらしい」という、妖怪ポストのような扱い。
 第5話における、「仮面ライダー(V3)」=「かなり信憑性のある(が一般人にはアプローチ方法がわからない)存在」に続いて、仮面ライダーの存在に対する都市伝説的アプローチの萌芽を見て取る事が出来そうですが、第5話の脚本も鈴木生朗だったので、そういった距離感がしっくり来るのでは、という考えがあったのかもしれません。
 博士がデストロンの情報を記した手紙は藤兵衛の手に届くが、肝心の志郎は伊東に合宿中で不在。純子が配達役を買って出て伊東へと向かう一方で博士はピッケルシャークの襲撃を受け、ピッケルシャークの、とにかく右腕にピッケルをつけたのでそれで暴れ回るシンプルな暴力重視のデザインには、ここまでスッキリするとなにやら好感が持てます(笑)
 「貴様、この私を、どうしようというのだ。貴様を作り上げた、この私を」
 「おまえが作ったピッケルシャークの力を、まずおまえで試してみるのだ!」
 博士は無残にもピッケルで突き殺され、志郎は通りすがりに博士の死体を発見し……え、博士、いつの間に伊東に? と思ったら志郎は既に東京に戻ってきており、手紙を持った純子と入れ違い。
 その純子は伊東で旧知らしき下品な男にからまれるが、そこに割って入る、野太い声の……デストロン戦闘員(笑)
 「どけぃ、チンピラ」
 今回はもうここだけで、最高に面白かったです!!
 チンピラが逃げ出すと、純子の前には手紙を狙うピッケルシャークが現れるが、そこにトマト色のジャケットを着た志郎が登場し、変身V3! をチンピラが目撃する事に。
 ピッケルフラッシュを浴びてピンチになったV3は苦し紛れのキックを放ちシャークをなんとか撤収させるが、基本的に、ただのV3キックは怪人にろくに利かないのは、今になって初めて見ると作品として凄く衝撃です(笑)
 結果的に博士の遺言といえるものになった手紙を受け取った志郎は、純子と共に波間に哀悼の花束を捧げると敵討ちを海に誓うが、そこに現れたチンピラが風見志郎=仮面ライダーV3であると純子に暴露し、え? あれ、そもそも、知らなかったっけ……?!
 憎々しげに、「風見志郎は普通の人間ではない」と告げて純子の歓心を得ようとするチンピラは、今回限りでは、純子の元彼なのか、一方的に想いを寄せているストーカーなのかはハッキリせず、現代的な視点では後者なのですが、なにぶん1973年のドラマとしては、どういう意図だったのか判断のつきかねるところ(風貌も、捨てられてやさぐれた表現としては、納得できない事もない範囲ですし)。
 それはさておき、今までなんとなく、決定的瞬間は見ていなかった……? かどうかに自信が無いのですが、純子が「志郎=V3」だと知らなかった、とするとこれまでのちょっと面倒くさい言行の数々の意味も変わってくるものの、ヒーローが“正体を隠す意識がある”作品だとは全く思って見ていなかったので、率直に、脳の処理が追いつきません!(笑)
 チンピラに背を向け黙って立ち去る志郎の後を純子は追い、取り残されたチンピラがそのジェラシーファイヤーに目をつけたデストロンに拉致されると改造人間にされてしまうのは、なかなかえぐみのある因果。
 「純子さん! 俺の目的はただ一つ、デストロンを倒し、世の中に平和を取り戻す事、それだけだ」
 人間とか改造人間とか女とか男とか全ては些末な事として、志郎はただヒーローの使命にのみ突き進む事を告げ、しばしば言われるように、昭和ライダーは後のイメージほど孤独でも孤高でもないのは、前作『仮面ライダー』を継承した『V3』1クール目を見ても明らかですが、ではそこにある“関係性”がどう描かれているのかといえば、立花藤兵衛だけを例外として、案外とビジネスライクな一線は退かれている印象。
 確かにV3は孤独でも孤高でもないが、それは、「少年ライダー隊(関係者)」として、「この世の正義の為に(仮面ライダーに)奉仕する」という一種の「契約関係」において成立していて、「風見志郎という個人」に踏み込もうとする人間は、契約の対象外として拒絶を持って良しとする、という部分はあるようには思われます(あくまで現時点での印象として)。
 そしてこの、言ってみれば「ライダーと契約した存在」というのが、「ライダー隊周りの整合性をどう付けるのか」における一種の方便として機能しているのかな、と。
 で、純子さんというのは一度はこの契約を結びながら、繰り返しその契約からはみ出そうとする事で、ライダーではない風見志郎に“心配される”という「揺らぎ」を引き出すのですが、その「揺らぎ」の側に踏み込まれる事を志郎は良しとせず、契約に基づいた以外の人間関係との距離――ひいては「人間的揺らぎの拒絶」が、イメージとしての“孤高のヒーロー”像を形成する要素の一つといえるかもしれません(またこれは、70年代ヒーローにおける、割り切りの早さや、人質へのそんざいな扱いに繋がっている面もあるでしょうか)。
 そんな、一種世界の“捻れ”といえる子供サポーターと「契約破棄」し、それと同時に人間的揺らぎの排除を先鋭的に押し進めたのが『イナズマンF』といえるわけですが、人間的揺らぎの排除を徹底していったらそれは、ヒーローの純粋理想化(に伴う形骸化と没個性)に至るわけだな、と納得を。
 一方、人間では無いが人格を持つものが、その「揺らぎ(弱さ)」を制御しようとする意志こそが“自己”であり、それを失った時に自分はただのマシーンになってしまうと「揺らぎ」の所有にこだわり続けるのが『人造人間キカイダー』だと思うと、1970年代初頭、後世にまで名を残す『仮面ライダー』からの直接的な派生作品それぞれのスタンスが出ているところなのかなと。
 博士の情報を基にモーターボートに乗り込んだ志郎がデストロンのアジトに突貫していくと、とぼとぼと帰路についた純子はドリルデスパー……じゃなかった、ドリルモグラにさらわれ、快調に海上を走っていた志郎の方はピッケルシャークの襲撃を受け、
 〔恒例のロケ地(伊東/浜松)・モーターボートアクション・ドリル〕
 と、たまたま同じタイミングの配信だった『イナズマンF』第15-16話と、やたらな被り具合(笑)
 船上でもつれ合った志郎とシャークは海へと落下し、海面を高速で引っ張られている姿と、水中での取っ組み合いを交互に見せる事で、殴り合いをしながら猛スピードで水中を動いている映像に見せるのは、なかなか巧妙。
 胸まで海につかりながらの変身V3がかなり格好良いのですが、2月スタートの今作、今回の放映が5月ぐらいだと考えると、撮影はまだ海が冷たい時期と思われ、なんとなく志郎が震えて見えるのは気のせいではないですねこれ!
 再び放たれるピッケルフラッシュだが、既にその対策を考えていたV3は、26の秘密の一つ「V3バリアー!」によって電気エネルギーを吸収無効化。しかし再びの水中戦となると、得意フィールドで持久戦に持ち込まれて不利だよ! とナレーションさんの解説が入り、今回も怪人を仕留められないまま、つづく。

◆第12話「純子が怪人の花嫁に!?」◆ (監督:塚田正煕 脚本:鈴木生朗)
 水中で有利なピッケルシャーク……なぜV3を、海底アジトに誘い込んでしまったのか(笑)
 と思っていたら、シャークはスタミナの消耗したV3を海底洞窟に閉じ込め、首領命令によってV3ごと証拠隠滅を図り、アジトの自爆装置をぽちっとな。
 「V3の命もあと3分か……くェー、くェー」
 超聴覚でこれに気付いたV3は、火事場の馬鹿力を発動するとアジトの爆発寸前に脱出に成功。満身創痍でなんとか東京へ戻ると、V3の正体が純子に暴露された事を藤兵衛に明かす。
 「……純子さんにだけは、俺が改造人間だという事を知らせたくなかった。俺は……彼女の心を傷つけたくなかったんですよ!」
 (契約外なので)戦いから遠ざけたい、という意識をベースにして、なにやら志郎なりの揺らぎの許容としての気遣いがあったと語られるのですが、正直、生身の人間の足から銃弾摘出手術を手伝わされるよりも、V3だと教えてもらった方がまだ気が楽なような……!
 そこで純子が戻ってきていない事を知ると、店頭に不審な男を発見して尾行した志郎は、再びピッケルシャークと激突。
 今回も豆鉄砲のごとく弾き返されるV3キック……と見せて、もう一度だ! と反転キックが直撃するとシャークはあっさり吹き飛んで爆死を遂げ、敢えてV3キック恐るるに足らずと認識させる事により真っ正面から一撃目を受け止めさせ、油断と慢心から完全に無防備になった標的に本命の二撃目を叩き込むV3反転キック、なんという恐るべき悪魔の必殺技。
 ピッケルシャークはすっきりまとまったデザインが割と好きだったので、あっさり処理されてしまったのは残念でしたが、敗因はやはり、海のないところまで出てきてしまった事でしょうか。
 一方その頃、囚われの純子の前にはドリルモグラが現れると、純子を一方的につけまわしていた変質者だったと判明し、さすがに元彼ではなくて良かった(笑)
 「風見志郎が死んで、俺の目的の半分は、遂げられた。後は、おまえと結婚する事だ!」
 「ええ?! 結婚?!」
 凄く本気で嫌そう(笑)
 だがそこにピッケルシャーク死亡の報が入り、純子との結婚を懸けてV3に挑む事になるジェラシーモグラ
 城ヶ崎へと呼び出された志郎は初めてのバイクで走ったまま変身を見せるとモグラを蹴散らすが、卑劣な罠だった偽純子人形の爆発に巻き込まれて生死不明となり、モグラは純子との結婚を宣言。
 藤兵衛とライダー隊の少年たちが志郎を探す一幕が挟まれ、しゃれこうべで飾り付けられたデストロン結婚式は、おどろおどろしい呪術的趣味が前面に押し出されて、視聴者を怖がらせようというスタイル。
 いよいよ純子が身も心も醜いデストロンとなるデストロン結婚指輪をはめられて、新たな女幹部になりそうになったその時、ちょっと待ったぁとV3が式場に突入し、行方不明になった志郎を探して夜通し岩場を探し回っていた藤兵衛の、労苦と尺稼ぎが酷い(笑)
 だいぶ長い格闘戦の後、V3は本日2回目の、V3キックは豆鉄砲! と見せて反転キック! でモグラを撃破するのであった。
 純子を助けたV3は正体を明かさぬまま走り去り、そこに出てきた藤兵衛が笑って「志郎=V3」を否定すると、わざとらしく志郎が後ろから出てきて疑惑を否定し、君ら、相当酷い、猿芝居だな……!
 少年ライダー隊の存在と、物語上の整合性をどう取っていくのか、に関する苦慮が色々と窺える前後編でありましたが、下衆なチンピラから女性を守るデストロン戦闘員(まあその後、拉致しようとするのですが(笑))と、ピッケルシャークがのデザインが光って、割と楽しかったです。
 次回――大幹部登場!