東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

参謀多くして部下仲裁に入る

イナズマンF』感想・第8話

◆第8話「ウデスパー兄弟! クロスハリケーン!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:上原正三
 イナズマンと戦い無念の戦死を遂げたウデスパー経理事務秘書総務参謀の残骸を回収させたガイゼル総統の指令により、遂に誕生したウデスパー兄弟!
 「まずおまえ達二人の使命は、にっくきイナズマンを討ち、私の頼りある両腕となる事だ」
 「「――ガイゼル総統に忠誠を誓います」」
 「ジェットデスパーを使い、まず、イナズマンの力を知れ」
 で、敵サイドのBGMのままサブタイトルが出るのが、格好いい入り。
 兄弟に呼び出されたジェットデスパーは、左手の凍結銃でイナズマンを倒してみせると息巻くが、銅色で、三日月ホーンが横方向から頭に突き刺さったウデスパーアルファは、それに不満を漏らす。
 「えぇい、生ぬるいわ!」
 「ウデスパーアルファ、おまえの考えを聞こう」
 「奴を倒すには、もっと暴力的かつ破壊的戦略が必要だ」
 アルファの声を演じる渡部猛さんが完全に後のバットバス(『星獣戦隊ギンガマン』)を彷彿とさせる荒くれ演技で、一瞬で湧き上がる知性に対する疑問。
 「というと?」
 「ミサイルだよ、ミサイル」
 ち、知性……。
 「絨毯爆撃こそ最良の方法だ」
 ち、知性……。
 圧倒的な個を封じるには物量こそが全て、勝利の鍵は知性を越える暴力と予算だ、とするアルファに対し、岩名雅記さんが声を続投となり、鉄色で、三日月ホーンが縦方向から頭に突き刺さったウデスパーベータは、経費節約の観点からそれを批判。
 そんな領収書通ると思ってんのか、と正面から罵倒すると短気を起こしたアルファがベータに掴みかかり、慌てたジェットデスパーが仲裁に入るまさかの展開(笑)
 おまえ、どっちの作戦取るの? と最終的に上司から丸投げを受けたジェットデスパーは当初の自分のプランを進める旨を申し出、
 〔新任上司に作戦のプランを問われる → その上司が勝手な作戦を口にして揉めだす → 仲裁に入るが突き飛ばされる → 結局丸投げを平常心でくぐり抜ける〕
 デスパー怪人としてはかなりの人格者ではないかと思われ、生前の腕スパー参謀と気が合ったかもしれません。
 新生ウデスパー兄弟の参謀デビューに振り回されたジェットデスパーは、横浜で進行する作戦の秘密を目撃した姉弟をさらった事で五郎と荒井にカチコミを受け、もはや五郎と遜色のない戦闘力で普通にデスパー兵士をなぎたおすサイボーグ荒井(笑)
 今作における五郎、主人公ヒーローであると同時に、イナズマンに対するピンチ要員を兼ねているので、生身では割と痛めつけられがちなのもありますが。
 囚われの姉弟を助けた荒井が腕スパー兄弟の襲撃を受けると、続けて、ジェットデスパーと戦うイナズマンの前に姿を見せるアルファ&ベータ。
 「我らはウデスパー回路を更に増強して出来た、ロボットファイターだ」
 ウデスパー回路のなんたるかは不明ですが、ちょっと上等な素材、ぐらいに解釈しておけば良さそうでしょうか。……それはそれとして、「ロボットファイター」から知性の響きが感じられなくて不安が募ります。
 仲の悪そうだった兄弟だが戦場では思ったより連携の取れた攻撃を見せ、(強い……ウデスパー以上の実力だ)とイナズマンに評価させると、ウデスパークロスハリケーンを発動。
 同時に空中高く跳び上がった兄弟の角と角がクロスする時、巨大な真空の竜巻が発生するのだ!
 真空竜巻攻撃を受けたイナズマンはゼーバーテレポーテーションで逃走し……相変わらず出鱈目は出鱈目であるのですが、しばらく竜巻攻撃を堪能した後に逆転竜巻チェストーーー! するわけでもなければ逃走するにもゼーバーを取り出さないといけない姿にはどうしても、“恐るべきデスパー軍団”というよりも“イナズマンの弱体化”に見えてしまうのが難。
 キャプテン・サラーに盛られた超能力増幅薬の効果が切れてきたのか、或いはやはり、前作最終回の戦い(超エネルギー吸収光線の影響)で超能力器官に深刻なダメージを受けていたのか……後者だとすれば、帝王バンバの体を張ったドデカいギャグならぬ大爆死にもそれなりの意味が出て、妄想としては面白いのですが。
 (凄い奴が出てきた……ウデスパーが4人になったようなもんだ)
 兄弟の三男みたいな顔して一緒に画面に入っているジェットデスパーの好感度が無駄に上がっていく中、ゲリラ撮影っぽい映像(渡五郎がやたら早足の上、通行人が明らかに五郎に視線を向けている)を挟んで、五郎は荒井と合流。
 デスパー軍団に狙われたゲスト少年が、たまたまスケッチしていた奇妙な飛行機について知ると、姉弟が襲われた理由を把握した五郎と荒井は、姉弟を隠れ家にかくま……うのかと思ったら何故か自分がクルーザーに潜む五郎。
 ゲスト少女にスポットを当てる都合で時空に歪みが発生したのか、突然のポロシャツ姿でクルーザーに身を隠す五郎に、ゲスト姉弟が甲斐甲斐しくお弁当を届ける頓珍漢な展開となり(逆では……?)、おもむろにゲスト少女となんか雰囲気を出す五郎だが、問題の飛行に乗ったジェットデスパーの強襲を受ける!
 姉弟がジェットに冷凍されてしまうと、剛力招来からすかさず超力招来で、サナギマンを某コロナモードみたいな扱いにしたイナズマンは、超能力であっさり解凍。だが逃走しようとした姉が特殊なジェット時限爆弾を取り付けられてしまい、ゲストの演技経験が浅いのか(背が高くて足が長く、モデル……?)、時限爆弾に対してほぼノーリアクションでちょっと困ります(笑)
 解除キーを持ってジェットデスパーが飛び立つと、イナズマンがそれを追って雷神号での空中戦、水中戦、岩盤をドリルで掘り進んでの地中チェイス、の総ざらえとなり、いよいよ宇宙へ――!!
 の前に、いつもの体当たりで墜落。
 逸るアルファを「作戦は密なるをもって良しとする」と頭脳派のベータが抑え、イナズマンの能力分析に集中する腕スパー兄弟が戦況を注視する中、墜落した機体から脱出するもイナズマンの連続蹴りを浴びて半死半生のジェットデスパーは、解除キーごと自爆してやる、と持てる全てを使ってイナズマンの精神に揺さぶりと打撃を与えようとする、素晴らしいガッツを見せる。
 「どうだイナズマン、手が出せまい」
 「そうだ! イナズマンラクルチェスト!」
 荒井とゲスト姉弟まとめて爆死の危機に懊悩するイナズマンだがその時、キャプテン・サラーが密かに仕込んでいたイナズマン13の秘密の一つ・イナズマンラクルチェストが発動すると、鏡映しのような映像からのアクロバットな動きでジェットデスパーを眩惑したイナズマンは、解除キーの奪取に成功し、時限爆弾を無事に解除。
 不覚を悟ったジェットデスパーは潔く自爆し、最後まで、立派なデスパー怪人でありました。
 「……ジェットデスパーには気の毒な事をした。だがイナズマン、今度会った時おまえを必ず殺してみせる」
 「えぇぃ! イナズマンは俺がやるんだ! 奴は必ずこの俺が……殺してみせるぞぉ……やぁ!」
 三男ジェットデスパーを見殺しにする形になった腕スパーベータだが、あいつ、追い詰めると何するかわからんな……と対イナズマンの貴重なデータを入手し、アルファが乱暴に画面手前の謎オブジェを破壊して、つづく。
 ……明らかに知性に偏りがあって今後の足の引っ張り合いが懸念される腕スパー兄弟ですが、少なくともアルファには、元となった腕スパーの復讐、という感情が存在する事が描写されて、前のめりの理由付け。
 幹部退場即復活、は少々風情に欠けるきらいはありましたが――1話ぐらいは空けて、視聴者に惜しい人を亡くした……と思わせてからの強化復活でも良かったような――、腕スパー兄弟の間に挟まれたジェットデスパーが、思わぬいい味を出していて良かったです(笑)