東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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大胆不敵のデストロン

仮面ライダーV3』感想・第3-4話

◆第3話「死刑台のV3」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:伊上勝
 とある病院の院長が、深夜の急患に愚痴をこぼしながら手術室に向かうと、手術台の上に乗っていたのはなんとポータブルTV、というのはインパクトのある掴み。
 「な、なんだこれは。ここはTVの修理屋じゃないぞ。おまえ達もおまえ達だ」
 「「ふふふふふ……」」
 「なにがおかしい?」
 「手術を受けるのは、先生――あなたです」
 いつの間にやら看護師らはデストロンに入れ替わっており、抑えつけられ、催眠光線を受けた院長が手術台に倒れ込むと、物凄く不気味な音楽と共にシーツの下から誕生したのは、デストロン怪人テレビバエ。
 巨大な左右の複眼がそれぞれテレビで表現されている割とユーモラスな見た目と次回予告映像の逃走シーンから、第3話で早くもお笑い寄り……? と身構えていたら、誕生が完全にホラーでビックリです。
 「たった今から、この病院はデストロン付属病院になる。影の院長は、この、テレビバエ」
 病院を乗っ取ったテレビバエが診察室で患者達を次々とデストロンの尖兵へと洗脳していた頃、風見志郎と立花藤兵衛は、ダブルライダーの消えた海へと、惜別の花束を捧げていた。
 「デストロンの特徴は、人の前に決して姿を現す事なく、充分な計画を立てて、突然行動を開始するんですよ。……こうしている今も、密かにどっかで……」
 志郎の危惧に対して藤兵衛は、デストロンの動きを掴む為に少年ライダー隊を再始動する事を宣言。地下に沈んだ旧本部に代わり、表向きはただのスポーツ用品店を新たな本部とし……割とお金、持っているのか……?(或いは活動資金として、本郷猛の特許権収入などを譲り受けているのか)。
 新生・少年ライダー隊の証としてのV3ペンダントと、それを用いた隠し部屋のギミック見せを挟んで、志郎と藤兵衛が新本部へと入ると、そこにはオペレーターとして第1話で志郎が助けた女性・珠純子の姿が。
 人情味を見せてお節介を焼く藤兵衛・あくまで純子を遠ざけようとする志郎・そんな志郎の態度にちょっとむくれてみせる純子、の三者三様はキャラクターの掘り下げとして上手く機能し、来客のブザーに店頭に出た藤兵衛だが、店を訪れたのは客ではなく、花輪を届けに来た運送屋。
 「花輪? ……この店の事は誰も知らん筈だが……」
 首をひねりながら表に出た藤兵衛と志郎が目にしたのは、

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 デストロン与利
 祝開店
 セントラルスポーツ店賛
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 の衝撃的な開店祝いで、ヒーロー側よりも、悪の組織の方が大胆不敵(笑)
 この状況で最も怪しいのは、第1話の動きから考えても珠純子ですが、運送屋に 毒入り注射器を突きつけた すごんだ志郎は依頼人の記した住所を聞き出して突撃すると、倉庫街のど真ん中で待ち受けていたデストロン戦闘員の襲撃を受ける。
 「ほぅ……まんざら出鱈目の住所では無かったらしいな」
 コンテナ上の疾走シーンはかなり迫力があり、逃げた戦闘員を追うもTVハエの待ち伏せを受け、目つぶし攻撃をまんまと食らう風見志郎は今のところ、一本気で血気盛んな青年といった描写。
 「どうだ、風見志ばぁーーーー!」
 話しかける風で近づいてきたTVハエが、名前中略からいきなり志郎に殴りかかってちょっと困惑(笑)
 戦闘員に囲まれ、催眠光線を浴びせられた志郎は、V3変身により抵抗すると、倉庫の中から外へ飛び出す事により、力尽くで無効化。
 「テレビバエ! 太陽の光の下では、催眠光線の力は半減だな!」
 ……と思ったら、根拠があった!
 同時に、TVハエが何故、病院を占拠して診察室で催眠光線を使うのかにも理由付けがなされるのが、なかなかに鮮やか。
 両者が殴り合いに突入すると、TVハエから送られてきたリアルタイム暴力映像はデストロン基地で録画され、それを分析する事で対V3専用の怪人を作り出そうとするのだが、ダブルライダー先輩が仕掛けていたタチの悪い映像ウィルスにより、デストロン基地のコンピュータは火を噴いて停止してしまう。
 デストロン総統は慌てて風見志郎の合成音声を作らせると、偽のメッセージで藤兵衛をデストロン病院へと呼び出し、病院の待合室で煙草スパスパふかしている映像には、時代を感じます。
 変装して病院に向かった藤兵衛は催眠を受けそうになるが志郎に助けられ、しかし第二の怪人・イカファイアが出現。V3がイカの相手をしている内に藤兵衛は今度こそハエに洗脳されてしまい、仕事しているところを見せたい純子がV3にそれを連絡。
 V3はイカをあしらうとホッパーを起動して藤兵衛の車を追うが、それもまたTVハエの罠であり、大胆不敵にして臨機応変デストロン、この辺りまで来ると本当に計画通りだったのか、その場で適当な事を言っているだけではと疑わしくなってきますが、この、「口ほどにもないやつ!」「と油断した貴様は既に我が術中」「ぐぁぁ……と見せて幻だ!」「だがそれは囮の一撃!」「なんだと……?!」みたいなのは、現代にも繋がる、正しく能力バトルの系譜でありましょうか。
 海岸におびき出されたV3は、ファイアだけど海属性のイカと、敵の得意フィールドでの戦いを余儀なくされ、必殺のキックをはじき返される。
 「キックが効かない?!」
 「驚いたか。砂地に貴様のエネルギーは吸い取られる筈。信じられなければ、どこからでもかかってこい」
 ……海ではなく砂浜属性だったイカファイアは、イカ理論でV3の打撃を封じると、更にイカスミ攻撃でダブルタイフーンの機能を停止させ、ダブルタイフーンの右は1号、左は2号の力を内蔵している、とV3の設定を丁寧に解説しながら的確に弱点を突き……結局、あの後デストロン科学班のデスマーチにより、V3のデータは人力で分析できたという事なのでしょうか(笑)
 イカファイアは、力と技の風車が回らなくなり激しく弱体化したV3を一方的に攻め立て、左手のゲソ足パーツを外すと下から火炎放射器が! は格好いいギミック。
 「ライダーV3! 死ねぃ!」
 V3は海岸で炎に追い立てられ、えーと……リアルにスーツの一部が燃えてるっぽいんですが、海に飛び込んで消火(その直前に正面のカメラに向けてポーズを取っているのが凄い)に成功。
 波打ち際でイカファイアと格闘を繰り広げるV3は、俺はまだ真の力に目覚めていないだけ、もう少し頑張れば藤岡弘の声で「――力が欲しいか?」とか聞こえてくる筈、と粘りを見せるが…………駄目だった。
 イカファイアに完敗を喫したV3――風見志郎はデストロンに捕らえられると棺桶に横たえられ、デストロン火葬場において粛々と執行される火葬刑。
 「「「デーストローンーー」」」
 風見志郎を棺桶に収め、釘を打ち込み、焼却炉に運び込む……と派手な仕掛けは抜きで淡々と作業を進め、最後は念仏のごとく声を合わせるのが独特の不気味さを醸しだし、イカファイアが、着火。
 棺桶の中で目を覚ました志郎は、ライダーV3の隠された力がある筈だ、ともがき続けるが火勢は勢いを増していき、V3大ピンチのまま、つづく。
 とにかく場面の切り替えが早く矢継ぎ早に何かが起こるのですが、あまりにも何かを起こしすぎて取り留めの無くなっている部分はあり、コンピューター爆発と合成音声による藤兵衛呼び出しの辺りは無くても良かったのでは、と(笑)
 そこを詰め込んで走り抜けるのが、シリーズ初期の魅力だったのだろうか、とは思われますが。

◆第4話「V3の26の秘密!?」◆ (監督:奥中惇夫 脚本:伊上勝
 丸焼き待ったなしのV3であったが、外部の高熱が棺の中の空気を対流させた事でダブルタイフーンが回り始めると、そのエネルギーを利用して煙突からの脱出に成功。
 某後輩は似たような状況から自分の体を電気分解して大脱出を成し遂げていたので、それに比べれば遙かに穏当で安心しました(笑)
 「ライダーV3生きていたのか!?」
 「生憎だったなイカファイア! 俺はこの通り生きている!」
 死地を脱したV3とデストロンの戦いが始まり、イカファイアの腰回りのデザインは、水着のパンツのイメージなのでしょうか……。
 一方その頃、TVハエの催眠を受けた藤兵衛は記憶を失い、数年後を彷彿とさせる心神喪失状態で彷徨中。たまたま少年ライダー隊のメンバーと行き会うと、ポケットの中に入っていたマッチケースを頼りに伊東温泉かめやホテルへと向かうが、真っ赤に光るテレビから風見志郎抹殺の指令を送られる事となり、小林昭二さんの芸達者ぶりが光ります。
 気を利かせた少年メンバーから藤兵衛の消息を伝えられた純子は、公私混同と職権乱用により隊員に採用した弟を志郎との連絡役に残すと伊東へと向かい、純子がスパイならずとも、デストロンにヤサが割れていて当然の杜撰ぶりですが、少年ライダー隊には、血判状や自爆装置の取り付け義務化が必要なのでは?!
 伊東へ向かった純子は藤兵衛とは別の部屋に案内されると、既にデストロンの洗脳前線基地となっていたホテルで洗脳されそうになるが、妨害電波を発しながら駆けつけるV3。
 「2㎞四方の電波は妨害できるんだ!」
 助けた純子と少し打ち解けた志郎は、藤兵衛を助ける為、かめやホテルにステルス潜入し、気絶させた戦闘員の衣装を奪う頭脳プレイでデストロンの警備をかき乱すと、藤兵衛を発見。
 死んだ目をしていた藤兵衛は、「風見志郎」の名を聞くと洗脳スイッチが入って殺意に覚醒し、物凄い、小林昭二アワー(笑)
 なんとか藤兵衛をふりほどくも前後をイカとハエに囲まれ、ハエの催眠電波を受けた志郎は囚われの身となってしまうが、事前に自己催眠をかける事でハエの催眠電波を無効化しており、活劇のセオリーの一つとして、罠また罠の応酬に対する伊上脚本のこだわりが窺えます。
 敢えて虎口に飛び込んだ志郎は変身V3するも、ハエの殺人電波で目をやられ、イカの炎にあぶられ、ピンチに次ぐピンチ。瞬間退場したイカをハリケーンで追いかけると、問答無用のライダー悪の怪人センサーが働き、一度登録した獲物は逃さない!
 「イカファイヤ! テレビバエ! 隠れても無駄だ!」
 「貴様を待っていたのだ!」
 だがそれも罠だったのだ! と、さすがにちょっと応酬が過ぎて、逃げたのを追いかけると計算通りを主張される展開が前回今回で複数の繰り返しになってしまいましたが、デストロン組体操を打ち破ったV3は、湖上のボートで純子にナイフの刃を向ける洗脳藤兵衛の姿を見せつけられる。
 「抵抗できるかライダーV3!?」
 「…………好きにしろ!」
 バロム・1でもキカイダーでも無かったのでV3は無抵抗のままダブル怪人の攻撃を一方的に受け、人質がこんなに有効な70年代ヒーローは、わたくし初めて見たかもしれません(笑)
 大変嫌な感じの悪役タッグから、たっぷりと尺を採って痛めつけられたV3だが、その時、脳裏に響く声。

 ――力が欲しいか?(幻聴)

 ダブル怪人が余裕の高笑いで目をそらした一瞬の隙を突いて、ダブルライダー先輩が仕込んでいたライダーV3・26の秘密の一つ、ライダー円心キックを発動すると、激しい回転運動からの飛び蹴りを同時に怪人に当てる事により、まとめて撃破し、窮地を克服。
 湖上の藤兵衛が無事に正気と記憶を取り戻すと、それを確認した志郎はヒーローのエネルギーの赴くまま独りバイクで走り去っていき、前回繰り返された「隠された力」が、恐らく今回発動した「26の秘密」なのでしょうが、掘り下げはすっ飛ばして発動してしまうので、布石としては上手く機能していないのが、今日見ると残念なところです。
 時代としては、ヒーローの「ピンチ」と「逆転劇」があれば良く、その間を繋ぐ要素が「隠された力→26の秘密」という事であるのでしょうが……。
 次回――団地にマシンガンの雨が降る!