東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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立花藤兵衛が全く止まらない

仮面ライダーV3』感想・第7-8話

◆第7話「ライダーV3怒りの特訓」◆ (監督:山田稔 脚本:島田真之)
 人工心臓により死者を生き返らせる事に成功したカワイ博士だが、その身辺にデストロンが迫り、薬品に火が付いた勢いで、なんか、大爆発。
 ……これは明らかに、普段から緊急時にはいつでも自爆できる設備を隠していたのでは。
 研究所の爆発を契機に、博士とその息子が行方不明になってから二ヶ月――靴磨きに身をやつして身を隠していた博士の前に現れたのは、人工心臓による蘇生実験を受けて甦った直後に、デストロンの介入により研究所と共に焼け死んだ筈の男であった。
 「俺の本当の姿を見せてやる」
 炎に巻かれた男が現場でデストロンに助けられ、博士への逆恨みを抱えながらナイフアルマジロに改造されていたのはなかなか面白い展開で、トンネルの中を博士に迫ってくる事を表現する為に、エコーのかかった低い声が雰囲気を出していたのですが、怪人の姿になった途端に甲高い奇声パターンになってガッカリ(笑)
 通りすがりのボクサーがさっくり殺されている内に博士は逃走するが、博士と共に爆発炎上する研究所から逃げ出した際に負った怪我から、車椅子生活を余儀なくされていた博士息子にもデストロンの魔手が迫る。
 その危機を知らせた博士はデストロンに拉致されてしまい、少年の様子を窺う不審な男を追った志郎はナイフアルマジロの襲撃を受け、変身V3!
 本日はいい勝負を見せるV3だったが、調子に乗った拍子に強く蹴りすぎてしまう迂闊を見せると、吹き飛んだかと思われたナイフアルマジロが、タイヤのように丸まる典型的なアルマジロギミックを発動。
 「俺の弾丸鋼鉄球を、受けてみろぉ! ギリギリぃ!」
 鋼鉄の弾丸として自在に宙を舞うアルマジロの連続体当たり攻撃を受けたV3は、このままではやられる、と逃走を試みるも真っ正面からの体当たりを受けて崖から転がり落ち……後の格下ーズことゲキレンジャーを彷彿とさせる弱さ。
 位置づけとしてはV3、入門間もなく師匠を失ったけれど、奥義だけは睡眠学習で伝授しておいたので手探りで頑張れ、みたいな状況なので弱くても仕方がないのですが、そのヒーローとしての成長の階梯と、人間としての葛藤がドラマとしては巧く融合しておらず、弱みを抱えたヒーローをじっくりと描いていくのには、第2話でいきなり私的な復讐心を消滅させたのがつくづく惜しまれます。
 それを切り捨ててしまった事で、志郎の苦悩が(デストロン野郎どもをぶち殺す力が足りねぇ……!)と殲滅力に偏って平板になってしまい、キャラクターの奥行きを作り出せる要素をあっさり削除したのが、今日の視点から見ると、実に勿体ない部分……というのが積み重なって後年の作品に繋がっていくわけでありますが。
 辛うじて追っ手から逃れた志郎は藤兵衛に特訓を懇願し、内容を耳打ちされて渋っていた藤兵衛も、その必死さに打たれて承諾。外へ出ようとしたところを呼び止める純子に向けては、
 「それより君は、カワイ博士の妹さんのところへ行って、タダシくんを守ってくれ」
 と指示を出し、え? それは、純子さんに、死んでこいってこと……?
 ライダー隊員としての覚悟を求められた純子はカワイ博士の息子タダシ少年の元へ向かうが、勿論護衛としては何の役にも立たず、あっさりとデストロンにさらわれていくタダシ。
 一方、V3はアルマジロに見立てた鉄球とのぶつかり稽古を開始し、勿論、クレーン車を操るのは我らが立花藤兵衛。
 まあ一応最初は、拒否したり止めようとするのですが、血には血を、拳には拳を、覚悟には覚悟を、と風見志郎の決意を汲むと、(スポ根物文脈もあるのでしょうが)がっつんがっつんと鉄球を叩きつけ、番組史上最大級のダメージを身内から受けるV3。
 だが筋肉の限界の先にこそ死中に活あり、鉄球のインパクトの瞬間たまたま足を滑らせたV3は、肩部分の筋肉構造が他より強い事を知る。
 ナレーション「V3・26の秘密、肩の特殊スプリング筋肉の強さに、V3は気がついたのである」
 特訓で何を見出すのかと思えば、見切りからの反撃手段でもなんでもなく、体の硬い所に偶然気がつく、という凄いオチでしたが、これが、電子説明書の無い時代の苦難です。
 基本的に節穴駄メンターだった某社長ですが、ファイズギアに説明書を同梱して郵送した点だけは、改めて高く評価したいところ。
 筋肉の導きにより対アルマジロの打開策を見出したV3だったが、デストロン戦闘員が突如として特訓場を襲撃。藤兵衛は気絶し、軽業スキルの高い戦闘員に頭上を取られ身動きを封じられたV3の急所に、アルマジロの操る鉄球が迫る!
 「いよいよ、V3の最期だぁ!」
 ぺったんこにされそうなV3の姿にナレーションがエールを贈って、つづく。
 次回――「特訓の成果が実り、ナイフアルマジロを倒したV3は……」
 ……ままある話ですが、危機を煽った意味は(笑)
 ところが、
 「その時、地鳴りと共に、ナイフアルマジロの鋼鉄球が転がってきたのだ」
 とナレーションが錯綜し、いったいどうなる?!
 ここまで今作のパターンだった、〔苦戦 → 逆転〕の間に〔特訓〕を挟み込む事で〔逆転〕の説得力を上げる構成なのですが、肝心の〔逆転〕が収まりきらずに〔苦戦〕のままつづいてしまった上、V3の場合「強敵に苦戦しながら前後編!」に特にインパクトが無い為、引きも気持ちよさも不足してしまう、悩ましい作り。
 あと今回のシナリオで何が驚いたかといえば、“車椅子の少年”が立ち上がって歩けるようになる事と、V3が過酷な特訓を乗り越える事が、全く重ねられないところなのですが、下手にやるとチープなメロドラマに陥る地雷とはいえ、冒頭に志郎が少年を励ますシーンの後は割とざっくり歩けるようになり、心情や克服を重ねるドラマかと思ったら、神仏に近いヒーローが、“王”としてのヒーリング能力を発揮したみたいな扱い。

◆第8話「危うしV3! 迫る電気ノコギリの恐怖」◆ (監督:山田稔 脚本:島田真之)
 東映ヒーロー前後編メソッドにより戦闘員をあっさり振りほどいたV3は、鉄球を回避。立ち直った藤兵衛が、戦闘員の後頭部に一抱えもある石を叩きつけると、V3は特訓の成果を発揮してナイフアルマジロを葬り去るが、満身創痍で立つ事もできない。
 「こうなったら最後の手を使うしか」
 「最後の手とは?!」
 タダシ少年がさらわれた事を知らされた藤兵衛は志郎と示しあわせ、本部に戻ると志郎が大怪我で三日は動けない事を敢えてアピール。
 「そうだ! 志郎兄ちゃんに代わって、僕たちが、デストロンのアジトを探すんだ!」
 「「そうだ! そうしよう!」」
 「そうだそうだ、その意気だ!」
 最後の手段=年端もいかない子供達を焚き付ける。
 ここまで、名前は出ても実態の無かった少年ライダー隊、真っ赤なブレザーに、V3ヘルメットとV3ペンダントを身につけた一般ライダー隊員たちが初登場し…………外見は、少年同盟と五十歩百歩でした。
 ここはもう、割り切って見るしかない部分なのでしょうが、特にV3ヘルメットは、デストロンに殺して下さいといわんばかりの主張の激しさであり、正義を守る為には、常に自分の身を死と隣り合わせにおいてこそ、掴める光が多分あるのです。
 ちなみに純子さんは、割とお洒落しているのに胸からV3ペンダントだけぶら下げているのがほぼ罰ゲームとなっており、見る度にその覚悟に好感度がちょっぴりずつ上がっていきます。
 藤兵衛は純子にも、花束持って大袈裟に志郎の見舞いに行く事を勧め、全てはデストロン人工心臓による怪人の蘇生で戦力を増強する前に、志郎と共謀の上で張った罠だと明かす。
 「奴らの前に、餌を撒かなきゃいかん。 少年ライダー隊 風見志郎という甘い餌をな」
 自分たちが囮とも知らず、少年ライダー隊がカワイ親子の足取りを探っていた頃、瀕死でアジトに担ぎ込まれたナイフアルマジロは、人質を用いたノコギリトカゲ(もともと博士の研究所に潜り込んでいた看護婦が人間体で、デザインに全く女性らしさは無いものの、声は女性)の脅迫に屈した博士により、蘇生手術を受ける事に。
 一方、藤兵衛の計画通りに、脇の甘い少年ライダー隊員の口から志郎入院中の情報がデストロンに漏れ、病室の壁を切り裂いて志郎に迫るデストロン……電ノコで大きな音を立てながら入ってくるので全く不意打ちになっていないのですが、切り取られた壁を脇にどける戦闘員が、大変いい味(笑)
 さすがに、今回も志郎がダメージを引きずっているとくどいと思ったのか、病院でちょっと寝ていたらすっかり回復していた志郎だが、弱ったフリで敢えて無抵抗で捕まるとデストロンのアジトに運び込まれ、「二枚目の拷問シーンには需要がある(らしい)」の法則に基づき、ロープで宙づりからの蝋燭責めを受けるも、そこから脱出。
 既に身柄を移された博士たちをホッパーからのハリケーンで追跡・救出すると、利き腕を狙って攻めろの精神で電ノコをもぎ取り、回転投げから空中の標的に追加で飛び蹴りを叩き込むV3ダブルアタックによりノコギリトカゲを撃破し、崖からの転落の勢いが、酷い(笑)
 だがそこに、一足遅れで蘇生されたナイフアルマジロが現れ、エピソードの主要ギミックを用いつつの難敵再びにより、前後編の導入とクライマックスが一つモチーフで繋がるのは、面白い構成となりました。
 「今こそ最期だ、V3!」
 「そうはいかん!」
 だがもはやアルマジロの鋼鉄体当たりはV3にとって恐れるものではなく、肩スプリングリターン! で アルマジロを弾き返したV3の脳裏に、本郷猛からの録音メッセージが響く!
 「志郎、最大のエネルギーを発揮するのは、渦だ!」
 26の秘密がアンロックされてV3ドリルアタックが放たれ、冷静になってみるとだいぶ勢いを付けて斜面を転がっていったアルマジロ球は、木っ葉微塵に消し飛ぶのであった。
 一話で怪人が3回弾け飛ぶ大盤振る舞いでしたが、後ろ2回における転がり方が物凄かったです。
 第5-6話に続き、ショッカーとの2年に渡る戦いを乗り越えてきた立花藤兵衛の、少年ライダー隊会長として完成されすぎた狂気が、他の要素を引き離してどす黒い輝きを放ちますが、ライダー隊に入りたい子供は、全国に幾らでも居るのです。
 次回も、危うしV3!