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命燃やすぜ!!

イナズマンF』感想・第10話

◆第10話「ウデスパー兄弟の挑戦状!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:上原正三
 見所は、荒井に渡されたライフル銃で、デスパー兵士2名を射殺するゲストヒロイン。
 そして、それに向けて笑顔でVサインを出す荒井。
 荒井としては「勝利のサイン」と「2(キル)ポイント」を重ねて洒落たつもりだったのかもしれませんが、本当に、
 「……サイボーグといえども人間だ。人の心を持っている筈だ」
 なのでしょうか。
 数時間前まで殺しとは無縁だった筈のゲストヒロインが命を賭けた復讐者になったのは、仲間達と登っていた山での不幸な遭遇に端を発し……
 「この山へ入った者は、生きて戻れんぞ!」
 山登り中にいきなり銃で撃たれて青年ジロー(一般人)が吊り橋から転落すると、姿を現した腕アルファが、生き延びたければ渡五郎を連れてこい、と残った山登り仲間に無茶苦茶を言い出し……もしかしてまだ、山ごもりしてるの……??
 いち早く駆け出した女性が麓の駐在に頼み込むと、首をひねりながらも本庁の方に連絡を取ったらインターポール経由で連絡が届いたのか渡五郎が姿を見せ、
 登山者「誰? 渡五郎?」
 駐在さん「誰? 渡五郎?」
 渡五郎「俺? 警察から呼び出し?」
 と、劇中人物と視聴者が困惑の渦に叩き込まれる導入(笑)
 番組史上最も事態についていけない五郎を山へ連れて行く女性だが、山登り仲間も青年ジローもデスパー軍団によって惨殺され、どうして被害者ゲストの名前を「ジロー」にしたのかも、困惑に拍車を掛けます。
 アルファに一騎打ちを求められた五郎は剛力即超力招来し、『F』序盤の上原脚本回ではサナギマンの扱いに一定の配慮が見えたのですが、「二段階変身で物語に起伏をつける」よりも「雷神号の活躍シーンを作る」方が優先順位が高い問題もあって、そろそろサナギマンが完全に持てあまされている感。
 山ごもりで修得した、超力気合いの構えでチェーーース! するイナズマンだが、ベータが乱入。
 一気に2人がかりで勝負を決めようとするベータと、一騎打ちにこだわるアルファが兄弟喧嘩を始めると、仲裁に入った磁石デスパーはこんな時だけ息のあったキックを受けて画面外に放り出され、モニターしていたガイゼル総統は頬をプルプルさせていた。
 「……なんという! 馬鹿者め!」
 腕スパー兄弟登場から3話目にして、やっぱり、同格の参謀を2人にしてはいけないよね……と当たり前の結論が導き出され、地獄のデスパー軍団では今、知性の在処を好待遇で募集しています(※電話応相談)。
 肝心の必殺クロスハリケーンも、兄弟の絆パワー不足から想定した威力を出せず、苛立つガイゼル総統は、とうとうリストラを断行。
 「これが合体ウデスパーか……。成功すれば無敵のロボット戦士が誕生する。ふふふふふふふ……」
 凄く怖く笑うガイゼルは、設計段階だった合体腕スパー計画を社長命令で実行に移させ、対照的な性格でキャラ付けしていた腕スパー兄弟、これ以上揉める前に、あっさり合体腕スパーに。
 あまりの早業でビックリしました(笑)
 「デスパー軍団と戦う事は俺の使命なんだ。死を恐れて逃げる事はできない」
 一方、ジロー青年を失ったショックから衝動的に自殺を図ったゲストヒロインを救った際に、デスパーの火薬工場を発見した渡五郎はクロスハリケーンでダメージを受けながらも再びデスパーとの戦いに向かい、一度は山で死にたいと捨て鉢になっていた女性は、「命がけで戦ってみたいんです!」と逆方向に全力疾走を開始していた。
 とりあえず腕スパーの事はこっちでなんとかするから、と大都市空爆作戦の実行を命じられた磁石デスパーは戦闘機部隊を出撃させるが、雷神号の攻撃を受けるとあっさり撃墜されて脱出し、地上で今作では珍しい主題歌バトルに突入。
 ここまでのところ特殊能力は全く使っていない磁石デスパー、スッキリとまとめたデザインは割と格好良く、イナズマンに対抗して謎のポーズで気合いを入れると飛び蹴りの応酬など始めるので、ヒーローvs怪人というよりも、因縁の格闘家同士の決闘みたいな事に(笑)
 飛び蹴りのクリーンヒットしたイナズマンは連続パンチを叩き込んで優勢となるが、そこで発動する、必殺マグネチェーン!
 頭部の蛇口みたいなパーツが宙を舞って(実は最初、蛇口デスパーかと思いました)イナズマンに貼り付いてのチェーンデスマッチとなり、放たれるマグネ流三連脚、そしてマグネスロー。
 だが、蹴り技を見切ったイナズマンはチェーンを叩き割る事で行動の自由を取り戻すと高い所にヒラリと移動し、稲妻伸身ひねりキックを叩き込むと、弱ったところにゼーバー落雷の術でフィニッシュし、およそ2分間という長めの一騎打ちとなりました。
 前回から、ゼーバー落雷に対する被害者のリアクションが、画面を明滅させながらアップと少し離したカットを交互に連続で映す事で衝撃を表現する映像に変更されると共に、大技で弱らせてから追い打ちで落雷を入れるフィニッシュブローとなり、必殺技としての見栄えと説得力が上昇したのは、嬉しい改善点。
 一方、五郎から火薬工場の爆破を任されていた荒井は、命を燃焼させたゲストヒロインの助けもあって突入に成功すると、西部のガンマン魂スキル《葉巻爆破》を発動して工場を破壊。
 爆発の衝撃を表現する為の土砂が結構な勢いで荒井とゲストの間近まで飛んできて帽子に当たっており、ゲストをかばう姿勢から立ち上がった際の「ええぃ……」(帽子を直す)のところは、少し、素なのでは(笑)
 ライフルの引き金と共に羽化を果たしたゲストヒロインは、不条理な悪に屈さない為に、死んだ仲間達の分まで山登りを続けると宣言。
 かくして燃え盛る生命力を取り戻した女性であったが、その背を見送ったイナズマンの前に、右が鉄色で左が銅色、悪魔のような二本角を生やして両腕には巨大なクローとムチを取り付けられた合体腕スパーが姿を現すと、獣のような咆哮を上げて猛然とイナズマンに襲いかかり、参謀要素消失の圧倒的なパワーに危機に陥るイナズマンの姿で、つづく。
 立ち上がり、「デスパー軍団の残虐非道」と「大がかりな破壊作戦」の二つを軸に進んできた今作ですが、敵組織交代にともない、前作中盤で主人公に与えたヒーローとしての“揺らぎ”をリセット、前作の特色だったミュータント(超能力)要素も実質的に排除した結果、『イナズマンF』として渡五郎をどう位置づけたいのか? が行方不明になってきている印象。
 時代性もあるとは思いますが、結果的に五郎が、動く“模範的ヒーローイメージ”みたいになっていて優等生ゆえの平凡さに埋没してしまい、前回今回は特に、「デスパー軍団の残虐非道」と「大がかりな破壊作戦」を盛り込みつつ『イナズマンF』らしさとは何か? という作品としての芯をどう打ち出すのかが見えてこないエピソードでありました(近い時期&主役繋がりで思い出す『キカイダー』は、なんだかんだ、この芯のハッキリした作品であったなと)。
 『F』スタート時に、ただリセットするだけではなく、五郎の戦う動機付けを再設定した方が良かったのではないかと思われますが……『イナズマン』から数えると30数話を積み重ねているにも拘わらず、ここに来てロボットみたいなヒーローになってしまっている渡五郎には、『F』後半の推進力となるようなアクセントが何か欲しいところ。