『イナズマンF』感想・第13話
◆第13話「白い闇!! 鬼女がうたう子守歌」◆ (監督:前川洋之 脚本:上原正三)
楽しげに鬼ヶ原峰に向かうハイキング客の耳に響く不気味な子守歌……そして昼間の太陽が闇夜の月に変わると周囲はいつの間にか荒野となり、突如として姿を現すマサカリを持った着物の鬼女!
……とりあえずまあ、ここで一定の満足は得ました(笑)
マサカリが宙を舞い、惨殺された4人の死体を残して鬼女が滑るように去って行くと、三味線の音が響くままにサブタイトルが入る変化球の導入で、不審な鬼女の目撃情報を探るべく鬼ヶ原へ向かう五郎だが、近くの団地で話を聞こうとした女性から、不自然なほどの拒絶を受けてしまう。
「おかしい……鬼ヶ原の事を聞くと、みんな逃げてしまう」
……その車が、いけないんじゃないかな。
そんな五郎の耳にも子守歌が響くと不思議な現象と共に現れた鬼女が赤ん坊をさらい、追いかける五郎の目の前で不可思議な消失を遂げる。
謎の鬼女と、続発する子供の行方不明事件は、団地の建設によって取り壊された鬼塚の祟りなのか?
悪の組織が土地の伝承を隠れ蓑に悪事を進めるパターンなのですが、冒頭のショッキングシーンの都合により、団地開発の進む土地のすぐ近くにハイキング客が訪れるような「峰」が設定されてしまい、「開発」の側に属する団地住人は子供をさらわれたゲストヒロインとして登場する一方、「伝承」の側に属する人物は登場しない為に、ただただ話に都合の良い伝承が虚空にポンと生じる形になって、巧く機能せず(この辺り、50年前だともっと受け入れやすい“世界観”だった可能性はありますが)。
五郎と合流した荒井は、背後に団地が見える土地で剥き身のショットガンを握りしめ、子供をさらう鬼女が出たとなるや(この時点ではまだ、ただの変質者の可能性もあったのですが)、その背にショットガンを連続でぶっ放し、マサカリ持った鬼女と同程度の危険人物(笑)
荒井の追撃を振り切った鬼女は、イナズマンに先回りされても伝承の鬼婆を主張し続けるとマサカリを振り回すが、自身がオカルトの塊であるイナズマンは、全く物怖じせずに鬼女の鳩尾に正拳をチェストすると、奪ったマサカリで般若の面を断ち割り、中から出てきたのはマサカリデスパー。
「さすがイナズマン。よくぞ見破った!」
開き直ったマサカリデスパーは、さらった子供達を実験台にデスパー軍団が進めているニューブラッド計画の存在を明かすが、アジトに逃げ込むと腕スパー兄弟から折檻を受け、なんで私が怒ってるのか当ててごらん? と無言のままマサカリを見下ろすガイゼル総統。
監督は今作初参加の前川洋之(『超人バロム・1』第17話「魔人ウミウシゲが君をアントマンにする」の脚本が同じ名前ですが、同一人物……?)で、いつにも増して陰影の濃い画面でデスパー内部のもめ事に尺が割かれるのが、今回の特徴。
亡き腕スパー参謀なら、マサカリデスパーのフォローに走り回って、「私が本物の鬼婆だ!」ぐらいはやってくれたと思われますが、ワンセットでマサカリにお仕置きを加えていたアルファとベータは、再プランニングされた合体腕スパー計画に基づいてざっくりオーブンレンジに放り込まれ、つくづく、惜しい参謀を亡くしました。
鬼婆のコスプレがイナズマンにバレたのになんで君は1ミリも反省してないわけ? とお仕置きの理由を説明されたマサカリは、打倒イナズマンの秘策があると宣言して汚名返上に出撃すると、行きがけの駄賃にオーブンレンジの出力を弱めてからイナズマンと激突。
幻影を操ってイナズマンを苦しめるマサカリであったが、アジトではオーブンレンジの出力が弱まっている事が発覚して問題になっており、監視カメラに、マサカリの犯行がばっちりと写っていた(笑)
怒りのサデスパー市長がホログラム投射機の電源をオフにするとマサカリの作り出していた幻影が消え、悪の組織内部の足の引っ張り合いがヒーローの勝機を生むのは上原先生の味かと思われますが、割れたネタがあまりにも情けなくて、ガックリ。
鬼女の秘密と繋げて処理したかったのでしょうが、結局、冒頭のインパクトが最大の山場になってしまいました(笑)
身から出た錆で幻影の援護を喪ったマサカリは、イナズマンの飛び蹴りで吹き飛んだところにゼーバー落雷の術を叩き込まれ、チェストーーー!!
イナズマンは荒井と共に囚われていた子供達の解放に成功するが、デスパー基地では今度こそ、合体腕スパーが焼き上がって、つづく。