東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

ももはしる

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第45話

◆ドン45話「カカむらガガむら」◆ (監督:加藤弘之 脚本:井上敏樹
 見所は、情報提供の見返りとして接待を要求してくる寺崎さん。
 ドン家の関係者は、こんなのばかりなの!?
 前回の突発イベントの結果、長らく正体不明だったイヌブラザー=犬塚翼歓迎会として、マスターから一同に生姜焼き定食が振る舞われるが、ハードボイル度を下げたくない犬塚翼は、独りカウンターに腰掛けて、椎名ナオキの残したマンガを熟読中。
 「そういえばあの時の言葉……気になってはいたが」
 ――「私の、マンガの中に」
 アナザはるかの残した言葉が、重要な方向で拾われて良かった!
 ……裏を返すと、盗作問題の解決はまた遠のきましたが(笑)
 もう、ペンネームも画風も全てを変えて、真・鬼頭はるか、として新人デビューを果たすしかないのか……はるかの場合、ネット世論が恐らく敵なので、「SNSで話題沸騰!」ルートが、悪い意味でしか使えないのが、辛い。
 哀しき修羅のマンガ道はさておき、ジロウと共に寺崎のオジキへと挨拶に向かうつもりのタロウだったが、「カカ村」の言葉に反応した犬塚が同行を申し出たところで、鬼の形相の雉野つよしが店内に飛び込んでくると、再びみほが姿を消した、と犬塚に掴みかかる。
 「返せみほちゃんをぉ!」
 「あれはみほではない! 夏美でもない! 獣人なんだ!!」
 「ふざけたこと言うなぁぁ!!」
 「よせ。イヌの言葉は本当だ。……あの女は獣人だ」
 タロウが割って入ったところで、はるかの周囲に描き文字で疑問符が浮かぶのは好きではない演出でしたが、メンバーの中で唯一、鶴野夏美の顔を知っている事が、この先に効いてくるのかどうか。
 後、究極的には雉野、正体が頭のとんがった獣人でも、表面上、雉野みほで居てさえくれればそれで良さそうな気もしないでもなく、出来れば“そこ”にも踏み込んでほしいところではあります(犬塚的にはそれでは困りますが)。
 「ふざけるな……みんな……大っ嫌いだぁぁぁぁぁ!!」
 よってたかって、みほの存在を否定された雉野は、小学生のような罵声を一同に投げつけて走り去り、前回、駄々っ子キックで示された幼児化が更に進行。
 道中あれだけほのぼの夫婦として描かれていた雉野家が、この終盤に至って“互いが互いを利用する人形ごっこのおままごと”として崩壊していく様が容赦なく描かれていくのは、今作における「反転」の仕掛けの中でも、かなり強烈なものとなっております。
 そんな雉野を見送って、呆れた様子で俳句を詠む教授がクール。
 俳句に対する、皆の反応もクール。
 頭脳担当かと思いきや、探究心が今ひとつなので調査役を犬塚にさらわれている教授の立場はクール。
 首筋の寒い季節です。
 その夜、軽快なアクションで鶴野みほがネコ獣人の群れと戦っている姿を目撃したタロウが加勢に入ると、ネコ軍団は撤収。ツルの獣人に対しては友人の友人ぐらいの距離感なタロウだが……
 「丁度いい。ひとつ言いたい。あんた、獣人に罪はないと言っていたが」
 「そうだ。我々はドン家の勝手な都合で作られたもの」
 「いや、どうかな。あんたはみほになったり夏美になったりと、二人の男心を弄んでいる。これは罪ではないのか?」
 「……そうか。なるほど」
 獣人として生まれた事そのものには罪は無いかもしれないが、夏美の姿をコピーしてから行ってきた事は立派な罪ではないか、と指摘を受けた鶴野みほは高笑い。
 「ならばおまえがなんとかしてみろ」
 「そのつもりだ。獣人どもの人間ごっこ、俺が終わらせる」
 ここでとうとう、タロウが獣人の問題について、ドン家の人間として始末をつけると宣言。
 元より、幸せが理解できなければ夢も持たないタロウ、自身を突き動かすドン・モモタロウとしての「使命感」に基づいて行動してきたわけですが、貴種として「すり込まれた公の大義」が「自責の拡大」となっている感もあり、果たして、そこから解き放たれる事はあるのかどうか。
 「一つ教えよう。――月は空だけにあるわけではない」
 「どういう意味だ?」
 「その答を見つけるのは、ドン家のおまえだ」
 鶴野みほは去っていき、翌日タロウ・ジロウ・犬塚の混成トリオは、月渓谷行きのバスに乗って、華果村へ。
 ルミちゃんと寺崎を紹介できるとハイテンションなジロウだが、椎名ナオキのマンガの中では、人間をコピーする悪魔が住む森がガガ村にあり、その入り口は、村の駐在の冷蔵庫。
 村の駐在といえば寺崎のオジキであり、タロウ一行がまるで人の気配がしない村に辿り着いた頃、ソノーズは下降するエレベーターの中で、これからのキャリアについて思いを巡らせていた。
 「俺たちはこれからどう生きる? 感情を知ってしまった俺たちが……何故こんな事に!」
 「……私たちは負けたのだ、ドンブラザーズに。いや……人間に。今なら、ドン家の気持ちがわかる」
 ソノイは恐らく、元より脳人の中では「人間」に対して好意的だった方なのかと思われますが……「人間の命は何よりも尊い」と思っているが「人間の過剰な欲望」を憎むソノイが、その「欲望」こそが脳人の心さえ揺り動かすものを生み出す源泉なのかもしれないと気づくに至る、といった筋書きは内包されていたように思われるのに、道中のあれやこれやですっ飛ばし気味にされてしまったのは、つくづく残念。
 断片的な描写はありましたが、もう少し焦点を合わせて段取りを踏めていたら、もっと綺麗に跳ねていた気がしてなりません。
 「私は、出来ればドンブラザーズに入りたい(そうすれば、翼の側に居られる)」
 予告で見せていた総勢8名(あれ……?)ドンソノブラザーズの揃い踏みはソノニの妄想だったのは上手い仕掛けで、変身解除後に画面外からジロウが走ってきたり、タロウとソノイが一緒に扇子を広げていたり、主観人物以外の描写も、妄想としては細かい(笑)
 「……そうなれば、手取り足取り鬼頭はるかの指導ができる。今や奴を一流のマンガ家にするのが、俺の夢だ」
 「馬鹿いうな。私たちは今まで多くの人間を消去してきた。そんな事が許される筈がない!」
 ソノザが自らの「夢」を語る大きな変化を見せて、同僚2人が理性のコントロールを越えて欲望ダダ漏れになる中、これまで何をしてきたかの自覚があって、ソノイが最後のブレーキになってくれたのは良かったところ。
 ……まあ、メンバーの中で真っ先に馴れ合っていたのがソノイなのはひとまず置いておいて、宇宙最高裁判所の判決を待ちたいと思います。
 ソノザとソノニは、獣人の森に隠されているといわれる“赦しの輪”の噂を持ち出し、なにやら大団円発生装置めいたマジックアイテムの名前が浮上してきましたが、上手く説得力を持って繋がってほしいところ。
 「変な事を考えるな! 脳人の歴史の汚点になりたいのか!」
 脳人の戦士として規律を引き締め直そうとするソノイが率先して、監査役の上司を裏山に埋めてバクテリアの分解に任せようとしていた件は宇宙最高裁判所の判決を待つとして、ベンチで寝そべってコミックを読み耽っていたソノザの前には荒々しい髭面の男が、レストランでナンパを受けていたソノニの前にはナンパ男をスパゲティに叩きつける派手な女がそれぞれ姿を見せ、本社の目の届かない出向先で好き放題やってきたソノーズに再び迫る、査察の嵐。
 一方、不在の寺崎をジロウが探しに行っている間に、タロウと犬塚は問題の冷蔵庫を探り、タロウが強引にイヌを冷蔵庫に押し込めようとする一幕の後、二人は帰ってきた寺崎に見とがめられて、その顔、ロックオン。
 幸い誤解は解けて、寺崎の出した煮付けに2人は揃って衝撃を覚え……この後の展開を考えると、ルミちゃんの煮付け=寺崎の煮付けであったという事なのでしょうが、この期に及んで「料理」にこだわり続けるのは、この先で活きる事があるのかどうか。
 (この味……こいつ、ただ者じゃない)
 最近すっかり、役者というより料理人の魂が優勢な犬塚が煮付けに箸を伸ばすのに対し、タロウが仏壇に飾られたペンギンの折り紙を発見すると、寺崎は自分が獣人(ペンギン)である事、更にはドン家の者である事をあっさり告白。
 「獣人を森から出してはならんし、人間を森に入れてもいかん。俺は……ずーっと……森の扉を守ってきたんだ」
 「成る程。それが獣人を作った、ドン家の責任か」
 どうやら、囚人の独房とは別のポイントである森の扉を守る為に、ドン家の人間を不可殺の存在として獣人にコピーさせたのが「ペンギン」という事のようですが、現在進行形で獣人が森から出ているのをどう受け止めればいいのか、現時点では判断つきかねます。
 劇団の寝込みを襲って倉持夏美をさらった獣人のデザインがペンギンだったかも、ちょっと記憶に無い……。
 「ジロウは俺の跡継ぎだ」
 寺崎ペンギンは、森で眠る寺崎本体の寿命が尽きかけている為に、人間界で活動する新たな門番としてジロウを後継者に据えようとしており、幼少期ジロウのかごめかごめのくだりはどうやら、後継者として都合よく育てる為に、荒ジロウを封じて和ジロウの人格を造り出していた、という事でしょうか。
 ところがタロウの一時消滅により、本来なら花果村の外に出ない筈だったジロウが、内なる筋肉の声に導かれてヒーローになりに上京した事で、封じられていた荒ジロウが出てきてしまった……?
 今のところちょっと、これまでの布石が綺麗に繋がっておぉと手を打つというよりは、浮いていた持ち駒に「最低限の説明になりそうな事情」を付けて盤面に放り込んだといった印象で……うーん……それはそれで一つの“巧さ”ではあるのですが、もつれた糸を解きほぐす最終局面としての切れ味はいまいち感じられず。
 筋に一定の説明をつけるだけなら設定資料を広げればいいわけで、それが“物語”になった時にどう見せ、どう伝えるのか、「ジロウの位置づけ」や「ペンギンの正体」に必要な劇的さと爆発力のいずれにも欠けて“面白さ”を生み出せておらず、正直メインディッシュの段階まで来て、凄くつまらない感じの雑な盛りつけで皿に乗せられて出てきて、困惑するレベル。
 マッサージを拒否し、自力で森の入り口を探そうとする犬塚が、夏美を助けた後はムラサメで獣人を斬って斬って斬りまくると宣言すると、それを阻もうとするタロウともめ、
 「ムラサメをよこせ」
 「ふっ……初めてあんたと会った時を思い出したぜ。……俺はおまえが大っ嫌いだった!」
 「ムラサメをよこせ」
 「命令するな!」
 と相性の悪さが火を噴いて互いに変身してのバトルに突入する辺りは面白いのですが……。
 ドンモモとイヌの激しい銃撃戦は、楽しげなジロウの声が響いてきたことによって一時中断。声が聞こえてくる集会所を覗いたタロウと犬塚が見たものは、たった一人で宴席を囲むジロウだった。
 衝撃の、20年間エアフレンズ。
 これまで、ジロウにとっての地元の暖かい繋がりに見えていたものは、ジロウを扉の地に縛り付ける為に寺崎が生み出した幻影だったと「反転」し、先日上京して、瀕死のジロウを甲斐甲斐しく世話していたのも、実は寺崎のオジキだったの……?!
 端から見ればキツネかタヌキに化かされている真っ最中のジロウの口にペンギンの折り紙が滑り込もうとした時、咄嗟に飛び出したタロウがペンギンを掴むと、姿を現す寺崎のオジキ。
 「俺の邪魔する気か。貴様」
 「……あんたの後は俺が継ぐ。ドン家の者として、獣人を生み出した責任……俺が取る」
 タロウは自らペンギンを飲み込み……一方、東京ではみほを探す雉野が尋ね人の貼り紙を手当たり次第に張り付けており、すっかり、壁一面にストーキング写真系のサイコキラーに近づいていた。
 「帰ってきてよぉ……みほちゃーーーん!!」
 絶叫する雉野の姿は鬼へと変貌し……ま・た・か。
 12話ぶり3回めのヒトツ鬼成りを果たした雉野つよし――百獣鬼は、ガオー! 飛びかかれ! ガオー! 食らいつけ! とみほちゃんを探し歩く内に召喚された青&黄と出会うと、掟破りのいきなり巨大化。
 そこに、あくまでも脳人の戦士の使命を果たそうとするバロム仮面が乱入して混迷する状況の中、ペンギンを飲み込んだ事で獣人の森に向けて吸い込まれていく寸前のタロウめがけてブラスターが放たれると、巨大百獣鬼の前に、顔はオニタイジンだが体のパーツは昆虫の巨大ロボが出現し、どうやら次作の巨大ロボ先行お披露目となって、百獣鬼を軽く成敗。
 去り際に顔も正式のものになると、次作ロボのデザインはかなり格好いいですが……うーん……もともと冬映画の先行登場も無理があったとはいえ、それをTV本編の最終盤にねじこもうとすると更に無理が出るわけで、商業作品としての要請は理解はできるとしても、率直にガッカリとします。
 オニタイジン合体不能から先行ロボ登場の流れを、タロウ離脱や雉野三度目の鬼と絡めて話の筋に繋げる豪腕は見事でしたが、そのリソースは他に使えたのではないか、という気が正直。
 謎のロボにバッサリされるも人間大で鬼の姿を保つ百獣鬼だったが、そこに赤影仮面が飛び込んでくると刃を一閃。
 「あれは……ソノシ!」
 「また会えたね、ソノイくん。嬉しいよ」
 更に紫と黒の仮面の戦士が現れると、その連続攻撃を受けた百獣鬼/雉野は、30話ぶり2回目の異空間転送を果たし、凄い、ここまで来ると本当に凄いよ雉野!!(笑)
 そしてペンギンを飲み込んだタロウは獣人の森で眠りに落ち……
 次回――「ネコは気ままに遊び、ツルは物語を紡ぐ。では人間は? 私は、もういい。桃井タロウ、おまえの夢はなんだ?」
 のナレーションが大変格好良く、彼女は黄昏に、夢を問う。