『忍者戦隊カクレンジャー』感想・第20話
◆第20話「花のくノ一組!!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升)
「その子は付録よ。狙いはおまえの命!」
ユガミ博士(変な装置をつけて自転車で走り回る、今回のビジュアル面ギャグ要員)の妨害工作により仲間との通信を絶たれ、孤立無援の状況で花のくノ一組に命を狙われるサスケは、無関係の少年を巻き込む卑劣な作戦により大ピンチ。
地球が狙われるのは神ファミリーが居るからだ的な事を吹き込まれてサスケから離れようとする少年だがその命を容赦なく狙われ、己の存在がかえって守りたいものを危険にさらすジレンマにサスケが陥る《スーパー戦隊》としては珍しい展開なのですが、話の主題がそこにあるわけではなく、1クール目に不足していた正統派のヒーロー成分をブーストする為の仕掛けでしかないので、逃走から和解までの流れはだいぶ大雑把。
せめて少年からサスケへの好感度の推移が、
〔75(初期) → 20(巻き込まれ) → 100(サスケの誠意を受け止める)〕
ぐらいの起伏ならもう少し劇的になったのではと思うのですが、
〔20(偶然すれ違った感じ悪い同士) → 0(疫病神!) → 100(いきなり)〕
だったので、土台の無い急上昇に無理が出たのと少年への好感度も持ちにくかったのが、話の流れにノりづらかったところです。
この辺り今作、「旅から旅」の身の上なれど「初対面の相手の為にも命を賭けられる」部分にヒーロー性を見出そうとする意識は感じるのですが、カクレンサイドはそれでまだいいとしても、自転車で突っ込んできて謝りもしない少年をただ年頃のリアリティとして処理されてしまうのでは20分弱の物語としては劇的にならず、少年サイドにおける「背景」「理解」「変化」のプロセスを丁寧に盛り込んで欲しかったなと。
通信障害から異常に気付いた鶴姫たちがサスケを探し回る一方、討ち手に追い詰められていくサスケは追撃を振り切る為、ユガミ博士から追跡を受けているドロンチェンジャーを一時的に手放す事を決断。
だが状況は好転せず、いつの間にやら派手な爆発を起こせそうな荒れ地へと誘い込まれたサスケと少年の前に、トドメを刺そうと姿を見せたくノ一組が現れると名乗りとポーズを決め、完全に敵の思惑にはまって変身不能のサスケは大ピンチ。
一方、GPS的な何かによりドロンチェンジャーの反応を追っていた鶴姫たちは、サスケが手放したチェンジャーを発見し……博士はそれ、確保していないのか(笑)
サスケがチェンジャーを手放した時点で通信妨害の意味が無くなるので、後は場所を把握している博士が持ち主不在のチェンジャーを回収するのかと思いきや(場合によってはサスケがそこに何か罠を仕掛けたりするのかと思いきや)、博士はチェンジャーに手を出さないが、何故か妨害用の下忍だけ配置してあって、冴えない構成。
「いよいよ最期の時が来たようね、サスケ。おまえにふさわしい死に方をさせてあげるわ。――現れよ、くノ一ミサイル!」
忍法花夢幻から花爆弾のコンボで絶体絶命のサスケに向けて、突然飛んできたミサイルにまたがった緑と紫がサブマシンガンを連射し、セルフパロディ路線の強化・突飛すぎる飛び道具・派手な爆発、となんとかくノ一組を面白くみせようと手は打ってくるのですが、面白がるにはそもそも、没個性な女忍者×5に怪人の代わりを務めさせるのに無理を感じますし、カクレン側のリアクションも特に変わらないので敵としての特別感も出てこないのが苦しいところ。
(もう駄目だ……この子を守ることが、俺にはできないのか!)
サスケ爆殺の寸前、いきなり無敵将軍本体が起動すると
「諦めるなサスケ! 火炎将軍剣を授ける」
と言い出し、転送された将軍剣を受け取ったサスケがくノ一ミサイルを一刀両断する、雑にも程がある奇跡が発動し、急速に、やや人が良い大獣神会長、みたいになる無敵将軍。
仲間が合流してチェンジャーが戻ってくると、スーパー変化して反撃開始。火炎将軍剣を構えたニンジャレッドのアクションが見せ場となって、シャチホコファイヤー剣による範囲攻撃でくノ一組を撤退に追い込むと、守り抜いた少年と赤が熱い抱擁をかわし、「子供を守って戦うヒーロー」アピールがあまりに露骨で、無敵将軍組長の介入も含めて、カクレ流のプロモーションビデオみたいな着地。
メインを張ったサスケはサスケで、パブリックなヒーロー像を当てはめただけの無味無臭な存在になってしまい、1クール目の今作が肌に合ったわけでも、サスケのキャラクターが特に好きだったわけでもないですが、それにしてもちょっと残念なエピソードとなりました。