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『カクレン』さっくりめ

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第5-6話

◆第5話「凸凹珍ゲーマー」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 「お金が無いって、さみしいのよね」
 ブティックでジャケットをあれこれ選んで伊達者ぶりをアピールするも懐の寂しいサイゾウは、トラックに轢かれかけた少年を助けてレスキュー料金を請求……などという事なかったが、その拍子に薄い財布を落としてしまう。
 幸い、拾った財布を届けに来てくれた少年だったが、洋館の怪しい男2人の術により、たまたま水鏡に映し出されたサイゾウ&少年は異空間の迷宮へと引きずり込まれる事に。
 バラバラになった少年を必死に捜し回り、二枚目気取りの割に粗忽だが、なんだかんだ人は良いサイゾウをメインに据えつつ、迷宮に閉じ込めた2人の人間のどちらが早く脱出できるのか? をギャンブルとして楽しむ邪悪な凸凹妖怪コンビのアイデアは面白かったところ。
 最初はただの壁ばかりの巨大迷宮だったが、槍が飛び出し炎が吹き出し、トラップはドンドン殺意を増していき、辛くも脱出に成功したサイゾウは、屋敷の中から響く少年の悲鳴を聞きつけると、外で変身してから再び中へ。
 一方、突然姿を消したサイゾウの行方を追う鶴姫たちの前には三太夫が現れるとアドバイスともいえないアドバイスを告げ、割り切った出鱈目キャラではあるのでしょうが、三太夫に全く好感が持てないのは、少々辛い点。
 洋館=迷路に再突入した青は、シノビナックルで壁をぶち破る裏技で少年を救出するも、巨大迷路を生み出した妖怪塗り壁が突然下忍コマンドー部隊を繰り出して銃撃で蜂の巣にされるが、そこにサスケらが合流すると、ちょっと生身アクションを挟んでから一同スーパー変化し、青センターでフル名乗り。
 「やい迷路野郎! 人間は将棋の駒じゃないのよ! 覚悟しろ!」
 ほぼチンピラスタイルのサスケに対し、「(な)のよ」「(な)のよね」といった、やや柔らかい台詞回しでサイゾウは差別化され、戦隊メンバーとしては割と珍しい系統の軽口調ではありましょうか(雰囲気的に似た系統であるブルーターボでも、ここまで軽くはしていなかった記憶)。
 この辺り『カクレン』は、前作『ダイレン』よりも更に、シリーズ従来作から離れたキャラクター像を取りこむ意識は見えますが、それがいまひとつ、ヒーロー物としての面白さに繋げられていない印象。
 まだ立ち上がりではありますが、サスケにしろサイゾウにしろ、変化を加えた“先”で『カクレン』なりのヒーロー像を構築できず、ヒーローとして描こうとすると従来のセオリーをそのまま持ってくるしかないところに、それが如実に出ているのかなと。
 この後、『ダイレン』『カクレン』のカウンター要素のある『オーレンジャー』の更にカウンターとなった『カーレンジャー』および続く『メガレンジャー』において一つ志向されていたのは『ジェットマン』とは別のアプローチ(『ダイレン』『カクレン』ルート、とでもいいましょうか)における、その“先”の構築にあったのでしょうが、一定の成果を出した後で、逆に『ギンガマン』では宿命系戦士の洗練を狙うに至るのが、00年代戦隊の下地ともなる90年代戦隊の一つの流れとして見えそうでしょうか。
 身軽なバトルスタイルになった塗り壁に対し、カクレンジャーが消え身の術からの連続攻撃を浴びせると、青の正方形斬りを受けた塗り壁は巨大化し、そういえばまだ特に必殺技がありません。
 レンガ攻撃を受ける巨大青だが、忍法・なんとなく無効から、まずはにっくき洋館を破壊(笑) しかし空に浮かぶ巨大な目玉(完全に水木しげるの描くバックベアード)の妨害により塗り壁には逃げられてしまうのだった。
 少年は無事に救い出すサイゾウだったが、少年が届けてくれた財布は洋館の迷路と共に瓦礫に埋もれてしまい、勝者へのプレゼントとして妖怪に渡された金貨は一同奪い合いの末にマンホールの底に落ちていき、人間は醜い。
 カクレンジャーに恨みを燃やす凸凹妖怪コンビで、つづく。

◆第6話「目玉の王子様!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 カクレンジャーへの復讐を目論む凸凹妖怪コンビは、リーダー格の鶴姫に狙いを定め、どういうわけか大量の貴金属を強奪。
 一方、鶴姫の前には馬車に乗った仮面の王子様が姿を現し、ドレスをまとった鶴姫は、豪奢な……というにはちょっと狭い舞踏会場で踊ると、王子様から首飾りをプレゼントされる……。
 男女に分かれてテント生活だったカクレン一行、見るからに高級そうな首飾りをつけて目を覚ました鶴姫は、巨大目玉の光線を浴びると再び舞踏会に招かれ、塗り壁の相棒の正体は、無数の目を持ち幻術を操る妖怪モクモクレン
 まんまと幻術にはまり、またも宝飾品を受け取った鶴姫だが、それが盗品と発覚して社会的抹殺の危機に怯えるカクレンジャー。サスケらがこっそり宝飾品を返している間に、またまた幻術にかかった鶴姫は目目連蓮との結婚契約書にサインをしてしまい……ただひたすら、鶴姫が幻術にかかりっぱなしのが、話としてさっぱり面白くならないところ。
 「ふふふふふ、これでおまえは私のものだ」
 婚姻届の無効を訴えると妖怪裁判所に連れて行かれた鶴姫、目玉焼きの刑寸前、サスケたちが救援に到着し、スーパー変化。
 「やい妖怪たち! よくも私の乙女心を弄んでくれたわね! 許さないから!」
 そこから、全くバトル向きとは思えないEDテーマでの戦闘となり、折り鶴の舞いで塗り壁を追い詰めた白がシャーク号を召喚すると、合体した3台のマシンから赤シャーク号が射出されて塗り壁を轢き殺す合体技が炸裂し、巨大化忍術・合体ロボ・合体必殺技、といずれも忍法でざっくり出てくる路線。
 塗り壁が巨大化する間もなく消滅すると、代わりに目目連が巨大化するが、無敵将軍にさくっと両断され、カクレンジャーはチーム解散の危機を脱するのであった。
 『ジュウレンジャー』後半ぐらいから、戦隊の尺にも慣れてきて、うまくまとまったエピソードも目立つようになっていた杉村脚本ですが、立ち上がりの巨大ロボ誕生までを終え、前回今回とオーソドックスなキャラ回ながら、いずれも無味乾燥で、手腕よりもガス欠を感じる出来。
 《スーパー戦隊》だけ見ても3作連続、『ジバン』から数えれば6作連続でのメインライターとなるので、制作サイドの問題という感もありますが、鶴姫にスポットを当てながら、唯一、最初から背負っているもののあった(と思われる)鶴姫の意志が掘り下げられるわけでもなく、男衆との関係性が強化されるわけでもなく(最後に皆で茶化したのは、事件を引きずらないように気を遣ったと解釈できなくはないですが)、女性キャラを『シンデレラ』ぽい状況に置く、だけのものしかならなかったのは残念。