『スマイルプリキュア!』感想6・キミの後ろに道が生まれる
●第15話「ドタバタ! みゆきの母の日大作戦!!」
修学旅行が終わって久々登場の秘密基地で、それぞれクラフト作業に励むあかね達を見て「母の日」をすっかり忘れていた事に気づいたみゆきは、慌てて貯金箱の中身を確認するのだが……
「これでなにが買えるクル?」
「なんにも買えません」
「じゃあどうするクル?」
「どうにもなりません」
アホの子感溢れる、いいやり取り(笑)
物が駄目なら、労働で奉仕すればいいじゃない、とお手伝いを買って出るみゆきだが、みゆき母は気づいてしまった。
塩と砂糖の区別がつかない娘を育ててしまった事を。
その後も、布団を干せば地面に落とし、掃除機を出せばコードに引っかかり、アホの子属性を全開するみゆき(そして、それにだいぶ慣れた感のある母の対応)の姿がコミカルに描かれ、以前も思いましたが、星空家、割と立派。
立て続けにお手伝いに失敗し、ベッドの上を悶え転がるみゆきは、お金が無ければ自作すればいいじゃない、と発端に巻き戻り、絵筆の匠、手芸の匠、陶芸の匠、あと裁縫の素人がそれぞれの成果物を披露すると、それで貴様の特技はなんだ? と圧迫面接がスタート。
これといってクラフトスキルを所持していなかったみゆきは、思い悩んだ末に玩具連動っぽいマシンでビーズアクセサリーを作るとメッセージカードを添えようという事になるが、街には母の日をバッドエンドに突き落とす狼さんが出現し、なんだか、今日の狼さんはいつもより3割増しぐらいスマートなような。
プリキュアは、モデル体型を見せびらかす狼さんの作り出したカーネーションアカンベェに苦戦し、不器用なプレゼントを笑いものにされてまともに落ち込むハッピーだったが、サニーとマーチの男前コンビが率先して怒りを向けるとプレゼントを取り返しに突っ込んでいくのが、格好いい流れ。
ビューティとピースもハッピーに声援を送り、勢いで、街灯を通して狼さんに電流を流し込むピース。
ノリは完全に、「どうだ電気ストリームの味は。ボルトを上げるぞ!」(by城茂)で、やはりメンバー随一の殺意の高さを感じます。
「不器用でもいいの! 私お母さんに、ありがとうって、言いたい!」
皆の言葉に、本当に大切な気持ちを思い出したハッピーは立ち上がり、総員連係攻撃からの急降下気合いシャワーを叩き込んで、カーネーションアカンベェは消滅。
残すデコルは4つとなり、たまたま街中で出会った母親に渡した不器用なプレゼントは喜んで受け取ってもらえ、それを、なんだか重役モードで見つめる残り4人。プレゼントを渡す各家庭の姿が描かれて、つづく。
●第16話「れいかの悩み! どうして勉強するの!?」
中間テストの結果に揃ってためいきをつく、みゆき・あかね・やよい・なおの4人から、どうして勉強するのか、を問われて考え込んだれいか(入学以来学年トップ)の、これまで不明だった家はやはり和風建築の邸宅で、なんか凄い眼鏡美青年のお兄様が居るーーー?!
そういう人は、もっと! 早く! 出して下さい!!
自分はなぜ勉強をしているのか? が小骨のように引っかかるれいかは、半紙に「道」とか書いているお祖父様に相談。
「とにかく、自分から進んで何かを始めたことがないのです。自分のやりたいことはなんなのか。私の道はどこにあるのか。わからないのです」
「ならば全てを辞めてみればよい」
「え?」
「辞めて、見える事もあろう」
極端から極端に走る傾向のある優等生れいかは、お祖父様から極端なアドバイスを送られると、関係者一同を集めて(笑)、全てを辞めます宣言。
深刻だが変なスイッチが入ってしまったれいかの発言にさすがに生徒会長がとりなすと昔馴染みのなおがフォローを入れ、全面的に一時休養で決着。兄と母にも気遣われ、「やりたいこと」について思い悩むれいかは、メンバー各人の放課後に密着する……という形で、個々のキャラクターへ話を繋げていくのは、今作らしいスタイル。
「皆さん、凄いです。ちゃんとやりたい事があって、それを一生懸命やっています。それに比べて私は……」
「れいかだって今までずーっと、一生懸命だったクル!」
「え?」
「学校で、うーーんって考えたり、えいっえいって動いたり……れいかはいつも、一生懸命で楽しそうだったクルー!」
「そう?」
修学旅行を挟んで早めのメイン回その2といい、キャンディと個別の絡みが用意されているところといい、合体技の関係で割を食った第12話の埋め合わせは感じる作りで、赤鬼さんにより問題集アカンベェが出現すると、知力担当のキュアビューティを欠き、笑いと暴力だけが残ったプリキュアは壊滅寸前の大ピンチ。
特に、1+2+3+4が出来ないキュアピース、さすがにヤバいのでは……本人も「算数?!」って言っているように、「数学」ですらないぞ(笑)
領域展開系の怪人だった問題集アカンベェによりハッピーらが行動不能に陥り、まとめて人生から退学寸前、最近気がつくとバッドエンド探知機になっているキャンディと共に、れいかが参上。
「遅刻オニ! おまえ、道にでも迷ってたオニ?」
「確かに私は迷いました。私の、本当にやりたい事はなんなのかと。でも……私は、私の意志でここに来ました。人々を嘆き悲しませる悪事、私には見過ごせません!」
赤鬼さんの小洒落た厭味にれいかが切り返し、れいかの啖呵は、あかねやなおとは違う方向性でしっくり来るのは何故だろう……と思っていたのですが、時代劇なんだな、この子、と納得(笑)
キュアビューティは問題集アカンベェの出す問題に次々と正答し……このままだと、ビューティから仲間たちへの視線がブリザードになってしまうと危惧されるが、
「私にもわからない事は沢山あります。バレーボールで大事なのは、仲間と気持ちを伝え合う事だと、サニーから学びました。絵の一本一本の線に、描いた人のこだわりや情熱がこもっている事を、ピースから学びました。子供たちに厳しく接する事も、優しさなのだと、マーチから学びました。知っている物語も、何度も読み返す事によって、違う味わいが出てくる事を、ハッピーから学びました」
と、学問以外からの学びを語ったビューティとアカンベェの打撃戦を挟み、最終問題は、『道程』(高村光太郎)の冒頭を述べよ――
「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」
「正解しちゃったオニ?!」
「やりたい事を見つける為に、私はこれからも、色々な事を学び続けます。それが、私の道です!」
責任感と向上心の塊が、自己肯定力を身につけた!
問題集アカンベェは浄化され、赤鬼さんは撤退。れいかはメンバーそれぞれに、確かに勉強はいっけん役に立たないかもしれないが、好きな物事をより豊かにする可能性を有している、と(若干の詭弁を交えつつ)それぞれの道を広げてみせて全体のバランスを整え、
「いろんなことを知ってた方が、物語をもーーっと楽しく読めるね!」
みゆきが自ら“気付き”に触れる事で一方的な智者の押しつけになる事も回避し、学校の勉強なんて社会でなんの役に立つの? という定番の疑問に一つの解を与えつつ、しかし勉強以外の物事の価値も優等生が受け止めて、最後はメタ要素も含めた“物語”に焦点を合わせてみせる、見事な着地でありました!
着地点からの逆算が鮮やかで、なるほど成田良美さんの、基礎体力を感じた一本。
●第17話「熱血! あかねのお笑い人生!!」
街で開かれるお笑いコンテストに人気お笑いコンビがゲストとしてやってくる事になり、優勝を目指してあかねがみゆきとネタ合わせに励む一方、危機感を募らせるバッドエンド勢力では、結成! バッドエンドボンバーズ!!
実在お笑いコンビ・FUJIWARAゲスト回で、あかねを筆頭にみゆき・やよい・なおが大喜びする中、れいか一人、全っ然わからん、みたいな反応が貫かれているのは、笑いに対して真摯な姿勢というか、ゲストに対して凄い描写というか(笑)
「うちはみんなが楽しくなるのが好きなんや! お笑いもお好み焼き焼くんも、そこは一緒や!」
あかねに指針を与えたり、バッドエンド空間の中で立ち上がったり、スペシャルゲストありきのエピソード。