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青春インザファイト

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第25-26話

◆第25話「新たなる出発(たびだち)!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:杉村升
 今回から第二部<青春激闘編>がスタートした筈ながら、OP映像はツバサ丸とスーパー無敵大将軍が入る程度のマイナーチェンジで、これといって大きな主張は無いのか……と思っていたら、本編開始早々、

  第二部・広島死闘編

 第二部・青春激闘編

 と、まるで地名表示のような物凄くあっさりしたテロップが入り、もう少し、書き文字にするとかどうにならなかったのでしょうか(笑)
 それぞれの旅路を行くメンバーの姿が差し込まれると、サイゾウとセイカイは既に猫丸の中に二人でまとめられており、前回あれだけ盛り上げた旅立ちが、一週で台無しになるウルトラC。
 ……まあ、個別ミッション編は4話で済ませた方が切りがいいのは、理解はできます。
 そして、サスケが向かう道の先では、自然豊かな那須高原の岩肌に突き刺さっていた巻物が、蝶を、適当に、人間に変えた。
 巻物の使命を受けた蝶娘(演じるのは、2年前の『ジュウレンジャー』でプテラレンジャー/メイ役だった千葉麗子さんで、衣装も露骨に寄せたデザイン)がサスケを連れにファンタジックに空を舞う突飛な展開となり、バイクで走るサスケを発見する蝶娘だが、一天にわかにかき曇ると、高笑いする貴公子ジュニアがサスケに嫌がらせの遠隔攻撃。
 第二部開幕にふさわしい派手な爆発で崖を転がり落ちたサスケは蝶娘の手当を受けるが、娘の主張するメルヘンを受け入れていいのか、挙動不審になっていた(笑)
 妖怪は信じられても妖精は信じられない、みたいなスタンスを見せる割と真人間サスケは、とにかく巻物の事を知っているのは確かだと蝶娘・麗花の案内を受けるが、娘は何故かファミリー牧場に突撃し、しばらく観光タイアップをお楽しみ下さい。
 仲間の事もあるので、きゃっきゃうふふの空気はさすがに出せないサスケが疑いの眼差しを向けると、蝶娘は、森の仲間はみんなサスケが大好き、と自身の正当性をアピール。
 「……森の仲間?」
 「忍びの巻きが言っていたわ。サスケが来て、忍びの巻きを手に入れば、きっとみんな幸せになれるって」
 ……言動が若干詐欺師めいているのですが、大丈夫なのか、その巻物。
 「…………ちょっと待ってくれよ。言ってること全然わかんねぇ」
 忍法と妖怪は受け入れられるが、魔法とか妖精とかは、いやそういうのいいんで……と良識の境界線を死守して勧誘を断ろうとするサスケに対し、地球には様々な命がある事を切々と訴えると麗花は、「それを守るのだってあなたの仕事なんだから」と一歩も引かない姿勢を見せ、どうやらサスケ達カクレンジャーの視点を外部からのマインドコントロールによりミクロからマクロへ向けさせたいようですが、やり口が強引かつ露骨すぎて、段取りの不自然さが先行してしまう事に。
 それこそ、5人揃って前後編でやってもいいような内容だと思うのですが、『カクレンジャー』としては新しいテーゼをサスケに向けて1話に圧縮してぶつけてきた為、血抜きもしていない生肉がそのまま皿に乗って出てきたようで、すんなり飲む込むには、あまりにもワイルド。
 サスケが事態の咀嚼に手間取っていると、バイクに乗って現れた檜山修之声の妖怪・一反木綿が、ジュニアの刺客として二人を強襲。更に、いきなり第4の壁を越えて自己紹介を始め、これどう考えても前作の神風大将なのですが。
 「逃げるんだ!」
 「嫌! 私も戦うわ!」
 下忍軍団に囲まれた蝶娘は恐竜魂を感じる握り拳を作って下忍を投げ飛ばすと、続けて二本の短剣を手にスピーディかつ容赦のない戦いぶりを見せ、何を生み出しているのだ、巻物。
 蝶……命……殺意……昆虫……魂……ううっ、今回どういうわけか、今作放映翌年の《メタルヒーロー》シリーズ『重甲ビーファイター』と重なる要素が散見されて、セントなんちゃらの記憶が脳を揺さぶります。
 「おまえらはここでおしまいだ!」
 快調に下忍軍団を蹴散らすサスケ&麗花だったが、一反木綿の光線から通りすがりの兎をかばった麗花が致命傷を負い、弱い命の存在を懇々と訴えると巻物の場所をサスケに伝えて一匹の蝶の姿へと戻って消滅し…………馬。
 いや、悲劇的な別離のシーンなのですが、背後にずっと馬が居るのが気になって仕方なくて……馬。
 麗花の台詞に合わせて、自然や小動物の姿は別カットで入れているのに、どうして馬だけは、同じフレームに入れてしまったのか。
 (わかったよ麗花……この地球は人間だけのものじゃない。生きとし生きるもの……全ての者達の為にあるんだ。それを守るのが……俺の仕事なんだ!)
 サスケはレベルがあがった!
 サスケは昆虫魂をインストールされた!
 麗花の想いを胸に本当の戦士へと一歩を踏み出すサスケ、前回もサイゾウが「子供達を、平和を守るのが俺たちの仕事じゃない!」と、カクレンジャーの戦いを「仕事」と称しており、カクレンジャーなりの韜晦も含みつつ、それは「使命」――人生全てを注ぎ込むもの――とは別である、という意識は見えるのですが、ではカクレンメンバーの、〔「人生」-「仕事〕の残り部分が描かれていたかといえばそういうわけでもない為に、独自のスタイルを示そうとするには、あまり上手く機能せず。
 私人としてのメンバー個々の目標意識を強くしすぎると猫丸道中との衝突が生じますし、前作がある程度それを意識した作品であったのに対して、今作では目標意識をハッキリ持っていないモラトリアムな時間にある事を一つの“若者らしさ”として設定している感はありますが、その「不在」性と「カクレンジャーは仕事」は対比が成立しない為に相性が悪く、個々の要素の衝突を避ける為に“なんとなく”で済ませてきた部分が多すぎてテーゼが上手く跳ねられない、『カクレン』落とし穴。
 第2部タイトル<青春激闘編>が、“若者の時間”を強調している事を好意的に解釈するならば、これからその「カクレンジャーは仕事」とバランスを取る要素を、サスケたち一人一人が見つけていく物語になっていく可能性は、ありますが。
 「巻物は絶対に手に入れさせんぞベイビー!」
 下忍軍団を蹴散らしたサスケは高原を駆けて巻物を目の前にするが、それを阻止しようとする一反木綿が妖怪パワーで巨大化すると、両手に銃火器を装備して高原を大規模に焼き払うお約束。
 定番が悪いわけでは全くないのですが、そもそも外部から“気付け”と使者が送り込まれているのに始まって、“気付き”への持ち込みがあまりにも優雅さに欠けて、テーマを串で刺して焼いただけ、どころか、テーマを串で刺しただけ、の噎せ返るほどの生肉。
 「許せねぇ……許せねぇ許せねぇ……!!」
 巻き込まれる小さな命の為にサスケは怒りを燃やし……ここで例の挿入歌のイントロが頭に思い浮かんだ方には、ゴールドプラチナムポイントが1点入ります。
 この流れから超時空の戦士が突然やってきて主人公たちに代わり敵を薙ぎ払ってくれる展開をやった同期作品、ある意味、本当に凄い。
 ちょっとスペースラジオの周波数が違ったら、(サスケ……ハイパーサスケ……)と呼びかけられていたかもしれないサスケはスーパー変化すると、怒りの満月斬りを浴びせ、遂に巻物を入手。
 極意を発動することによって、背後に生じた忍の文字が稲妻のモチーフを経由して超忍獣ゴッドサルダーが出現し、普通に喋るサルダーへと搭乗。
 「ゴッドサルダー、今日から俺とおまえは一心同体。生きとし生けるものの為に、とことん戦ってやるぜ!」
 ゴッドサルが素早い立ち回りの二刀流で戦っていると、そこにビッグワもといツバサ丸、そしてゴールドプもとい無敵将軍が出現すると勝手にスーパー無敵将軍を発動し、え、ゴッドサルダー、前座……?(笑)
 一応横に並んでみるサル、妖怪が無敵キャノンで消滅したらどうしようかと思いましたが、砲撃を浴びせて弱ったところに必殺攻撃を叩き込んで経験値ボーナスを貰い、ナイス手加減によるパワーレベリングでありました。
 ……結局だいたい、同期のゴールドプラチナムとやっている事が同じなのでは。
 この辺り私があまり受け付けないだけで、強大な悪と戦う為に、超越的存在もまたチーム:カクレンの一員なのだ、と受け止めれば、シリーズにおいて一つの系譜を成してはいるのでしょうけれども。
 超忍獣に関しては、巨大獣将の存在を布石としつつ、意志あるものに乗り込むシークエンスを明確に描いて位置づけをハッキリさせたのは良かったところですが、同時進行でスーパー無敵将軍の販促も必要な為に作劇がいびつになっているのは、ファイター問題再び、の感あり。
 試練を乗り越え極意を身につけたサスケは、生きとし生けるものの為に戦う事を改めて誓うと仲間たちとの再会を期し、チームを一時分離させ、通常のメイン回以上に個人に焦点を絞って成長エピソードを描く思い切った構成は挑戦的となりましたが、爆破解体からのロケット打ち上げには土台整備も燃料も当然足りず、ロケット人間へのサイボーグ手術のようになってしまいました。
 また、前回の感想で触れた事に関連するのですが、これまでのカクレンメンバー、確かにマクロな視点は持ち合わせていなかったものの、かといって強烈な「私」の動機に支配されているわけでもなければ、「公」の為の戦いよりも「私」を優先するわけでもなく、必要とあれば「公」の為に戦う事を厭わない(良くも悪くもそこを考えない)メンバーだったので、そこに「公」の精神を外部から注入する意識改革をもって試練とする構図そのものが、引っかかりを覚えます。
 言ってみれば、義を見てせざるは勇なきなり、とでもいった通りすがりの義侠心に基づいて行動するヒーローよりも、マクロな視点を持って「公」の為に戦うヒーローの方が格が高い、とされているのは、凄く違和感。
 勿論それは、『カクレンジャー』作中の理屈であり、突き詰めれば三神将(及びそのメッセンジャーとしての三太夫)の求める視点であるわけなのですが、そこで“従来のカクレンジャー”との衝突や葛藤が描かれないまま、「公」の視点は無いが実は「私」も薄いカクレンメンバーが、言われるがまままに「公」の視点と精神を受け入れてしまうのは、今作における“衝突を避ける作風”が、第二部開始早々に悪い形で火を噴いた印象。
 ……トータルでは更にそこから、モラトリアムな若者たちだったカクレンジャーが「私」を見出す旅路になる、可能性はありますが。
 ところで今回、
 〔「生きとし生きるもの」の連発×観光タイアップ回×昆虫を通して問う命の尊さ〕
 の組み合わせにどうしても『超獣戦隊ライブマン』――特に曽田マジックが冴え渡った第26話「会津の巨大カブト虫!」(監督:長石多可男)――を思い出さずにいられなかったのですが、『ライブマン』における、天秤の片方に強烈な復讐心を置き、もう片方に全ての命への無償の愛を置き、「私」100%で戦いを始めたメンバーが、強烈な「公」の精神を行動理念に設定する事で自分たちの人間としてのバランスを取ろうとしていたのは、「公私の問題」について本当に良く出来ていたなと改めて。
 まあ『ライブマン』の場合、80年代戦隊の集大成としてシリーズ過去作で積み重ねてきた問題意識が背後の文脈にあるからこそ出来た部分はあるので、『カクレンジャー』とは広くは同一シリーズながら、文脈が割と異なる事情はありますが。
 次回――ようやくフィーチャーされる鶴姫の過去。

◆第26話「鶴姫家の超秘密」◆ (監督:坂本太郎 脚本:杉村升
 樹海のような地を進む鶴姫は、巻物の隠し場所を目前にして妖怪・カサバケに襲われ、妖怪と下忍が揃ってカラフルな傘を使ってのアクションは面白く、特に下忍が番組史上最高の格好良さ。
 「ははははは、口ほどにもないやつですね!」
 傘マシンガンに吹っ飛ばされた白は一時撤収。完敗に悔しがる鶴姫の元へ黒塗りの車に乗った三太夫が姿を見せると、強制的に車に乗せられて一度実家に戻る事になり、第一部最終回の演出的盛り上げが、けちょんけちょんに踏みつけにされていくのですが(笑)
 豪華なお屋敷に帰還した鶴姫はメイドに磨き上げられて綺麗な洋服を着せられ……戦国大名の家系で、代々カクレンジャーのリーダーを務める家柄、父親は病死しているとの事ですが、サブタイトルで煽ったほどの掘り下げは無しというか、こういう時に必要なリアクション要員がどこにも居ない為、今更ながらに凄くさらっとした背景の説明に。
 三太夫は「カクレンジャーのリーダーとしては、少々、心許ない」鶴姫をサポートする手助けとして、忍法ゼンマイ仕掛けで動く4人の仲間の分身人形を作り出し、
 「忍びの巻きを手に入れる事が先決やけん。構わんけん。途中でその内の何人が倒れようと、振り捨てて、巻物まで突っ走るんよ」
 と持ってくるのは、ここまで色々台無しが過ぎましたが、ちょっと面白いテーゼ。
 三太夫の差し出口が気に入らない鶴姫は、とにもかくにもカラクリ赤黒黄青を引き連れて再び森に向かうが、再び出現する妖怪傘化け。
 デリート対象を見た途端、殺意のプログラムを起動したカラクリメンバーは機敏な動きで下忍たちを切り払っていくが、鶴姫らを先行させるべく追っ手を前に一人残った黄が傘ミサイルの餌食となって弾け飛び……何故、声と中身(セイカイ)を再現しているのか、三太夫
 続けて、落石の妨害から白をかばった青が大ダメージを受けて変身解除すると地面をのたうち回り、だから、その機能いらないよね三太夫?!
 今度は黒が傘に突き刺されるとジライヤの姿で絶叫し、最後に残った赤と共に巻物へと走る白だが巻物を目前に赤まで倒れ、メタ的には4人の出番確保の工夫なのですが、三太夫とそのバック(巻物)が悪質すぎて、魔王殺しの次は神を狩るべきなのではないかという気がしてなりません。
 「嫌よ三太夫! 頼りないっていわれてもいい! 甘いって言われても……! でも! この人たちを見捨てる事なんて、あたしには絶対できない! 三太夫!!」
 絶叫する鶴姫は傘化けの攻撃を受けて滝壺を滑り落ちるが、三太夫の弟子が操る忍び犬が現れて巻物を確保。鶴姫の前に姿を見せた三太夫は、全ては鶴姫がカラクリメンバーをどう扱うかを見定める為の茶番であったと試練の内容を明かし、ある意味では、戦隊長官ポジションにふさわしい狂気と外道ぶりなのですが、別に長官ポジションでは無かったので、ただの狂気と外道で困ります。
 三太夫いわく、
 「これから先、おまえが命令すれば、サスケたちは平気で死の中へ突っ込んでいくようになるだろう」
 から、カクレンジャーのリーダーとして“人一倍相手を思いやる優しさ”が試されていたのだと語り………………サスケ達はこれから先、どんな思想改造をされてしまうのぉ?!
 「誰よりも思いやりを。行くのよ、ゴッドカーク!」
 鶴姫が巻物を手にすると巨大傘化けが出現し、スーパー変化した白は戦闘機形態のゴッドカークに乗り込むと挿入歌に乗せてフライングビームを発射。
 試練達成を確認したツバサ丸と無敵将軍が出現すると超忍者合体を行って今回もカクレンジャーのパワーレベリングを行い……あ、人型が無いから、超無敵将軍がトドメを刺した。
 前回のサスケに続き、巻物の入手後、プロミスリングを見つめて仲間に思いを馳せるのは上手い小道具となり、力を合わせて戦う事の大切さを改めて感じる鶴姫が集結の為に歩き出して、つづく。
 三太夫の弟子とされる忍犬少年は終始無言だったので、てっきり試練の一部である巻物の化身か何かとばかり思っていたらラストで犬と明るく遊ぶシーンが描かれ……再登場の予定などあるかもしれないのですが、今回限りでは、だいぶ困惑。
 既にジョーカーの機能を担っているのが弟子といえば弟子っぽいですが、人外にしろ人間にしろ、作劇として楽にしすぎた要素が特に何も説明されないのは、余計な引っかかりになってしまいました。
 “年少・女性リーダー”という珍しい位置づけが、物語の中では有名無実に近くなっていた鶴姫について、作り手の側からも、鶴姫の立場を再定義しようとするエピソードでしたが、その中で《スーパー戦隊》の女性メンバーが、力では劣るから他の強みを活かせ、と真っ正面から告げられるのはかなり珍しい印象。
 次回――同じ箱に入れられた二人は、カッパになって光線を吐くのか。